障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 改正 施行期日 就労選択支援

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 改正

改正の全体像(医療従事者向け)
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施行期日が複数

令和6年4月1日を基本に、一部は令和5年4月1日・令和5年10月1日・公布後3年以内など段階的に動きます。

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支援の軸は「地域生活」と「就労」

グループホームの支援明確化、基幹相談支援センター等、就労選択支援の創設など、地域で暮らし働く支援が中心です。

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医療は精神・難病と接点が増える

精神保健の相談対象の拡張、医療保護入院の見直し、難病医療費助成の開始時期の前倒しなどが医療側にも影響します。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 改正 施行期日 の実務影響

 

改正は「いつから何が変わるか」を外すと、現場の説明責任が崩れます。厚生労働省の改正概要では、基本の施行期日を令和6年4月1日としつつ、一部は令和5年4月1日、令和5年10月1日、さらに公布後3年以内に政令で定める日といった“段階施行”が示されています。

この段階施行は、制度設計側の都合というより「人材・体制・通知整備・システム改修」の準備期間を確保する意味合いが大きいと考えると理解しやすいです。特に就労選択支援のように新サービスを作る場合、指定基準・研修・報酬・様式が揃わないと運用が破綻します。

医療従事者が押さえるべき、段階施行の“臨床的な落とし穴”は次のとおりです。

・📅「改正が始まった」=すべて同時に変わる、ではない(患者・家族はここを誤解しやすい)

・🧾自治体の運用(支給決定・窓口説明・様式)の立ち上がりは地域差が出る

・🏥医療機関の退院支援・就労支援・福祉連携は、改正事項の施行タイミングに合わせて説明資料も更新が必要

・📞問い合わせ導線(相談支援事業所、基幹相談支援センター、ハローワーク等)の“最新版”を院内で共有しておく

意外に見落とされがちですが、施行期日が分かれている制度では「前の制度での説明」と「新制度の同意・支援計画」が同じ患者の経過に混在します。例えば退院支援や就労相談で、説明した時点では旧運用、実際の利用開始は新運用というズレが起こり得るため、記録には「説明日」「適用する制度時点」「今後の制度変更見込み」をセットで残すのが安全です。

参考:改正の施行期日と全体項目(行政資料)

https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 改正 就労選択支援 の狙い

就労選択支援は、就労を希望する障害者が「就労先・働き方」をより適切に選べるよう、就労アセスメントの手法を使って希望・能力・適性・必要配慮を整理する新しい支援として制度化されました。改正概要では、就労選択支援の創設と、ハローワークがそのアセスメント結果を参考に職業指導等を行うことが示されています。

これまでの現場感として、就労系サービスの入口でアセスメント“らしき”ものが行われても、本人の選択の質(納得・継続・自己理解)まで繋がらないケースがありました。制度として就労選択支援を独立させたのは、「入口の評価を、事業所都合ではなく本人中心に再設計する」意図が読み取れます。

医療従事者がこの制度を知って得をする場面は、実は外来・病棟の何気ない相談です。例えば、うつ病や統合失調症の回復期に「働きたいけど自信がない」「A型とB型どっちがいい?」という相談はよくあります。ここで医療側が“制度の入口”を案内できると、患者は迷走しにくくなり、就労場面での再発リスク(過負荷・ミスマッチ)を下げやすくなります。

就労選択支援の基本プロセスとしては、短期間の生産活動等を通じたアセスメント、関係機関を招集した多機関連携会議、結果の作成とフィードバック、必要に応じた連絡調整が整理されています。就労選択支援の資料では施行期日を令和7年10月1日とし、対象者や支給決定期間(原則1か月、場合により2か月)、中立性確保の考え方など、かなり具体的に書かれています。

臨床的に“意外に重要”なのは、就労選択支援が「訓練」ではなく「選択のための評価と情報提供」を主目的にしている点です。訓練を急ぐより、自己理解(強み・苦手・配慮)を先に固めた方が、結果として職場定着に寄与する場合があります。

参考:就労選択支援の制度設計(行政資料)

https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 改正 地域生活支援 の更新点

改正概要では、共同生活援助(グループホーム)について「一人暮らし等を希望する者に対する支援」や「退居後の相談等」が支援内容に含まれることを法律上明確化しています。これは単なる文言追加ではなく、グループホームを“終の住処”に固定化しないための制度メッセージでもあります。

また、市町村に対して、基幹相談支援センターと地域生活支援拠点等の整備を努力義務とすることが示されています。基幹相談支援センターは相談支援の中核機関、地域生活支援拠点等は緊急時対応や地域移行の推進を担う拠点として位置づけられています。

