連携強化加算届出
連携強化加算届出の施設基準の全体像
連携強化加算届出は、災害・新興感染症等の非常時に「薬局として供給・連携・継続対応できる」体制を、届出様式のチェック項目として可視化する仕組みです。
具体的には、協定指定(第二種協定指定医療機関の指定)、感染症対応(研修・訓練、個人防護具備蓄、衛生材料や検査キット等の提供体制)、災害対応(研修・訓練、避難所等への協力体制、夜間休日の調剤・在宅対応の連携体制)、手順書の整備と職員共有、周知、オンライン服薬指導、サイバーセキュリティ、OTC・検査キットの販売などが列挙されています。
「書類を作ること」自体より、平時からの運用(訓練・備蓄・地域連携)を前提にしている点が重要で、現場では“体制の実装度”がそのまま届出の通りやすさに直結します。
また、届出手続きの一般論として、届出書は所在地の地方厚生(支)局長へ提出し、要件審査が行われ、補正が必要な場合は補正を求められる運用が示されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001293315.pdf
このため、施設基準のチェック欄を埋める作業と同じくらい、「根拠資料をすぐ出せる」状態(議事録、訓練記録、備蓄一覧、手順書、周知の証跡など)を作ることが、監査対応や再届出局面で効いてきます。
連携強化加算届出の必要書類と様式とチェック項目
連携強化加算届出で中心になるのは、「連携強化加算(調剤基本料)の施設基準に係る届出書添付書類」です。
この様式は、要件を文章で長々と書くというより、該当する項目にチェックを入れて「満たしている」ことを表明する設計で、項目は大きく12(特別調剤基本料Aの薬局のみ対象項目を含む)で構成されています。
チェック項目の例として、感染症に関する研修・訓練の実施、個人防護具の備蓄、要指導医薬品・一般用医薬品・検査キットや衛生材料の提供体制、災害時の避難所等への協力、夜間休日の開局時間外の調剤・在宅対応の連携、手順書作成と共有、周知(行政機関・薬剤師会等を通じた周知)、オンライン服薬指導の通信環境と研修、医療情報システム安全管理やチェックリスト活用によるセキュリティ体制、OTC・検査キット販売などが明記されています。
あまり知られていない“実務上の差”として、様式にチェックを入れるだけなら短時間でも、実地では「チェックに耐える証跡」が不足している薬局が少なくありません。
参考)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/r6-t87-3-4.pdf
例えば研修・訓練は「実施した」だけでなく、日時・参加者・内容・講師・訓練シナリオ・結果(課題と改善)まで残すと、後日の説明負荷が大幅に下がります。
備蓄は数量の多寡よりも、リスト化(使用期限・保管場所・担当者・補充トリガー)と、非常時に“誰が開けて、どう配布し、どう記録するか”が手順書に落ちているかがポイントになります。
連携強化加算届出の周知と手順書と研修の運用
連携強化加算届出の様式では、災害や新興感染症発生時等における薬局の体制・対応について、状況に応じた手順書等を作成し、職員に共有していることが求められています。
ここでいう「手順書」は、単なる理念の掲示では足りず、少なくとも“発動条件・連絡網・判断権限・業務の優先順位・供給手段・記録方法・代替手段(停電/通信障害時)”が一連で読める形にしておくと、訓練での改善にもつながります。
さらに、周知については「自局及びグループによる周知」に加え、地域での周知の方法として、行政機関や薬剤師会等を通じた周知をチェックする欄が用意されており、“どこで周知するか”まで問われています。
意外に軽視されがちな論点は、周知の対象が「患者」だけではない点です。
地域の行政機関や薬剤師会等のルートで周知する設計になっている以上、災害時の要請や配布調整に関わるステークホルダー(自治体、防災担当、医師会・歯科医師会、近隣薬局、在宅支援事業者等)にも“この薬局は何ができるか”が伝わる形が望まれます。
周知の証跡としては、Web掲載のスクリーンショットだけでなく、掲載依頼メール、会議資料、薬剤師会の掲載ページURLなど、第三者経由の痕跡を残すと説明しやすくなります。
参考リンク(届出様式のチェック項目=施設基準の原文):連携強化加算(調剤基本料)の施設基準に係る届出書添付書類(PDF)
連携強化加算届出のオンライン服薬指導とセキュリティ
連携強化加算届出では、オンライン服薬指導について「実施要領に基づき、通信環境の確保及び研修の実施」がされていることがチェック項目として明記されています。
オンライン服薬指導の体制整備は、単にツールを導入する話ではなく、非常時(感染拡大期・外出困難・隔離)に“服薬支援の導線を止めない”ための冗長性として位置づけると、職員教育の納得感が上がります。
研修の中身は、操作手順だけでなく、本人確認、同意取得、通信トラブル時の代替フロー、記録の残し方まで含めておくと、訓練として成立しやすくなります。
また、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインやチェックリストの活用等によって、サイバー攻撃対策を含むセキュリティ全般に適切に対応する体制を有していることも、要件として明記されています。
“セキュリティ体制”は抽象的に聞こえますが、現実には、端末管理(OS更新・EDR/AV・持ち出し制限)、権限設計、バックアップ、インシデント時の連絡経路、委託先(ベンダー)との責任分界を、手順書に落とすのが早道です。
特に薬局は、電子処方箋、オンライン資格確認、在宅連携、クラウド型薬歴など外部接続点が増えやすく、非常時に狙われると業務停止が供給途絶に直結するため、「災害対策」と「サイバー対策」を同じBCP文脈で束ねると運用が回りやすくなります。
連携強化加算届出の独自視点:地域連携を“契約”で固める
検索上位では「要件の説明」や「様式の書き方」が中心になりがちですが、実務で差が付くのは、夜間・休日等の開局時間外でも調剤や在宅業務に対応できる“連携”を、口約束ではなく、文書の粒度で固めているかです。
様式では、地方公共団体や地域の薬剤師会等と協議の上で、近隣薬局と連携して時間外対応できる体制があることが要件として示されています。
ここを強くするために、薬局間で「非常時の応援(人員派遣、在庫融通、分包機の代替、当番薬局の引き継ぎ)」「連絡手段(電話不通時の代替)」「記録(誰がいつ何を融通したか)」まで書面化し、年1回は机上訓練でレビューする運用にすると、届出だけでなく実際の災害時に機能しやすくなります。
さらに意外な盲点として、非常時に“供給できる”と言いながら、平時の棚卸・期限管理・発注権限が属人的だと、応援者が来ても動けません。
そこで、連携の文書化とセットで、在庫の見える化(最低在庫の定義、欠品時の代替提案テンプレ、在宅患者の優先度分類)まで整備すると、連携強化加算届出を「点数のための手続き」から「地域の供給インフラ整備」に引き上げられます。
この“契約・手順・訓練”の3点セットは、監査・指導の局面でも説明が通りやすく、補正対応の時間も短縮しやすい実装です。
参考リンク(届出受理・要件審査・補正など手続きの基本):特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第6号:令和6年3月5日)