残薬調整 レセプト コメント例
残薬調整のレセプト コメント例と摘要の基本
残薬調整に関連するレセプトの「コメント例」を考える前に、まず押さえるべきは“摘要欄で何を説明すべきか”です。実務では、摘要欄は「審査側が、算定の根拠と処方変更の筋道を追えるか」を見る場所になりやすく、文章のうまさよりも要点の過不足が問題になります。九州厚生局の個別指導の指摘事項でも、残薬に関して「処方医に連絡・確認を行った内容の要点」「変更内容」が薬剤服用歴等に記載されていないこと、また「処方の変更が行われなかった場合に算定している」ことなどが不適切例として明示されています。これらは、摘要欄だけではなく薬歴との“整合性”が問われるテーマです。
九州厚生局「令和6年度 個別指導等における主な指摘事項(調剤)」
ここから、摘要の基本形を「最短の構成要素」に分解します。残薬調整で処方変更が絡む場合、最低限の情報は次の3つです。
- 🧾残薬の事実:薬剤名(または対象が特定できる表現)+残数量(例:○日分、○回分、外用なら○本/○枚)
- 📞連絡・確認:誰に(処方医等)何を(残薬の数量、背景)伝え、どう判断されたか(了承、指示、処方変更)
- ✅変更結果:日数減、回数減、数量減、削除の有無(削除は要注意)
この3点が揃うと、コメントが短くても「事実→連絡→結果」という監査目線のストーリーが成立します。逆に、“患者希望”“医師の出し忘れ”など事務的・希望ベースの理由は、適正請求の研修資料で原則認められない例として挙げられており、理由の置き方には注意が必要です。たとえば京都府薬剤師会の研修資料では、単純な入力・記載ミスに対する処方変更は原則認められない旨や、「患者の希望」「患者の申し出」等の理由は原則認められない旨が示されています。
京都府薬剤師会研修資料「適正な保険請求について~傾向と対策」
では、現場で使いやすい「コメント例」を、ケース別に置きます(薬局のレセコン仕様により文字数制限があるため、短文寄りで記載します)。
【ケースA:内服薬の日数減(残薬○日分)】
- 🧾「残薬○日分確認、処方医へ連絡し日数調整(○日減)で処方変更」
- 🧾「残薬(○日分)あり。医師確認の上、投与日数○日→○日に変更」
【ケースB:頓服の回数減(残薬○回)】
- 🧾「頓服残薬○回分確認、処方医へ報告し回数調整で処方変更」
【ケースC:外用の数量減(テープ・軟膏)】
- 🧾「外用残薬あり(○枚/○本)。処方医へ連絡し数量調整で処方変更」
ポイントは、病名や患者の私的事情まで書き込みすぎず、「残薬の数量」と「処方医が関与した処方変更」を外さないことです。個別指導で問題になりやすいのは、そもそも処方変更がないのに加算している、または残薬調整なのに医師への連絡・確認がない、という“事実関係の欠落”なので、コメント例もそこを補強する設計にします。
九州厚生局「令和6年度 個別指導等における主な指摘事項(調剤)」
残薬調整と疑義照会と処方変更の要点
残薬調整が難しいのは、「減数調剤」と「疑義照会」と「加算(例:重複投薬・相互作用等防止加算の残薬調整区分)」が、似た言葉で重なっているのに、運用の境界が現場ごとに違って見える点です。まず大枠として、加算の論点は“処方変更が行われたか”で線が引かれます。九州厚生局の指摘事項では、処方変更が行われなかった場合の算定が不適切例として明示され、さらに残薬について処方医に連絡・確認した要点の記録がないことも不適切とされています。つまり、「残薬があった」だけではなく、「処方医の関与を経て処方変更があった」ことが重要です。
九州厚生局「令和6年度 個別指導等における主な指摘事項(調剤)」
次に、疑義照会が必要になる“境界条件”を整理します。医療機関側が院外処方箋の備考欄に「残薬調整後の報告可」等の運用を明示しているケースでは、残薬調整に関する疑義照会を不要とする院内ルールが掲載されている例があります(ただし施設ローカル運用であり、薬局側の責任で適用範囲を確認すべきです)。実際に、中京病院の案内では、備考欄で「残薬調整後の報告可」の記載がある場合に疑義照会不要とする運用、減数調剤の適用範囲(内服は日数、頓服は回数、外用・注射は処方量)などが整理されています。
