ステロイドを急にやめる症状と離脱症状の副作用や対処法

ステロイドを急にやめることによる症状

ステロイドを急にやめた時に起こる3つのこと
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副腎不全

長期間のステロイド使用で副腎の機能が低下。急にやめるとホルモン不足になり、倦怠感や低血圧などの症状が出ます。

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リバウンド現象

抑えられていた元の病気の症状が、薬の中止によって一気に悪化する状態です。特に皮膚症状で顕著に見られます。

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精神症状

気分の落ち込みやイライラ、不眠など、精神面にも影響が出ることがあります。生活の質(QOL)の低下につながることも。

ステロイドを急にやめた際の離脱症状と副腎不全の危険性

 

ステロイド薬を自己判断で急に中止することは、体に様々なリスクをもたらします 。最も注意すべきなのが「ステロイド離脱症候群」とそれに伴う「副腎不全」です 。

長期間ステロイドを服用していると、体は外部からステロイドホルモンが供給される状態に慣れてしまい、自分自身でホルモンを分泌する副腎の機能が低下、あるいは停止してしまいます 。この状態で突然ステロイドの供給を断つと、体内が深刻なステロイドホルモン不足に陥ります 。これが副腎不全と呼ばれる状態で、以下のような多彩な症状を引き起こします。

参考)ステロイド全身投与のデメリット

これらの症状は非特異的であるため、他の疾患と見間違われる可能性もあります 。しかし、ステロイドを長期服用していた患者が急に中止した後にこれらの症状が現れた場合は、ステロイド離脱症候群を強く疑う必要があります 。副腎機能が正常に回復するまでには、数ヶ月から1年以上かかることもあり、その間は少量のステロイド補充が必要になる場合があります 。自己判断での中止は絶対に避け、必ず医師の指示に従ってください 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7509117/

副腎皮質機能の抑制に関する参考情報。

日本薬学会 ファルマシア「医薬品適正使用のためのヒヤリ・ハットの収集・分析と活用」 この資料では、ステロイドの副作用としての副腎皮質機能抑制とその対策について詳しく解説されています。

ステロイドのリバウンド現象とそのメカニズム

ステロイドの使用を急に中止した際に起こるもう一つの深刻な問題が「リバウンド現象」です 。これは、ステロイドによって抑制されていた原疾患の症状が、薬剤の中止によって以前よりも激しく再燃・悪化することを指します 。特にアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患でよく見られます。

ステロイド外用薬は、その強力な抗炎症作用によって、皮膚の炎症やかゆみを抑え込みます 。しかし、これは根本的な治療ではなく、あくまで症状をコントロールしている状態です 。長期間の使用後、自己判断で急に使用を中止すると、抑えが効かなくなった炎症が一気に噴出し、もともとの症状が急激に悪化してしまうのです 。

参考)ステロイド離脱(脱ステロイド)|免疫力・自然治癒力を高める陳…

リバウンド現象でみられる主な症状は以下の通りです。

  • 皮膚症状の悪化: 以前よりも強い赤み、腫れ、かゆみ、熱感、滲出液(じゅくじゅくした液体)の増加 。
  • 皮膚の菲薄化・毛細血管拡張: 長期使用による副作用として皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張して赤ら顔になったりすることがあります 。中止後にこれらの症状がより目立つこともあります。
  • 感染症のリスク: ステロイドは免疫を抑制する作用があるため、中止後に皮膚のバリア機能が低下し、細菌や真菌(カビ)、ウイルスに感染しやすくなることがあります 。特に黄色ブドウ球菌による二次感染が報告されています 。

このリバウンド現象は、ステロイドへの「依存」状態(Topical Steroid Addiction/Withdrawal, TSA/TSW)として近年注目されており、特にソーシャルメディア上で患者間の情報交換が活発になっていますが、皮膚科学会内ではまだ議論の余地がある概念とされています 。リバウンドを防ぐためには、症状が改善しても自己判断で薬をやめず、医師の指示に従って徐々に使用量や使用頻度を減らしていく「漸減(ぜんげん)」が不可欠です 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8481181/

ステロイド外用薬のリバウンドに関する参考情報。

日本臨床救急医学会雑誌「ステロイド外用薬の中止からステロイド離脱症候群が疑われたが速やかに改善した1例」 実際の症例報告を通じて、ステロイド中止後の症状経過について考察されています。

ステロイドを自己判断で中止した場合の具体的な対処法

もし誤ってステロイド薬を自己判断で中止してしまい、離脱症状やリバウンドが疑われる症状が現れた場合、最優先すべきは速やかに医療機関を受診し、医師に相談することです 。決して一人で抱え込まず、専門家の診断と指示を仰いでください。

医師はまず、患者さんの状態を正確に評価します。どのような症状が出ているか、いつからステロイドを中止したか、どのくらいの期間・量のステロイドを使用していたか、といった情報を詳しく聞き取ります。その上で、血液検査などを行い、副腎機能の状態を確認します 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10656199/

対処法の基本は、不足しているステロイドホルモンを再度補充することです 。多くの場合、元の服用量か、あるいはそれより少ない量から再開し、状態が安定するのを確認します。その後、医師の厳格な管理のもとで、非常にゆっくりとしたペースで薬を減量していきます 。

参考)ステロイド内服薬の漸減方法、ガイドラインってある?|薬剤師求…

以下は、一般的な対処の流れです。

  1. 速やかな医療機関受診: 倦怠感、血圧低下、皮膚症状の急激な悪化など、異変を感じたらすぐに医師に連絡してください 。
  2. 正確な情報伝達: いつから、どの薬を、どのくらいの量、どのくらいの期間使っていたか、そしていつ中止したかを正確に伝えます。お薬手帳を持参するとスムーズです。
  3. ステロイドの再開と安定化: 医師の指示に従い、適切な量のステロイド服用を再開します。これにより、多くの離脱症状は改善に向かいます 。
  4. 専門医による減量計画: 状態が安定したら、原疾患の活動性や副腎機能の回復具合を見ながら、専門医が安全な減量計画を立てます 。

