薬剤師法施行規則 省令
薬剤師法施行規則 省令の処方箋 記入事項
薬剤師法では、調剤したときに処方箋へ「調剤済みの旨(または調剤量)」「調剤年月日」等を記入し、記名押印または署名が求められ、細目は厚生労働省令に委ねられています。
この「厚生労働省令」に当たるのが薬剤師法施行規則で、処方箋に追記すべき具体事項を第15条で定めています。
第15条のポイントは、単なるスタンプ的な「調剤済」だけで終わらないことです。
省令(施行規則)第15条で求める事項は、少なくとも次の3系統に分けて理解すると現場で運用しやすくなります。
- 薬局の同定:調剤した薬局(または病院・診療所等)の名称・所在地を記入する。
- 変更調剤の履歴:医師等の同意を得て処方内容を変更して調剤した場合、その変更内容を記入する。
- 疑義照会の結果:疑わしい点を確かめた(疑義照会)場合、その回答内容を記入する。
ここが意外に見落とされがちですが、疑義照会は「実施した事実」よりも、処方箋上は「回答内容」を残す点が重要です。
監査・医療安全の観点では、後日「なぜその用法用量になったか」を説明できる状態が価値で、処方箋が最短の一次資料になります。
また、変更調剤の記載は“薬歴には書いてある”では代替しにくく、処方箋そのものに紐づく省令要件として理解しておくと事故予防になります。
参考リンク(条文の一次情報:薬剤師法施行規則の原文)
薬剤師法施行規則 省令の調剤録 記入事項
薬剤師法では、薬局開設者に調剤録の備付けを求め、薬剤師には「省令で定めるところにより、省令で定める事項を記入」する義務を課しています。
その省令が薬剤師法施行規則で、調剤録の記入事項は第16条に列挙されています。
第16条は、調剤録が単なる「調剤した薬の控え」ではなく、情報提供・指導(服薬指導等)まで含めた業務記録であることを明確にしています。
施行規則第16条の記入事項(要旨)は次のとおりで、現場では「誰に・何を・いつ・誰が・何を説明したか」が軸になります。
- 患者の氏名及び年令。
- 薬名及び分量。
- 調剤並びに情報の提供及び指導を行った年月日。
- 調剤量。
- 調剤並びに情報の提供及び指導を行った薬剤師の氏名。
- 情報の提供及び指導の内容の要点。
- 処方箋の発行年月日、交付した医師等の氏名・住所(または医療機関名・所在地)など。
- 処方内容変更や疑義照会の回答内容(第15条の2号・3号相当)も記録対象として取り込まれる。
さらに第16条には実務上重要な但書があり、「その調剤により当該処方箋が調剤済みとなつた場合」は、記入項目が一部に簡略化できる構造になっています。
この但書は“何でも省略してよい”ではなく、最低限残すべき項目(患者、日付、薬剤師名、指導要点など)を逆に強調していると読むと安全です。
また、令和2年の改正の流れの中で、服薬指導等の「記録」が制度的に重くなっているため、「指導の要点」をテンプレ文で埋める運用は監査・訴訟対応の両面で弱くなりやすい点に注意が必要です。
参考リンク(省令の条文抜粋:第15条・第16条をまとめて確認できる資料)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000267b6-att/2r985200000267lx.pdf
薬剤師法施行規則 省令の調剤録 保存と電子化
薬剤師法上、調剤済み処方箋は「調剤済みとなった日から3年間」保存、調剤録も「最終の記入の日から3年間」保存が求められます。
一方で「紙でなければならない」とは限らず、厚生労働省の解説資料では、調剤録はe-文書法および主務省令(いわゆるe-文書法厚生労働省令)により電子的な取扱いが可能だと整理されています。
電子保存する場合は、いわゆる3要件(見読性・真正性・保存性)を適切に満たす必要がある、と明確に説明されています。
