ロコイド軟膏とロコイダン軟膏の違いは?成分の濃度や効果を比較

ロコイド軟膏とロコイダン軟膏の違いを徹底解説

ロコイドとロコイダンの違い早わかり
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分類の違い

ロコイド軟膏は医療用医薬品(先発品)、ロコイダン軟膏は市販薬(OTC医薬品)です。

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濃度の違い

有効成分の濃度が異なります。ロコイド軟膏は0.1%、ロコイダン軟膏は0.05%です。

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価格と入手方法

ロコイド軟膏は医師の処方箋が必要で保険適用。ロコイダン軟膏は薬局・ドラッグストアで直接購入できます。

ロコイド軟膏とロコイダン軟膏の主成分「ヒドロコルチゾン酪酸エステル」の効果と副作用

 

ロコイド軟膏とロコイダン軟膏の有効成分は、どちらも「ヒドロコルチゾン酪酸エステル」です 。これは、ステロイドの一種であり、皮膚の炎症を強力に抑える作用を持っています。具体的には、体内で炎症を引き起こすプロスタグランジンやサイトカインといった化学伝達物質の産生を抑制することで、赤み、腫れ、かゆみなどの不快な症状を和らげます 。

主な効果は以下の通りです。

  • 湿疹・皮膚炎群: アトピー性皮膚炎接触皮膚炎(かぶれ)、脂漏性皮膚炎など、さまざまな皮膚の炎症に効果を発揮します 。
  • 痒疹群: 虫刺され後のしつこいかゆみや、じんましん様苔癬などにも用いられます 。
  • 乾癬: 処方薬であるロコイド軟膏は、乾癬の治療にも適応があります 。

一方で、ステロイドであるため副作用にも注意が必要です。特に長期間、広範囲に使用すると、以下のような局所的な副作用が現れる可能性があります 。

  • 皮膚の萎縮(皮膚が薄くなる)
  • 毛細血管拡張(皮膚の血管が赤く浮き出て見える)
  • ステロイドざ瘡(ニキビのような発疹)
  • 皮膚炎、刺激感、かゆみ

また、非常に稀ですが、特にまぶたなど目の周りに使用する際は注意が必要です。眼圧が上昇したり、緑内障や白内障を引き起こすリスクが報告されています 。医師や薬剤師の指示に従い、適切な量と期間を守って使用することが極めて重要です。

参考リンク:ロコイド軟膏の添付文書情報。詳細な効能効果や副作用について確認できます。
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2646717M1139_1_06/

ロコイド軟膏とロコイダン軟膏の決定的違いは有効成分の「濃度」と「価格」

ロコイド軟膏とロコイダン軟膏の最も大きな違い、それは有効成分「ヒドロコルチゾン酪酸エステル」の濃度にあります 。

以下の表で比較してみましょう。

項目 ロコイド軟膏0.1% ロコイダン軟膏
分類 医療用医薬品(先発医薬品) 市販薬(指定第2類医薬品)
有効成分濃度 0.1% 0.05% (100g中50mg)
入手方法 医師の処方箋が必要 薬局・ドラッグストアで購入可能
価格 保険適用(薬価:1gあたり14.90円) ※別途診察料等が必要 実勢価格(例:16gで1,500円前後)

このように、医師から処方されるロコイド軟膏は0.1%と濃度が高く、それだけ効果も強いと考えられます。一方、市販のロコイダン軟膏は安全性を考慮し、濃度が半分の0.05%に設定されています 。この濃度の違いが、効果の強さや使用できる症状の範囲に影響を与える最も重要なポイントです。

価格面では、ロコイド軟膏は保険が適用されるため自己負担額は抑えられますが、別途診察料が必要です。対してロコイダン軟膏は全額自己負担ですが、急な皮膚トラブルの際に診察なしですぐに購入できるという利便性があります。症状の重さや緊急性に応じて使い分けることが賢明と言えるでしょう。

ロコイド軟膏と使い心地は同じ?基剤となる「添加物」を徹底比較

医薬品の効果や使用感は、有効成分だけでなく、薬の土台となる「基剤」や品質を保つための「添加物」によっても左右されます 。ロコイド軟膏とロコイダン軟膏(クラシエ製)の軟膏剤形同士を比較すると、驚くことに添加物の構成は全く同じです。

  • ロコイド軟膏0.1%の添加物: ステアリルアルコール、パラフィン、白色ワセリン
  • ロコイダン軟膏の添加物: ステアリルアルコール、パラフィン、ワセリン

主成分であるヒドロコルチゾン酪酸エステル以外の成分が同一であるため、軟膏同士の基本的な塗り心地や保湿感に大きな違いはないと考えられます。どちらも油性基剤であるワセリンをースにしており、患部をしっかりと保護し、乾燥を防ぐ特徴があります 。

