眼窩骨膜炎 症状 診断 治療 眼窩蜂窩織炎

眼窩骨膜炎 症状 診断 治療

眼窩骨膜炎の重要ポイント概観
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症状と眼窩蜂窩織炎の境界

眼窩骨膜炎がどのような症状で始まり、眼窩蜂窩織炎・骨膜下膿瘍へどのように連続していくかを整理します。

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診断と画像検査の勘所

Chandler 分類を踏まえ、CT・MRIのどこを見るか、小児例での判断の難しさを解説します。

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治療戦略と予後改善

抗菌薬選択、手術介入のタイミング、視機能温存のための連携体制など、現場で迷いやすいポイントを取り上げます。

眼窩骨膜炎と眼窩蜂窩織炎 症状の連続性

眼窩骨膜炎(眼窩骨膜下膿瘍を含む)は急性鼻副鼻腔炎を背景として眼窩内に炎症が波及し、眼瞼腫脹から眼球運動障害、眼球突出、視力低下まで連続的に悪化していく病態として理解される。

Chandler 分類では、篩骨洞炎からの炎症性浮腫や眼窩蜂窩織炎が進行した結果として眼窩骨膜下膿瘍(Group 3)、さらに眼窩内膿瘍や頭蓋内合併症(Group 4, 5)へと重症化していく段階が示されており、眼窩骨膜炎は「中間~重症」の位置づけとなる。

臨床的には、眼窩周囲蜂窩織炎(preseptal cellulitis)では眼瞼腫脹と発赤は強いが眼球突出や眼球運動障害、視力障害を欠くのに対し、眼窩骨膜炎では疼痛を伴う眼球運動制限、複視、眼球突出、視力低下など眼窩内病変を疑う症候が徐々に加わる点が鑑別の鍵となる。

小児では眼瞼腫脹が高度で眼球運動の評価が難しいことが多く、発熱の持続、全身状態の悪化、CRPや白血球数の高度上昇に加え、保護者からの「眼が出てきた」「視線が合わない」といった訴えが、眼窩骨膜炎・骨膜下膿瘍進展のサインとなりうる。

眼窩骨膜炎 診断と画像検査のポイント

眼窩骨膜炎を疑う場合、視力・対光反射・眼球運動・眼圧などの眼科的評価に加えて、鼻副鼻腔の診察と全身所見を耳鼻咽喉科と共同で確認することが推奨される。

画像検査では、造影CTが骨壁と副鼻腔病変の評価、膿瘍腔の確認に優れており、眼窩骨膜下膿瘍は眼窩壁に沿うレンズ状の造影欠損として描出される一方、眼窩蜂窩織炎は眼窩脂肪織の濃度上昇と不整な造影パターンとして表現される。

MRIは硬膜下膿瘍や脳膿瘍など頭蓋内合併症が疑われる場合に有用で、T2強調像や造影 T1 で副鼻腔から連続する高信号域やリング状造影を確認することで、骨膜下膿瘍と周囲炎症の広がりをより精緻に把握できる。

小児例では鎮静の必要性や被曝を考慮しつつも、眼球運動障害、視力低下、眼球突出、眼痛の増悪、全身状態不良のいずれかを認めれば、早期にCTまたはMRIを撮像してChandler 分類上 Group 3 以上かどうかを評価することが、予後改善につながる。

眼窩骨膜炎の診断における画像所見と病態分類の詳細な解説として役立つ耳鼻咽喉科領域の総説です。

急性鼻副鼻腔炎から眼窩・頭蓋内へ進展した症例の検討(J-STAGE)

眼窩骨膜炎 治療方針 抗菌薬と手術適応

眼窩骨膜炎・骨膜下膿瘍の治療では、原因として頻度の高い肺炎球菌、インフルエンザ菌ブドウ球菌、嫌気性菌などを想定した広域静注抗菌薬投与が基本となり、重症例ではβラクタム系にメトロニダゾールクリンダマイシンを併用して嫌気性菌もカバーする戦略がとられることが多い。

Chandler 分類で Group 1~2(眼窩周囲蜂窩織炎~眼窩蜂窩織炎)では保存的治療が一選択となる一方、Group 3 の眼窩骨膜下膿瘍では初期から外科的ドレナージを選択する施設もあり、特に成人例では手術加療が視機能温存と早期改善に寄与したとの報告がある。

