重複投薬相互作用等防止加算 用量変更
重複投薬相互作用等防止加算の算定要件と用量変更
重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤服用歴等や患者・家族から得た情報に基づき、処方医へ連絡・確認(疑義照会)を行い、結果として処方変更が行われた場合に、処方箋受付1回につき算定する枠組みです。
ここで重要なのは「処方変更=薬剤の中止・変更」だけを意味しない点で、重複投薬や相互作用の回避を目的とした疑義照会の結果として、用法・用量のみが変更になった場合でも算定可能とされる整理が、実務解説の中で明確に示されています。
現場では「用量変更だけなら“形式的”で弱いのでは」と感じがちですが、論点は変更の“見た目”よりも、重複投薬・相互作用等のリスク評価に基づく照会であり、その結果として処方が変わったかどうかです。
用量変更で算定の説明力を上げるコツは、薬学的な理由を1行で言語化することです(例:「同効薬併用で過量懸念」「腎機能低下で曝露上昇が懸念」「飲食物で相互作用が疑われる」など)。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/6256
さらに、同時に複数の処方箋を受け付けて複数の“変更理由”があったとしても、算定は1回という考え方が基本なので、薬歴には「今回の照会の主目的」を明確にしておくと後で迷いません。
参考)重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件まとめ【令和6年(20…
点数(イ・ロ)の整理も含め、残薬調整に係る場合の点数見直し(ロが減点)といった改定ポイントも、用量変更の相談が「残薬由来なのか」「相互作用・重複由来なのか」を切り分ける材料になります。
重複投薬相互作用等防止加算の疑義照会と薬歴記載
算定に直結する実務は、疑義照会そのものより「記録の質」です。
複数の解説で共通しているのは、処方医へ連絡・確認した内容の要点と、処方変更の内容を薬剤服用歴等に記載することが求められる、という点です。
つまり、電話をした事実だけでなく、「何を根拠に」「何を確認し」「どう変わったか」を、第三者が追える形にしておく必要があります。
薬歴の書き方(例:用量変更ケース)を、監査で説明しやすい粒度に落とすと次のようになります。
【例:薬歴メモ(短文)】
・情報源:お薬手帳/患者申告/他薬局歴(該当するもの)
・問題:同種同効薬の併用により過量リスク(または相互作用懸念)
・対応:処方医へ疑義照会(目的:重複投薬・相互作用等の回避)
・結果:用量(または回数)変更の指示あり、処方変更として対応
・フォロー:患者へ変更理由と注意点(眠気、低血糖、出血など)を説明、次回確認事項を設定
「用量変更は軽い変更だから、詳細は要らない」という運用は、後から“変更の必然性”が説明できずに弱くなります。
逆に、薬学的な評価が書けていれば、薬剤の追加や日数延長といった変更であっても「薬学的観点から必要と認める事項」に該当し得る、という整理が示されており、記録の意義がより大きくなります。
なお、在庫都合での変更は算定できないといった線引きも解説されているため、照会の理由が“薬学的”であることを文章に残すのが安全です。
重複投薬相互作用等防止加算のレセプト摘要とコメント
レセプト摘要は、薬歴ほど自由度が高くない一方で、監査・返戻の引き金になりやすい領域です。
重複投薬・相互作用等防止加算(特にイ)では、摘要欄に「内容の要点」をコード等で記載する運用が示されており、同種・同効の併用薬、相互作用、過去のアレルギー歴・副作用歴、年齢や体重、肝機能・腎機能等の影響などの区分が例示されています。
用量変更を扱う場合は、単に「用量変更」と書くよりも、摘要では「なぜ用量変更に至ったか(相互作用・腎機能等)」のカテゴリを選べるようにしておくと、意図が伝わりやすくなります。
摘要と薬歴の関係は「摘要=結論」「薬歴=根拠の束」と捉えると整理が簡単です。