医療従事者の立場からは、退院後の生活が不安定な人ほど、地域の相談支援の“質”に左右されます。精神科領域では、退院後に生活課題(服薬管理、金銭、住まい、孤立)が連鎖し、受診中断や再入院に至ることがあります。地域生活支援の基盤整備が進めば、医療と福祉の間で起きがちな「誰が最初の相談を受けるのか問題」が整理されやすくなります。

あまり知られていない論点として、改正概要では「協議会で個別事例の情報共有を障害者総合支援法上明記」「協議会参加者の守秘義務」「関係機関による情報提供の努力義務」も示されています。個人情報の取り扱いに慎重な医療機関ほど連携が止まりがちですが、制度側が“共有の前提”を整える方向に動いているため、院内の情報提供プロトコル(同意取得、共有範囲、記録様式)を改めて点検する価値があります。

参考:地域生活支援(グループホーム、基幹相談支援センター、地域生活支援拠点等)

https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 改正 精神保健福祉法 の接点

今回の改正は、障害者総合支援法だけでなく精神保健福祉法の領域にも大きく触れています。改正概要では、医療保護入院に関して、家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合でも市町村長同意で可能とすること、医療保護入院の入院期間を定め一定期間ごとに要件確認を行うことなどが示されています。

さらに、本人の希望のもとで、入院者の体験や気持ちを丁寧に聴き必要な情報提供をする「入院者訪問支援事業」の創設も整理されています。加えて、精神科病院における虐待防止の取組(研修等の措置義務、虐待発見時の通報義務、公表、調査研究)も明記されています。

医療現場で実務的に効くのは、「権利擁護」が制度の中心に入ってきたことです。これまで“退院支援”は手続や地域調整に寄りがちでしたが、入院者訪問支援事業の考え方は「本人の語りを外部が聴く」「情報提供で本人の選択を補う」という構造で、倫理面の圧が強い設計です。病棟としては、説明文書や面談記録の質がそのまま監査耐性になり得るため、インフォームド・コンセントの形式を整えるだけでなく、本人が理解できたか(Teach-back)まで含めた記録が現実的な備えになります。

意外なポイントとして、地域の精神保健の相談支援を「精神障害者」だけでなく「精神保健に課題を抱える者」も対象にできるようにする方向性も示されています。つまり診断名の有無にかかわらず、ひきこもり、虐待、困窮、自殺念慮など“精神保健課題”で支援が必要な人を、地域が拾う制度的余地が広がります。医療側がこれを理解しておくと、「未治療・未受診だけど危ない」ケースを、医療化する前段階で地域につなぐ発想が取りやすくなります。

参考:精神保健福祉法の見直し(医療保護入院、入院者訪問支援事業、虐待防止)

https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 改正 データベース の独自視点

検索上位では「就労選択支援」や「グループホーム」が目立ちますが、長期的に医療の質に効いてくるのはデータベース規定です。改正概要では、障害福祉サービス等・指定難病・小児慢性特定疾病についてのデータベース(障害DB、難病DB、小慢DB)に関し、第三者提供の仕組み等の規定を整備し、療養生活の質の向上に資するためのルールを整えることが示されています。

さらに、他の公的DBとの連結解析を可能にするルール整備や、難病DBの登録対象者拡大(軽症者も登録可能)といった方向性も示されており、「研究のためのDB」から「政策と現場改善のためのDB」へ重心が移っている印象です。

ここが医療従事者にとって意外なのは、DB整備は“国の話”に見えて、現場の説明と同意の取り方に跳ね返る点です。たとえば難病医療費助成の申請や福祉サービス利用時に、どの情報がどこに登録され、何の目的で使われ、第三者提供がどう扱われるのかを、患者は気にします。説明が曖昧だと「登録したくない」「制度を使いたくない」につながり、結果として支援が遅れます。

医療の現場でできる備えは、難しいIT投資ではありません。

・🧩患者説明のテンプレに「データ登録の目的」「匿名化・第三者提供の基本」を1段落入れる

・🔐院内連携(MSW、地域連携、相談支援)で、同意書や説明書の最新版を揃える

・🧾「制度利用=データ登録が伴うことがある」点を、初回説明で先に伝える(後出しは不信につながる)

・📊個人の感覚として“監視される”不安が出やすい領域なので、言葉選びは慎重にする(「研究に役立つ」だけでなく「サービス改善にも使う」など具体化)

参考:障害DB・難病DB・小慢DBの規定整備(改正の概要)

https://www.mhlw.go.jp/content/001000995.pdf

(就労選択支援の詳細:対象者、基本プロセス、支給決定、研修要件、中立性確保など)

https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001389440.pdf

これならわかる〈スッキリ図解〉障害者総合支援法 第3版