エピナスチン塩酸塩の目薬はコンタクトの上から?副作用と注意点を解説

エピナスチン塩酸塩目薬とコンタクトレンズの気になる関係

この記事のポイント

コンタクト装用中の点眼

防腐剤の種類によってはコンタクトレンズを外してからの点眼が原則です 。防腐剤フリーの製品は装用中も可能な場合があります 。

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副作用と注意点

主な副作用は目の刺激感や結膜充血です 。症状が強い場合はコンタクトの使用を中止し、医師に相談することが重要です 。

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市販薬との違い

処方薬は高濃度の製品がありますが、市販薬は濃度が低い傾向にあります 。購入時は成分と濃度を確認しましょう。

エピナスチン塩酸塩点眼薬はコンタクト装用中に使える?基本的な考え方

アレルギー性結膜炎の治療に広く用いられるエピナスチン塩酸塩点眼薬ですが、コンタクトレンズ装用中の使用については、一概に「可能」とも「不可能」とも言えないのが現状です 。最も重要な判断基準は、点眼薬に含まれる「防腐剤」の有無とその種類です 。

多くの点眼薬には、品質を保持するために防腐剤として「ベンザルコニウム塩化物」が添加されています 。この成分は、ソフトコンタクトレンズに吸着し、角膜障害を引き起こすリスクがあるため、ベンザルコニウム塩化物を含有する点眼薬は、原則としてコンタクトレンズを外してから使用し、点眼後5~10分以上の間隔をあけてから再装用する必要があります 。

一方で、近年では防腐剤を含まない、あるいはコンタクトレンズへの影響が少ないとされる防腐剤を使用した製品も登場しています 。例えば、代表的なエピナスチン塩酸塩点眼薬である「アレジオンLX点眼液」は、防腐剤フリーであるため、ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズを装用したままでも点眼が可能です 。ただし、カラーコンタクトレンズについては、色素への影響が検討されていないため、使用は避けるべきとされています 。

アレルギー症状が強く出ている時期は、コンタクトレンズの装用自体が症状を悪化させる可能性があるため、装用を中止することが推奨されます 。レンズに付着した花粉やハウスダストなどのアレルゲンが、結膜との接触時間を長引かせてしまうためです。最終的な使用判断は、患者さま個々の目の状態や使用しているコンタクトレンズの種類によって異なるため、必ず医師または薬剤師に相談の上、適切な指示を仰ぐようにしてください 。

コンタクトレンズ装用可否の参考情報として、以下のリンクが有用です。
アレジオン点眼液の効果・副作用を医師が解説。LX(高濃度タイプ)との違いも。 | ユウキ ホームクリニック

知っておきたいエピナスチン塩酸塩の副作用とコンタクトへの影響

エピナスチン塩酸塩は、アレルギー症状の原因となるヒスタミンH1受容体をブロックし、さらにケミカルメディエーターの遊離を抑制することで、目のかゆみや充血を和らげる効果があります 。比較的副作用が少ないとされる薬剤ですが、医療従事者としては、起こりうる副作用について正確に理解し、患者さまへ情報提供することが求められます。

主な副作用としては、以下のような眼症状が報告されています 。

  • 👁️ 眼刺激感: 最も一般的に見られる副作用の一つです。しみるような感覚を訴える場合があります 。
  • 🩸 結膜充血: 薬剤の刺激により、一時的に目が赤くなることがあります 。
  • 😖 その他の症状: 眼の異物感、羞明(まぶしさ)、眼瞼炎、眼痛、流涙、点状角膜炎、眼のかゆみ、眼脂(めやに)などが報告されています 。

これらの副作用の多くは一過性であり、軽度な場合がほとんどです 。しかし、症状が持続したり、悪化したりする場合には、使用を中止し、速やかに医師の診察を受けるよう指導することが重要です。

