エバスチンの強さを徹底解説
エバスチンの強さを他の第二世代抗ヒスタミン薬と比較
エバスチンは、花粉症やアレルギー性鼻炎、蕁麻疹などの治療に用いられる第二世代抗ヒスタミン薬です 。抗ヒスタミン薬の「強さ」は、アレルギー症状を抑える効果の高さと、副作用である眠気の少なさのバランスで評価されることが一般的です 。
第二世代抗ヒスタミン薬は、第一世代に比べて眠気の副作用が大幅に軽減されているのが特徴です 。その中でも、エバスチン(商品名:エバステルなど)は、効果と眠気のバランスが比較的良い薬として位置づけられています 。
以下に、代表的な第二世代抗ヒスタミン薬とエバスチンの特徴を比較した表を示します。
| 薬品名(一般名) | 効果の強さ(イメージ) | 眠気の少なさ(イメージ) | 1日あたりの服用回数 | 食事の影響 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| エバステル(エバスチン) | 中程度 | 比較的少ない | 1回 | 受けにくい | 1日1回の服用で効果が持続しやすい |
| アレグラ(フェキソフェナジン) | 弱め〜中程度
参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/82457f09fe9d10145d60f522cd864aae.pdf |
非常に少ない | 2回 | 受けやすい | 眠気が最も出にくい薬の一つとして知られる
|
| クラリチン(ロラタジン) | 弱め〜中程度 | 少ない | 1回 | 受けにくい | 眠気が出にくく、1日1回服用で済む |
| ジルテック(セチリジン) | 強め
参考)抗アレルギー薬とは?強さのランキングを一覧で掲載|千葉内科在… |
やや出やすい | 1回 | 受けにくい | 効果が強いが、やや眠気が出やすい |
| ザイザル(レボセチリジン) | 強め
参考)花粉症の薬 強さ(効果)と眠気(副作用)のバランス – ブロ… |
やや出やすい | 1回 | 受けにくい | ジルテックの改良版で、少量で効果が持続 |
| アレロック(オロパタジン) | 非常に強い | 出やすい | 2回 | どちらでもない | 効果が非常に強いが、眠気も出やすい傾向がある |
| タリオン(ベポタスチン) | 強め | やや出やすい | 2回 | 受けにくい | 即効性が高く、服用後比較的早く効果が現れる |
この表からわかるように、エバスチンは効果と眠気のバランスが取れた薬剤と言えます 。効果の強さを最優先するならアレロックやザイザル、眠気のなさを最優先するならアレグラといった選択肢がありますが、エバスチンは「効果も欲しいけれど、眠気はできるだけ避けたい」という方にとって有力な選択肢の一つとなるでしょう 。
最終的にどの薬が最適かは、個人の体質や症状、ライフスタイルによって異なります 。医師と相談し、自分に合った薬を見つけることが重要です。
参考)アレルギー薬に強さの違いはある?タイプ別おすすめ市販薬ランキ…
エバスチンの効果と特徴的な作用機序
エバスチンは、アレルギー症状を引き起こす原因物質であるヒスタミンの働きをブロックすることで効果を発揮します 。これは、第二世代抗ヒスタミン薬に共通する基本的な作用機序です 。
しかし、エバスチンには他の薬剤と少し異なる特徴的な体内動態があります 。エバスチンは服用後、体内で速やかに代謝され、そのほとんどが活性代謝物である「カレバスチン」に変化します 。実際にアレルギーを抑える作用の主体を担っているのは、このカレバスチンなのです 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1386625/
エバスチン(プロドラッグ) → カレバスチン(活性代謝物)
このように、体内で代謝されてから効果を発揮する薬を「プロドラッグ」と呼びます 。エバスチンがプロドラッグであることには、いくつかの利点があります。
- 効果の持続性: カレバスチンの血中濃度は緩やかに上昇し、長時間にわたって安定した効果を維持することができます 。そのため、エバスチンは1日1回の服用で24時間効果が持続するとされています 。
- 副作用の軽減: エバスチン自体は脳に移行しにくく、活性本体であるカレバスチンも脳への移行が少ないため、中枢神経抑制作用、つまり眠気や集中力の低下といった副作用が出にくいと考えられています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1386626/
さらに、高濃度ではヒスタミンH1受容体拮抗作用に加えて、アレルギー反応に関わる他の化学伝達物質(メディエーター)の遊離を抑制する作用も報告されています 。これにより、多角的にアレルギー症状を抑える効果が期待できます。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/arerugi/JY-00596.pdf
エバスチンの効果が期待できる具体的な疾患は以下の通りです 。
参考)エバスチン錠10mg|処方箋なし市販で薬局で購入できる薬
- 蕁麻疹
- 湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚瘙痒症
- アレルギー性鼻炎
これらの症状に対して、エバスチン(カレバスチン)がヒスタミンのH1受容体への結合を阻害し、アレルギー反応を抑制します 。
以下の参考資料は、エバスチンの作用機序について、より専門的な情報を提供しています。
エバスチンの作用機序に関する詳細情報
エバスチンの副作用で眠気はどの程度?