一方で、同案内では注意事項として「削除は疑義照会が必要」「1日量や1日回数を減らせない」「麻薬や抗悪性腫瘍薬は減数調剤不可(疑義照会が必要)」など、減数調剤でやってよいこと・だめなことの境界が具体的に示されています。ここは意外と盲点で、残薬が多い患者ほど“削除したくなる”のですが、削除は事実上、処方内容の変更幅が大きく、監査上の説明責任も重くなりやすい領域です。
疑義照会を行った場合のレセプト・薬歴の整合性の作り方は、シンプルに「照会理由→医師回答→変更点」を同じ粒度で残すことです。照会理由に「患者希望」を置いてしまうと、適正請求の研修資料で“原則認められない理由”に含まれることがあり、監査対応で苦しくなります。代わりに、薬学的観点(残薬の数量、服薬状況の確認、過量・重複の回避、治療継続性の確保)に寄せて文章を組み立てる方が安全です。
京都府薬剤師会研修資料「適正な保険請求について~傾向と対策」
残薬調整の加算と薬歴の記載ポイント
残薬調整は、レセプトの「コメント例」だけ整えても不十分で、薬剤服用歴等(薬歴・調剤録)側の記録が監査の主戦場になります。九州厚生局の指摘事項では、残薬について処方医に連絡・確認した内容の要点や変更内容が薬剤服用歴等にないこと、残薬調整区分なのに処方医への連絡・確認がないことなどが不適切例として挙げられています。つまり、摘要欄が“短文”でも、薬歴側に根拠が残っていれば説明が通りやすく、逆に薬歴が薄いと摘要欄が長文でも弱い、という構造です。
九州厚生局「令和6年度 個別指導等における主な指摘事項(調剤)」
薬歴に残すべき要点を、現場で書ける形に落とします(テンプレの雛形として)。
- 🧠服薬状況:残薬が生じた理由の仮説(飲み忘れ、自己中断、頓用頻度低下、受診間隔変更など)
- 🔍残薬の確認方法:実物確認の有無、外形状態・保管状況(可能なら)
- 📞処方医連絡:連絡日時、相手(医師・看護師等)、伝えた要点(残薬数量・背景)
- ✅医師指示:日数減・回数減・数量減、次回で調整、継続の必要性確認など
- 🧑🏫患者指導:服薬アドヒアランス改善の一言(具体策:服薬カレンダー、飲み忘れ対策、頓服の使い分け等)
このうち「残薬の状況を含む服薬状況」の記載が不十分であること自体も、個別指導の不適切例として挙げられているため、残薬調整の案件では特に“服薬状況の欄”を薄くしない方が安全です。
九州厚生局「令和6年度 個別指導等における主な指摘事項(調剤)」
また、現場の落とし穴として「残薬調整に係るものの場合」と「残薬調整に係るもの以外の場合」を取り違えるミスがあります。九州厚生局資料には、残薬調整に係る区分なのに、別区分の加算を算定している不適切例が明記されており、区分選択ミスは“単純ミス”として通りにくい類です。ここは、レセプトのコメント例を整えると同時に、レセコン側の算定ルール(固定コメント、入力フロー)を点検しておくのが再発防止として効きます。
九州厚生局「令和6年度 個別指導等における主な指摘事項(調剤)」
有用な日本語の参考リンク(監査・指導の観点で、どこが見られるかの根拠)。
個別指導で実際に指摘された「残薬」「処方変更なし算定」「記録不備」などの具体例。
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/000423481.pdf
残薬調整の監査で見られるNGコメント例
残薬調整に関するレセプトのコメント例は、「何を書くか」以上に「何を書かないか」が重要です。監査・審査の目線では、“薬学的妥当性がある変更か”“算定要件を満たす変更か”が問われるため、コメントに不適切な動機が書かれていると、かえって不利になります。京都府薬剤師会の研修資料では、単純な入力・記載ミスに対する処方変更は原則認められないこと、また「患者の希望」「患者の申し出」「処方漏れ」「医師の出し忘れ」「記載漏れ」等の理由は原則認められない旨が示され、摘要欄の書き方にも注意喚起があります。
