在宅移行初期管理料の算定要件と服薬支援調整

在宅移行初期管理料の算定要件

在宅移行初期管理料の算定要件:最短で押さえる全体像
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算定の位置づけ(何を評価?)

「計画的な訪問薬剤管理指導を開始する前」に、在宅移行に必要な薬学的管理・服薬支援を先回りして実施したことを評価する管理料です(230点・月1回のみが基本)。

要件の核(対象×実施×文書)

対象患者の要件に合致し、残薬整理・服薬管理方法の調整・ポリファーマシー観点の調整提案・多職種共有を実施し、医師・ケアマネ等へ文書で情報提供することが柱です。

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つまずきやすい落とし穴

「別の日に患家訪問」や「初回算定月に1回のみ」などタイミング要件のミス、単一建物要件の誤認、文書提供の不足が算定否認につながりやすいポイントです。

在宅移行初期管理料の算定要件:算定点数と算定タイミング

在宅移行初期管理料は、在宅療養へ移行する患者に対して、計画的な訪問薬剤管理指導の前段階で必要な服薬支援等を行ったことを評価する新設項目で、230点(1回に限り)です。

算定できる回数は「在宅患者訪問薬剤管理指導料」「居宅療養管理指導費」「介護予防居宅療養管理指導費」を算定した“初回算定日の属する月”に「1回に限り」です。

さらに重要なのが、計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前に、しかも“別の日に”患家を訪問して所定の業務(情報収集、残薬整理、調整、多職種共有など)を実施した場合に算定する、という時間軸の要件です。

実務では、退院当日〜数日以内に「初回訪問薬剤管理指導を行う日」と「在宅移行初期管理として事前訪問する日」が同日になりやすいため、訪問日を分ける運用設計(例:退院翌日に事前訪問、翌週に計画訪問開始)をあらかじめチームで決めておくと事故が減ります。

参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001479591.pdf

また、レセプトの整合性を担保するため、薬歴・報告書の“日付”と“実施内容”が、算定要件(別日訪問・初回算定月1回)に一致していることをチェックリスト化すると管理が安定します。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/6255

在宅移行初期管理料の算定要件:対象患者(認知症・精神障害・末期がん等)

対象患者は、(1)一定の状態・疾患に該当し、かつ(2)在宅訪問薬剤管理指導料等に係る医師の指示がある患者のうち、薬学的管理の観点から薬剤師が“特に重点的な服薬支援が必要”と判断した患者です。

状態・疾患の例として、認知症、精神障害など自己による服薬管理が困難な患者、18歳未満の障害児、6歳未満の乳幼児、末期のがん患者、注射による麻薬投与が必要な患者が挙げられています。

そしてもう一方の要件として、在宅患者訪問薬剤管理指導料・居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費(いずれも単一建物診療患者が1人の場合に限る)に係る医師の指示があることが明示されています。

ここで実務的に見落とされやすいのが、「疾患名」だけで対象を決めるのではなく、“服薬管理困難さ”や“環境(居住・介護力)”まで含めて薬学的に重点介入が必要かを説明できる記録にする点です。

例えば認知症でも服薬が安定しているケースと、退院で薬剤数が増え家族の支援も薄いケースでは、同じ疾患でも必要な介入の厚みが違うため、情報収集結果(服薬状況、居住環境、家族関係等)を要件に沿って整理しておくと説明力が上がります。

在宅移行初期管理料の算定要件:実施事項(残薬整理・服薬管理方法・ポリファーマシー)

算定に必要な業務として、患者・家族等から服薬状況、居住環境、家族関係など薬学的管理に必要な情報を収集することが求められます。

患家で残薬を確認し整理したうえで、服薬管理方法の検討・調整を行うことも明記されており、単なる持参薬確認より踏み込んだ「生活の中で回る仕組み作り」が中心になります。

さらに、日常の服薬管理が適切に行えるよう、ポリファーマシー対応や服用回数を減らす観点も踏まえ、必要に応じて医師等と使用薬剤の内容を調整することが挙げられています。

