保存剤とゴロと薬剤
保存剤のゴロで覚え方と一覧
保存剤は、同系統をまとめて覚えると「思い出す入口」が増えるため、確認作業のスピードが上がります。特に忙しい現場では「名称を見た瞬間に保存剤だと気づく」ことが重要で、ゴロはそのためのトリガーとして使えます。
代表的な保存剤(薬学系の学習サイトにまとまっているもの)には、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物、クレゾール、フェノールなどがあります。これらが「保存剤カテゴリ」にまとまって列挙されている点が学習上のヒントになります(同じ場所に並ぶ=同じ役割で出やすい)。
ここで実務寄りに、まず「保存剤らしい名前」を見抜くコツを作ります。
- 「塩化◯◯ニウム」:四級アンモニウム系が多く、消毒薬だけでなく保存剤としても登場しやすい(例:ベンザルコニウム塩化物)。
- 「フェノール」「クレゾール」:芳香族系で、用途としては防腐・殺菌文脈に出やすい。
- 「パラオキシ安息香酸◯◯」:いわゆるパラベン系(メチル、エチル、プロピル、ブチル…)としてセットで問われやすい。
ゴロの作り方は、既存の語呂合わせをそのまま使っても良いのですが、部署や製剤領域(点眼・注射・外用)に合わせて「自分の持ち場の頻出だけ」で短縮するのが定着しやすいです。例えば「パラ(パラベン)+ベン(ベンジルアルコール)+ベン(ベンザルコニウム/ベンゼトニウム)」のように、似た語幹でまとめると、記憶検索の負担が下がります。
また、保存剤と混同されやすい言葉として「保存料」があります。食品分野の説明になりますが、「微生物の増殖を抑える(静菌、抗菌)」「殺菌作用はない」といった整理がされており、“保存”という語が付く概念の距離感を掴むのに役立ちます。
保存剤と薬剤で点眼薬の注意点
医療従事者の現場で「保存剤」が問題になりやすい代表が点眼薬です。点眼薬は主薬だけでなく、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、可溶化剤、安定化剤、防腐剤、粘稠化剤などの添加物を含み、繰り返し投与する点眼薬では微生物汚染防止のため防腐剤が必要になる、と総説で整理されています。
点眼薬含有塩化ベンザルコニウムの角膜上皮に対する影響(薬学雑誌)PDF
この総説では、防腐剤として最も頻繁に使用されるものとして塩化ベンザルコニウム(BAC)が挙げられ、相溶性や抗菌スペクトルに優れる一方で、濃度や頻度によって角膜上皮障害を誘発し得る点が明確に書かれています。つまり「保存剤=必要悪」になりやすく、患者背景(ドライアイ、緑内障で長期投与など)によっては、保存剤を含まない製品選択や処方設計が重要になります。
臨床での説明・指導に落とし込むなら、以下のような言い換えが有用です。
- ✅「主薬の作用」と「添加物の刺激」は別問題:効いていても“しみる・乾く”は起こりうる。
- ✅ 長期投与ほど“合算曝露”が増える:緑内障点眼などは治療期間が長く、角膜上皮障害が話題になりやすい。
- ✅ 代替策がある領域もある:同一主薬で保存剤非含有の製品があるケースがあり、変更で角膜上皮障害が軽減した報告がある。
「意外と知られていないポイント」として、同じ“主薬が同じ”でも、先発と後発で添加物や防腐剤濃度が一致しない可能性があり、予期せぬ角膜上皮障害が生じ得る、という警鐘も述べられています。ジェネリック変更後に患者訴えが増えたとき、主薬だけでなく保存剤・添加物まで疑う姿勢が実務で効いてきます。
保存剤と薬剤でベンザルコニウム塩化物の影響
塩化ベンザルコニウム(BAC)は点眼薬の防腐剤として頻用される一方で、眼表面に曝露されることで主薬や添加物が角膜上皮障害を起こし得る、という臨床的関心が強いテーマです。特に緑内障点眼薬は長期投与が避けにくく、角膜上皮障害の軽減と眼圧下降効果の両立が課題として語られています。
点眼薬含有塩化ベンザルコニウムの角膜上皮に対する影響(薬学雑誌)PDF
さらに“現場で使える意外な論点”として、ヒアルロン酸ナトリウム(HA)点眼との併用が必ずしも単純ではない点が挙げられます。総説では、in vitroではHAがBACの細胞毒性を軽減した一方、in vivo(マウス)では高粘度の0.3% HAの点眼により、その後のBACが眼表面に滞留し細胞傷害性を強調する可能性が示唆された、と整理されています。つまり「保護のつもりの粘稠点眼が、条件によっては曝露を延ばす」方向にも働き得ます。
