眼窩炎 症状 診断 治療 合併症
眼窩炎 症状と眼窩蜂窩織炎の臨床像
眼窩炎の代表である眼窩蜂窩織炎は、眼窩の脂肪組織や筋肉に急性細菌感染が広がり、眼瞼腫脹・発赤、強い眼窩部痛を主訴に受診することが多い疾患です。
特徴的な症状として、眼球突出、眼球運動障害による複視、結膜浮腫(ケモーシス)、視力低下などが挙げられ、単なる結膜炎や眼瞼炎との鑑別に重要です。
発熱、頭痛、悪心・嘔吐など全身症状を伴うことも多く、乳幼児では不機嫌、哺乳不良など非特異的なサインとして現れるため、家族からの情報聴取が診断の糸口になります。
眼瞼腫脹は前眼窩(眼窩前蜂窩織炎)でも見られますが、眼球運動障害や視力障害の有無が、眼窩内病変を示唆する「レッドフラッグ」であり、早期に画像検査や専門科紹介を検討すべきポイントになります。
眼窩蜂窩織炎では、視神経への圧迫や血流障害により、急激な視力低下を来すことがあり、時間との勝負になるケースも少なくありません。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E7%9C%BC%E7%AA%A9%E8%9C%82%E7%AA%A9%E7%B9%94%E7%82%8E
検査前に視力測定、相対的求心路障害(RAPD)の有無、眼球運動と疼痛の程度を簡便に評価するだけでも、重症度評価とトリアージに大きく役立ちます。
参考)疾患から診療科を探す(当院で診療可能な疾患か否かは、事前にお…
早期治療により多くは改善しますが、一部では眼球突出や視機能低下などの後遺症が残ることもあり、症状の軽快のみならず、長期的な視機能の保護を意識した初期対応が求められます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsiao/4/1/4_48/_pdf
眼窩炎 原因と眼窩蜂窩織炎の起炎菌・リスク因子
眼窩炎の多くは副鼻腔炎、とくに篩骨洞・上顎洞の急性副鼻腔炎からの波及が原因であり、眼窩と副鼻腔を隔てる紙様板の薄さが解剖学的リスクとなっています。
起炎菌としては、黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌などのグラム陽性球菌が多く、肺炎球菌による症例もしばしば報告されています。
小児ではインフルエンザ菌なども原因となりうる一方、成人では糖尿病などの基礎疾患を背景に、より多彩な菌種や混合感染症例がみられます。
歯性感染症からの波及による眼窩蜂窩織炎の症例も報告されており、とくに上顎歯の骨膜下膿瘍から眼窩内へ炎症が進展した例では、診断が遅れやすい点に注意が必要です。
コントロール不良の糖尿病、免疫抑制状態、ステロイド長期内服などは重症化のリスク因子であり、同じ眼瞼腫脹でも、背景因子によって入院・精査の閾値を下げる判断が求められます。
小児では繰り返す副鼻腔炎や眼窩周囲蜂窩織炎を契機に、同一部位での眼窩蜂窩織炎や骨膜下膿瘍を反復する症例も報告されており、局所解剖や全身の易感染性の精査が検討されます。
副鼻腔炎治療の不完全な中断や、抗菌薬の早期自己中止も、炎症の遷延や再燃を招き、眼窩への波及リスクを高める一因と考えられます。
参考)眼窩蜂窩織炎(眼窩蜂巣炎)とは?症状・原因・治療・病院の診療…
また、最近では市中での耐性菌の増加により、従来有効とされてきたレジメンで効果不十分な症例も報告されており、地域の耐性菌状況を踏まえた抗菌薬選択が重要になっています。
参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=18024
眼窩炎 診断と画像検査・眼窩蜂窩織炎の評価
眼窩炎の診断では、視診と眼科的診察に加えて、造影CTによる眼窩内病変と副鼻腔の評価が中心になります。
CTでは、眼窩脂肪織の濃度上昇、眼筋の腫大、眼窩内または骨膜下膿瘍、静脈洞病変の有無などを確認し、前眼窩蜂窩織炎との境界や、手術の必要性判断にも活用されます。
副鼻腔病変の評価も同時にできるため、耳鼻咽喉科と連携した治療計画の立案において、初期の段階から画像検査を行う意義は大きいと言えます。
MRIは、脳膿瘍や海綿静脈洞血栓症など頭蓋内合併症の評価に優れており、神経内科・脳神経外科へのコンサルトを考える場面で重要な情報を提供します。
検査前に採血で炎症反応(CRP、白血球数)、血液培養、必要に応じて鼻腔・副鼻腔や結膜からの培養を行い、起炎菌の同定と抗菌薬感受性検査に備えます。
ただし、症状の進行が早い場合には、画像診断や培養結果を待ってから抗菌薬投与を開始すると遅いことがあり、診断的治療として広域抗菌薬を先行させる戦略も容認されています。
眼窩炎と鑑別を要する疾患として、急性結膜炎、単純な眼瞼炎、眼窩静脈血栓症、甲状腺眼症、眼窩腫瘍などが挙げられます。
眼球運動障害の有無、疼痛の性状、発症のスピード、全身状態、炎症反応の程度など、複数の所見を組み合わせて総合的に判断し、疑わしい症例では早期の専門科紹介をためらわないことが重要です。
眼窩炎 治療と眼窩蜂窩織炎の抗菌薬・手術適応
眼窩蜂窩織炎の治療の基本は、入院のうえでの広域抗菌薬全身投与であり、多くの症例で静脈内投与から開始します。
培養結果が判明するまでは、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、肺炎球菌などをカバーするレジメンが選択され、原因菌が同定された段階で、より狭域の抗菌薬へステップダウンするのが一般的です。