一方で、同じ「ロコイド」「ロコイダン」ブランドでも、クリーム剤形になると添加物の構成は大きく異なります。

剤形 主な添加物 特徴
ロコイドクリーム0.1% セタノール、流動パラフィン、パラオキシ安息香酸メチル(防腐剤)等 水分と油分が混ざった乳剤性基剤。軟膏よりベタつきが少なく、伸びが良い。ジュクジュクした患部にも使いやすいが、軟膏に比べて刺激を感じることがある 。
ロコイダンクリーム セタノール、流動パラフィン、パラベン(防腐剤)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(乳化剤)等

クリーム剤形同士では、防腐剤の種類(パラオキシ安息香酸メチルかパラベンか)や乳化剤の有無などの違いが見られます。これらの微妙な違いが、肌へのなじみ方や使用感の差として感じられる可能性があります。肌が敏感な方は、添加物の違いにも注目してみるとよいでしょう。

【独自視点】ロコイド軟膏はなぜミディアム?ステロイドの強さと化学構造の秘密

ステロイド外用薬は、その効果の強さによって5つのランクに分類されます。ロコイド軟膏の主成分「ヒドロコルチゾン酪酸エステル」は、下から2番目のIV群「ミディアム(Medium)」に位置づけられています 。

では、なぜ「ウィーク(Weak)」ではなく「ミディアム」なのでしょうか。その秘密は、成分名にある「酪酸エステル」という部分、すなわちその化学構造に隠されています。

もともと人間の体内で作られる副腎皮質ホルモンに「ヒドロコルチゾン(コルチゾール)」があります。このヒドロコルチゾン自体もステロイド外用薬として使われますが、その強さは最も弱いV群「ウィーク」に分類されます 。

1960年代後半、科学者たちはヒドロコルチゾンの効果を高めるため、その化学構造を少しだけ変化させる研究を行いました。その結果、ヒドロコルチゾンの17位という特定の位置に「酪酸」を結合させる(エステル化する)ことで、皮膚への浸透性を高め、抗炎症作用を増強させることに成功したのです 。

この化学的な工夫によって生まれたのが「ヒドロコルチゾン酪酸エステル」です。

  • ヒドロコルチゾン(Weak) → 化学構造を改良 → ヒドロコルチゾン酪酸エステル(Medium)

つまり、ロコイド軟膏が「ミディアム」クラスの強さを持つのは、基本的なステロイド骨格に「酪酸エステル」というパーツを付加することで、効果を一段階アップさせているからなのです。この絶妙な強度の調整が、顔や子どものようなデリケートな部位にも比較的安全に使用でき、かつ十分な治療効果を発揮するという、ロコイド軟膏のユニークなポジションを確立していると言えるでしょう。

参考論文:ステロイドの効力評価に関する論文。化学構造が効果に与える影響について考察されています。
A Novel Approach to Assess the Potency of Topical Corticosteroids

ロコイド軟膏の正しい使い方と注意点|顔や赤ちゃんへの使用は?

ロコイド軟膏やロコイダン軟膏の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるためには、正しい使い方が不可欠です。

基本的な塗り方

  • 使用回数: 通常、1日に1〜数回、患部に適量を塗布します 。入浴後の清潔な皮膚に塗るのが効果的です。
  • 適量: 塗る量の目安として「フィンガーチップユニット(FTU)」が用いられます。これは、大人の人差し指の先から第一関節までチューブから出した量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分の面積に塗るのが目安です 。
  • 塗り方: 患部に薬を“のせる”ように優しく広げます。強く擦り込む必要はありません 。ベタつきが気になる場合は、ティッシュで軽く押さえて余分な軟膏を取り除いても構いません。

部位別の注意点

ロコイド軟膏はミディアムクラスのステロイドであり、比較的様々な部位に使用できますが、特に注意が必要な場所もあります。

  • 😊 顔: 顔は皮膚が薄く、薬の吸収率が高いため、副作用が出やすい部位です。医師の指示がない限り、自己判断で長期間使用するのは避けるべきです。特に目の周りへの使用は、眼圧上昇などのリスクがあるため慎重に行う必要があります 。
  • 👶 赤ちゃん・小児: 子どもは大人に比べて皮膚が薄く、体重あたりの体表面積が大きいため、全身的な影響を受けやすいとされています。ロコイド軟膏は小児にも処方されますが 、使用する量や期間については必ず医師の指示に従ってください。
  • 🚫 陰部: 陰部も皮膚が薄く吸収率が高い部位です。カンジダ症など真菌感染がある場合、ステロイドの使用で悪化することがあるため 、自己判断での使用は危険です。必ず医師の診断を受けてから使用してください。

ひげそり後や、ただれ、じゅくじゅくして傷になっている部位への使用も避けるべきです 。症状が改善しない場合や、悪化した場合は、漫然と使用を続けずに速やかに医師や薬剤師に相談しましょう。

参考リンク:ステロイド外用薬のランクと使い分けについての解説。部位による吸収率の違いなども参考になります。
https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/6778


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