エバスチンは第二世代抗ヒスタミン薬に分類され、第一世代の薬剤と比較して眠気の副作用が大幅に軽減されています 。臨床試験のデータでも、エバスチン10mgの服用ではプラセボ(偽薬)と比較して眠気を引き起こす有意な差は認められなかったと報告されています 。
ただし、「全く眠くならない」というわけではありません。副作用の現れ方には個人差が大きく、エバスチンを服用した人の中で1%以上の頻度で眠気が報告されています 。また、倦怠感を伴うこともあります 。
参考)エバスチン錠10mg「サワイ」の効能・副作用|ケアネット医療…
エバスチンの眠気の程度を他の薬と比較すると、「比較的少ない」グループに位置づけられます 。
眠気の少ない薬の例
- アレグラ(フェキソフェナジン)
- クラリチン(ロラタジン)
- デザレックス(デスロラタジン)
- ビラノア(ビラスチン)
眠気が出やすい薬の例
- アレロック(オロパタジン)
- ジルテック(セチリジン)
- ザイザल(レボセチリジン)
参考)アレルギー症状・治療お役立ち事典(さまざまな治療とアレルギー…
エバスチンは、この中間、もしくはやや眠気の少ない側に位置すると考えられています 。
もしエバスチンを服用して眠気を感じる場合は、以下のような対策を検討してみてください。
- 服用タイミングの変更: 1日1回の服用で効果が持続するため、就寝前に服用することで、日中の眠気を軽減できる可能性があります。
- 医師への相談: 眠気が日常生活に支障をきたす場合は、我慢せずに医師や薬剤師に相談しましょう。より眠気の少ない他の薬剤への変更などを検討してもらえます。
眠気以外に報告されているエバスチンの副作用としては、以下のようなものがあります 。
- 口渇、胃部不快感: 1%以上の頻度で報告されています 。
- 頭痛、動悸、血圧上昇: 0.1%未満の頻度ですが、報告があります 。
- 発疹、浮腫、蕁麻疹: 頻度不明ですが、過敏症の症状として現れることがあります 。
- 肝機能障害: AST、ALTなどの肝機能検査値の上昇が報告されています 。
これらの副作用は稀ですが、もし服用後に体調の変化を感じた場合は、速やかに医療機関を受診してください。特に、心臓に影響を与える可能性のある薬剤との併用には注意が必要であり、過去にはQT延長のリスクについて研究されたこともあります 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2014528/
以下の参考資料は、エバスチンの副作用について網羅的に記載されています。
エバスチンの副作用に関する詳細情報
エバスチンの市販薬と処方薬における違い
2024年現在、エバスチンの有効成分「エバスチン」を含む市販薬は販売されていません 。以前は「エバステルAL」という名称で市販されていましたが、現在は生産中止となっています 。
したがって、エバスチンを使用したい場合は、医師の診察を受けて処方してもらう必要があります 。
処方薬としては、先発医薬品の「エバステル」と、複数のジェネリック医薬品(後発医薬品)があります 。ジェネリック医薬品は、「エバスチン錠・OD錠『メーカー名』」といった名称で処方されます。
| 市販薬 | 処方薬 | |
|---|---|---|
| 入手方法 | なし
参考)エバステル®(エバスチン)に市販薬はある?類似した作用の薬を… |
医師の処方箋が必要 |
| 成分 | – | エバスチン |
| 種類 | – | 先発医薬品(エバステル)、ジェネリック医薬品 |
| 保険適用 | – | 適用あり |
| 価格 | – | 薬価基準に基づいて定められている(自己負担は通常3割) |
エバスチンと同じ第二世代抗ヒスタミン薬の中には、市販薬として購入できる成分もあります。
市販で購入可能な第二世代抗ヒスタミン薬の例
