単純脂質とは 簡単に
単純脂質とは簡単に:エステル結合と疎水性の要点
単純脂質とは、いちばん短く言うと「脂肪酸+アルコールがエステル結合してできた脂質」です。脂質は水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい“疎水性”が基本性質で、これは分子が長い炭化水素鎖など極性の乏しい部分を持つためです。ニュートリーの解説では、脂質は化学構造で「単純脂質・複合脂質・誘導脂質」に分類でき、基本構成要素は脂肪酸である、と整理されています。単純脂質の理解は、この「脂肪酸が土台」という感覚を持てるかどうかで一気にラクになります。

患者説明で使える“簡単に”の言い換え例を挙げます(医療従事者向けに、誤解が少ない表現に寄せています)。
・「単純脂質=脂肪酸が“アルコール”にくっついた脂」
・「水と混ざりにくく、体の中では“まとめて運ぶ/ためる”方向に働きやすい脂」
・「糖やリンが“追加で付いていない”タイプ(=複合脂質の対比で理解)」
ここで注意点があります。「単純」という語感から「構造が簡単」「種類が少ない」と誤解されがちですが、九州大学の学習ガイドでは“どちらかと言うと性質が単純という捉え方が近い”と説明され、単純脂質の例として中性脂質・ステロールエステル・セラミドが紹介されています。つまり“単純”は“役割が単純”でも“重要でない”でもなく、「分類上の名前」と割り切って教える方が齟齬が減ります。
単純脂質とは簡単に:中性脂質とトリアシルグリセロール(TG)
単純脂質の代表選手は中性脂質で、臨床的には“中性脂肪(トリグリセリド/トリアシルグリセロール)”として最も遭遇頻度が高い領域です。九州大学の解説では、中性脂質はグリセロール骨格に脂肪酸がエステル結合した構造で疎水性が高く、代表が脂肪酸3本が結合したトリアシルグリセロール(TG)とされています。さらに、脂肪酸が1本ならモノアシルグリセロール、2本ならジアシルグリセロール、3本ならトリアシルグリセロールと呼び分けられ、合成・分解過程で相互に移り変わることが説明されています。
「なぜTGが“貯蔵”に向くのか」は、医療者の患者指導(生活指導・栄養指導)でよく問われます。ニュートリーの説明では、脂質は1gあたり9kcalで糖質・たんぱく質(各4kcal)よりエネルギー密度が高く、エネルギー補給源および貯蔵体として重要だとされています。つまり「少ない体積で多くのエネルギーを持てる」ため、長期備蓄に向くという直観が成り立ちます。さらに同ページでは、食事中脂質は主にトリグリセリドとして存在し、十二指腸で胆汁酸塩と乳化後、膵リパーゼで脂肪酸+(主に)モノアシルグリセロールへ分解され、ミセルとして吸収される流れが記されています。

