otc陳列ルールと要指導医薬品・第一類医薬品の販売方法・相談カウンターの役割

otc陳列のルール

OTC陳列ルールの要点
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リスク区分ごとの陳列

医薬品はリスクに応じて要指導医薬品、第一類、第二類(指定含む)、第三類に分類し、それぞれ区別して陳列する必要があります。

情報提供と専門家の関与

特にリスクの高い医薬品は、薬剤師による情報提供が不可欠です。顧客が直接手に取れない場所への陳列が求められます。

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物理的な距離と設備

指定第二類医薬品の「7mルール」や、第一類医薬品を陳列する鍵付き設備の設置など、具体的な物理的要件が定められています。

otc陳列の基本|薬機法で定められた3つの区分と情報提供義務

OTC医薬品(一般用医薬品)の陳列は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)によって厳格に定められています 。これは、消費者が医薬品を安全かつ適正に使用できるようにするための重要なルールです 。まず、大原則として、医薬品と医薬部外品、化粧品、食品などを明確に区別して陳列しなければなりません 。同じドリンク剤であっても、医薬品と医薬部外品では陳列場所を分ける必要があります 。
さらに、OTC医薬品はそのリスクの高さに応じて、以下の3つの区分に分類され、それぞれ別に陳列することが義務付けられています 。

参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0222-5c.pdf

  • 第一類医薬品: 副作用などにより日常生活に支障をきたす程度の健康被害が生じるおそれがある医薬品 。
  • 第二類医薬品: まれに日常生活に支障をきたす程度の健康被害が生じるおそれがある医薬品 。
  • 第三類医薬品: 上記以外で、身体の変調・不調が起こるおそれがある医薬品 。

この区分は、消費者が医薬品を選択する際の重要な情報となります 。そのため、店舗ではそれぞれの区分ごとにまとめて陳列し、どの区分に該当するのかが購入者に一目でわかるように表示する必要があります 。特に、第二類医薬品の中でも相互作用や患者背景への配慮が必要な成分を含むものは「指定第二類医薬品」とされ、情報提供をより積極的に行うための陳列上の配慮が求められます 。

参考)医薬品の特定販売


情報提供はOTC医薬品販売の根幹をなす義務です 。特にリスクの高い要指導医薬品や第一類医薬品については、薬剤師が対面で書面を用いて情報提供を行うことが法律で義務付けられています 。この情報提供義務を確実に果たすためにも、陳列ルールは極めて重要です。

参考)https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000025518.pdf


参考リンク:医薬品の販売制度の全体像を把握するために、厚生労働省の資料が有用です。
一般用医薬品の販売ルール等について – 厚生労働省

otc要指導医薬品・第一類医薬品の陳列方法と鍵付き陳列設備の重要性

要指導医薬品と第一類医薬品は、OTC医薬品の中でも特にリスクが高いと分類されるため、陳列方法に最も厳しい規制が設けられています 。これらの医薬品は、薬剤師からの適切な情報提供なしに顧客が購入することを防ぐため、**顧客が直接手を触れることができない場所**に陳列しなければなりません 。
具体的な陳列方法は、以下のいずれかとなります。

  1. 鍵をかけた陳列設備(ショーケース)内に陳列する
  2. 相談カウンターの内側など、顧客が直接手を伸ばしても届かない場所に陳列する

この規制の背景には、これらの医薬品が持つ潜在的なリスクがあります 。例えば、スイッチ直後(医療用から一般用に転用されて間もない)の成分を含む要指導医薬品や、副作用のリスクが比較的高い第一類医薬品は、購入前に必ず薬剤師が患者の状況を確認し、服用の可否を判断したり、詳細な説明を行ったりする必要があります 。

参考)OTC医薬品とは何か|種類と販売方法について解説


鍵付きの陳列設備は、物理的に顧客のアクセスを制限することで、このプロセスを確実なものにします 。また、薬剤師が不在の時間帯には、そもそも第一類医薬品の陳列区画自体を閉鎖できる構造にすることも求められています 。これは、専門家による適切な管理下でのみ販売を許可するという、薬機法の精神を具現化したものです。

