調剤薬局レセプト見本と調剤報酬明細書記載要領

調剤薬局レセプト見本

この記事の読み方(医療従事者向け)
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見本→欄の意味→記載要領の順で理解

「見本」を眺めるだけでは返戻対策にならないため、明細書の欄の役割と記載ルール(通知)を対応づけて読み進めます。

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返戻・査定の原因は「摘要」と資格周りが多い

記載要領で要求される「摘要」記載や、保険者番号・公費番号などの整合が崩れると機械的に差し戻されやすいので重点的に扱います。

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電子レセプトは「コード必須化」の波に注意

電子レセプトは、摘要欄の記載事項が「コード選択」へ寄っていくため、運用とレセコン設定がズレると請求品質が落ちます。

調剤薬局レセプト見本で確認する基本項目(都道府県番号・薬局コード・受付回数)

調剤薬局の「レセプト見本」を読むときは、まず“誰の・どの月の・どの薬局の請求か”が一意に決まる欄から確認します。調剤報酬明細書(様式第5)では、調剤年月(令和○年○月分)・都道府県番号・薬局コードが基本の管理情報で、ここが崩れると内容以前に事務処理が止まりやすいです。

次に、受付回数の考え方が重要です。同一患者で同一医療機関の処方箋に係る調剤は原則「一括して1枚」に記載し、さらに同一日に受け付けた場合の受付回数の扱いなど、見本の数字がどのルールで出ているかを意識すると、月次集計や減算判定の理解が一気に楽になります。

現場で見落としがちな点として、処方箋に基づく調剤をしていない月でも算定できる薬学管理等があり、その場合「件数は1・受付回数は0として計上する」などの例外運用が通知上明示されています。見本と突き合わせると「なぜ受付回数0なのに請求があるのか」が説明でき、監査・問い合わせ対応にも強くなります。

調剤薬局レセプト見本の「処方」欄(医薬品名・用量・剤形・用法)と記載要領

見本の「処方」欄は、医薬品名を書けば終わりではなく、所定単位ごとに“何を、どれだけ、どの形で、どう使うか”を記載する設計です。通知では、内服は原則「1剤1日分」、外用・注射は「1調剤分」など単位が違うため、同じ薬でも欄の読み方が変わります。

貼付剤は特有で、用量を“枚数としての投薬全量”で書き、さらに“1日用量または投与日数”も併記する扱いが示されています。見本で貼付剤が出てきたときに、数量が「日数」ではなく「枚数/日」前提で動いていることを説明できると、入力ミス(とくに日数と枚数の混同)を潰せます。

意外に知られていないポイントとして、特定保険医療材料を支給した場合は他の処方と“別の欄”に書き、剤形を「材料」とするなど、処方欄の中でも別ルールが走ります。薬剤と材料が同じ欄で混ざると、後工程(算定・審査)で不整合が起きやすいので、見本で形式を先に身体に覚えさせるのが有効です。

調剤薬局レセプト見本の「摘要」欄とレセプト電算処理システム用コード

「摘要」欄は、返戻・査定を避けるうえで最重要の一つです。通知では、名称・回数・点数以外に摘要へ書く事項が別表で整理され、電子レセプトでは“レセプト電算処理システム用コード”を選択する運用が前提として示されています。

実務で効くコツは、加算を算定した“根拠(要点)”が摘要から読み取れる状態にすることです。たとえば重複投薬・相互作用等防止加算では「処方医に連絡・確認を行った内容の要点」を記載することが求められており、ただ「確認した」では弱く、何をどう確認したかが説明できる粒度が必要になります。

独自視点として、電子レセプトの「コード選択」は“記載漏れを減らす”一方で、“選択肢を誤ると誤請求が機械的に成立してしまう”側面があります。紙の時代は自由記載で違和感に気づけたのに、コードだと見た目が整ってしまうため、薬局内で「加算ごとの必須コード/必須文言」チェックリストを作って二重化すると事故が減ります。

調剤薬局レセプト見本で押さえる公費併用(公費負担者番号①②・公費分点数)

公費併用は、見本を見ても“どこをどう埋めるか”が直感的に分かりにくい領域です。通知では公費負担者番号①②の記載順(先順位→①、後順位→②)や、受給者番号の桁数、同種公費で月途中に番号変更があった場合の取り扱いまで具体的に示されています。

また「公費分点数」欄は、原則として併用する公費に係る点数を書くものの、医療保険分と同じなら省略できるなど、条件付きの省略規定があります。ここを理解していないと「省略してよいのに毎回手で入れてしまう」か、逆に「書くべきケースで省略して返戻」になりがちなので、見本で“省略されている理由”を説明できる状態を目指すと安定します。

さらに、医療保険と併用される公費で“医療保険単独の処方の場合は公費分点数に0を記載”など、直感と逆の動きをするルールがあります。見本を参照する際は「公費がある=常に点数が載る」ではない点を、受付→算定→請求の流れで確認すると混乱が減ります。

調剤薬局レセプト見本から逆算する返戻対策(同一日受付・分割調剤・リフィル)

返戻対策は、ミスの“場所”ではなく“発生条件”で覚えると再現性が出ます。通知には、同一日受付の扱い(受付回数の考え方)や、分割調剤で数量欄に特定の記号(例:長期投薬に係る分割調剤など)を付すこと、さらにリフィル処方箋では「時間外等加算」欄に回数関係(例:「リ1/2」)を記載することが明確に示されています。

現場でありがちな事故は、分割調剤やリフィルの“回数情報”がレセコン設定やオペレーションと噛み合わず、見た目は整っているのに審査側が読めない形になることです。見本を社内教育で使う場合、単に完成形を配るのではなく「この欄にこの回数が入るのは、どの通知条文のどの条件の結果か」を口頭で説明できるようにすると、属人化が減っていきます。

意外な落とし穴として、処方箋の使用期間が次月にまたがる場合でも「調剤実行為を行った月の調剤分として請求」など、月跨ぎのルールがあるため、月末月初は入力・締め処理の設計が品質に直結します。締め日に追われると“処方月”でまとめたくなりますが、あくまで“調剤をした月”が基本だと見本で再確認すると事故を防げます。

有用(記載要領の根拠):厚労省通知の「調剤報酬請求書及び調剤報酬明細書に関する事項(様式第4・第5)」の記載要領がまとまっています。

https://www.nichiyaku.or.jp/files/co/pharmacy-info/2024/07.pdf