急性涙腺炎 治療 全身と局所
急性涙腺炎 治療 初期評価と入院適応
急性涙腺炎の治療を開始する前に、まず行うべきは視力・眼球運動・眼圧・眼底などの基本的眼科的評価と、発熱や全身倦怠感などの全身状態の確認である。
上眼瞼外側の腫脹と圧痛、充血、涙腺部の腫瘤触知に加えて、眼窩蜂窩織炎や海綿静脈洞血栓症へ進展しうる徴候(高度の疼痛、眼球突出、複視、意識障害など)の有無をチェックし、ハイリスク例では躊躇なく入院加療とする。
入院適応としては、38度以上の発熱、CRP高値などの全身炎症所見、免疫不全(糖尿病、ステロイド長期内服、悪性腫瘍治療中など)、急速な腫脹進行や視機能低下が挙げられる。
参考)IgG4関連疾患(指定難病300) – 難病情報…
高齢者や小児では症状の訴えが乏しいにもかかわらず進行が速い例もあるため、家族からの情報聴取とバイタルサインの反復評価が実務上重要となる。
参考)ステロイドの全身投与が著効した小児の急性涙囊炎の1例 (臨床…
検査として、重症例では血液検査(血算、CRP、プロカルシトニン、血糖など)や造影CT・MRIを行い、眼窩内膿瘍や副鼻腔炎の合併、骨破壊の有無を評価する。
参考)https://www.kyorin-u.ac.jp/univ/user/kyorinms/results/pdf/igb-all-25s-contr.pdf
造影画像で涙腺周囲のリング状造影を伴う低吸収域を認める場合は膿瘍形成を疑い、早期に耳鼻咽喉科や脳神経外科と連携してドレナージ術を検討する。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/121/7/121_939/_pdf
急性涙腺炎 治療 抗菌薬 全身投与と点眼
急性涙腺炎 治療の基本は、ブドウ球菌や連鎖球菌などを想定した抗菌薬全身投与であり、軽症例ではペニシリン系やセフェム系の経口薬、重症例では第2~第3世代セフェム系などの静脈内投与が選択される。
市中感染が多い一方で、医療関連感染やMRSAリスクのある患者では、バンコマイシンなど広域スペクトル薬を初期から検討せざるを得ないケースもある。
局所治療としては、抗菌点眼薬や眼軟膏を腫脹部と結膜嚢に投与し、眼表面の細菌負荷を低減しながら、全身投与とのシナジーを狙う。
膿瘍形成が明らかであれば、局所の切開排膿とともに培養検査を行い、得られた感受性結果に基づいて抗菌薬をデエスカレーションすることが推奨される。
治療期間は、軽症例で7~10日、膿瘍形成例や免疫不全例では2週間以上を要することもあり、症状改善後も数日は内服を継続して再燃を防ぐ。
参考)急性涙嚢炎は主にどのような薬で治療しますか?副作用はあります…
特に涙道閉塞を背景とする症例では、抗菌薬で一時的に改善しても再燃しやすく、慢性期に涙道手術を予定したうえで、急性期は抗菌薬でコントロールする戦略が現実的である。
参考)涙のう炎
急性涙腺炎 治療 ステロイドとアレルギー・IgG4関連疾患
急性涙腺炎様の腫脹の中には、アレルギー性鼻炎やIgG4関連涙腺唾液腺炎に伴う炎症が関与しており、抗菌薬単独では改善が乏しく、副腎皮質ステロイド全身投与が著効する小児例も報告されている。
このような症例では、血清IgEやIgG4、自己抗体、鼻鏡所見などを合わせて評価し、感染徴候が乏しいにもかかわらず抗菌薬抵抗性の場合は、ステロイド投与の適応を慎重に検討する必要がある。
IgG4関連疾患は、膵臓、唾液腺、涙腺、リンパ節など多臓器に腫大や腫瘤を来す全身疾患であり、悪性リンパ腫やシェーグレン症候群、サルコイドーシスなどの鑑別を要する。
涙腺部腫脹が左右対称で、慢性の経過をとり、血清IgG4高値や組織でのIgG4陽性形質細胞浸潤を認める場合は、急性細菌感染の再発と誤認して抗菌薬を繰り返すのではなく、リウマチ・膠原病内科との連携とステロイド長期管理を前提とした診療戦略が重要となる。
