散剤計算 パーセント
散剤計算 パーセントの基本(%散・mg/g・倍散)
散剤の「%」は、基本的に「g/g(質量比)」で捉えると混乱が減ります。例えば0.1%散は、散剤1g中に主薬が0.001g(=1mg)入っている、つまり「1mg/g」の濃度です。
ここが腑に落ちると、mg処方・g処方・%表示・倍散表示が一気につながります。
よくある表記の変換を、最小限の暗記で回すための“核”は次の2本です。
✅ 公式A:%散 → mg/g
・x%散 = 1g中に10xmg含有(例:0.1%→1mg/g、1%→10mg/g)
✅ 公式B:倍散(1000倍散など) → %散
・N倍散 = N1(w/w)= N100%(例:1000倍散=0.1%)
「1000倍散=0.1%散」の関係は、実務上とても頻繁に出ます。実際、ジゴキシンは“1000倍散”として扱われる例が国家試験解説にも載っています(処方計算の説明で「ジゴキシンは通常1000倍散」と明記)ので、基礎として押さえておく価値があります。
参考(国家試験系の解説例):ジゴキシンは通常1000倍散という前提で、0.5mg→0.5gとして計算する流れが示されています。
有用:倍散表示の意味と計算の置き換えが短い文章で確認できる
参考)http://www.pharm.kobegakuin.ac.jp/~bunseki/83kokusi/A83225.html
次に、現場で一番事故が起きやすいのは「成分量(主薬量)」と「製剤量(散剤全量)」の取り違えです。ここは、計算の式を作る前に、処方箋・添付文書・院内採用規格で“どっちを指しているか”を声に出して確認する運用が安全です。
散剤計算 パーセントの手順(処方量→必要な製剤量)
散剤計算は、どの流派でも最終的に「必要な主薬量を、濃度で割って製剤量を出す」形になります。0.1%散(=1mg/g)なら、主薬量(mg)÷1(mg/g)=製剤量(g)です。
例1:0.1%散で、主薬0.15mg/日を14日
- 主薬量:0.15mg×14日=2.1mg
- 0.1%散は1mg/gなので、必要な製剤量:2.1mg ÷(1mg/g)=2.1g
例2:0.01%散を院内で作りたい(0.1%散から希釈)
- 0.1%→0.01%は10分の1濃度
- つまり「0.1%散:賦形剤=1:9」で混合すれば、全体は0.01%相当になる
このとき重要なのは、単に計算比が合っているだけでなく、“混和して均一になりやすい条件”を作ることです。粒度が合わない、静電気が強い、顆粒と粉末を無理に混ぜる等をやると、計算上は正しいのに分包ごとに濃度がブレます。
混合の「均一性」については、乳鉢・乳棒での散剤混合をモデル薬(ジゴキシン1000倍散)で検討し、粒度分布が同じ組み合わせの方が混合度が良好になりやすいこと、等量混合法で良好な混合度が得られることなどが示された学位論文要旨が公開されています。
参考)https://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/gazo.cgi?no=215936
この“計算以外の落とし穴”を知っておくと、「希釈散を作ったのに効き目が揺れる/検査値がぶれる」といった場面で原因候補を早く挙げられます。
散剤計算 パーセントと賦形(乳糖・0.2g・0.5gの内規)
散剤の世界は「計算」だけでは閉じず、賦形の内規が実質的に処方設計の一部になります。特に小児では、1回量が小さすぎると分包誤差や減損の影響が相対的に大きくなるため、賦形剤(乳糖など)で“扱える量”に寄せる運用が広く存在します。
例として、院内手順書(散剤の調剤)では、賦形剤は通常乳糖(粒状)を使用し、年齢により「1日量合計が0.2g未満なら0.2g添加」「6歳以上は1日量合計0.5g未満なら0.5g添加」などの基準が示されています。
さらに同資料では、顆粒剤と散剤(粉末・細粒・粉砕品)を組み合わせる場合、散剤側に賦形が必要なら賦形剤を加えた上で、顆粒剤とは混合せず“重ねまきで分包する”と明記されています。
