レボフロキサシンとロキソニンを飲んでしまった際の副作用と相互作用

レボフロキサシンとロキソニンを飲んでしまった場合の対処法

併用時の重要ポイント
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相互作用のリスク

中枢神経系への作用が増強され、痙攣のリスクが上昇します。

安全な代替薬

アセトアミノフェンは相互作用のリスクが低く、比較的安全な選択肢です。

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緊急時の対応

万が一服用してしまった場合は、速やかに医師や薬剤師に相談してください。

レボフロキサシンとロキソニンの併用で痙攣リスクが上がる理由

 

レボフロキサシンとロキソニン(ロキソプロフェン)を併用すると、痙攣のリスクが高まることが知られています 。これは、両者の薬物が中枢神経系に及ぼす相互作用によるものです 。

私たちの脳内には、神経の過剰な興奮を抑えるGABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質が存在します 。GABAは、GABAA受容体という受け皿に結合することで、その抑制効果を発揮します 。

参考)KAKEN — 研究課題をさがす


ニューキノロン系抗菌薬であるレボフロキサシンは、単独でもこのGABAA受容体へのGABAの結合をわずかに阻害する作用があります 。一方、ロキソニンのような非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)の一部は、この阻害作用を増強する働きがあるのです 。

参考)《第8回》レボフロキサシンとロキソプロフェンナトリウムの併用…


具体的には、ニューキノロン系薬剤と特定のNSAIDsがGABAA受容体近傍で分子間相互作用を起こし、GABAの結合をより強力に阻害してしまうと考えられています 。これにより、中枢神経の興奮が抑えられなくなり、結果として痙攣が誘発されやすくなるのです 。

参考)https://www.yakugakugakusyuu.com/102-169-2_taisya.html

特に、フェニル酢酸系やプロピオン酸系のNSAIDsでこの作用が強いと報告されていますが、ロキソプロフェン(プロピオン酸系)とレボフロキサシンの組み合わせは、他の組み合わせに比べて痙攣誘発のリスクは低いという報告もあります 。しかし、リスクがゼロではないため、原則として併用には注意が必要です 。

参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |薬事情報センターに寄せられた…

以下に、痙攣誘発のメカニズムをまとめます。

  • レボフロキサシン単独:GABAA受容体へのGABA結合をわずかに阻害 。
  • ロキソニンとの併用:GABAA受容体への結合阻害作用が増強される 。
  • 結果:中枢神経の興奮抑制が低下し、痙攣の閾値(いきち)が下がる。

腎機能が低下している患者や、てんかんなどの痙攣性疾患の既往がある患者では、特に注意が必要です 。

参考)レボフロキサシン – イーヘルスクリニック新宿院

レボフロキサシン服用時の痛み止め、ロキソニン以外の選択肢と注意点

レボフロキサシン服用中に解熱鎮痛剤が必要になった場合、ロキソニン(NSAIDs)以外の選択肢を検討することが推奨されます 。最も安全な代替薬として挙げられるのが「アセトアミノフェン」です 。

アセトアミノフェン(主な製品名:カロナールなど)は、ロキソニンとは異なる作用機序で効果を発揮します 。NSAIDsがプロスタグランジンの産生を抑制するのに対し、アセトアミノフェンは中枢神経系に作用して解熱・鎮痛効果を示すと考えられています。重要なのは、アセトアミノフェンがニューキノロン系抗菌薬との間で痙攣リスクを高めるような相互作用の報告がない点です 。

