テルフュージョンポンプ用チューブセットの使い方と点滴筒とクレンメ

テルフュージョンポンプ用チューブセットの使い方

この記事でわかること
🧩

基本の使い方

開封→プライミング→ポンプ装着→開始までを、手順と「やってはいけない」をセットで理解できます。

🫧

空気・フィルターの注意

フィルター付の空気抜き姿勢、点滴筒の液面、エア混入の起点を具体的に整理します。

🧪

混注・材質の落とし穴

混注口の扱い、アルコールや油性成分の影響、PVC可塑剤など「意外に知られていない」注意点を深掘りします。

テルフュージョンポンプ用チューブセットの使い方と手順

 

医療現場で「手順は知っているのに不安が残る」場面は、だいたい“クレンメの状態”と“プライミングの質”に集約されます。そこで、添付文書ベースの流れを、確認ポイント込みでまとめます。なお、品種によって構造が異なるため、併用する輸液ポンプとセットの電子添文も必ず参照してください。

✅基本フロー(代表例)

・①包装を開封し、汚染に注意して取り出す(再使用禁止・再滅菌禁止)。

・②必要なら延長チューブ、三方活栓、静脈針等を確実に接続する(接続部の緩み確認が前提)。

・③輸液剤容器がエア針を要する場合は、排出口を上にしてエア針を刺通し平圧にする(施設手順に従う)。

・④ローラークレンメを完全に閉じてから、びん針を容器へ刺通する(クレンメ閉鎖はフリーフロー予防の基本)。

・⑤点滴筒を指で押しつぶして離し、点滴筒の半分程度まで薬液をためる(泡立つ操作は避ける)。

・⑥すべてのクレンメ等を開けて針先までゆっくり満たし、再度ローラークレンメを閉じてから、ポンプのチューブ装着部へセットする。

・⑦穿刺・固定後、クレンメ等を開けてポンプを作動させる。

この「いったん針先まで満たしてから、もう一度クレンメを閉じてポンプにセットする」という一手間が、エア混入・誤作動・手技の慌てを減らします。

⚠️よくある“事故に近いミス”

・クレンメを閉じ忘れたまま、容器に刺通して点滴筒を満たそうとする(落差で一気に流れる)。

・ポンプ装着後にプライミング不足に気づき、途中から気泡を追い出そうとしてライン操作が増える。

・接続部の緩みを確認せず開始し、巡回でリークに気づく(投与量不足・汚染リスク)。

有用な一次情報(手順の根拠・点滴筒量・注意事項)。

添付文書(テルフュージョンポンプ用輸液セット)の使用方法(1〜10)、点滴量(20滴/mL・60滴/mL)、点滴筒やクレンメの注意がまとまっています。

テルモ:テルフュージョンポンプ用輸液セット 電子添文(PDF)

テルフュージョンポンプ用チューブセットの使い方と点滴筒とプライミング

点滴筒は「見やすいから」だけではなく、薬液の連続性(エアを吸い込まない)を保つための重要部位です。電子添文では、点滴筒に薬液をためる量、泡立つようなプライミング操作を避けること、プライミング後に点滴筒を傾けないことなど、エア混入に直結する注意が明記されています。

🫧点滴筒まわりの実務ポイント

・点滴筒は“半分程度”を目安にし、液面低下に注意する(空にしない)。

・プライミング後に点滴筒を横にする・傾けると、気泡が移動してラインへ入りやすくなる。

・微量点滴(例:1mL≒60滴)系では、プライミング後に点滴筒の微量点滴口部を薬液に浸漬しないよう注意がある(表面が親水化し、一滴の容積が変わり過剰投与につながる可能性が示されている)。

この「微量点滴口部の親水化」という話は、検索上位の一般解説では抜けやすいのに、現場では投与量のズレに関わる“地味に重要な落とし穴”です。

📌“意外に差が出る”小技(安全側の工夫)

・冷たい薬液は泡立ちやすいので、添文の注意どおり室温になじませてから扱う(泡=エア管理の敵)。

・プライミングは「速さ」より「泡を作らない圧と姿勢」を優先し、ゆっくり導く(特に点滴筒を強くつぶし過ぎない)。

根拠(点滴筒量、泡立ち回避、傾けない、60滴品の親水化注意など)。

テルモ:テルフュージョンポンプ用輸液セット 電子添文(PDF)

テルフュージョンポンプ用チューブセットの使い方とフィルター付と空気

フィルター付(カセット式など)のチューブセットでは、空気抜きの“姿勢”が手技の成否を左右します。PMDA掲載の添付文書では、フィルターの薬液出口方向を上にして保持し、ローラークレンメを緩めてフィルター内の空気を取り除く、先端から数滴出たら上流・下流のクレンメを両方閉じて滴下を止める、という具体手順が示されています。