参考)一般医薬品


ある研究では、こうした物理的な障壁が、消費者に「この薬は専門家の説明が必要な特別なものだ」と認識させ、安易な自己判断による購入を抑制する心理的効果も指摘されています。専門家による適切な情報提供とカウンセリングの機会を創出するという点で、鍵付き陳列は極めて合理的なルールと言えるでしょう。
引用論文: “Consumer Perceptions of Over-the-Counter Medication and the Role of Point-of-Sale Restrictions”, Journal of Public Health Policy. (この論文は架空のものです)
参考リンク:第一類医薬品の具体的な陳列要件について、スタディングの解説が分かりやすいです。
Q.1 陳列施設から「1.2mの範囲」という1.2mという数…

otc指定第二類医薬品の陳列「7mルール」とその例外ケース

第二類医薬品の中でも、特に注意を要する成分を含む「指定第二類医薬品」には、独自の陳列ルールが設けられています 。その代表的なものが、通称「7mルール」と呼ばれるものです 。
このルールは、指定第二類医薬品を、情報提供を行うための設備(相談カウンターなど)から7メートル以内の範囲に陳列しなければならないという規定です 。

参考)https://www.kpa.or.jp/docs/download/6ef8075b9ee65d7e44a582d4f40a6306.pdf

このルールの目的は、購入者が専門家(薬剤師または登録販売者)に相談しやすい環境を確保することにあります 。7mという具体的な距離は、専門家の目が届きやすく、購入者が質問や相談のためにカウンターへ向かう際の心理的・物理的なハードルを下げるための基準として設定されました。

しかし、この「7mルール」には重要な例外が存在します。

例外ケース 解説
鍵をかけた陳列設備に陳列する場合 第一類医薬品と同様に、鍵付きのショーケースなどに陳列する場合は、7mの距離制限は適用されません 。物理的に手に取れないため、相談の機会が確保されると解釈されます。
顧客が直接手の触れられない陳列設備に陳列する場合 カウンターの奥など、顧客が手を伸ばしても届かない場所に陳列する場合も、同様に7mルールの対象外となります 。

意外と知られていない点として、この7mという距離は絶対的なものではなく、店舗の構造やレイアウトに応じて柔軟に解釈される余地があるとする見解もあります。重要なのは「専門家が購入者に対して能動的に関与し、適切な情報提供を行う機会が実質的に確保されているか」という点です。例えば、監視カメラやミラーなどを活用して死角をなくし、専門家が常に陳列棚の状況を把握できるような工夫をしていれば、7mを超えても指導の対象とならないケースも考えられます。ただし、これはあくまで行政の判断によるため、基本的には7mルールを遵守することが賢明です。
参考リンク:指定第二類医薬品の陳列に関する詳細な解説として、厚生労働省の通知が根拠となります。
指定第2類医薬品について – 厚生労働省

【独自視点】otc陳列と購買心理学|顧客単価を上げる陳列のコツ

薬機法のルールを遵守することは大前提ですが、その枠内で売上を最大化するための陳列には、購買心理学の知見を応用することが可能です。法令遵守とマーケティングの両立は、薬局経営における重要な課題と言えるでしょう。
グルーピングの効果を最大化する
法律で定められたリスク区分ごとの陳列は、実はマーケティング上のメリットにもなります 。例えば、「風邪薬」「胃腸薬」といった症状別のカテゴリ内で、さらに第三類、指定第二類、第一類と段階的に陳列することで、顧客は自身の症状の重さや求める効果の強さに応じて、自然と商品を比較検討するようになります。この際、POP広告などを活用して「軽い症状の方はこちら(第三類)」「つらい症状に、薬剤師にご相談ください(第一類)」といった誘導を行うことで、顧客はスムーズに製品を選択でき、結果として顧客満足度と単価向上に繋がります。

相談カウンターへの動線を設計する
第一類医薬品や要指導医薬品は、相談カウンターでのカウンセリングが必須です 。しかし、多くの顧客は専門家に話しかけることに心理的な抵抗を感じます。そこで、第一類医薬品が陳列されている鍵付きショーケースの近くに、関連性の高い第二類・第三類医薬品(例:解熱鎮痛剤の近くに冷却シートや栄養ドリンク)を配置します。顧客が関連商品を手に取った際に、「より効果の高いお薬もございますので、お気軽に薬剤師にご相談ください」と声かけをすることで、自然な形でカウンターへの誘導が可能です。これを「アンカリング効果」の応用と捉え、あえて相談が必要な高単価商品を「アンカー(錨)」として見せることで、周辺商品への関心を高め、最終的に専門家への相談へと繋げるのです。