実装・運用レベルに落とすと、次のような「運用の形」が監査耐性を左右します。
- 見読性:必要時に直ちに明瞭・整然と表示・出力できる(監査時に“すぐ出せる”状態)。
- 真正性:改変・消去の有無と内容が確認でき、作成責任の所在が明確(ログ、権限、監査証跡)。
- 保存性:保存期間中に復元可能(バックアップ、媒体更新、障害対応)。
また「薬局外の外部で保存」すること自体は、紙・電子いずれでも必ずしも妨げられないが、電子の場合は上記3要件や運用管理規程、個人情報・サイバーセキュリティ対策が前提になる、と資料で補足されています。
ここが意外な落とし穴で、クラウド薬歴・電子調剤録は導入しただけで法令適合が“自動的に保証”されるわけではなく、最終責任は薬局側の運用設計に残る、という読み方が現実的です。
「レセコン+電子薬歴」で調剤録に求められる保存要件を満たせるようにする、という方向性も明示されているため、二重管理をやめたい薬局ほど、要件とシステム間連携の点検が効果的です。
参考リンク(調剤録の電子化・外部保存の考え方:厚労省解説)
https://www.mhlw.go.jp/content/001279081.pdf
薬剤師法施行規則 省令の疑義照会と変更調剤
薬剤師法施行規則第15条は、処方箋に「変更調剤の内容」や「疑義照会の回答内容」を記入することを求めています。
これを“書き方のルール”としてではなく、“医療安全の再現性”として扱うと、現場の品質が上がります。
なぜなら、疑義照会のメモが薬歴側にしか残らないと、処方箋を起点にした時系列(処方→疑義→回答→調剤)の証明が分断され、第三者に説明しづらくなるためです。
実務での記載は、個人情報に配慮しつつ「後で読み返して判断が追える」粒度が必要です。
- 疑義照会:照会内容(例:用量、日数、重複)と、医師等の回答(例:この用量で可、薬剤変更、日数訂正)を端的に。
- 変更調剤:医師等の同意が前提であることを意識し、何をどう変えたか(剤形、規格、数量等)を明確に。
また、調剤録側(第16条)にも、処方内容変更や疑義照会の結果を取り込む構造があるため、「処方箋に書いたから調剤録は不要」ではなく、処方箋と調剤録で“整合している”ことが重要になります。
ここまで整合させると、トラブル時の説明が「薬剤師個人の記憶」から「省令に沿った記録」へ移り、組織としての防御力が上がります。
薬剤師法施行規則 省令と医療DXの独自視点
検索上位の解説は「第15条・第16条の要約」や「保存年限」に寄りがちですが、独自の視点としては、施行規則(省令)が“医療DX時代のデータ品質仕様書”として機能している点が重要です。
厚労省の解説では、電子調剤録の活用により紙と電子の二重管理を効率化でき、医療DX施策による医療情報を効果的に使えるようになる、という方向性が示されています。
つまり、施行規則が求める「項目」は、将来的に共有・連携される前提の“最低限のデータ項目”とも読めます。
この観点での“意外に効く”実務アクションは、次の3つです。
- 「指導の要点」を、薬効説明だけでなく、患者の理解度・リスク説明・フォローアップ方針まで含む形にする(後追いの再現性が上がる)。
- 疑義照会・変更調剤を、処方箋・調剤録・薬歴で「同じ語彙」で残す(監査・事故対応で突合しやすい)。
- 電子化は“保存”だけで終わらせず、運用管理規程・権限設計・ログ設計まで一体で整える(真正性の担保)。
特に、オンライン資格確認・電子処方箋などが普及するほど、薬局内の記録は「紙の台帳」ではなく「監査可能な情報システム上の証跡」として評価されやすくなります。
そのとき、施行規則の列挙項目を満たすだけでなく、見読性・真正性・保存性を“説明できる”体制が、薬局の信用と業務継続性を左右します。
省令対応は守りの仕事に見えて、実はデータの品質を上げて連携を強くする攻めの仕事でもあります。
