プリンペランとナウゼリンの違い
プリンペラン(メトクロプラミド)とナウゼリン(ドンペリドン)は、いずれもドパミン受容体遮断薬に分類される吐き気止め(制吐薬)です。両剤は主にドパミンD2受容体を阻害することで消化管運動を促進し、嘔気・嘔吐を抑制します。脳の「吐き気を感じるセンサー(CTZ)」にも作用し、嘔吐反射を鎮める効果を持ちますが、薬剤ごとに脳への移行性に違いがあります。プリンペランは血液-脳関門を容易に通過し、中枢作用を発揮しやすい特性があります。一方、ナウゼリンは血液-脳関門を通過しにくいため、脳への影響が少ないのが特徴です。
プリンペランは脳への移行性が高く、警戒すべき副作用として錐体外路症状(運動障害、手足の震え、筋緊張亢進)や精神症状(眠気、精神過敏)が起こりやすいという特性を持ちます。一方、ナウゼリンは中枢系での作用が少ないため、錐体外路症状の発現リスクが低いとされています。ただし内分泌系の副作用(プロラクチン値上昇など)は両薬剤とも記載されています。これにより、小児や高齢者を含む患者ごとのリスク評価が重要となります。
プリンペランは妊娠・授乳中にも比較的安全に使えるとされていますが、ナウゼリンは妊婦には禁忌であり、使い分けには慎重な判断が求められます。小児への投与についても、錐体外路症状のリスクから慎重な用量設定と観察が必要です。海外の安全性評価基準(オーストラリア基準等)も参考になります。安全性情報の詳細は各国添付文書も確認しましょう。
プリンペランとナウゼリンは効果自体に大きな差がないため、副作用リスクや患者属性(妊婦、高齢者、小児、既往歴)を踏まえた使い分けが推奨されます。脳疾患による嘔気にはプリンペランが適している場合もあります。一方、心筋やQT延長など循環器系への注意もナウゼリン使用時に重要で、最新安全性情報は適宜確認が必要です。使用法や効果発現時間も異なるため、薬剤選択時には添付文書を熟読しましょう。
プリンペランは1964年、ナウゼリンは1978年にそれぞれ国際的に誕生。プリンペランが古くから使われてきた背景には、その幅広い適応と安全性評価があります。ナウゼリンは中枢副作用が少ない点から開発された背景があるものの、最近は心臓突然死との関連やQT延長など新しい安全性情報もあり、専門施設では独自の患者選択基準が用いられている例も報告されています。こうした臨床現場ならではの使い分けの工夫は医療者同士の情報共有や論文レビューから学ぶことができます。
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