治療期間は重症度や合併症の有無により変動しますが、点滴で1〜2週間、その後内服への切り替えも含めると、2〜3週間程度を要することも少なくありません。
眼窩内または骨膜下膿瘍を伴う症例、視力障害が進行する症例、抗菌薬単独で改善が乏しい症例では、早期に外科的排膿を検討します。
小児の骨膜下膿瘍では、6歳以下の内側壁病変は抗菌薬に反応しやすいとする報告もあり、保存的治療をどこまで許容するかは年齢・膿瘍の部位・大きさ・視機能に応じた慎重な判断が必要です。
副鼻腔炎が主な感染源となっている場合、耳鼻咽喉科による副鼻腔手術を併用することで、再発や炎症遷延のリスクを減らせる可能性があります。
参考)https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02704/027040279.pdf
重症例では、集中治療室での管理が必要となることもあり、全身状態のモニタリング、血糖コントロール、抗凝固療法の検討(静脈洞血栓症合併例など)を含めた多職種連携が重要です。
治療開始から48〜72時間で症状改善の兆しが乏しい場合は、膿瘍形成や耐性菌感染、真菌症などの可能性を再評価し、画像再検、レジメン変更、追加の外科的介入を検討すべきです。
眼窩炎 合併症・再発と長期フォローアップ(独自視点)
眼窩炎の合併症としては、眼窩膿瘍、骨膜下膿瘍、視神経障害による不可逆的な視力低下、眼球運動障害の残存、眼球突出の後遺症などが報告されています。
さらに、頭蓋内合併症として脳膿瘍、髄膜炎、海綿静脈洞血栓症など生命予後にも関わる病態へ進展することがあり、とくに症状進行の速さと全身状態の悪化には注意が必要です。
小児例では、治療後に眼窩周囲蜂窩織炎を繰り返す症例もあり、局所構造や免疫機能の評価を踏まえた長期フォローが検討されます。
臨床現場では、急性期の改善後にフォローが途切れ、わずかな視力低下や視野障害、眼球運動の微妙な制限が見過ごされるケースも少なくありません。
視力検査だけでなく、色覚、視野、眼球運動の評価を外来フォローで繰り返し行うことで、微細な後遺症やQOLへの影響を早期に拾い上げることができます。
また、学校生活や就労環境での見え方の変化、読書やデジタルデバイス使用時の眼精疲労など、患者の日常生活に即した聞き取りは、数値化しづらい機能障害の把握に有用です。
再発・再燃予防の観点からは、慢性副鼻腔炎のコントロール、歯科疾患の適切な治療、血糖コントロールの最適化など、全身・局所双方からのアプローチが欠かせません。
特に糖尿病患者では、眼窩蜂窩織炎を契機に血糖管理の重要性を再教育する絶好の機会ともなり、内分泌代謝内科との共同フォローアップが長期予後に影響する可能性があります。
「急性感染症が治ったら終わり」ではなく、視機能・生活の質・基礎疾患コントロールを統合的に評価する長期フォローの枠組みを、チームとしてどう設計していくかが今後の課題と言えるでしょう。
眼窩炎 小児と成人での違い・チーム医療のポイント
小児では、眼窩炎の多くが急性副鼻腔炎に起因し、発症年齢が低く、眼窩骨膜下膿瘍を伴う頻度も成人より高いと報告されています。
一方、成人では歯性感染や糖尿病を背景とした重症例が目立ち、診断時には既に視機能障害や眼球突出が顕著であるケースも少なくありません。
小児では全身状態の変化が急激な反面、症状の訴えが限定的なことも多く、家族からの情報収集と、眼科・小児科・耳鼻咽喉科の連携がとくに重要となります。
小児急性副鼻腔炎に伴う眼窩内合併症では、保存的治療で改善しうる症例と、早期の外科的介入が望ましい症例の見極めが課題となります。
Greenbergらによる報告では、6歳以下の内側壁骨膜下膿瘍は抗菌薬に反応しやすいとされますが、実際の臨床では視機能、膿瘍サイズ、画像上の圧迫所見などを総合して判断する必要があります。
成人例では、重篤な基礎疾患や免疫抑制を背景に、真菌性眼窩炎を含む非典型症例が紛れ込むこともあり、耳鼻咽喉科・眼科に加えて、感染症科や血液内科との連携が求められることもあります。
心理社会的側面も、小児と成人で異なる配慮が必要です。
小児では、入院や頻回検査が学業や家族生活に与える影響を考慮し、医療者側から病状や治療計画をわかりやすい言葉と図表などで説明することが望まれます。
成人では、仕事や介護などの役割を抱える患者も多く、治療期間や再発リスクについて具体的な見通しを共有し、必要に応じて産業医や地域連携室と協働することで、治療継続を支えやすくなります。
眼窩炎は、眼科・耳鼻咽喉科・小児科(または内科)・放射線科・感染症科・場合によっては脳神経外科まで巻き込む「チーム医療型」の疾患です。
それぞれの専門性を活かしつつ、「視機能を守る」「生命予後を守る」という共通目標を軸に情報共有することで、診療の質と患者満足度の両立が期待できます。
眼窩炎の診断と治療の詳細解説(症状、画像診断、治療方針や予後の説明)がまとまっています。
小児の眼窩蜂窩織炎・骨膜下膿瘍症例に関する詳細な画像所見と治療経過の報告を参照する際に有用です。
日本小児感染症学会誌「肺炎球菌による眼窩蜂窩織炎,骨膜下膿瘍の治療後」
眼窩および眼窩周囲蜂窩織炎の臨床像や合併症頻度、予後に関する日本語レビューとして参考になります。
日本小児感染症学会誌「眼窩および眼窩周囲蜂窩織炎19例の臨床的検討」

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