地域包括診療加算と施設基準の2024
地域包括診療加算の2024改定と点数
地域包括診療加算は、いわゆる「複数の慢性疾患を抱える患者に対して、継続的・包括的に診療する体制」を評価する加算で、2024改定で点数が見直されています。
2024年の情報として、地域包括診療加算(1)は28点、(2)は21点と整理されており、加算1/2で要件の色合いが異なる点が実務上の分岐になります。
また2024改定の全体像として、外来医療の機能分化・強化の文脈で「地域包括診療料・加算」自体に、ケアマネ等連携、リフィル/長期処方の周知、意思決定支援、医療DX等を推進する観点が織り込まれたことが読み取れます。
地域包括診療加算の施設基準と院内掲示
施設基準の運用で最初に事故が起きやすいのは「院内掲示が“実施している事実”に一致していない」ケースで、掲示は“宣言”ではなく、実際に対応可能な体制(相談窓口、運用手順、担当者)とセットで整備する必要があります。
掲示事項としては、健康相談・予防接種に係る相談、介護支援専門員や相談支援専門員からの相談対応、長期投薬やリフィル処方箋への対応可否などが明確に示されています。
ここで意外に見落とされがちなのが「掲示しているだけでは足りず、原則ウェブサイトにも掲載する」という要件で、ホームページがない場合の例外規定の扱いも含め、施設側で説明できる形にしておくのが安全です。
地域包括診療加算の届出と経過措置
施設基準は“満たしているつもり”では通らないため、届出様式・添付書類・運用開始日を、院内の責任分界(医師、事務、看護、薬局連携)で切り分けて管理するとミスが減ります。
経過措置の考え方も重要で、例えばウェブサイト掲載など一部要件については期限付きで「満たしているものとする」期間が定められているため、「今は大丈夫」を放置すると期限到来時に算定継続が崩れます。
2024改定のスケジュール面でも、届出期間や経過措置が話題になりやすく、制度資料では届出期間(例:5月2日~6月3日)が示されているため、改定年はとくに“いつまでに何を出すか”を年次タスクとして固定化するのが実務的です。
地域包括診療加算の介護連携と意思決定支援
2024改定の特徴は、単に慢性疾患を診るだけでなく「地域包括ケアの中で、医療と介護を接続する役割」を算定要件・施設基準側に寄せてきた点です。
具体的には、ケアマネ(介護支援専門員)等からの相談への対応を掲示すること、サービス担当者会議・地域ケア会議への参加実績、またはICT等を用いた相談機会の確保が要件の方向性として示されています。
さらに「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を踏まえた、適切な意思決定支援に関する指針を定めることが要件として位置づけられており、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を“実務にする”ことが算定維持の鍵になっています。
意思決定支援の指針を“形だけ”にしないための現場実装例(入れ子にしない箇条書き)
- 外来での説明文書(療養計画・治療目標・緊急時対応)をテンプレ化し、誰が説明しても記載項目が落ちないようにする。
- 急変時連絡先(時間外連絡を含む)と、代理意思決定者の情報をカルテの固定欄に格納し、更新日を残す。
- ケアマネからの照会は「受付→医師回答→記録→返答」までの手順書を作り、記録が残る経路(FAX、電子、連携ノート等)を決める。
地域包括診療加算の独自視点:監査・返戻を防ぐ証跡設計
検索上位の記事では「要件の列挙」で終わりがちですが、実務で本当に効くのは“証跡(エビデンス)設計”です。
たとえば「掲示」「ウェブサイト掲載」「相談対応可」「連携している」は、すべて“やったことが分かる形”がないと説明が破綻し、個別指導での指摘ポイントになり得ます。
証跡設計での具体的な落とし穴と対策(箇条書き)
- 落とし穴:院内掲示の文言が、実際の運用(受付時間・担当者・連絡方法)とズレている。
対策:掲示物を「運用手順書」と同じ更新サイクルで改定し、改定日を印字して保管する。
参考)https://www.nmp.co.jp/sites/default/files/member/shinryo/2024/shisetsu/pdf/notice/3k-1.pdf
- 落とし穴:ウェブサイト掲載を“掲載したつもり”でURLや掲載箇所を誰も説明できない。
対策:URL、スクリーンショット、更新履歴(CMSの更新ログでも可)を月次で保存しておく(情報公開の事実を残す)。
- 落とし穴:ケアマネ連携が属人化し、担当者不在で「対応できる体制」と言えなくなる。
対策:ICT等も含めた相談機会の確保を“組織の仕組み”として設計し、対応記録を定型フォーマットで残す。
- 落とし穴:意思決定支援の指針が院内にあっても、説明・同意・記録の導線がなく現場が使っていない。
対策:ACP・終末期の意思決定支援に関する指針を「いつ」「誰が」「どの文書で」「カルテのどこに」残すかまで落とし込む。
加えて、慢性疾患の管理は“薬の継続”だけでなく、転倒、フレイル、栄養、口腔、認知機能の揺らぎなど、生活機能の変化を早期に拾えるかが地域包括ケアの文脈では重要になります。
2024改定の全体資料でも、生活習慣病管理、医療と介護の連携、意思決定支援などが同じ方向性の中に配置されているため、地域包括診療加算を「単独の加算」ではなく「外来設計の中核」として捉えると整合が取りやすいです。
有用:地域包括診療料(地域包括診療加算と近い要件構造)の施設基準・経過措置(ウェブサイト掲載の経過措置期限、掲示事項、連携要件)がまとまっている
https://www.nmp.co.jp/sites/default/files/member/shinryo/2024/shisetsu/pdf/notice/3-2.pdf
有用:2024診療報酬改定の全体概要(地域包括診療料・加算の見直しの狙い:ケアマネ連携、意思決定支援、リフィル/長期処方の周知、医療DXの方向性)