参考)NSAIDs治療の諸問題~酸分泌抑制薬による薬物療法~


【レボフロキサシン服用中の痛み止め選択肢比較】

| 薬剤の種類 | 代表的な薬剤名 | レボフロキサシンとの併用 | 注意点 |

| :— | :— | :— | :— |

| アセトアミノフェン | カロナール、アンヒバ | ◎ 可能 | 肝機能障害のある患者では注意が必要。1日の最大投与量を守る。 |

| NSAIDs | ロキソニン、イブプロフェン | △ 併用注意 | 痙攣のリスクが上昇する可能性がある 。自己判断での併用は避ける 。 |

どうしてもNSAIDsを使用する必要がある場合は、医師または薬剤師に必ず相談し、リスクとベネフィットを慎重に評価した上で判断することが不可欠です 。市販の鎮痛薬にもロキソプロフェンやイブプロフェンが含まれているものが多いため、患者自身が自己判断で購入・服用しないよう、服薬指導の際に注意喚起することが重要です 。

また、レボフロキサシン自体にも頭痛やめまいなどの副作用があるため、痛みやふらつきが薬剤によるものなのか、原疾患によるものなのかを慎重に見極める必要もあります 。

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

レボフロキサシンとロキソニンの相互作用、薬剤師が確認すべきこと

薬剤師は、レボフロキサシンとロキソニンが同時に処方された際、その相互作用のリスクを評価し、適切な対応をとる重要な役割を担います。たとえ添付文書上で「併用禁忌」ではなく「併用注意」であっても、安易に交付せず、以下の点を確認することが求められます 。

✅患者への確認事項リスト

  • 痙攣性疾患の既往歴てんかんなど、過去に痙攣を起こしたことがあるかを確認します。既往歴のある患者では、痙攣の閾値が低くなっている可能性があります。
  • 他の併用薬:他のNSAIDsや、てんかん治療薬など、中枢神経に影響を与える可能性のある薬剤を服用していないか、お薬手帳や問診で確認します。
  • 腎機能の状態:腎機能が低下している患者では、薬剤の血中濃度が上昇し、副作用のリスクが高まるため、特に注意が必要です。高齢者なども該当します 。
  • 過去の副作用歴:以前にニューキノロン系抗菌薬やNSAIDsで副作用(特にめまい、ふらつきなどの中枢神経症状)を経験したことがないか確認します。

これらの情報を基にリスクが高いと判断した場合は、処方医への疑義照会を検討します。

疑義照会のポイント

  • レボフロキサシンとロキソニンの併用による痙攣リスクを伝えます 。
  • 患者の既往歴や併用薬など、リスクが高いと判断した具体的な理由を説明します。
  • 代替薬としてアセトアミノフェンへの変更が可能かどうかを提案・相談します 。

多くの医療機関でレボフロキサシンとロキソプロフェンの組み合わせが処方されている現状はありますが、それはリスクがないことを意味しません 。薬剤師が専門知識に基づき介入することで、潜在的な副作用を防ぐことができます。

参考)抗菌薬とNSAIDsの処方 – 行政書士・富樫眞一事務所|横…

レボフロキサシンとNSAIDsの併用に関する最新の研究と今後の展望

レボフロキサシンを含むニューキノロン系抗菌薬(NQ)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の相互作用に関する研究は古くから行われていますが、近年でもその安全性や詳細なメカニズムについて新たな知見が報告されています 。

2022年に発表されたシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、レボフロキサシンの臨床的有効性と安全性が評価されており、その副作用にも言及されています 。このような研究は、実際の臨床現場での薬剤使用実態を反映しており、副作用の発生頻度や種類を再評価する上で重要です。

参考)https://downloads.hindawi.com/journals/emi/2022/8788365.pdf

ある国内の調査では、レボフロキサシンと各種NSAIDsを併用した7,597例の市販後調査において、痙攣の発現は認められなかったと報告されています 。この調査で最も多く併用されていたNSAIDsはロキソプロフェンナトリウム(18.2%)でした 。また、動物実験レベルでは、レボフロキサシンが他のNQ系抗菌薬に比べてNSAIDsによる痙攣誘発作用の増強が非常に弱い(約1.2倍程度)ことも示唆されています 。

参考)https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/05404/054040321.pdf