保存的治療を選択した場合でも、適切な抗菌薬開始後24~48時間の時点で発熱、眼球運動障害、視力低下、CRP高値などが改善しない場合には手術適応とされることが多く、逆に改善が得られれば抗菌薬治療を継続のうえで慎重に経過観察する方針がとられる。

肺炎球菌による眼窩蜂窩織炎と骨膜下膿瘍を繰り返した乳児例では、初回の切開排膿と抗菌薬治療後に画像上の炎症改善を確認して治療を終了したものの、上気道炎を契機に再燃を繰り返しており、基礎疾患や免疫不全の有無を含めた長期フォローアップの必要性が示唆されている。

眼窩骨膜炎 小児症例 眼窩周囲蜂窩織炎との違い

小児では眼窩周囲蜂窩織炎の頻度が高く、その多くは外来での内服抗菌薬のみで良好な経過をとるとされるが、一部が眼窩蜂窩織炎や眼窩骨膜炎に進展して重篤な後遺症を残しうるため、早期のリスク層別化が重要となる。

眼窩周囲蜂窩織炎では発熱と眼瞼腫脹が主症状で、眼球突出や視力障害を欠き、炎症反応も中等度で推移することが多いのに対し、眼窩骨膜炎では眼球運動障害、眼痛の増悪、結膜浮腫、視力低下が加わるほか、画像検査で篩骨洞から眼窩内側に連続する囊胞状病変や骨膜下膿瘍が描出されるのが特徴である。

日本小児科学会雑誌における小児眼窩周囲蜂窩織炎と眼窩蜂窩織炎の比較検討では、眼窩蜂窩織炎群で入院期間が長く、静注抗菌薬投与期間も延長する傾向が報告されており、眼窩骨膜炎に至る症例ではさらに画像検査や外科的介入が必要となるため、施設間連携を含めた治療体制の整備が重要とされている。

また、反復する眼窩周囲蜂窩織炎・眼窩骨膜炎症例では、糖尿病や好中球機能異常などの免疫異常、解剖学的な副鼻腔通気障害、歯性感染などの背景因子が隠れていることがあり、単回イベントとして扱わず、耳鼻咽喉科・小児科・眼科の協同で原因検索を進めることが推奨される。

小児における眼窩周囲蜂窩織炎と眼窩蜂窩織炎の臨床像の違いを整理した報告で、小児眼窩骨膜炎のリスク評価にも応用できる。

小児における眼窩周囲蜂窩織炎と眼窩蜂窩織炎の比較検討(日本小児科学会雑誌)

眼窩骨膜炎 チーム医療と長期フォロー 独自視点

眼窩骨膜炎では、急性期の視機能温存だけでなく、治療後の眼球運動障害、斜視、視力低下、さらには副鼻腔の再感染や再燃リスクを見据えた長期フォローが重要であり、眼科・耳鼻咽喉科・小児科(または内科)が共同でフォローアップ計画を立てることが望ましい。

術後や保存的治療後のフォローでは、症状が改善していても、軽度の複視や視力差、眼精疲労を自覚する患児・成人が一定数存在し、これらは学校生活やデスクワークにおけるQOL低下につながるため、プリズム眼鏡や視能訓練、作業環境調整などを早期に検討する意義がある。

また、反復する眼窩骨膜炎や骨膜下膿瘍症例では、画像上の副鼻腔形態(篩骨洞の発育不良、中鼻道狭窄など)と鼻中隔弯曲、アレルギー性鼻炎慢性副鼻腔炎の合併を系統的に評価し、必要に応じて機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)やアレルギーコントロールを組み合わせることで、再発予防と長期的な眼窩感染リスク低減が期待される。

多職種チームとしては、看護師による家庭での点眼・点鼻手技指導、薬剤師による抗菌薬アドヒアランス支援、視能訓練士による視機能評価と訓練、医療ソーシャルワーカーによる通院支援などを組み込み、単なる「感染症の一エピソード」ではなく、視機能と生活の質を守る慢性ケアの入り口として眼窩骨膜炎を位置づける視点が、今後の臨床現場ではより重要になると考えられる。