胃食道逆流症 症状 赤ちゃん 吐き戻し 溢乳

胃食道逆流症 症状 赤ちゃん

この記事でわかること
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溢乳とGERDの見分け

「よく吐く」が正常範囲か、病的な胃食道逆流症(GERD)を疑うべきかを症状・体重増加・随伴徴候で整理します。

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危険サインと受診目安

無呼吸、チアノーゼ、反復性肺炎、吐血、体重増加不良など、精査が必要な状況を具体的に提示します。

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検査・治療・家族指導

上部消化管造影、食道pHモニタリング等の検査の意味、生活指導・哺乳の工夫・薬物・手術適応までをまとめます。

胃食道逆流症 症状 赤ちゃん 溢乳 と 嘔吐 の 判断

 

赤ちゃんがミルク後に吐き戻す現象は、医療者側がまず「胃食道逆流現象(生理的な逆流)」と「胃食道逆流症(GERD:症状や合併症を伴う状態)」に分けて説明できるかが重要です。日本小児外科学会は、新生児・乳児の溢乳は珍しくない一方、症状が強い・合併症がある場合は詳しい検査と治療が必要としています。吐き戻しを「嘔吐」と表現されることは多いですが、MSDマニュアル(プロフェッショナル版)では溢乳は蠕動性収縮による嘔吐ではなく、苦しそうでないことが典型と説明されています。これらを踏まえると、問診では「吐いた量」だけでなく「吐くときの様子(苦悶・力み・噴水状)」「哺乳量・哺乳回数」「体重増加」「呼吸器症状の同時出現」をセットで把握するのが安全です。

臨床現場での“見分けの軸”を、家族説明にも使える形に落とすと以下が実用的です。

  • 🍼 その子が元気で、機嫌・哺乳・睡眠が保たれ、体重が増えているか(体重増加不良がないか)。
  • 🤍 顔色不良、チアノーゼ、無呼吸など循環・呼吸の異常を伴っていないか。
  • 🤢 吐血や黒色便など、消化管出血を示唆する所見がないか。
  • 📌 逆流以外の症状(咳、喘鳴、反復性肺炎、哺乳不良、不機嫌など)が目立つか。

「吐き戻しが多い=すぐ病気」と短絡しない一方で、「いつもの吐き戻し」と思われやすいケースに、呼吸器症状や発育障害が隠れる点が胃食道逆流症の難しさです。特に乳児は症状表現ができないため、不機嫌・哺乳時間の延長・飲み渋りといった行動の変化も“症状”として拾う必要があります。

胃食道逆流症 症状 赤ちゃん 咳 喘鳴 無呼吸 発作 の 見逃し

胃食道逆流症は、嘔吐などの消化器症状だけでなく、咳・喘鳴・肺炎・無呼吸発作など呼吸器症状を伴うことがあるため、呼吸の訴えで受診している乳児でも鑑別に入れる価値があります。日本小児外科学会は、嘔吐・げっぷ・吐血などの消化器症状に加えて、咳・喘鳴・肺炎・無呼吸発作などの呼吸器症状を認めると整理しています。さらに、逆流が強い場合には徐脈やチアノーゼなど強い症状を引き起こし得るため、保護者の「顔色が悪い」「息が止まった気がする」といった主観訴えを軽視しない姿勢が大切です。

ここで医療従事者向けに強調したいのは、「呼吸器症状の原因が必ず逆流とは限らない」という一点です。2006年の日本小児消化管機能研究会の指針では、GERDの合併症として誤嚥性肺炎や、迷走神経反射を介した喘息発作・無呼吸などが挙げられ、ALTE(突発性危急事態)との関連も示唆されています。つまり、逆流は“上気道症状の背景因子”になり得ますが、同時に、他疾患(感染、先天性心疾患、気道奇形など)を落とし切らずに「逆流だから」と説明してしまうと危険です。

臨床で使える「呼吸器症状と逆流のつなぎ方」は次の通りです。

  • 😮‍💨 咳・喘鳴が「授乳後」「臥位」「腹満」で悪化するかを確認する(時間関係)。
  • 🫁 反復性肺炎なら、嚥下障害・誤嚥・気道構造・免疫不全も含めて並行評価し、逆流は“寄与因子”として扱う。
  • 🧠 無呼吸様エピソードでは、他疾患の除外が前提で、必要に応じて逆流評価へ進む(指針でもALTEは関係が十分証明されていない旨が述べられています)。

胃食道逆流症 症状 赤ちゃん 体重増加不良 吐血 受診 の 目安

受診の目安は「吐き戻しの回数」ではなく、「体重増加不良・吐血・呼吸器症状・無呼吸発作などの危険サインがあるか」で切り分けるのが合理的です。日本小児外科学会は、嘔吐の回数が多く体重が増えない場合、肺炎や無呼吸発作を繰り返す場合などは胃食道逆流症が疑われ、詳しい検査と治療が必要としています。また、よく嘔吐し、ミルク後にゼーゼー痰が絡んだような音(喘鳴)がある、顔色が悪くなるなどがあれば早めに小児科医または小児外科医へ相談するよう記載しています。

医療者として家族へ説明する際は、「救急相当」と「早期受診(数日以内)」と「経過観察」を分けるとコミュニケーションが安定します。以下は、上記の権威ある整理に沿って安全側に倒した実務的な例です。