「ポリファーマシー対応」を“減薬”だけに狭く捉えると、実臨床とズレが出ます。

実際は、①重複・相互作用の棚卸し、②剤形・用法の生活適合(嚥下、手指巧緻性、認知機能)、③服用タイミングの集約(回数減の提案)、④残薬が生まれる行動要因(飲み忘れ、自己調整、受診頻度)の分析、まで一連で設計すると、在宅移行後の中断・誤用を減らせます。

意外に効く工夫として、服薬カレンダー等の導入可否は“家の動線”と“家族の声かけ負担”で決まることが多いので、台所・寝室・洗面所など、本人が日常的に必ず立ち寄る場所を確認して設置位置を決めると定着率が上がります。

(関連のエデンス例)服薬支援や服薬アドヒアランスは、認知機能や支援者の関与、薬剤レジメンの複雑さなど複数因子に左右されるため、退院直後の早期介入で環境調整を行う意義が示唆されています。

Adherence to medication(概説:服薬アドヒアランスに影響する要因)

在宅移行初期管理料の算定要件:多職種連携と文書情報提供(医師・介護支援専門員)

在宅移行初期管理料では、在宅療養に必要な情報を、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関等の多職種と共有することが業務として求められています。

加えて、在宅療養を担う医師および居宅介護支援事業者の介護支援専門員など関係職種に対して、必要な情報提供を“文書で”行うことが算定要件として明記されています。

退院直後の患者では、入院医療機関と連携し、入院中の処方内容や退院時指導の内容などの情報提供文書を活用した服薬支援が望ましいとも示されています。

文書情報提供は、「薬局内の記録」ではなく「相手方に渡る(共有される)文書」である点が監査上の肝です。

実務で最低限入れておくと伝達事故が減る項目は、次のとおりです(どれも在宅移行の初期に効きます)。

  • 📌 現在の処方一覧(退院処方・持参薬・他院処方・OTC/サプリ含む)
  • 📌 残薬の実数と発生理由の推定(飲み忘れ、自己中断、頓用過多など)
  • 📌 服薬管理上の課題(認知、嚥下、視力、手指、介護力、保管場所)
  • 📌 実施した調整(仕分け方法、一包化、カレンダー、投与時刻の変更案)
  • 📌 医師への提案(回数削減、剤形変更、重複整理、頓用ルール明確化)
  • 📌 緊急時の連絡方針(誰に何を伝えるか:家族・訪看・ケアマネ等)

権威性のある日本語の参考リンク(算定要件の一次情報:点数・要件の条文レベル)

厚生労働省(令和6年度診療報酬改定資料:在宅移行初期管理料の算定要件の概要)

在宅移行初期管理料の算定要件:独自視点の“算定否認”予防(入院→退院の落とし穴)

疑義解釈では、すでに訪問薬剤管理指導を実施して在宅療養を行っていた患者が入院し、退院後に再び在宅療養を継続する場合、在宅移行初期管理料は算定不可とされています。

理由として、この管理料は「在宅での療養に移行する予定の患者に対して、計画的な訪問薬剤管理指導を実施する前の段階」における評価であり、入院前に訪問薬剤管理指導を実施していた場合など、すでに在宅療養の環境が整っている患者は対象外、という整理です。

つまり“退院”というイベントがあっても、入院前から在宅が回っていたケースは「移行初期」ではない、と判断される点が落とし穴になります。

ここは現場感として誤解が起きやすく、「退院直後で薬が変わった=初期」と見なしやすいのですが、制度上は“在宅開始前の準備を評価”であって“在宅再開の立て直し”は別物です。

参考)【調剤報酬改定_疑義解釈】在宅移行初期管理料、在宅での療養者…

算定否認を避けるためには、初回面談時に「入院前に訪問薬剤管理指導(または居宅療養管理指導)を実施していたか」を確認し、該当する場合は本管理料ではなく、通常の在宅訪問の枠組みで問題点(残薬・副作用・レジメン変更)に対応する整理が安全です。

また、対象が施設入居者に広がるケースでも“単一建物診療患者が1人の場合に限る”といった縛りが絡むため、患者の居住形態(自宅/施設)と算定区分の整合性を、初回算定月の前に必ずすり合わせる運用が重要です。