陽性症状と陰性症状の違いと症状

陽性症状と陰性症状の違い

陽性症状と陰性症状の違い:臨床で迷わない要点
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定義は「足される」か「引かれる」か

陽性症状は通常にはない体験や行動が出現、陰性症状は通常ある機能が低下する状態として整理すると、説明と記録が安定します。

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病期で目立つ症状が変わる

急性期は陽性症状が前景に立ちやすく、回復期以降は陰性症状が残りやすい前提で、退院支援・地域連携の焦点を調整します。

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陰性症状は「二次症状」を外す

抑うつ、薬剤性(錐体外路症状など)、環境要因による活動低下が紛れ込みやすいため、原因鑑別の手順化が重要です。

陽性症状 陰性症状 違いの定義と具体例

 

陽性症状は「通常にはない状態が現れる」ことで、代表例として妄想や幻聴などが挙げられます。

陰性症状は「通常ある機能が低下する」ことで、意欲減退、無関心、注意力・集中力の低下、社会的ひきこもりなどが含まれます。

医療者向けの説明では、陽性=“加わる症状”、陰性=“失われる機能”と二分して提示すると、患者・家族の理解が揃いやすく、記録(SOAPや看護記録)でも用語がブレにくくなります。

また統合失調症では、幻覚・妄想以外にも多彩な症状があり、前兆期に不眠・不安・神経過敏・身体症状が先行することがあります。

この「前兆期→急性期→回復期」という時間軸を持ち込むと、陽性症状・陰性症状を“固定した属性”ではなく“経過の中で揺れる現象”として説明でき、治療同盟にもつながります。

陽性症状 陰性症状 違いを急性期と回復期でどう読むか

急性期の特徴的な症状として、陽性症状(幻覚、妄想、精神運動興奮、昏迷など)と陰性症状(抑うつ、無気力、ひきこもり、倦怠感、感情の平板化など)が挙げられています。

回復期では一般に、幻覚・妄想などの陽性症状が次第に減少し、陰性症状が残ることがあるとされています。

このため、急性期は安全確保と刺激調整(不穏・興奮への対応)を優先しやすい一方、回復期以降は「生活機能の回復」「社会復帰の足場づくり」が主戦場になり、陰性症状の評価精度が転帰を左右しやすくなります。

臨床で重要なのは、回復期に残る陰性症状が“本人の性格”や“怠け”として誤解されやすい点で、行政の啓発資料でも「怠けているのではありません」と明記されるほど誤認が起きやすい領域です。

参考)統合失調症の陽性症状と陰性症状にはどのようなものがありますか…

したがって多職種カンファレンスでは、「症状(病態)」「環境(刺激・役割負荷)」「薬剤(副作用)」を分けて話すフレームを共有すると、支援のブレが減ります。

陽性症状 陰性症状 違いと作業能力の低下・注意力の低下

公的機関の説明では、陽性症状・陰性症状に加えて、病気の影響で作業能力が落ちること(記憶力の低下、作業スピードの遅さ、心身の極端な疲れやすさなど)があるとされています。

この「作業能力が落ちる」という記述は、現場感覚としては認知機能面や処理速度の問題、易疲労性、集中困難を一括りにした説明として便利ですが、陽性/陰性だけでケースを語る危険信号にもなります。

つまり、陽性症状が落ち着いても「注意力・集中力の低下」や作業能力の低下が残っていると、服薬継続や復職・復学のセルフマネジメントが難しくなり、結果として再燃リスクを上げ得るため、支援計画には“症状が軽快した後の実務能力”の評価が必須になります。

実務的には、面接では「会話は成立するが、段取りが組めない」「予定を保持できない」「疲労で翌日が崩れる」といった生活上の観察所見を、陽性/陰性とは別レイヤーで収集しておくと、チーム内での見立ての衝突を減らせます。

また「回復期は陰性症状が残りやすい」という前提があるため、退院直後の支援は、急に“自己管理を本人任せに戻す”のではなく、環境調整と支援量を段階的に減らす設計が安全です。

陽性症状 陰性症状 違いとPANSS・二次症状の落とし穴

陰性症状は治療抵抗性で転帰不良の要因になり得るため解明・治療開発の関心が高い一方、「二次症状との区別がされない」ことで陰性症状への効果とされた報告の一部が、精神病症状や抑うつ症状、薬物副作用の改善(=二次症状の改善)を拾っている可能性が指摘されています。

この指摘は、現場でよくある「陰性症状が良くなった気がする」を再検討するチェックリストとして使えます(例:EPSが軽くなって動けるようになっただけ、抑うつが改善して活動性が戻っただけ、など)。

また、統合失調症の重症度評価としてPANSS(陽性陰性症状評価尺度)が使われ、陽性・陰性・総合精神病理を分けて評価する枠組みがあることは、症状の“分解能”を上げるうえで有用です。

独自視点としての実務提案は、「陰性症状らしさ」を見たら、必ず“二次症状の可能性”を同時に書く運用にすることです(例:陰性症状疑い:意欲低下/鑑別:抑うつ、EPS、睡眠覚醒リズム、環境刺激不足)。

参考)精神神経学雑誌オンラインジャーナル

こうしておくと、治療の次の一手が「漫然と薬を増やす」ではなく、「副作用評価」「抑うつ評価」「生活リズム介入」「作業療法・デイケア導入」など複線化しやすくなります。

陽性症状 陰性症状 違いの独自視点:抗NMDA受容体脳炎の見逃し

精神症状の見え方だけで陽性症状・陰性症状を論じていると、器質性疾患が紛れたときに“統合失調症の一型”として固定されるリスクがあります。

たとえば抗NMDA受容体脳炎では、精神症状や認知症状が急速に出現し、統合失調症と誤診され得ること、さらに神経症状(運動障害、けいれん、自律神経不安定など)を伴うことが指摘されています。

ここが意外に重要なのは、「陽性症状が強い=精神科疾患」と短絡しないための、病棟・救急・総合診療との共通言語になる点で、医療従事者向け記事では“違い”の定義だけでなく“違いに見せかけた別疾患”まで触れると臨床価値が上がります。

現場の運用としては、(1)発症様式が急激、(2)意識変容やけいれん、(3)自律神経症状、(4)運動異常、(5)発など身体症状の先行がある場合には、陽性/陰性の分類をする前に、まず身体疾患のスクリーニング(血液検査、画像、必要時髄液など)を優先する、という意思決定が安全です。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6981256/

国立国際医療研究センター病院の解説でも、診断に際して症状や経過、他の体の病気の症状の有無、服薬状況などを総合的にみて、確認のため血液検査やCT/MRIなどを用いることがあるとされています。

権威性のある参考:陽性症状・陰性症状の定義と病期(急性期/消耗期/回復期)説明の参考リンク

統合失調症

権威性のある参考:急性期の陽性症状・陰性症状、前兆期、診断で血液検査/CT/MRIに触れている参考リンク

統合失調症とは?
国立国際医療研究センター病院

論文(鑑別の独自視点):抗NMDA受容体脳炎が統合失調症と誤診され得ること、神経症状を伴うことの整理に有用

The origin of NMDA receptor hypofunction in schizophrenia - PMC
N-methyl-d-aspartate (NMDA) receptor (NMDAR) hypofunction plays a key role in pathophysiology of schizophrenia. Since NM...

論文(陰性症状の落とし穴):陰性症状と二次症状(抑うつ、薬剤副作用など)の混同リスクの指摘に有用

https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=117&year=2015&mag=0&number=3&start=179

家族の支援で症状を予防! 統合失調症の陽性症状を抑えるために