  • 🚑 早急に評価(救急も含む)を検討:無呼吸、チアノーゼ、顔色不良、意識が悪い、反復する呼吸停止様エピソード。
  • 🏥 速やかに受診:吐血、体重増加不良、哺乳不良、反復性肺炎や喘鳴が明確、嘔吐回数が多く脱水が疑われる。
  • 📝 経過観察の余地:吐き戻しはあるが機嫌良好で、哺乳が保たれ、体重が順調で、呼吸器症状がない。

意外に見落とされるポイントとして、「家族が“吐いている”と表現するものの中に、実は哺乳量過多・哺乳姿勢・げっぷ不十分など介入可能な要素が混じる」ことがあります。ここは病名の議論より先に、生活指導の質で症状と不安が大きく変わります。

胃食道逆流症 症状 赤ちゃん 検査 上部消化管造影 食道pHモニタリング

胃食道逆流症の診断は症状だけでは難しく、必要時に複数の検査を組み合わせて評価するという前提を共有しておくと、過剰検査と見逃しの両方を減らせます。日本小児外科学会は検査として上部消化管造影、食道pHモニタリング、シンチグラフィー、食道内圧検査などを挙げ、複数の検査法を組み合わせて診断すると説明しています。さらに同会は、上部消化管造影で食道・胃の形(食道裂孔ヘルニアや胃の捻じれ等)や造影剤の流れ、逆流の状態・程度を確認すると記載しています。

医療者向けに一歩踏み込むなら、検査は「逆流の証明」だけが目的ではありません。2006年の診断治療指針でも、上部消化管造影は形態異常の検索に重要で、GERDの原因・増悪因子となる解剖学的異常(食道裂孔ヘルニア、胃軸捻転など)や、他疾患(肥厚性幽門狭窄症、腸回転異常など)を鑑別する意義が強調されています。一方で同指針は、乳児期は正常児でも透視上GERを認め得るため評価は慎重にすべきで、造影で必ずしもGERを証明できない限界も述べています。

食道pHモニタリング(必要に応じてインピーダンス含む)は、酸逆流の客観評価や症状との時間関係を検討するのに役立ちます。日本小児外科学会は、微小電極で食道内のpH等を持続記録し、胃酸の逆流や蠕動を評価する方法として紹介しています。これを家族に説明する際は「吐いた回数」ではなく「食道への刺激(酸)や呼吸症状との関係を評価する検査」という言い方に変えると納得感が上がります。

胃食道逆流症 症状 赤ちゃん 生活指導 体位療法 少量頻回 哺乳 の 工夫(独自視点)

検索上位は「症状」「受診目安」「治療(姿勢・ミルク調整)」が中心ですが、医療従事者向け記事として独自性を出すなら、“指導を実装できる粒度”まで落とすのが差別化になります。日本小児外科学会は生活指導として、授乳後のおくび(げっぷ)を十分に行い、立て抱きで保持する体位療法、排便・排ガスを促す対応などを挙げています。また同会は、ミルクや食事の一回量を少なめにして頻回にする、増粘ミルク(増粘剤の利用を含む)などの経口摂取の工夫を提示しています。獨協医科大学埼玉医療センター小児外科も、哺乳後30分程度は抱っこ等で体を起こしておく、少量頻回、濃厚乳などの内科的治療を紹介しています。

ここから一段深掘りし、現場で起きがちな“指導のズレ”を補正します。

  • 🧷 「体位療法」の誤解:家族は“寝かせる角度”を工夫しがちですが、実際には「授乳直後の時間帯に、腹圧がかかりにくい状態で上体を起こす」ことが核です(抱っこ・立て抱きの具体を提示すると再現性が上がります)。
  • 🕒 「少量頻回」の落とし穴:回数を増やすと家族の疲弊が強く、逆に授乳リズムが崩れることがあります。指針でも少量頻回の有用性は述べられる一方、実務では“家庭で続く形”に設計し直す必要があります(例:1日の総量は維持しつつ、問題の時間帯だけ分割する等)。
  • 🧻 便秘・腹満への介入:2006年指針でも生活指導に便秘への治療、排便・排ガス促進が含まれており、腹圧上昇を下げるという意味で理にかなっています。
  • 🧠 介入の優先順位:症状が軽い場合、薬の前に「説明+生活指導」のphaseが最優先で、家族の不安を取り除くこと自体が治療として位置づけられています(指針のphase 1の考え方)。

なお薬物療法や手術適応は個別性が高く、医療者が「いつ専門へつなぐか」の判断が要点になります。日本小児外科学会は、胃酸分泌抑制薬や胃蠕動促進薬などの薬物療法、内科的治療で症状が続く場合や生命を脅かす症状がある場合に外科治療(噴門形成術など)を検討すると説明しています。治療の説明では、効く・効かないの前に「何をゴールにするか(体重増加の改善、無呼吸や肺炎の予防、食道炎のコントロール)」を共有しておくと、継続通院の納得感が上がります。

(消化器症状・呼吸器症状・無呼吸などの整理、検査と治療の全体像の参考)

日本小児外科学会:胃食道逆流症(症状、検査、治療、生活指導)

(診断治療指針:定義、症状一覧、検査の位置づけ、phase別治療、SIDSと体位療法の注意などの参考)

日本小児消化管機能研究会:小児胃食道逆流症診断治療指針(2006)

(溢乳と嘔吐の違い、治療の基本方針の臨床的説明の参考)

MSDマニュアル(プロフェッショナル版):乳児の胃食道逆流

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