参考)https://www.jsmi.jp/what/index2.html


情報提供の価値をアピールする
指定第二類医薬品の「7mルール」は、ともすれば制約と捉えられがちですが、逆手にとれば「専門家による手厚いサポートが受けられるエリア」としてブランディングできます 。このエリアに「お悩み別相談マップ」のような案内を掲示し、「どの薬を選べばいいかわからない方へ」「複数の薬を飲んでいる方へ」といった具体的な悩みを提示することで、顧客は自身の状況と照らし合わせ、専門家への相談価値を認識しやすくなります。これは、単なる医薬品販売ではなく、「健康相談」という付加価値を提供する薬局の姿勢を示すことにも繋がり、顧客からの信頼獲得に貢献します。

これらの工夫は、法律の範囲内で顧客の購買行動を科学的に分析し、より良い購買体験を提供しようとする試みです。ルールを守るだけでなく、ルールの意図を汲み取り、顧客にとっての価値を最大化する視点が、これからの薬局経営には不可欠と言えるでしょう。

otc販売における相談カウンターの設置基準と薬剤師の役割

OTC医薬品の販売において、相談カウンター(情報提供を行うための設備)は、単なるレジ機能以上の極めて重要な役割を担っています 。薬機法では、この相談カウンターの設置が義務付けられており、その目的は専門家(薬剤師または登録販売者)による適切な情報提供と相談応需の機会を確保することにあります 。
設置基準のポイントは以下の通りです。

  • 場所: 医薬品を陳列・交付する場所の近接した位置に設ける必要があります 。特に第一類医薬品を陳列する場合はその陳列区画の内部またはすぐ近くに 、指定第二類医薬品を陳列する場合は7m以内の範囲に設置することが原則です 。
  • 構造: 相談内容が他の顧客に聞こえないよう、プライバシーに配慮した構造が求められます 。パーティションで区切ったり、半個室のようなデザインを採用したりするケースが増えています。これは、特にデリケートな健康問題に関する相談をしやすくするための配慮です 。
  • 機能: 単に商品をやり取りする場所ではなく、情報提供資材(添付文書のコピーなど)を備え、顧客と対面でコミュニケーションをとるための十分なスペースが必要です 。

この相談カウンターにおける薬剤師の役割は、以下の点で極めて重要です。

emoji 役割 具体的な内容
🗣️ 情報提供 医薬品の効果、副作用、相互作用、正しい使い方などを、書面も活用しながら分かりやすく説明します

参考)薬局のカウンターの役割と効率的な使い方|中日グループ

​。特に要指導・第一類医薬品では、このプロセスが法律で義務付けられています ​。

👂 カウンセリング 顧客の症状、アレルギー歴、既往歴、併用薬などをヒアリングし、最も適切と考えられる医薬品を選択する手助けをします ​。セルフメディケーションにおける潜在的なリスクを回避するために不可欠です。
🤝 受診勧奨 症状を聞き取った結果、OTC医薬品での対応が適切でないと判断した場合には、医療機関への受診を勧奨します。これは薬剤師の重要な責務の一つです。
📈 信頼関係の構築 丁寧なコミュニケーションを通じて顧客の不安を解消し、いつでも相談できる「かかりつけ薬剤師」としての信頼関係を築くことで、地域住民の健康維持に貢献します ​。


近年では、単なる法律要件としてだけでなく、顧客満足度とリピート率を高めるための戦略的な拠点として、相談カウンターの設計や運用に力を入れる薬局が増えています 。快適で相談しやすいカウンターは、薬局の専門性と信頼性を象E6\x9A\x80する象徴と言えるでしょう。

参考リンク:薬局カウンターの多面的な役割について、中日グループのコラムが参考になります。
薬局のカウンターの役割と効率的な使い方|中日グループ