アビバクタムとセフタジジムの作用機序と用法用量

アビバクタム セフタジジム

アビバクタム セフタジジム:記事の概要
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最初に押さえるべき要点

本剤は「セフタジジム(セフェム)」+「アビバクタム(非β-ラクタム系β-ラクタマーゼ阻害薬)」の固定比率配合で、ESBLやKPC、AmpC、OXA-48など一部の酵素に強みがあります。

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用量で迷う場面

標準は「2 g/0.5 gを8時間ごと、2時間かけて点滴」ですが、腎機能(CrCL)で投与量・間隔が変わり、治療開始後にCrCLが動く患者ほど再評価が重要です。

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安全性で見落としやすい点

Coombs試験陽転が比較的多いこと、C. difficile関連下痢、腎機能低下時の神経毒性(けいれん・脳症など)に注意し、必要時は併用薬や投与設計も見直します。

アビバクタム セフタジジムの作用機序とβ-ラクタマーゼ

アビバクタム/セフタジジム(一般に「セフタジジム/アビバクタム」)は、第三世代セフェムのセフタジジムに、β-ラクタマーゼ阻害薬アビバクタムを組み合わせた配合剤です。

セフタジジムは、ペニシリン結合蛋白質(PBP)に結合して細胞壁ペプチドグリカン)の合成を阻害し、溶菌によって殺菌的に作用します。

一方のアビバクタムは「非β-ラクタム系」のβ-ラクタマーゼ阻害薬で、β-ラクタマーゼに共有結合して加水分解に安定な付加体を形成し、結果としてセフタジジムの分解を抑えます。

ポイントは「セフタジジムの抗菌力を、耐性酵素の側から守る」設計にあることです。

阻害スペクトラムのイメージは以下です。

・得意:AmblerクラスA(ESBL、KPCなど)、クラスC(AmpC)、一部クラスD(OXA-48など)

・苦手:クラスB(メタロβ-ラクタマーゼ:NDM、VIM、IMPなど)

この「メタロβ-ラクタマーゼは阻害しない」という性質は、CREが疑われる場面の治療選択で判断を誤りやすい落とし穴になります。

また、グラム陰性菌では外膜と内膜の間(ペリプラズム)でβ-ラクタマーゼが働くため、薬剤がその場でどれだけ有効濃度を維持できるか(PK/PD)が臨床効果を左右します。

この点で本剤が「2時間かけて点滴」「8時間ごと」というレジメンになっているのは、β-ラクタム系に典型的な“時間依存性”を最大化する意図と整合します。

(作用機序の参考:Pfizerの医療者向け情報も要点がまとまっています)

作用機序(β-ラクタマーゼ阻害・PBP阻害)の参考:https://www.pfizerpro.jp/medicine/zavicefta/product/moa

アビバクタム セフタジジムの用法用量と点滴静注

用量設計は「標準投与」と「腎機能別調整」の2本立てで理解すると、現場の確認が速くなります。

【成人・腎機能が保たれている場合(目安:CrCL >50 mL/min)】

・セフタジジム/アビバクタム 2 g/0.5 g

・8時間ごと(1日3回)

・120分(2時間)かけて点滴静注

この枠組みはEUの製品概要(SmPC)に明確に記載があります。

【成人・腎機能低下(CrCL ≤50 mL/min)】

腎排泄型で、腎機能低下時に曝露が上がるため、CrCLに応じて減量・投与間隔変更が必要です。

特に注意したいのは「治療開始後にCrCLが短期間で動く患者」で、感染症の改善・循環動態の変化・補液・利尿薬・腎毒性薬の併用などで推算CrCLが変わり、過量(神経毒性)にも不足(治療失敗)にも寄り得ます。

腎機能別の投与表(成人)の骨子は次の通りです。

・CrCL 31–50:1 g/0.25 gを8時間ごと(2時間点滴)

・CrCL 16–30:0.75 g/0.1875 gを12時間ごと(2時間点滴)

・CrCL 6–15:投与間隔は24時間ごと(2時間点滴)

・末期腎不全/血液透析:48時間ごと、透析日は透析終了後に投与

この「透析で除去されるので透析後に投与」という指示は、実務上の投与タイミング調整に直結します。

【意外に見落とす“運用”ポイント】

・調製・投与の実務では、抗菌薬投与管理チーム(AST)や薬剤部の手順とズレが出るとエラーが起きやすいので、病棟の標準手順(希釈量・投与ライン・配合変化)を最初に確認します。

・「2時間点滴」が他薬の点滴スケジュールと衝突しやすいので、中心静脈/末梢ルートの確保状況と、併用薬(昇圧薬・輸液・鎮静薬など)を踏まえた現実的な投与設計が重要です。

・血中濃度モニタリング(TDM)が標準でない施設では、腎機能推移のモニタリングが実質的な安全弁になります。

(用量・腎機能調整・投与時間の根拠:EU SmPCの記載がまとまっています)

用法用量(2時間点滴、CrCL別調整、透析後投与)の参考:https://www.pmda.go.jp/drugs/2024/P20240618004/672212000_30600AMX00154_B100_1.pdf

アビバクタム セフタジジムの適応感染症と起炎菌

臨床試験で主に評価されているのは、複雑性腹腔内感染症(cIAI)、腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(cUTI)、院内肺炎(HAP)/人工呼吸器関連肺炎(VAP)です。