京都府薬剤師会研修資料「適正な保険請求について~傾向と対策」
そこで、残薬調整で避けたいNGコメント例(そのまま書かない方が無難な表現)を挙げます。
- ❌「患者希望により日数変更」
- ❌「医師の記載漏れのため追加」
- ❌「出し忘れのため処方追加」
- ❌「患者の申し出で増量」
これらは、事情としては現場で起こり得ますが、摘要欄に書いた瞬間に“薬学的介入”ではなく“事務補正・希望対応”に読めてしまい、研修資料の注意点に抵触しやすくなります。代替案としては、同じ事象でも「服薬状況の確認」「残薬数量の報告」「医師確認」「処方変更結果」に寄せると、論点が整理されます。例。
- ✅「服薬状況確認で残薬○日分判明、処方医確認の上、日数調整で処方変更」
- ✅「用法・用量の確認のため照会、医師回答に基づき処方変更」
また、九州厚生局の指摘事項にある通り「処方変更が行われなかった場合に算定」してしまうとアウトなので、コメント例も“変更があったこと”を必ず含む形にしておくと事故が減ります。
九州厚生局「令和6年度 個別指導等における主な指摘事項(調剤)」
意外に盲点なのが、「残薬調整で“削除”した」ケースです。中京病院の案内では、減数調剤は可能でも「削除については疑義照会が必要」と明確に書かれており、削除は運用上も説明上も一段重い扱いになりやすいことが分かります。レセプトコメント例も、削除に触れるなら、医師指示・疑義照会の経緯が薬歴に残っている前提で、簡潔に書く方が安全です。
残薬調整と服薬アドヒアランスの独自視点
ここは検索上位の「レセプト コメント例」系の記事では、あまり正面から扱われないことが多いのですが、残薬調整の本質は“請求テクニック”ではなく、服薬アドヒアランスの再設計にあります。残薬が出ている時点で、薬が「効かなかった」か「飲めなかった」か「必要がなくなった」かのいずれかが疑われ、放置すると同じ残薬が繰り返されます。研究レベルでも、残薬管理が服薬アドヒアランス改善や医療費削減につながる可能性を示唆する報告があります。例えば、節薬バッグを用いた残薬管理と継続支援が服薬アドヒアランス改善の可能性を示唆し、直接的な医療費削減だけでなく間接的な医療費削減にもつながり得ると述べています。
J-STAGE「節薬バッグを活用した残薬管理の服薬アドヒアランスに与える影響」
この視点を臨床実務へ落とすと、残薬調整の案件では「コメント例」を作る前に、患者への質問を1つ増やすだけで質が上がります。
- 🧩「残ってしまった理由は、飲み忘れ・自己調整・体調変化・受診間隔の変更のどれが近いですか?」
この質問は、薬歴の“服薬状況(残薬の状況を含む)”の記載を厚くする助けになり、個別指導で指摘される「服薬状況の記載不十分」リスクの低減にもつながります。
さらに、残薬が出やすい患者では「次回来局までの余裕日数を持たせる」運用が語られることがあり、現場では“きっちり合わせすぎると次回受診ずれで不足する”というジレンマがあります。残薬調整を単なる減数として終わらせず、患者の生活パターン(受診のずれ、内服の中断理由)まで踏み込むと、同じ薬で同じ残薬が繰り返されるのを防げます。なお、こうした運用は医療機関や地域のルールと整合が必要なので、施設の方針(備考欄での指示、情報提供の扱い)を確認してから実装するのが安全です。
論文として引用できる意外性のある補強(残薬調整を“経済効果”で語れる材料)。
残薬調整を目的とした疑義照会の特徴や経済効果に触れた報告。
http://jscp.info/journal/img/pdf66.pdf

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