臨床の“ひと言メモ”としては次が便利です。
・TG高値=「脂の摂取」だけでなく「糖過剰→肝で脂肪合成→TG増」という経路の結果でも起こり得る(患者は“油を減らしたのに下がらない”と感じやすい)
・TGは“運搬形態(リポタンパク)”に載って移動するため、血中値は摂食・採血条件の影響を受けやすい(指導の前に採血条件の確認が重要)
単純脂質とは簡単に:ステロールエステルとコレステロールの見方
単純脂質にはステロールエステル(代表としてコレステロールエステル)も含まれます。九州大学の解説では、ステロールエステルはステロール類(動物ならコレステロール)と脂肪酸が結合してできた疎水性脂質であり、血中ではコレステロールエステルと遊離型コレステロールが共存し、コレステロールエステルが70〜80%を占めると述べられています。健康診断の「総コレステロール」はこの2種類を足し合わせたもの、という整理も同ページに明記されています。
患者説明では「コレステロール=悪」という短絡が根強いため、医療者側で“形態”と“運搬体”を分けると誤解を減らせます。九州大学の説明でも、HDL/LDLコレステロールは「脂質とタンパク質の複合体=リポタンパク質」である点が強調されています。つまり検査項目の“LDL-C”は「LDLという粒子が運んでいるコレステロール量」であって、コレステロール分子の“人格(?)”そのものではありません。ここを押さえると、生活指導で「脂質=全部悪ではない」「必要な輸送・材料でもある」という説明につながります。
院内資料やブログ向けに、短い整理を表にしておくと使い回せます。
| 項目 | 中性脂質(TG) | ステロールエステル(コレステロールエステル) |
|---|---|---|
| 単純脂質としての位置づけ | 代表格(エネルギー貯蔵の中心) | 疎水性が高いコレステロールの貯蔵・運搬形態の一部 |
| “簡単に”一言 | 「脂肪をためる形」 | 「コレステロールに脂肪酸が付いた形」 |
| 検査値との関係 | 中性脂肪として測定されることが多い | 総コレステロールは遊離型+エステル型の合計 |
単純脂質とは簡単に:セラミドと皮膚バリア(医療の文脈)
単純脂質を“栄養”だけで語ると、臨床の現場感とズレることがあります。九州大学のページでは、単純脂質としてセラミドが紹介され、セラミドは皮膚外層でバリア脂質として働くこと、さらに細胞シグナル伝達物質(脂質メディエータ)としても働くことが説明されています。ここは、皮膚科・アレルギー領域、褥瘡・創傷ケア、経腸栄養の皮膚合併症の説明にも接続できるポイントです。
また、皮膚バリアの“脂質の中身”を医学的に補強すると説得力が上がります。日本生物工学会誌のPDFでは、角質層細胞間隙に主にセラミド・コレステロール・遊離脂肪酸からなる脂質多層構造体(脂質ラメラ)が存在し、これが皮膚バリアで重要な役割を担うと述べられています。栄養・代謝の話をしていても、実は“バリア”という臨床アウトカム(乾燥、炎症、感染リスク、刺激物侵入)に直結している、という橋渡しができます。
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9810/9810_tokushu_6.pdf
患者向けの伝え方(ブログ用に少し丁寧に)。
・🧴「セラミドは“肌のすき間を埋める脂”として、乾燥や刺激から守る働きがある」
・🧱「角質の細胞をレンガに例えるなら、脂質(セラミド等)は“目地(モルタル)”のイメージ」
・🧬「単純脂質=中性脂肪だけ、ではなく“皮膚の守り”にも関係する脂がある」
単純脂質とは簡単に:独自視点(深海魚のワックスエステルと下痢・油漏れ)
検索上位は「中性脂肪・リン脂質・コレステロール」の王道路線になりやすい一方で、医療従事者のブログでは“臨床っぽい意外性”がある話題が刺さります。九州大学の解説には、深海魚バラムツの脂がワックスエステル(ワックス)主体で「人体で消化されません」と明記され、さらに大量摂取で“お尻から脂が垂れ流し”のような症状が起こり得る旨が紹介されています。これは脂質の分類が、教科書上の暗記事項ではなく「消化できる脂/できない脂」という実害に直結する例として使えます。
医療者向けに落とし込むなら、ここは“脂質=全部同じように吸収されるわけではない”の補強材料になります。
・🐟「ワックスエステルは“脂肪酸+長鎖アルコール”の単純脂質で、TGとは消化耐性が違う」
・🚽「消化されにくい脂は、摂取量が多いと消化管症状として表面化し得る(食事歴聴取の一手がかり)」
・🧩「“単純脂質”という一つの箱の中にも、臨床的な挙動がかなり違うものが混在する」
この話題を入れる際の注意点も書いておきます(ブログ炎上回避のため)。
・疾患の診断や治療の断定に使わず、「食経験として報告される」「大量摂取で起こり得る」と幅を持たせる
・食品名の扱いは施設の方針(栄養指導・広報)に合わせ、必要なら「深海魚の一部」とぼかす
皮膚バリア(セラミド等)に関する日本語の学術的背景:https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9810/9810_tokushu_6.pdf
脂質代謝の基礎(単純脂質・消化吸収・トリグリセリド):https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-4/
単純脂質(中性脂質・ステロールエステル・セラミド)をまとめて確認:https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/fat/type1

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