さらに「治療選択肢の限られる好気性グラム陰性菌感染症」という位置づけでも使用が想定され、実臨床ではCREや難治性Pseudomonasを強く意識して選択されることがあります。

起炎菌として挙がりやすいグラム陰性菌の例は以下です。

・腸内細菌目:Escherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter cloacae など

・ブドウ糖非発酵菌:Pseudomonas aeruginosa

ただし、グラム陽性菌や嫌気性菌には“これ単剤で幅広くカバーする”設計ではなく、必要に応じて併用が求められる、という注意書きも重要です。

【併用が必要になりやすい典型】

・cIAIで嫌気性菌関与が疑われる:メトロニダゾール併用が推奨され得る

・肺炎でMRSAなどグラム陽性菌が疑われる:バンコマイシン、リネゾリド等の追加を検討

「広域=万能」ではない点は、抗菌薬の適正使用(AMR対策)の観点でも上司チェックで突っ込まれやすいので、記事内で明確に線引きしておくと安全です。

(適応感染症の範囲、併用の考え方、感受性・非感受性菌の例:EU SmPCの“limitations”や“spectrum”に記載)

適応・スペクトラム(cIAI/cUTI/HAP/VAP、非感受性菌の例)の参考:https://www.pmda.go.jp/drugs/2024/P20240618004/672212000_30600AMX00154_B100_1.pdf

アビバクタム セフタジジムの副作用と注意点(Coombs・C. difficile・神経毒性)

安全性で押さえるべきは「頻度が高いが臨床的に扱いが難しいもの」と「頻度は高くないが重篤化し得るもの」を分けて理解することです。

【よく話題になる:Coombs試験(直接抗グロブリン試験)陽性】

セフタジジム/アビバクタムではCoombs試験陽性が“非常に多い”副作用として報告されています。

臨床試験では陽転化が一定割合で見られた一方、陽転=溶血と直結しないケースが多いものの、薬剤性免疫性溶血性貧血の可能性は完全には否定できない、と整理されています。

輸血のクロスマッチや、治療中/治療後の貧血評価で「検査結果の解釈にひっかかる」タイプの副作用なので、医療従事者向け記事では実務的価値が高いポイントです。

【抗菌薬全般の重要リスク:C. difficile関連下痢】

投与中あるいは投与後の下痢では、C. difficile関連下痢/大腸炎を鑑別に上げる必要があります。

軽症から致死的まで幅があるため、下痢を“よくある副作用”として流さない注意喚起が重要です。

【腎機能低下とリンク:神経毒性(けいれん、脳症など)】

セフタジジム成分は腎機能低下で蓄積しやすく、用量調節が不十分だと、振戦・ミオクローヌス・非けいれん性てんかん重積・けいれん・脳症・昏睡などが報告され得ます。

このため「CrCLを定期的に見直す」「急性腎障害(AKI)を起こしやすい併用(アミノグリコシド、高用量利尿薬など)を意識する」といった運用が、単なる添付文書の引用を超えて、現場の安全につながります。

(副作用:Coombs陽性、C. difficile関連、腎機能低下時の神経毒性、腎毒性併用注意:EU SmPCの警告・副作用の項)

安全性(Coombs、C. difficile、神経毒性、腎機能モニタ)の参考:https://www.pmda.go.jp/drugs/2024/P20240618004/672212000_30600AMX00154_B100_1.pdf

アビバクタム セフタジジムの独自視点:高ナトリウム負荷と「輸液設計」

検索上位の解説では、作用機序や耐性菌カバーに紙幅が割かれがちですが、病棟運用で“地味に効く”のがナトリウム負荷の視点です。

セフタジジム/アビバクタムは、バイアルあたり約146 mgのナトリウムを含み、最大1日量では食塩制限中の患者にとって無視しにくい割合になり得る、と整理されています。

さらに「希釈にナトリウム含有溶液を使う」場合は、総ナトリウム負荷が積み上がるため、心不全腎不全肝硬変(腹水)など、容量管理が難しい患者では投与設計(希釈液選択、他輸液の引き算)が実務上の安全策になります。

【現場でのチェック項目(例)】

・🧂 食塩制限(Na制限)の指示があるか

・💧 維持輸液・栄養輸液・輸血・昇圧薬希釈など、Na源が他に多いか

・🫁 肺炎/敗血症で輸液が増えがちな局面か(入院初期ほどNa負荷が積み上がる)

・🧠 意識障害リスクがある患者で、Na変動(高Na/低Na)に弱くないか

この視点は「薬剤そのものの適応・用法用量」から大きく外れずに、医師・薬剤師・看護師が同じ画面で共有できる話題になりやすいのが利点です。

(ナトリウム含有量、Na制限患者への注意、希釈液によるNa負荷:EU SmPCの“Controlled sodium diet”)

高ナトリウム負荷(バイアルNa量・最大1日量の注意)の参考:https://www.pmda.go.jp/drugs/2024/P20240618004/672212000_30600AMX00154_B100_1.pdf

(論文の引用:CRE菌血症における有効性・安全性のレビュー)

臨床アウトカム(CRE菌血症の系統的レビュー)の参考:https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.02603-21