ガラクトキナーゼと白内障の診断

ガラクトキナーゼと白内障の診断

ガラクトキナーゼ(GALK)欠損を疑う全体像
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主症状は白内障

ガラクトース血症II型(ガラクトキナーゼ欠損症)は「白内障が主な症状」と整理され、早期介入が視機能予後に直結します。

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検査パターンが鍵

血中ガラクトース高値+ガラクトース-1-リン酸が低値/検出なし、という組み合わせが典型とされます(ただし例外あり)。

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治療は乳糖制限が軸

ガラクチトール生成を抑える目的で、生涯にわたり乳糖(乳製品)制限が基本となります。

ガラクトキナーゼ欠損症と白内障の病態

 

ガラクトース血症II型(ガラクトキナーゼ欠損症)は、ガラクトース代謝経路でα-D-ガラクトースをガラクトース-1-リン酸へ変換するガラクトキナーゼ(GALK; EC 2.7.1.6)の活性低下が原因で、GALK1の両アレル性病的バリアントによる常染色体潜性遺伝疾患として整理されます。

病態の中心は「ガラクトースの滞留→別経路(ポリオール経路)→ガラクチトール増加→水晶体への蓄積」による白内障で、ガラクチトールによる浸透圧性のレンズ線維腫脹や蛋白変性が早発白内障につながる、という説明が臨床的に理解しやすいです。

ここで重要なのは、古典的ガラクトース血症(I型)に比べると全身の急性重症像が目立ちにくい一方で、「眼」が先行して表現型として出てくる点で、健診や眼科受診が診断の入口になり得ることです。

医療現場での“あるある”として、先天白内障の鑑別は感染(TORCH)、染色体/症候群、代謝性の順に想起されがちですが、代謝性の中でガラクトキナーゼ欠損は「治療で進行を止めやすい」ため、疑った時点で検査と食事介入を並行させる価値があります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8183283/

また、白内障は「生後早期から来す症例も散見される」が、不可逆的変化の前なら乳糖除去で改善する可能性がある、とガイドラインで明記されており、紹介・連携のタイミングが予後に直結します。

参考)https://jsimd.net/pdf/guideline/MS/30_ms2025.pdf

ガラクトキナーゼとガラクチトールの検査所見

臨床でまず押さえるべき“型”は、血中ガラクトースが上昇し、血中ガラクトース-1-リン酸が「検出なし、または低値」というパターンです。

ガイドラインでは「血中ガラクトースが少なくとも20 mg/dL以上に上昇し、ガラクトース-1-リン酸はほとんど検出されないのが典型」とされる一方、新生児期にはガラクトース-1-リン酸が検出される例もあるため、単一所見での決め打ちは危険です。

さらに落とし穴として、乳糖除去ミルクや静脈栄養の影響で、罹患者でも血中ガラクトースがカットオフ以下になり得る(偽陰性)ことが明確に注意喚起されています。

確定に近づける疾患特異的検査は、赤血球中GALK活性低下、またはGALK1遺伝子解析で両アレル性病的バリアントを同定することです。

ただし日本の実装面では、2024年時点で赤血球GALK活性・GALK1遺伝子解析が保険収載されていない、国内実施が容易でない、といった制約がガイドラインに書かれており、現場は「臨床+一般検査パターン+必要時の外部委託」を前提に動線設計する必要があります。

このギャップがあるため、眼科で白内障が見つかった後に小児科・代謝科へ紹介されるまでの“時間差”が生じやすく、紹介状には「乳糖摂取状況」「採血時点での栄養(母乳/ミルク/乳糖除去/TPN)」を具体的に書くと、再検の解釈が安定します。

意外に見落とされる論点として、ガラクトース血症II型とIV型(GALM欠損)は「血中ガラクトース高値+ガラクトース-1-リン酸低値/陰性」というパターンが重なり得るため、ガラクトースとガラクトース-1-リン酸だけでは確定診断できない、という点がガイドラインで明確に述べられています。

このため、患者説明でも「同じような検査パターンを示す近縁疾患があり、最終的に遺伝学的確認が必要になり得る」という含みを、早い段階から共有しておくのが安全です。

ガラクトキナーゼと新生児マススクリーニングの実務

ガラクトース血症II型は、新生児マススクリーニングで疑われることがあり、疑われた場合は「まずガラクトース血症I型や胆道閉鎖症など、可及的早期対応が必要な疾患の鑑別を優先すべき」と整理されています。