ステロイドを急性涙腺炎 治療に併用する際は、感染を十分コントロールしたうえで用量と期間を最小限にし、高血糖や易感染性といった副作用を念頭に置いてモニタリングを行う。
とくに小児や高齢者では、短期間であっても睡眠障害や行動変化が出やすいため、家族への説明と情報提供を事前に行っておくことが望ましい。
急性涙腺炎 治療 鑑別疾患 悪性リンパ腫・シェーグレン症候群
急性涙腺炎と診断されがちな涙腺部腫脹の中には、シェーグレン症候群の経過中に発生した悪性リンパ腫や、IgG4関連疾患に二次的に生じたリンパ腫が紛れていることがあり、片側性で硬い腫瘤、疼痛の乏しい腫脹、リンパ節腫大を認める場合は特に注意を要する。
64歳女性のシェーグレン症候群経過中に涙腺原発の悪性リンパ腫を発症した報告では、上眼瞼腫脹を主訴に受診し、病理組織でびまん性大細胞型非ホジキンリンパ腫と診断されており、炎症と腫瘍の鑑別の難しさが示されている。
シェーグレン症候群では、乾性角結膜炎や唾液腺炎に加えて、自己抗体(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体)や免疫異常が認められ、涙腺生検でリンパ球浸潤と腺房構造の破壊が典型的である。
参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/95_386.pdf
このような背景を持つ患者が急性の疼痛や腫脹を呈した場合、単純な細菌性急性涙腺炎だけでなく、リンパ腫の合併やIgG4関連疾患とのオーバーラップを念頭に、多職種カンファレンスや病理医との協議が診断精度を高める。
悪性リンパ腫が疑われる場合には、造影CTやMRIに加え、可能ならPET-CTや全身CTで他部位の病変を検索し、涙腺生検での病理診断を行う。
治療は血液内科主導での化学療法が中心となるが、眼科としても放射線治療による乾燥性角結膜炎のリスクや視機能への影響について、患者と共有しておくことが求められる。
急性涙腺炎 治療 再発予防と医療従事者向け指導の工夫
急性涙腺炎 治療のゴールは、単に感染を鎮静化することではなく、涙道閉塞や基礎疾患の評価を通じて再発を予防し、患者のQOL低下を防ぐことである。
慢性涙嚢炎や鼻涙管閉塞を背景に急性炎症を繰り返す症例では、急性期消炎後に涙のう鼻腔吻合術などの手術的治療を検討し、白内障手術予定例では術前に涙道手術を先行することで術後感染リスクを下げられる。
医療従事者向けには、急性涙腺炎の説明にとどまらず、「なみだ目」「目やに」「目頭の違和感」といった初期症状の段階で眼科受診を促す啓発が重要であり、かかりつけ医・薬剤師・看護師が同じメッセージを共有することで、重症化前の拾い上げが可能になる。
参考)涙目(鼻涙管閉塞症)・涙嚢炎 – 山王台病院附属…
また、アレルギー・自己免疫疾患・悪性リンパ腫など多彩な背景疾患を想起させるチェックリスト(乾燥症状、全身リンパ節腫脹、長引く微熱、体重減少など)を問診テンプレートに組み込むことで、日常診療の中でも「ただの感染」で片付けない視点を維持できる。
独自の視点として、急性期に患者が撮影したスマートフォン写真や自撮り動画を活用し、腫脹の時間経過や左右差、顔面全体の表情変化を評価することは、忙しい外来でも進行速度を視覚的に把握できる簡便な手法である。
さらに、再発リスクの高い患者には、発熱や上気道症状が出た段階でのセルフチェックリストと早期受診基準を紙媒体や患者ポータルに登録しておくと、救急外来でのトリアージの質向上にもつながる。
急性涙腺炎や関連する涙道疾患の治療や手術適応について、臨床的な整理がなされているページです(急性期治療と手術時期の検討に関する参考リンク)。