コンタクトレンズ装用者が特に注意すべき点は、これらの副作用がコンタクトレンズによる物理的な刺激と相まって、より強く感じられる可能性があることです。例えば、点眼薬による刺激感と、レンズの乾燥や汚れによる異物感が重なることで、不快感が増大するケースが考えられます。また、副作用として眼脂が増加した場合、レンズが汚れやすくなり、視界の曇りや感染症のリスクを高めることにも繋がりかねません。

添付文書では、副作用の頻度について詳細なデータが記載されています。臨床試験のデータなどを参考に、具体的な発現率を患者さまに説明することも、インフォームドコンセントの観点から有益でしょう。

副作用に関する詳細な情報源として、以下の医薬品情報をご参照ください。
医療用医薬品 : エピナスチン塩酸塩

エピナスチン塩酸塩点眼薬の防腐剤は大丈夫?コンタクトレンズへの吸着リスク

多くの医療用点眼薬には、開封後の細菌汚染を防ぎ、薬液の安定性を保つ目的で防腐剤が添加されています 。その代表的な成分が「ベンザルコニウム塩化物」です 。この成分は優れた防腐効果を持つ一方で、特にソフトコンタクトレンズとの相性が悪いことが知られています 。

ベンザルコニウム塩化物は陽イオン性の界面活性剤であり、マイナスに帯電しているソフトコンタクトレンズの素材に吸着しやすい性質を持っています 。レンズに吸着・蓄積されたベンザルコニウム塩化物は、角膜上皮細胞に対して毒性を示し、角膜びらんや点状表層角膜症といった角膜障害を引き起こす原因となり得ます。そのため、ベンザルコニウム塩化物を含有する点眼薬を使用する際は、必ずコンタクトレンズを外すよう指導しなければなりません 。

以下に、防腐剤とコンタクトレンズの関係についてまとめます。

防腐剤の種類 特徴 ソフトコンタクトへの影響
ベンザルコニウム塩化物 強力な防腐効果を持つが、細胞毒性も指摘される 。 レンズに吸着・蓄積しやすく、角膜障害のリスクがあるため装用中の使用は原則禁止 。
ホウ酸 静菌作用を持つ。ベンザルコニウム塩化物を含まない製品の防腐システムとして利用されることがある 。 レンズへの吸着が少なく、影響は小さいとされる 。
防腐剤フリー 防腐剤を一切含まない。1回使い切りタイプや、特殊なフィルター付き容器が採用される 。 レンズへの影響がなく、装用したまま点眼が可能 。

エピナスチン塩酸塩点眼薬には、ベンザルコニウム塩化物を含む製品と、含まない製品(例:アレジオンLX点眼液)が存在します 。処方・投薬の際には、患者さまがコンタクトレンズを使用しているかを確認し、使用している場合はレンズの種類(ハード、ソフト、使い捨て、カラーなど)を把握した上で、適切な製剤を選択し、正しい使用方法を指導することが極めて重要です。

防腐剤に関するより詳しい情報はこちらの文献で確認できます。
Chemical eye injury: pathophysiology, assessment and management

【独自視点】エピナスチン塩酸塩とドライアイ:コンタクトユーザーが注意すべき点

アレルギー性結膜炎の患者さま、特にコンタクトレンズを装用している方の中には、ドライアイを併発しているケースが少なくありません。アレルギー反応による炎症が涙液層の安定性を損なうことや、コンタクトレンズの装用自体が涙の蒸発を促進することなどが原因として考えられます。ここで注目したいのが、アレルギー治療薬であるエピナスチン塩酸塩が、ドライアイの症状に与える潜在的な影響です。

エピナスチン塩酸塩は抗ヒスタミン作用を持ちますが、一部の抗ヒスタミン薬には抗コリン作用も併せ持つものがあり、涙液の分泌を減少させる可能性が指摘されています。エピナスチン塩酸塩の抗コリン作用は比較的弱いとされていますが、ドライアイの素因を持つ患者さまや、コンタクトレンズ装用によって目が乾燥しやすい状態にある患者さまでは、その影響が顕在化する可能性も否定できません。