一方でII型も、白内障の不可逆的変化を予防するため「ガラクトースが10 mg/dL以上であれば、診断未確定でも早急に乳糖制限を開始」する推奨が示されています。

この“未確定でも介入”という姿勢は、代謝疾患の中でも比較的実務的に受け入れやすい(薬ではなく食事調整が中心)ため、検査待ちの空白期間を作らない運用に向きます。

ただ、スクリーニングの運用は地域差・国差があり、海外報告では「スクリーニングにガラクトース代謝異常が含まれていないため診断が遅れた」ケースも提示されており、出生地や移住歴の聴取が診断経路に影響する現実があります。

臨床的には、スクリーニング陰性でも「両側性白内障+他の原因が薄い」場合は、代謝性(ガラクトース代謝)を再度拾い直す、という姿勢が合理的です。

ガラクトキナーゼと乳糖制限の治療

ガラクトース血症II型に特異的な薬物療法はなく、基本は生涯にわたる乳糖制限で、白内障の予防(あるいは進行停止)を狙います。

食事療法の実務で重要なのは、「牛乳・乳製品そのものは生涯避けるのが望ましい」とされる一方、白内障がなく血中ガラクトースが良好に管理できる例では、果物や野菜など“少量の乳糖を含む食品”は制限解除を検討し得る、という“硬すぎない運用”もガイドラインに書かれている点です。

さらに、内服薬の賦形剤として用いられる乳糖は禁忌(原則禁止)とされており、処方監査・薬剤選択の現場(薬局、病棟薬剤師)も診療チームに組み込む必要があります。

フォローアップ指針としては、血中ガラクトースの上昇がないことを定期的に確認し、目標値の目安を2.5 mg/dL以下とすること、少なくとも年1回の眼科受診で白内障の有無を確認することが示されています。

医療者側の説明では、「食事療法=小児期だけの話」になりやすいのですが、ガイドライン上は成人期以降も乳糖制限を生涯継続し白内障発症に注意する、と明言されているため、トランジション外来や成人診療科への引き継ぎ計画も含めた説明が必要です。

“意外な臨床トピック”として、II型では急性発作は来さないと考えられているものの、発達障害、肝逸脱酵素上昇、特発性頭蓋内圧亢進症などとの関連が指摘されている、とガイドラインに記載があります。

このため、白内障が主症状であっても、発達や神経症状のスクリーニング(問診・発達評価)をゼロにしない、というバランスが臨床的に安全です。

ガラクトキナーゼと白内障の独自視点:賦形剤と処方監査

検索上位の一般解説は「ミルク・乳製品を避ける」に寄りがちですが、現場で実際に事故が起きやすいのは“薬の乳糖”です。

ガイドラインでは内服薬の賦形剤として用いられる乳糖を禁忌(原則禁止)としており、例えば感冒薬、整腸剤、鉄剤抗菌薬など「短期処方だから見逃す」場面が積み重なると、血中ガラクトースのコントロールが揺れ、眼科所見(白内障)評価と食事アドヒアランス評価を混乱させます。

したがって、診断時に家族へ渡す資料は食品リストだけでなく、「乳糖(lactose)を含む医薬品添加物」もチェック対象であることを明確にし、処方箋発行側と調剤側で二重に確認できるチェックリスト運用(例:電子カルテのアレルギー/禁忌欄への登録)を推奨します。

また、外来では「血中ガラクトース値」と「家族の自己申告(食事制限の遵守)」が一致しないケースがあり得ますが、その際に食事指導だけを強化してしまうと関係が悪化することがあります。

このズレの原因として、薬剤添加物の見落とし、栄養補助食品・サプリの原材料(乳由来)、入院時の院内採用薬、という“医療システム側の盲点”を先に疑う姿勢は、医療安全としても合理的です。

(論文リンク:白内障とガラクトキナーゼ欠損を「治療可能な原因」として症例で注意喚起)

Galactokinase deficiency: a treatable cause of bilateral cataracts (BMJ Case Reports, 2021)

(日本語ガイドラインリンク:ガラクトース血症II型の診断・治療・フォローアップ指針)

新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025:ガラクトース血症II型(ガラクトキナーゼ欠損症)

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