この話は、患者指導の「点眼間隔」に直結します。一般に複数点眼は5分間隔をあける指導がされる、と文献内で触れられており、粘稠性の高い点眼を挟むときほど、保存剤の有無や順番を含めて注意喚起しやすくなります。
実務のチェック観点(点眼薬に限らず応用可能)を、短いチェックリストにしておくと便利です。
- 👁️ 保存剤の有無:単回包装・防腐剤フリーの選択肢があるか。
- 🧪 保存剤の種類:BAC系か、それ以外か(患者が刺激を訴えるときの切り分けに使う)。
- ⏱️ 併用時:粘稠点眼(HAなど)を挟む順番・間隔の再確認。
- 🧾 変更時:先発→後発、後発間の変更で添加物が変わる可能性を想定。
保存剤と薬剤で添加物リストの見方
保存剤は「名称として覚える」だけでなく、文書で「どこに書いてあるか」を知っていると、現場の安全性が上がります。医薬部外品にはなりますが、厚生労働省の通知として「医薬部外品の添加物リスト」が公開されており、成分名や規格コードなどの整理がされています。こうした公的資料の読み方を知っておくと、製品カテゴリが違っても“成分名の追い方”の型が身につきます。
この通知では、添加物リストが「配合前例」を示すものであり、有効成分としての配合前例を示すものではない、という趣旨が明記されています。つまり、リストに載っている=無条件に安全・推奨、ではなく、「申請や配合の前提情報」として扱うべきです。
現場で役立つ“見方のコツ”は次の通りです。
- 📌 名称の揺れに注意:同じ物質でも「一般名」「塩」「英名」など表記が変わるため、語幹(例:ベンザルコニウム)で検索する。
- 📌 「○」や数値の意味を読む:どの条件で資料提出が不要になるのか、上限があるのかを確認する(勝手に安全だと解釈しない)。
- 📌 製品分類の違いを意識:医薬品と医薬部外品で枠組みが異なるため、同じ保存剤でも規制や文脈がずれる可能性がある。
このセクションの目的は「保存剤を探す眼」を作ることです。ゴロで“候補を思い出す”→文書で“実在を確認する”→患者背景で“リスクを評価する”という流れを固定すると、チーム内のコミュニケーションもブレにくくなります。
保存剤とゴロで誤解の対策(独自視点)
検索上位の多くは「保存剤のゴロ暗記」に寄りがちですが、医療従事者の現場では“暗記の副作用”も起きます。独自視点として、保存剤をゴロで覚えるほど、逆に「名前だけで危険/安全を決めつける」誤解が増える点を、教育設計として先に潰しておくのが有効です。
誤解が起きやすいパターンは、次の3つです。
- ⚠️ 「保存剤=全部同じ」誤解:実際は用途(点眼、外用、消毒)や濃度・曝露部位で意味が変わり、BACのように頻用かつ議論の多いものもある。同PDF
- ⚠️ 「保存剤フリー=万能」誤解:防腐剤が不要になる設計(単回包装など)には利点がある一方、製剤安定性や運用(コスト・廃棄・持ち運び)も絡むため、選択は多面的。
- ⚠️ 「ヒアルロン酸=保護だから順番は気にしない」誤解:高粘度HAがBACの滞留性を上げ得る示唆があり、点眼間隔や順番の指導が意味を持つ。同PDF
ここでの実践的な解決策は、「ゴロを“分類タグ”として使う」ことです。つまりゴロで覚えるのは“危険度”ではなく、“文書検索のための索引”として位置づけます。保存剤名を見たら、①患者の投与期間・併用薬、②投与部位(眼、皮膚、粘膜など)、③剤形(単回か多回か)、④代替案(保存剤変更・非含有化)をセットで評価する、というチェック手順に繋げると、暗記が臨床判断に直結します。
(参考リンク:点眼薬での防腐剤BACの位置づけ、角膜上皮障害、HA併用時の示唆がまとまっている総説)
点眼薬含有塩化ベンザルコニウムの角膜上皮に対する影響(薬学雑誌)
(参考リンク:医薬部外品の添加物リストの趣旨、配合前例の扱い、規格コード等の読み方の根拠になる公的通知)
医薬部外品の添加物リストについて(厚生労働省)

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