- フェキソフェナジン(アレグラFXなど)
- ロラタジン(クラリチンEXなど)
- エピナスチン塩酸塩(アレジオン20など)
- セチリジン塩酸塩(コンタック鼻炎Z、ストナリニZなど)
これらの市販薬は、比較的症状が軽い場合や、すぐに医療機関を受診できない場合の選択肢となります。ただし、市販薬を使用しても症状が改善しない場合や、どの薬を選べばよいかわからない場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。
特に重要なのは、処方薬と市販の抗ヒスタミン薬を自己判断で併用しないことです 。成分が重複し、副作用が強く出る危険性があります。現在何らかの薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝え、飲み合わせを確認してもらうようにしましょう 。
エバスチン服用時の注意点とあまり知られていない相互作用
エバスチンを服用する際には、眠気以外にもいくつか注意すべき点があります。特に、他の薬剤との相互作用については、あまり知られていないものもあるため、医療従事者として正しく理解しておくことが重要です。
基本的な注意点
- 眠気や集中力低下: 副作用として眠気や倦怠感が現れることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないように注意が必要です 。
- 過敏症: 発疹、浮腫、じん麻疹などの過敏症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医師に相談してください 。
- 肝機能障害: 長期にわたって服用する場合は、定期的に肝機能検査を行うことが望ましいとされています。
薬剤相互作用
エバスチンは、主に肝臓の薬物代謝酵素であるCYP3A4によって代謝されます。そのため、CYP3A4の働きを阻害する薬剤と併用すると、エバスチンの血中濃度が上昇し、副作用のリスクが高まる可能性があります。
併用に注意が必要な薬剤の例
これらの薬剤は処方薬ですが、市販薬やサプリメントの中にもCYP3A4に影響を与える成分が含まれていることがあるため注意が必要です。例えば、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含有するサプリメントは、薬物代謝酵素に影響を与えることが知られています。
あまり知られていない意外な相互作用
- グレープフルーツジュース: グレープフルーツに含まれる成分がCYP3A4の働きを阻害するため、エバスチンの作用が増強され、副作用が出やすくなる可能性があります。エバスチン服用中は、グレープフルーツジュースの摂取を避けるのが賢明です。
- アルコール(飲酒): アルコールは中枢神経抑制作用があるため、エバスチンの眠気の副作用を増強させる可能性があります。服用中の飲酒は避けるべきです。
また、エバスチンは心臓のQT間隔を延長させる可能性が完全には否定できません 。そのため、QT延長を引き起こす可能性のある他の薬剤との併用や、電解質異常(低カリウム血症など)のある患者への投与は慎重に行う必要があります。
これらの情報は、患者への服薬指導において非常に重要です。特に、市販薬やサプリメントを日常的に利用している患者に対しては、詳細な聞き取りを行い、潜在的な相互作用のリスクを評価することが求められます。
以下の論文では、エバスチンの薬物動態について詳細に述べられており、相互作用を理解する上で参考になります。
The pharmacokinetics, antihistamine and concentration-effect relationship of ebastine in healthy subjects.

【第2類医薬品】ロラタジンRX 40錠