✨ 臨床現場での観察ポイント ✨

  • 乾燥感の増強: エピナスチン塩酸塩点眼薬の使用開始後、患者さまが目の乾燥感の増強を訴えないか注意深く観察します。
  • コンタクトレンズの装用時間の変化: 以前よりも短い時間でコンタクトレンズが乾く、ゴロゴロするといった訴えがないか確認します。
  • 涙液層破壊時間(BUT)の評価: ドライアイが疑われる場合は、BUT検査などで涙液層の安定性を客観的に評価することも有効です。

もし、エピナスチン塩酸塩の使用によって乾燥感が悪化するような傾向が見られた場合、以下のような対策が考えられます。

  1. 人工涙液の併用: 防腐剤フリーの人工涙液を積極的に併用し、眼表面の潤いを保つよう指導します 。特に、コンタクトレンズ装用中は、こまめな点眼が効果的です 。
  2. コンタクトレンズの見直し: より含水率の低い素材や、シリコーンハイドロゲル素材など、乾燥しにくいとされるコンタクトレンズへの変更を検討します。
  3. 点眼薬の変更: 他の作用機序を持つ抗アレルギー点眼薬(ケミカルメディエーター遊離抑制薬など)への変更を検討することも一つの選択肢です。

アレルギー性結膜炎とドライアイは、互いに症状を悪化させあう悪循環に陥りやすい疾患です。アレルギー症状のコントロールだけでなく、眼表面の潤いを保つという視点を持つことが、コンタクトレンズを装用する患者さまのQOL(生活の質)を維持する上で非常に重要となります。

市販薬はある?処方されるエピナスチン塩酸塩点眼薬との違いと比較

エピナスチン塩酸塩は、医療用医薬品だけでなく、OTC医薬品(市販薬)としても販売されています。患者さまから「市販薬ではダメなのか?」といった質問を受けることも想定されるため、両者の違いを正確に理解しておくことが大切です。

最も大きな違いは、有効成分であるエピナスチン塩酸塩の「濃度」です。

  • 医療用医薬品: 主に0.05%の製剤と、高濃度タイプの0.1%の製剤(例: アレジオンLX点眼液)があります 。0.1%製剤は1日2回の点眼で効果が持続するのが特徴です 。
  • 市販薬: 医療用と同濃度の製品も一部存在しますが、多くはアレルギー症状の緩和を目的とした複合的な成分配合の一部として含まれている場合があります 。購入時には、エピナスチン塩酸塩の含有量を確認することが重要です。

以下に、医療用と市販薬の一般的な違いをまとめました。

項目 医療用医薬品(処方薬) OTC医薬品(市販薬)
有効成分濃度 高濃度の選択肢がある(0.05%、0.1%) 製品によって異なるが、一般的に処方薬より低濃度か、同等
防腐剤 ベンザルコニウム塩化物含有品と防腐剤フリーの製品がある 製品による。コンタクト用は防腐剤に配慮されているものが多い
適応 アレルギー性結膜炎 花粉、ハウスダストなどによる目のかゆみ、充血など
入手方法 医師の診断・処方箋が必要 薬局・ドラッグストアで購入可能
保険適用 適用される 適用されない(全額自己負担)

市販薬は手軽に購入できる利便性がありますが、自己判断での使用には注意が必要です。特に、症状が長引く場合や、市販薬を使用しても改善が見られない場合は、単なるアレルギー性結膜炎ではない他の眼疾患の可能性も考えられます。必ず眼科を受診し、正確な診断を受けるよう指導することが、患者さまの目の健康を守る上で最も重要です。

また、医療用医薬品である「アレジオンLX点眼液0.1%」は、防腐剤フリーでありながら1日2回の使用で効果が持続するという臨床上のメリットがあります 。コンタクトレンズを長時間装用する患者さまや、日中の点眼が難しい患者さまにとっては、処方薬を選択する大きな利点となるでしょう。

市販のコンタクト用目薬の成分情報として、以下の製品情報が参考になります。
スマイルコンタクトピュア|目薬・アイケア | ライオン株式会社