真菌構造と菌糸と分生子の形態

真菌構造と形態

真菌構造を臨床で使える知識へ
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形態(菌糸・分生子)が同定の核

糸状菌の同定は形態観察が中心で、特に有性胞子・分生子の形成様式が決め手になりやすい。

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細胞壁(キチン/βグルカン)が“真菌らしさ”

真菌細胞壁はキチンとβ-1,3-グルカンなどの多糖が骨格を作り、薬剤標的や免疫反応とも直結する。

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バイオフィルムは構造の集合体

Candida では酵母形・仮性菌糸・菌糸と菌体外物質が絡み合う構造が、治療抵抗性の背景になる。

真菌構造の菌糸と隔壁の見分け

 

真菌構造を形態から押さえるとき、まず重要なのが「菌糸(hypha)」という円筒状の細胞が伸長・分岐して増える、という基本像です。糸状菌はこの菌糸が集まって菌糸体を作り、そこから無性胞子産生器官が形成されるため、臨床検体でも「菌糸らしさ」を掴めるかが第一関門になります。

菌糸には大きく「無隔菌糸」と「有隔菌糸」があり、有隔菌糸では隔壁(septum)が存在します。隔壁には孔があるタイプもあり、細胞内の連続性が完全に断たれていない点が“真核生物としての真菌の作り”を感じさせるポイントです。

参考)https://www.ri.jihs.go.jp/department/hep/04/pdf/shinkin.pdf

医療従事者が実務で困るのは、標本上で「菌糸に見えるけれど違う」像が混ざることです。講習会テキストでも、菌糸のかわりに分節分生子(胞子)の連鎖や、部位によっては菌塊のみが見えることがあり、見誤りやすいと注意喚起されています。

参考)http://www.kanazawa-med.ac.jp/~dermat/file/course2019.pdf

ここで役立つ観察のコツは、「幅が比較的一定か」「分岐の仕方に規則性があるか」「隔壁らしい横線が追えるか」をセットで見ることです。単独所見に頼らず、菌糸・分生子・菌糸体(集塊)の“構造の連続性”を追うと、真菌構造の解像度が上がります。

参考)https://www.med.kindai.ac.jp/patho/doc/fungus.pdf

真菌構造の分生子と分生子柄の形成様式

真菌構造の理解で、同定や教育に直結するのが「分生子(conidium)」と、その形成様式です。形態同定では、有性胞子だけでなく分生子の形成様式・形態が決め手になりやすいとされ、観察する“場所”と“形”が重要になります。

分生子は、菌糸から直接生じる場合もあれば、菌糸から発達した分生子柄(conidiophore)や、分生子柄上の分生子形成細胞から生じる場合もあります。さらに、菌糸自体が変化して分断し、胞子として機能するタイプもあり、同じ「胞子」に見えても背景の真菌構造が異なります。

参考)https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM0908_01.pdf

臨床・衛生分野の解説でも、分生子柄の先端が膨大化して頂嚢となり、そこから分生子が連鎖するなど、典型像が整理されています。こうした“分生子柄—先端構造—分生子配列”のセットは、顕微鏡所見の言語化(記録・申し送り)にも役立ちます。

参考)診療案内|Yamazaki Dental Clinic

また、分類学的な観点では、分生子が次々に出芽して連鎖する例や、形成細胞上に小突起が生じる形成など、形成パターンの違いが鑑別の要素になり得ます。現場では細かい分類名よりも、まず「分生子がどこからどう生えるか」を安定して読めることが、真菌構造を“使える知識”に変える近道です。

真菌構造の細胞壁とキチンとβ-1,3-グルカン

真菌構造の“設計図”として最重要なのが細胞壁です。真菌の細胞壁は、キチン(N-アセチル-D-グルコサミン)とβ-1,3-グルカン(D-グルコース)などの多糖が主要成分で、これらが共有結合し三次元構造を作ることが示されています。

研究系の和文資料でも、真菌細胞壁では分岐したβ-1,3-グルカンとキチンが足場構造を形成する、という整理があり、細胞壁が単なる“殻”ではなく力学的骨格であることが分かります。

参考)https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/2003300/files/21HB101A_ronbun.pdf

ここで医療的に重要なのは、細胞壁が「真菌に特有な構造」であり、治療標的や免疫学的検出と結びつく点です。たとえばβ-グルカンは真菌の細胞壁多糖として位置づけられ、真菌の構造理解が診断・治療戦略の土台になることを再確認できます。

参考)AgriKnowledgeシステム

意外と見落とされがちなのは、同じキチンでも“場所によって性質が違う”ことです。糸状性真菌の伸長成長では菌糸先端でキチン繊維が連続的に合成され、先端から離れると部分的に結晶化して成熟した細胞壁を構築する、という説明があり、真菌構造は静的ではなく「成長に伴って硬さ・反応性が変わる」可能性を示唆します。

参考)キチン分解酵素の構造と抗真菌活性

この視点を臨床へ引き寄せると、同じ菌種でも「菌糸のどの部位が優勢か」「成熟壁が多いのか、成長先端が多いのか」で、薬剤到達や免疫からの見え方が変わるかもしれません。すべてが臨床で即断できるわけではないものの、真菌構造を“動的構造”として捉えると、所見の解釈が一段深くなります。

真菌構造のバイオフィルムと菌糸形成

真菌構造が治療抵抗性と結びつく代表例が、Candida などのバイオフィルムです。真菌バイオフィルムでは、菌の増殖・接着因子・細胞外基質産生が関与し、さらに菌糸形成が重要である点が真菌(特にC. albicans)の特徴だと整理されています。

また、Candida albicans のバイオフィルムは、酵母形細胞・仮性菌糸・菌糸・菌体外物質が複雑に絡み合った細胞集団だと記載されており、“形態の混在”そのものが構造的強度の背景になり得ます。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsb/64/2/64_2_331/_pdf/-char/ja

口腔領域のレビューでは、表面に接している場合に菌糸を伸ばす現象(シグモトロピズム/コンタクトセンシング)に触れつつ、バイオフィルム形成で菌糸形成能が重要であることが述べられています。つまり、真菌構造は顕微鏡の形だけでなく、「接触・表面・足場」といった環境条件で変化する、という臨床的に扱いやすい理解に落とし込めます。

参考)https://www.jsmm.org/common/jjmm46-4_233.pdf

独自視点として押さえておきたいのは、「バイオフィルム=薬剤が効きにくい塊」という単純化の前に、真菌構造が“多形性+細胞外物質+表面応答”の三点セットで成立している点です。検体採取部位(デバイス表面、粘膜表面、痂皮様付着物など)と形態(酵母優位か菌糸優位か)をセットで記録すると、チーム内の臨床推論が噛み合いやすくなります。

(参考リンク:病原真菌の形態(菌糸・分生子)を医療者向けに図示しており、教育資料として使いやすい)

主要病原真菌の姿(住友ファーマ 医療関係者向け)

(参考リンク:深在性真菌症での病理像として、酵母・菌糸・無性胞子産生器官など形態分類の要点を確認できる)

深在性真菌症の病理(近畿大学)

(参考リンク:糸状菌の同定で分生子形成様式が鍵になること、具体用語(分生子柄など)の整理に役立つ)

真菌の分類と同定(栄研化学 PDF)

(論文リンク:Candida のバイオフィルム構造(酵母形・菌糸・菌体外物質の絡み合い)を和文で確認できる)

Candida albicansのバイオフィルム形成に関する和文論文(J-STAGE PDF)

耳の解剖学モデル、犬の耳の医療モデルの構造 – 真菌、寄生虫、教育者や学生を参照してください。