これらのデータは、レボフロキサシンとロキソプロフェンの組み合わせが、他の「NQとNSAIDs」の組み合わせに比べて比較的リスクが低い可能性を示していますが、安全性を保証するものではありません 。

今後の展望としては、以下のような研究が期待されます。

  • 個人差の解明:同じ薬剤を併用しても副作用が出る人と出ない人がいます。この個人差を生む遺伝的な要因(薬物代謝酵素の多型など)や、腸内細菌叢の影響に関する研究が進むことで、より個別化されたリスク評価が可能になるかもしれません。
  • 新しいNSAIDsとの相互作用:COX-2選択的阻害薬など、新しいタイプのNSAIDsとニューキノロン系薬剤との相互作用に関するデータ蓄積が求められます。
  • リアルワールドデータ解析電子カルテレセプトなどの大規模な医療ビッグデータを活用し、より現実の臨床に近い形での副作用発生頻度やリスク因子を解析する研究が重要です。

最新の研究動向を常に把握し、日々の業務に活かしていくことが、医療従事者には求められます。

参考論文:レボフロキサシンの安全性に関するメタアナリシス

Clinical Efficacy and Safety Analysis of Levofloxacin for the Prevention of Infection after Traumatic Osteoarthrosis and Internal Fixation: Systematic Review and Meta-Analysis

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9537031/

レボフロキサシンとロキソニンを飲んでしまった際のQ&Aと具体的な相談先

万が一、レボフロキサシンとロキソニンを一緒に飲んでしまった場合に備え、具体的な対処法や相談先を知っておくことが重要です。

❓Q1. 飲んでしまった直後、どんな症状に注意すればいいですか?

A1. まずは落ち着いて、体調の変化に注意してください 。特に、以下のような中枢神経系の初期症状が現れることがあります。​

  • めまい、ふらつき
  • 眠気、意識がぼんやりする
  • 手のふるえ
  • 不安感、不眠

これらの症状は、必ずしも痙攣の前兆とは限りませんが、副作用のサインである可能性があります。症状が軽い場合でも、車の運転や危険な機械の操作は避けてください。

❓Q2. すぐに病院に行くべきですか?それとも様子を見てもいいですか?

A2. 自己判断で様子を見るのは危険です。たとえ症状がなくても、薬を処方した医師または調剤した薬剤師に速やかに電話で連絡し、以下の情報を正確に伝えてください。

  • いつ(何時ごろ)
  • 何を(レボフロキサシンとロキソニン)
  • どれくらいの量(錠数など)

指示を仰ぎ、必要であれば速やかに医療機関を受診してください。特に、痙攣の既往がある方や高齢者、腎機能が低下している方は、より慎重な対応が必要です。

❓Q3. 夜間や休日に相談できる窓口はありますか?

A3. 診療時間外でかかりつけ医や薬局に連絡がつかない場合は、以下の窓口に相談できます。

【夜間・休日の相談先】

| 相談窓口 | 電話番号 | 特徴 |

| :— | :— | :— |

| 救急安心センター事業 | #7119 | 医師や看護師が24時間体制で対応。救急車を呼ぶべきか、すぐに受診すべきかなどを相談できます。 |

| 地域の夜間・休日診療所 | 各自治体のHP等で確認 | お住まいの地域の当番医や急患センターで対応してもらえます。 |

| 中毒110番 | (大阪)072-727-2499
(つくば)029-852-9999 | 化学物質や医薬品による急性中毒について、専門家が情報提供してくれます(原則として医療機関向け)。 |

これらの情報を患者指導の際にも活用し、万が一の事態に備えておくことが、医療安全の観点から非常に重要です。

参考リンク:レボフロキサシンの添付文書情報

PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)のサイトで、レボフロキサシンの詳細な副作用情報や併用注意薬について確認できます。

PMDA – レボフロキサシン錠添付文書

【第1類医薬品】エンペシドL 6錠