慢性角結膜炎 病態理解と対応
慢性角結膜炎 病態と慢性結膜炎・乾燥性角結膜炎との関係
慢性角結膜炎は角膜と結膜の炎症が1〜2週間を超えて遷延し、3〜4週間以上症状が続く慢性結膜炎の一亜型として理解されます。慢性結膜炎では軽度の充血や異物感が寛解と増悪を繰り返し、ドライアイや環境刺激、コンタクトレンズ使用などが背景に存在することが多く、角膜上皮障害が持続すると慢性角結膜炎へと移行しやすくなります。
乾燥性角結膜炎では涙液分泌の低下や蒸発亢進により角膜・結膜表面の乾燥が進行し、砂が入ったような異物感や灼熱感、視力の変動を訴える患者が多くみられます。涙液層の不安定性は易感染性や慢性炎症の温床となり、軽微な刺激でも上皮障害が長期化して慢性角結膜炎の病態を助長するため、ドライアイの評価と治療は慢性角結膜炎のマネジメントにおいて不可欠です。
参考)乾燥性角結膜炎 – 17. 眼疾患 – MSDマニュアル プ…
慢性化の背景には、細菌・クラミジア感染の持続だけでなく、眼瞼炎やマイボーム腺機能不全、アレルギー性結膜炎のコントロール不良など複数の因子が絡み合うことが多く、原因を単一に絞りすぎない視点が重要になります。特に高齢者ではアレルギーが明らかでないにもかかわらず、弛緩した結膜や涙液動態の変化が慢性結膜炎・慢性角結膜炎の温床となることが報告されており、加齢変化を前提とした評価も求められます。
参考)https://www.matsumoto-ganka.jp/manage/wp-content/uploads/2020/07/pdf_03.pdf
慢性角結膜炎 原因とリスク因子(コンタクトレンズ・アレルギー・高齢者)
慢性角結膜炎の感染性原因としては、ブドウ球菌を中心とした細菌感染とクラミジア感染が代表的であり、特に成人封入体結膜炎では無治療のまま慢性化しやすいことが知られています。まぶたの縁の炎症を伴うブドウ球菌性結膜炎では、眼瞼縁やマイボーム腺の慢性炎症が角膜表面に持続的な刺激を与え、点状角膜上皮障害やび慢性表層角膜症を形成して慢性角結膜炎を惹起します。
非感染性の要因としては、以下のようなリスクがしばしば重なって存在します。
- コンタクトレンズの長時間装用や不適切なレンズケア
- ドライアイや涙液分泌低下(高齢者・シェーグレン症候群など)
- 通年性アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎による眼表面の慢性刺激
- 目を頻回にこする習慣や、洗顔・メイクの刺激
高齢者では、通年性アレルギー性結膜炎に加え、加齢性の結膜弛緩や眼瞼形態変化により、常に異物感や流涙、軽度充血が続く「慢性結膜炎」が多くみられます。このような症例では抗生剤やステロイドの漫然投与だけでは根治せず、余剰結膜の焼灼や切除といった手術的介入が必要となる点は、若年者の症例と大きく異なる重要な特徴です。
また、アレルギー素因のある若年者では、アレルギー性結膜炎の季節外でも軽い充血やかゆみが続き、コンタクトレンズ装用が重なることで慢性角結膜炎へ移行することがあり、レンズ材質や装用時間、レンズケアの指導が病態修飾因子として大きな意味を持ちます。このような背景因子への介入は、点眼治療と同程度に再燃予防へ寄与するため、診察時の生活背景聴取が不可欠です。
参考)結膜・角膜の病気 – 診療案内|港区白金高輪駅の白金眼科クリ…
慢性角結膜炎 診断のポイントと鑑別(スリットランプ・検査)
慢性角結膜炎の診断では、問診で発症からの期間、症状の寛解・増悪パターン、コンタクトレンズ使用歴、全身アレルギー疾患や性感染症の既往などを詳しく聴取し、スリットランプ所見と組み合わせて評価することが重要です。スリットランプでは結膜充血、濾胞・乳頭、結膜弛緩、角膜上皮障害の分布や深さを観察し、角膜表層のび慢性混濁や偽膜形成の有無などをチェックすることで、アデノウイルス性角結膜炎の既往や現在の活動性を推定できます。
感染性を疑う場合は、結膜スワブによる細菌培養や塗抹検査に加え、クラミジアが疑わしいときには核酸増幅検査を検討し、成人封入体結膜炎を見逃さないことがポイントです。慢性結膜炎のなかには性感染症が背景にある症例も含まれるため、若年成人で片眼優位・粘液性眼脂持続・性交歴ありといった情報が揃えば、積極的にクラミジア検査を提案すべき状況といえます。
乾燥性角結膜炎の関与を評価するためには、シルマーテストやBUT測定、角膜フルオレセイン染色が有用であり、涙液層の不安定性や角膜上皮障害のパターンを確認します。アレルギー性結膜炎との鑑別では、強いかゆみや乳頭増殖の有無、季節性・通年性の変動、鼻症状の合併などが参考となり、慢性角結膜炎ではかゆみよりも異物感・乾燥感・軽い痛みが前面に出ることが多いため、症状の質の違いを丁寧に聞き分けることが診断精度向上につながります。