この「混合しない」判断は、計算問題としては見落とされがちですが、偏析(粒度差で分かれる)を避けるための実務的な安全策です。
賦形を計算に落とすときのポイントは2つです。
- 賦形は“濃度(%)を下げる”操作なので、最終濃度(%散)をどう扱うかを監査者と共通化する。
- 服用回数が不均等な場合、賦形は「必要なものにのみ」行うとする運用もあり、全体一律に賦形すると逆に説明と帳尻が合わなくなることがある。
また、静電気で分包が不均一になりやすい薬剤は「必ず賦形する」といった例外規定も、同じ手順書に記載があります(例:メスチノン錠粉砕時は静電気で分包が不均一になるため必ず賦形)。
ここは意外に重要で、「%散の計算は合っているのに、分包の実測が暴れる」系のトラブルで、賦形が“単なる増量”ではなく“物性制御”として働く代表例です。
散剤計算 パーセントと分包(最大量・重ねまき・別調剤)
散剤は、混和して一包化できる処方でも、分包機の制約・1包の最大量・配合変化・別調剤指定で現実解が変わります。院内手順書の例では、分包する場合の1包最大量を9gとし、9g以下でも対応できない薬品は個別に決めるとされています。
この「上限」は、単に“入る入らない”の話ではなく、分包精度・シール不良・こぼれ(減損)などのリスクと直結します。
また、同一処方内に複数の秤量する散剤がある場合、配合変化がなければ一包化し1回1包に分包するとしつつ、別調剤指定の薬品は除くとされています。
このルールがあると、たとえば希釈散(%散を調製した散剤)を作っても、配合不可や別調剤指定により「混ぜない」「袋を分ける」「重ねまきする」といった実装が必要になります。
現場でのチェック観点(ミスを減らす“監査の言語化”)は次のとおりです。
- ✅ 「%散の%」は主薬比か、製剤量(表示量)か。
- ✅ 「mg処方」は原薬量か、製剤量か。
- ✅ 賦形の有無で濃度(%)が変化するが、説明・記録・処方入力が追随しているか。
- ✅ 顆粒+粉末は混合せず重ねまきなど、物性に沿った分包手順になっているか。
散剤計算 パーセントの独自視点(粒度分布と等量混合法で“計算を守る”)
検索上位の多くは「公式」「例題」「%⇔倍散」中心になりやすい一方で、医療安全の観点では“計算を守るために混合を設計する”という発想が効きます。つまり、計算そのものではなく、計算が意味を持つ前提条件(均一性)を作る技術です。
混合の均一性に関して、乳鉢・乳棒による散剤混合を検討した公開要旨では、粒度分布が同じ散剤同士の混合は粒度分布が異なる場合より混合度が良好になりやすいこと、等量混合法により粒度分布に関係なく良好な混合度が得られることが示されています。
参考)https://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/data/h15data-R/215936/215936a.pdf
この「等量混合法」は、超少量主薬や希釈散で特に効きます。いきなり賦形剤をドサッと入れるのではなく、主薬側とほぼ等量ずつ段階的に混ぜていくことで、局所的な濃度ムラを作りにくくする考え方です。
さらに、同要旨では混合回数60回で良好な混合状態が得られた、といった“現場の手順に落とせる数値”も記述されています。
もちろん全処方に一律適用はできませんが、「希釈散を作った」「%散に直した」という“計算の成果”を、分包単位で実現するには、粒度・混合法・混合回数・器具の使い方をセットで考える必要がある、という示唆になります。
有用:散剤の混合性(粒度分布、等量混合法、混合回数など)の根拠が要旨で読める
https://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/data/h15data-R/215936/215936a.pdf
有用:賦形量、重ねまき、顆粒+散剤の扱いなど、散剤調剤の具体的手順がまとまっている
https://www.hyo-med.ac.jp/department/phrm/naiki/naiki_sanzai.pdf