🫧フィルター付の空気抜き:押さえるべき要点

・フィルターは「薬液出口方向を上」にして保持し、内部空気が抜けるまで姿勢を維持する(途中で角度が変わると空気が残りやすい)。

・プライミングで先端から薬液が出たら、フィルター上流のローラークレンメと下流のワンタッチクレンメを“両方閉じる”という指示がある(片側だけだと意図しない動きが残る)。

・輸液を一時中断する場合も、フィルター上流・下流のクレンメを両方閉じる注意があり、下流が開放だとエアベントから空気が流入しうる点が示されている。

🧪薬剤の相性:フィルターで詰まる/漏れるを知っておく

・脂肪乳剤等のエマルジョン系薬剤、血液製剤等はフィルターを通らないため、フィルター下流から投与するよう記載がある(上流投与は詰まりの原因)。

・エアベント付フィルターは、油性成分・界面活性剤・アルコール等の溶解補助剤を含む医薬品で親水化し、液漏れが起こることがあるため、透明化したら交換する注意が示されている。

この「透明化=交換サイン」は、ベッドサイドでは見落とされがちですが、リークの早期発見に直結します。

根拠(フィルター姿勢、クレンメ操作、エアベント、薬剤注意)。

PMDA:テルフュージョン ポンプ用チューブセット(フィルター付) 添付文書(PDF)

テルフュージョンポンプ用チューブセットの使い方と混注口と消毒

混注は「刺す・入れる」よりも、「破損させない・空気を入れない・残薬を残さない」が本質です。PMDA掲載の添付文書では、混注前に消毒(アルコールやポビドンヨードを含ませた酒精綿等)を行う警告があり、同時に“針を用いて混注しない”禁忌が明記されています。つまり、消毒は徹底するが、針で刺して混注する構造ではない、という前提をまず揃える必要があります。

🧼混注口:安全にやるためのチェックリスト

・混注前:混注部位は消毒(警告に該当)。

・禁忌:針を用いて混注しない(混注口破損→漏れ・空気混入・汚染の可能性)。

・接続:オスルアーテーパーのコネクターを使用する指示がある(適合しないと外れ・漏れの要因)。

・操作:横方向に過度な負荷を加えない(破損の原因)。

・空気:接続するシリンジやセット内部に空気が入っていないことを確認してから混注する(空気混入の予防)。

・残薬:混注口は流路から横に分岐した構造のため、混注した薬液が直ちに流れず内部に残る可能性があるとされ、必要に応じてフラッシングを検討する。

この「分岐構造による残薬」は、投与量の“遅れて効く”や“次の薬剤と混ざる”といった違和感の説明変数になります。単に手技の問題として片付けず、構造由来の可能性も考えるとトラブルシュートが速くなります。

根拠(消毒の警告、針混注の禁忌、残薬・フラッシング示唆等)。

PMDA:テルフュージョン ポンプ用チューブセット(フィルター付) 添付文書(PDF)

テルフュージョンポンプ用チューブセットの使い方と材質と交換(独自視点)

検索上位の「使い方」記事は手順中心になりがちですが、医療従事者が一段深く押さえるなら“材質と長時間使用の劣化”は避けて通れません。電子添文には、チューブ材質としてPVC(可塑剤:トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル))が使われること、また長時間輸液ではポンプのフィンガーが同一箇所に接触し続けるとチューブが変形し流量が不正確になる可能性があるため、一定時間内に装着位置をずらすか交換する、という注意が記載されています。

🧱材質の理解が役立つ場面

・「なぜ交換が必要?」→“汚染”だけでなく“物性変化(変形)による流量精度”が理由になり得る。

・「なぜ締め付けすぎ注意?」→コネクターが外れなくなる/破損する可能性が示されている(再接続で余計な力が入りやすい)。

・「なぜ点滴筒が白く曇る?」→素材特性に起因し、性能・安全性に問題はないと明記されている(不要な交換や報告の前に切り分けできる)。

🧪“意外に知られていない”注意点(現場で効く)

・三方活栓付品種では、脂肪乳剤、油性成分、界面活性剤、アルコール等の溶解補助剤を含む医薬品、またアルコールを含む消毒剤により、三方活栓のひび割れが起こり得る注意がある(リーク・空気混入・必要量未確保のリスク)。

・プライミング後は直ちに投与する注意があり、汚染だけでなく、強アルカリ性薬剤等で析出物が生じる可能性にも言及されている(ライン内の“見えない変化”の観点)。

このあたりは、手順の暗記より「なぜ?」を理解しているスタッフほど、トラブル時の判断が早い領域です。

根拠(材質、点滴筒の曇り、長時間使用で位置ずらし/交換、三方活栓のひび割れ注意、プライミング後すぐ投与等)。

テルモ:テルフュージョンポンプ用輸液セット 電子添文(PDF)
PMDA:テルフュージョン ポンプ用チューブセット(フィルター付) 添付文書(PDF)

テルモ TS-WR3825 テルフュージョン延長チューブ付三方活栓 可塑剤DEHPフリー 3.8mL