自己判断での中止は、症状の悪化を招くだけでなく、生命に関わる危険な状態を引き起こす可能性もあります 。ステロイド治療は、医師との信頼関係のもとで、根気強く続けることが何よりも重要です。不安な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/26/1/26_55/_pdf/-char/ja

ステロイドの自己判断中止のリスクに関する参考情報。

兵庫県立尼崎総合医療センター「ステロイド剤と副作用予防薬について」 自己判断で中止しないことの重要性が、患者向けに分かりやすく解説されています。

ステロイド離脱が精神症状やQOLに与える意外な影響

ステロイドの離脱症状は、倦怠感や皮膚症状といった身体的な側面に注目されがちですが、実は患者の精神状態やQOL(Quality of Life, 生活の質)にも大きな影響を与えることが知られています 。この点はあまり広く認識されていませんが、医療従事者として患者をサポートする上で非常に重要な視点です。

ステロイドホルモン(コルチゾール)は、身体のストレス反応を調節する役割を担っており、その量が急激に変動することは、精神状態の不安定につながりやすいのです 。ステロイドの投与中にも多幸感やうつ状態などの精神症状が出ることがありますが、急な中止による離脱症状としても同様の症状が現れることがあります 。

参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答

具体的には、以下のような精神症状が報告されています。

  • 抑うつ、不安: 気分が落ち込み、何もやる気が起きなくなる、将来に対して悲観的になる、漠然とした不安感に襲われるといった症状です 。
  • 情緒不安定、イライラ: ささいなことでカッとなったり、涙もろくなったりと、感情のコントロールが難しくなります 。
  • 不眠: 激しいかゆみ(特に皮膚症状の場合)や精神的な不調から、夜眠れなくなることがあります 。睡眠不足はさらにQOLを低下させる悪循環につながります。
  • 意欲・集中力の低下: 仕事や家事、趣味など、これまで楽しめていたことへの関心が薄れ、集中力が続かなくなります 。

これらの精神症状は、離脱に伴う身体的な苦痛(倦怠感、痛み、かゆみなど)と相まって、患者さんのQOLを著しく低下させます 。特に、外見に現れる皮膚症状は、他人の目が気になる、外出が億劫になるといった社会生活への影響も深刻です。研究によっては、ステロイド離脱時のQOL低下が、重度の皮膚疾患や慢性的な痛みを抱える患者と同等かそれ以上であることが示唆されています。

参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/falgy.2025.1547923/full

医療従事者は、身体症状の管理だけでなく、こうした精神的な苦痛にも耳を傾け、必要に応じてカウンセリングや心療内科との連携も視野に入れた、全人的なアプローチが求められます。患者自身も、つらい気持ちを一人で抱え込まず、家族や医師に相談することが大切です。

ステロイドと精神症状に関する参考論文。

福岡県薬剤師会雑誌「副腎皮質ステロイドによる精神症状とは」 副腎皮質ステロイドが引き起こす多様な精神症状について、発現時期や分類を含めて詳細に解説されています。

ステロイドの安全な減量方法と漸減法のポイント

ステロイド治療において、副作用を最小限に抑え、安全に治療を終えるための鍵となるのが「漸減法(ぜんげんほう)」です 。これは、自己判断で急にやめるのではなく、医師の指示に従って、計画的に少しずつ薬の量を減らしていく方法です 。

漸減法の目的は、2つあります。

  1. 原疾患の再燃を防ぐ: 急な減量によるリバウンド現象を避け、病気の活動性をコントロールしながら減量します 。
  2. 副腎機能の回復を待つ: 薬の量を少しずつ減らすことで、休んでいた副腎に「そろそろ自分でホルモンを作り始めてください」というサインを送り、機能の回復を促します 。

漸減のペースは、原疾患の種類、病状の安定度、ステロイドの投与期間や投与量、そして患者さん一人ひとりの体の反応を見ながら、慎重に決定されます 。画一的な方法はなく、完全にオーダーメイドです。一般的には、以下のような考え方で進められます。

  • 高用量からの減量: プレドニゾロン換算で40mg/日以上のような高用量の場合、初期は比較的早いペース(例: 1〜2週ごとに5〜10mgずつ減量)で減らすことができます 。
  • 中用量からの減量: 20mg/日あたりからは、より慎重になります。減量のペースを落とし(例: 1〜2週ごとに5mgずつ減量)、再燃の兆候がないか注意深く観察します 。
  • 低用量からの減量: 10mg/日以下の生理的補充量に近い領域では、副腎機能の回復を待つ必要があるため、最もゆっくりとしたペースで減量します(例: 4週ごとに1mgずつ減量など)。この段階が一番時間がかかることが多いです。

減量の過程では、定期的な診察と検査が欠かせません 。医師は自覚症状(倦怠感や関節痛など)の変化だけでなく、血液検査データ(好酸球数やコルチゾール値など)も参考にしながら、減量のペースを調整します 。最終的にステロイドを中止できた後も、副腎機能が完全に回復するまでは、感染症や手術といった大きなストレスがかかる際には一時的にステロイドの補充が必要になる場合があります。

参考)プレドニン錠中止時の漸減を忘れる落とし穴|リクナビ薬剤師

ステロイドの減量に関するガイドラインについての参考情報。

リウマチ膠原病などにおけるステロイド内服薬の漸減方法の実際 リウマチ膠原病治療におけるステロイド漸減法の具体的なスケジュール例が示されており、実臨床での考え方を理解するのに役立ちます。

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