加えて、慢性角結膜炎では「軽い症状で受診と受診の間隔が空きがち」という特徴があり、経過の断片的な情報しか得られないことも少なくありません。スマートフォンでの症状日誌や充血のセルフ写真を勧めるなど、患者側に記録を依頼しておくと、長期経過の把握や治療効果判定に有用な情報源となり得ます(独自視点)。
慢性角結膜炎 治療戦略と点眼薬選択(抗菌薬・ステロイド・免疫抑制薬)
慢性角結膜炎の治療では、原因に応じた治療を行うことが基本であり、細菌性結膜炎には抗菌薬点眼を用い、可能であれば培養結果に基づいてより選択的な抗菌薬を選ぶことが推奨されます。しかし実臨床では培養検査を行わず経験的に抗菌薬を選択する場面も多く、処方期間が漫然と延長されると耐性菌や薬剤アレルギーのリスクが増すため、症状の変化に応じた減量・中止のタイミングを明確にしておくことが重要です。
角膜炎を伴う場合の治療では、点眼薬が基本であり、細菌性角膜炎には頻回の抗菌薬点眼、真菌性角膜炎には抗真菌薬点眼が用いられ、重症例では内服・点滴や角膜掻把、さらには角膜移植まで検討されることがあります。炎症が強いケースではステロイド点眼薬が処方されることもありますが、感染性角膜炎では病原体の増殖を助長するリスクがあるため、病原体の想定と治療期間を厳格に管理し、必要最小限の用量・期間で使用することが重要とされています。
アレルギー性結膜炎が関与する慢性角結膜炎では、抗アレルギー点眼薬(抗ヒスタミン薬・ケミカルメディエータ遊離抑制薬)が基本となり、重症例ではステロイド点眼や免疫抑制点眼薬(シクロスポリンなど)の併用が検討されます。一方、高齢者の慢性結膜炎では、抗生剤とステロイド剤は原則として必要最小限とし、長期使用時には必ず定期的な診察を条件とするクリニックもあり、薬物治療に頼りすぎず、結膜弛緩に対する焼灼・切除などの手術的アプローチが根本治療として位置付けられています。
慢性角結膜炎の再燃予防には、以下のような生活指導が重要です。
- コンタクトレンズ装用時間の短縮とレンズケア手技の見直し
- 画面作業時の瞬目数低下への注意と、意識的なまばたき・休憩の促し
- 目をこする習慣の是正と、アレルギー症状が強い季節の早期治療
- ドライアイに対する適切な点眼と加湿、環境整備
こうした指導は一度の外来説明だけでは定着しにくいため、患者教育用のパンフレットや院内ポスター、診察後の看護師による補足説明など、多層的なアプローチを組み合わせると行動変容を得やすくなります(独自視点)。
慢性角結膜炎 医療従事者が押さえるべき院内感染対策とチーム対応
慢性角結膜炎の背景としてアデノウイルス性流行性角結膜炎(EKC)の既往や持続が疑われる症例では、発症から約2週間は感染性があり、結膜充血・眼脂・眼瞼腫脹・耳前リンパ節腫脹といった症状を呈します。EKCは感染力が極めて強く、眼科外来では医師・看護師など医療従事者の手指や検査機器、点眼瓶、患者同士の接触を介して院内感染が拡大しやすいため、慢性角結膜炎患者であっても「再燃期にはまだウイルス排泄が続いている可能性」を常に念頭に置く必要があります。
院内感染対策としては、以下のような実践的ポイントが挙げられます。
参考)流行性角結膜炎
- 診察前後の十分な流水と石けんによる手洗いに加え、速乾性手指消毒薬の使用
- 眼科機器(スリットランプ顎台・額当て、視力検査器具など)の定期的な清拭・消毒
- 点眼瓶の共用を避ける、もしくは患者ごとに使い分ける運用の検討
- 流行期やEKC疑い症例では、待合スペースでの座席配置や導線を工夫し、患者間接触を減らす
アデノウイルスは熱に弱く、95℃で5秒間、56℃で5分間で失活するとされており、適切な温度管理下での器具洗浄が有効とされています。一方で、アルコール消毒のみでは完全な不活化が期待しにくい材質や部位もあるため、院内の感染対策チームと協働し、機器ごとの標準的な洗浄・消毒プロトコルを作成しておくことが望まれます。
眼科医だけでなく、看護師・視能訓練士・受付スタッフまでを含めたチーム全体で「慢性角結膜炎の患者でも再燃期には高い感染性を持ちうる」という認識を共有し、患者導線・予約枠・検査順序の工夫を行うことが、院内での小規模なクラスター発生を未然に防ぐうえで重要です。また、患者に対しても家庭内でのタオル・洗面用具の共用を避けることや、学校・職場への出席停止の目安について説明し、院外での二次感染を抑制する役割も医療従事者に求められます。
参考)さっちみえ
流行性角結膜炎と院内感染対策の詳細な解説(慢性角結膜炎の感染対策セクションの補足)
慶應義塾大学病院 KOMPAS「流行性角結膜炎」

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