例えば、摘要では「肝機能、腎機能等による影響」等の要点に寄せ、薬歴側では検査値の有無・患者聴取・副作用兆候など、臨床的に妥当な根拠を残す形が実務的です。
また、疑義照会後に処方箋の差し替えが行われるケースでは、差し替え前の処方箋の写しを含め記録の“連続性”を確保する重要性が解説されており、摘要よりも「証跡管理」がポイントになります。
参考:疑義照会・処方変更の解釈(薬剤の追加・日数延長等も含めた整理)
厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日」
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000119348.pdf
参考:疑義解釈資料(複数年度の一覧・探し方の入口として便利)
参考)疑義解釈資料関係
重複投薬相互作用等防止加算で相互作用を用量変更に結びつける視点
相互作用チェックは「併用禁忌の有無」だけで終わると、用量変更が必要な場面を取り逃しやすいです。
実務解説では、処方箋同士の関係だけでなく、他薬局で調剤された薬剤、OTCやサプリメント、飲食物、院内処方なども確認対象になり得ると整理されており、ここが“意外に効く”ポイントになります。
つまり、患者が「薬じゃないと思っているもの」(健康食品、漢方、サプリ、グレープフルーツ等)を拾えた時に、相互作用リスクが“用量変更”として処方に反映される余地が生まれます。
用量変更に結びつけやすい相互作用の説明フレーズ(例)は、処方医側の意思決定を早くします。
・「相互作用で血中濃度上昇が懸念され、現用量の継続は過量リスク」
・「同種同効の併用で副作用発現が増える恐れがあり、減量提案」
・「腎機能低下により曝露上昇が疑われ、投与量調整が妥当」
また、残薬調整と混同しないのも大事です。
残薬が背景にあると“ロ”での評価になりますが、相互作用・重複の回避が主目的なら“イ”の文脈で説明する必要があり、どちらの論点で照会したのかが薬歴の骨格になります。
「残薬があるから減らした」なのか、「相互作用・重複で危ないから減らした」なのかで、同じ“減量”でも意味が変わるため、照会目的を先に書く癖を付けると事故が減ります。
重複投薬相互作用等防止加算の用量変更を監査視点で守る(独自視点)
検索上位では要件整理が中心になりがちですが、監査・返戻・指導対策としては「1件の算定を、第三者が追体験できるか」が最終基準になります。
そのために有効なのが、薬歴に“判断の分岐点”を短く残すことです(例:「併用薬が同効→副作用懸念」「相互作用の方向性(上がる/下がる)」「患者申告の確からしさ(手帳あり/不明)」)。
これは文字数稼ぎではなく、医師へ説明するための要点にもなり、結果として疑義照会の質が上がる“二次効果”があります。
さらに、処方変更後の情報提供まで含めて設計すると、算定の説明力が安定します。
残薬調整などの場面で、疑義照会時に伝え切れなかった服薬状況の詳細をトレーシングレポートで補い、重複投薬・相互作用等防止加算と服薬情報等提供料を併せて算定できるケースが解説されています。
つまり「用量変更で終わり」ではなく、「変更後の患者行動(飲み忘れ、自己調整、残薬再発)をどう抑えるか」までが、再発防止の“相互作用等防止”として現場価値になります。
最後に、用量変更の算定で実務的に強いチェックリストを置きます(短いが効く項目だけに絞ります)。
✅ 用量変更・算定チェック
・疑義照会の目的が「重複投薬・相互作用等の回避」と言えるか
・情報源(薬歴/手帳/患者申告/家族申告)が明記されているか
・処方変更の内容(何mg→何mg、何回→何回)が追えるか
・摘要は“理由カテゴリ”で整合しているか(相互作用、腎機能等)
・変更後の注意点(副作用兆候、服用タイミング、OTC回避)を説明した記録があるか
参考:算定要件と「用法用量が変更になった場合でも算定可能」という事例の整理
m3.com 薬剤師向け「重複投薬・相互作用等防止加算(2024年度改定版)」
参考:改定点(ロの点数見直し)、算定要件、算定例、摘要コメントの論点がまとまった解説
ヤクヨミ「重複投薬・相互作用等防止加算とは?算定例やレセプト摘要欄」