咳止め処方薬一覧
咳止め処方薬一覧:デキストロメトルファンの効能・効果と用法
デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は、非麻薬性の中枢性鎮咳薬として、感冒や急性/慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)などに伴う咳嗽が添付文書上の効能・効果に挙げられています。
また、気管支造影術および気管支鏡検査時の咳嗽にも適応が明記されており、「検査前の咳対策」という文脈で処方の意図が伝えやすい薬剤です。
用法・用量は製剤により差はあるものの、例として「通常成人1回15~30mgを1日1~4回経口投与」といった記載が確認できます。
臨床的なコツとしては、「乾いた咳が続いて眠れない」「咳反射が強くて会話や食事がしづらい」など、症状緩和のゴールが明確なケースで位置づけると適正使用になりやすいです。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=62509
一方で、咳は気道防御反射でもあるため、湿性咳嗽で喀痰排出が主課題の患者に“咳だけを一律に止める”設計は、かえって治療の納得感を下げることがあります(鎮咳単剤で押し切らない発想が重要です)。
参考)https://med.nipro.co.jp/servlet/servlet.FileDownload?file=00PJ20000024NibMAE
参考(効能・用量の根拠/添付文書本文)。
デキストロメトルファン臭化水素酸塩錠15mg「NP」 添付文書(効能・効果/用法・用量)
咳止め処方薬一覧:チペピジン(アスベリン)の作用機序と去痰の位置づけ
チペピジンヒベンズ酸塩(アスベリン)は、延髄の咳中枢を抑制して咳の感受性を低下させることで鎮咳作用を示すとともに、気管支腺分泌や気道粘膜線毛上皮運動を亢進することによる去痰作用も示す、と説明されています。
つまり「咳止め」としての顔だけでなく、「痰を出しやすくする」方向にも働く点が、乾性・湿性の境界にいる患者で使いやすい理由になります。
この“鎮咳+去痰”の二面性は、患者説明でも「止めるだけじゃなく、出しやすくもする」という納得感につながりやすいポイントです。
用量の例として、KEGGの医療用医薬品情報では「通常成人1日60〜120mgを3回に分割経口投与」等の記載が確認できます。
参考)医療用医薬品 : アスベリン (アスベリン錠10 他)
副作用として眠気や眩暈などが頻度として挙がるため、運転・危険作業の確認は実務上の事故予防に直結します。
また「痰が絡む咳」では、去痰薬(粘液調整薬)単独より、気道炎症のコントロール(喘息・副鼻腔炎・逆流など)の評価が先に必要な場面も多いので、薬剤選択を“咳の原因診断”とセットで運用するのが安全です。
参考)アスベリン錠20の効能・副作用|ケアネット医療用医薬品検索
参考(作用機序・副作用の根拠)。
咳止め処方薬一覧:クロペラスチン(フスタゾール)の適応と使いどころ
クロペラスチン(例:フスタゾール)は鎮咳薬に分類され、添付文書PDFでは「感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、肺癌」に伴う咳嗽が効能・効果として示されています。
また、用法・用量として「通常成人1日30~60mgを3回に分割経口投与」といった記載が確認でき、処方設計のベースラインになります。
呼吸器外来では、咳の背景が幅広い患者が来るため、適応疾患を頭の中で“診断の棚卸し”に使うと、処方が「とりあえず」になりにくいです。
「肺癌や肺結核」といった疾患名が適応に含まれている点は、逆に言えば“咳が長い・体重減少・血痰・夜間発汗”などの赤旗症状がある患者で、安易な鎮咳の継続より精査導線が重要であることを思い出すフックにもなります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00057245.pdf
さらに、鎮咳薬全般で眠気が問題になり得るため、夜間の咳で困っている人には服用タイミングの工夫(夕食後〜就寝前など)がQOLに効くことがありますが、日中のパフォーマンス低下とのトレードオフを必ず共有します。
参考)医療用医薬品 : フスタゾール (フスタゾール散10%)
薬剤名の知名度が高くない施設でも、一般名(クロペラスチン)で整理しておくと、後発品・規格違いに引っ張られずに運用できます。
参考(適応・用量の根拠/添付文書本文)。
咳止め処方薬一覧:コデインの位置づけ、12歳未満禁忌と呼吸抑制
コデインリン酸塩(コデイン類)はオピオイド系の鎮咳成分で、添付文書・安全対策資料では「重篤な呼吸抑制があらわれるおそれがあるので、12歳未満の小児には投与しないこと(禁忌)」が明確に示されています。
加えて、同資料では18歳未満の一部条件下でリスクが増加する可能性にも触れられており、小児・若年者では“使わない前提で代替を選ぶ”姿勢が安全側です。
この禁忌は「昔は出していた」経験則と衝突しやすい領域なので、薬歴・監査・疑義照会の観点でも、最新の安全性情報をチームで共有しておく価値があります。
意外と見落とされがちなのが、コデインは「咳止めのゴールドスタンダード」というイメージが残りやすい一方で、近年のプラセボ対照研究のレビューでは、上気道疾患やCOPDの咳でプラセボと同等だった可能性が指摘され、効果が一枚岩ではない点です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2921574/
この“効くかもしれないが、効かないかもしれない”不確実性に、呼吸抑制や依存などのリスクが乗るため、特に原因が未評価の咳では「診断→原因治療→必要最小限の対症」という順番を守るほど事故が減ります。
どうしても使用を検討する場面でも、呼吸状態、併用薬、既往(喘息、COPD増悪、睡眠時無呼吸疑い等)を丁寧に拾い、短期・少量・フォロー計画込みで設計するのが現実的です。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000230395.pdf
参考(日本の安全対策の根拠/禁忌の背景)。
PMDA 資料:コデインリン酸塩等の12歳未満の小児への投与に関する安全対策(禁忌・呼吸抑制)
咳止め処方薬一覧:独自視点「咳嗽=症状」から「咳反射の過敏」へ(効かないときの再設計)
鎮咳薬が効かないとき、単に「薬を強くする」よりも、「咳反射が過敏になっている背景」を探すほうが、結果的に処方の合理性が上がります。
たとえば、感染が落ち着いた後に咳だけが残るケースでは、患者は“まだ風邪が治っていない”と捉えがちですが、実際には咳反射の過敏が惰性で続いていることがあり、薬効を上げるより説明と生活指導(刺激回避、就寝環境、声帯負荷の低減)が効くことがあります。
この視点は検索上位の「薬の一覧」だけでは抜けやすい一方で、医療現場では「なぜ効かないのか」を納得させるコミュニケーション材料になり、過剰処方の抑制に役立ちます。
また、オピオイド鎮咳に関しては“効く前提”で組み立てると危険で、効果に疑義があるという文献の存在を知っているだけで、処方の優先度づけが変わります。
患者側の期待値を「咳をゼロにする」から「眠れる程度に抑える」「食事・会話を成立させる」へ調整すると、必要な鎮咳薬の強度が下がり、結果として副作用リスクも下がります。
医療従事者向けの記事としては、薬剤名の羅列よりも、こうした“効かない時の設計図”を提示するほうが、現場の再現性が高いはずです。