へそのごまの掃除はワセリンで
へそのごまをワセリンで安全に掃除する方法と適切な頻度
へそのごま、医学的には「臍石(さいせき)」とも呼ばれるこの塊は、皮脂や汗、古い角質、衣類の繊維などが混ざり合ってできています。 無理に取ろうとすると、おへそのデリケートな皮膚を傷つけたり、腹膜を刺激して腹痛を引き起こす可能性があるため、正しいケアが重要です。 医療従事者として知っておきたい、安全かつ効果的な掃除方法をご紹介します。
最も推奨される方法の一つが、ワセリンやオリーブオイル、ベビーオイルなどを使って汚れをふやかし、浮かせてから取り除く方法です。 ワセリンは皮膚保護剤としても広く使われており、刺激が少なく安全性が高いのが特徴です。
【ワセリンを使った掃除手順】
- 準備:綿棒とワセリン(またはベビーオイルなど)を用意します。
- 塗布:綿棒にワセリンをたっぷりと付け、おへその中に優しく塗ります。汚れ全体を覆うように塗るのがポイントです。
- 浸透:ワセリンが汚れに浸透し、ふやかすまで10〜15分ほど待ちます。 入浴後など、皮膚が温まって柔らかくなっている時に行うとより効果的です。
- 除去:新しい綿棒を使い、浮き上がってきた汚れを優しく絡め取るように除去します。ゴシゴシこすらず、なでるように動かすのがコツです。
- 仕上げ:汚れが取れたら、ティッシュなどで優しくワセリンを拭き取るか、ぬるま湯で洗い流します。
掃除の頻度については、様々な見解があります。皮膚のターンオーバー周期は約2週間であるため、「2〜3週間に1回」とする専門家もいれば 、「月に1回程度」で十分だとする意見もあります。 また、「1〜3ヶ月に1回」を目安とし、個人の皮脂分泌量や汗のかきやすさに応じて調整することを推奨する声もあります。 過度な掃除はかえって皮膚を傷つけ、乾燥や炎症を招く可能性があるため、毎日ゴシゴシ洗うのは避けましょう。自分の状態を観察しながら、1ヶ月に1回程度のスペシャルケアとして取り入れるのが現実的でしょう。
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へそのごまの放置が危険な理由|腹膜炎リスクと臭いの原因
「へそのごまは取らない方がいい」という俗説を耳にすることがありますが、長期間放置することは衛生上問題があり、様々なリスクを伴います。 へそのごまは、単なる汚れの塊ではなく、細菌の温床です。 湿度と栄養が豊富な環境は、細菌が繁殖するのに最適な場所と言えます。
主なリスク
- 悪臭の発生:繁殖した細菌が皮脂や汗を分解することで、不快な臭いが発生します。 特に夏場や、通気性の悪い衣類を着用していると臭いが強くなる傾向があります。
- 炎症・かゆみ(臍炎):細菌の活動が活発になると、おへその皮膚に炎症が起き、赤みやかゆみを引き起こすことがあります。これを「臍炎(さいえん)」と呼びます。
- 腹膜炎のリスク:非常に稀ですが、最も深刻なリスクが腹膜炎です。おへその皮膚は非常に薄く、そのすぐ下には内臓を覆う「腹膜」があります。 臍炎が悪化し、細菌感染が腹膜にまで及ぶと、激しい腹痛や発熱を伴う「急性腹膜炎」を引き起こす可能性があります。 「へそのごまをいじり過ぎて腹膜炎になる」というのは、物理的な刺激そのものよりも、傷口からの細菌感染が原因となるケースが考えられます。ただし、通常、おへそを触りすぎただけで腹膜炎になる可能性は低いとされています。
- 尿膜管遺残(にょうまくかんいざん)との関連:成人になっても、おへそと膀胱をつなぐ「尿膜管」という管が完全に閉鎖されずに残っている状態を「尿膜管遺残」と呼びます。 この管に汚れが溜まって感染を起こすと、おへそから膿が出たり、腫れたりすることがあり、腹膜炎に移行するリスクも指摘されています。
このように、へそのごまを放置することは、QOL(生活の質)を低下させるだけでなく、重大な健康問題につながる可能性もゼロではありません。特に、おへそから膿が出る、強い痛みが続く、赤く腫れているなどの症状がある場合は、自己判断でケアをせず、速やかに皮膚科や外科、泌尿器科を受診することが重要です。
以下のリンクは、医師によるへそのごま放置のリスクについての解説が掲載されています。
「へそのゴマ」は放置しても大丈夫? 正しいケア方法や注意点などを医師が解説! – メディカルドック
へそのごまの色や状態でわかる健康サイン【黒い・白い・臭い】
へそのごまの色や状態は、単なる汚れだけでなく、体からのサインである可能性も考えられます。普段あまり意識しない場所だからこそ、ケアの際にチェックする習慣をつけましょう。
■黒い・茶色いへそのごま
最も一般的なタイプです。垢や皮脂、外部のホコリなどが混ざり、時間とともに酸化して黒くなったものです。 固くなっている場合は、無理に剥がさずワセリンなどで十分にふやかしてから取り除きましょう。特に問題ないケースがほとんどですが、あまりに大量で石のように固い場合は「臍石」として皮膚科での処置が必要になることもあります。
■白い・湿ったへそのごま
白っぽく、湿り気や粘り気がある場合は注意が必要です。 これは、皮脂や汗の分泌物が酸化せずに溜まっている状態ですが、細菌や真菌(カビ)の一種であるカンジダ菌が増殖している可能性も考えられます。 カンジダは皮膚の常在菌ですが、湿度が高く不衛生な環境で増殖し、かゆみや赤い発疹、独特の臭いを引き起こすことがあります。この状態が続く場合は、カンジダ性間擦疹(かんさつしん)などの皮膚疾患の可能性も視野に入れる必要があります。
■強い臭いを伴う場合
ごま油のような臭い 、チーズのような臭いなど、へそのごまが悪臭を放つのは、細菌が繁殖している明確なサインです。 掃除をしてもすぐに臭いが発生する場合や、膿のような液体が滲み出ている場合は、前述の臍炎や尿膜管遺残などの病的な状態が隠れている可能性も否定できません。 特に、へそピアスを開けている場合は、感染による臭いの可能性も考慮する必要があります。
以下の表に、状態とセルフケア、受診の目安をまとめました。
| 状態 | 考えられる原因 | セルフケア | 受診の目安 |
|---|---|---|---|
| 黒〜茶色で乾燥 | 垢、皮脂、ホコリの酸化 | ワセリンなどでふやかして除去 | 塊が非常に大きく取れない場合 |
| 白っぽく湿っている | 皮脂、細菌、真菌の増殖 | 優しく洗浄し、乾燥を保つ | かゆみ、赤み、発疹を伴う場合 |
| 強い悪臭がある | 細菌の増殖、感染 | 定期的な洗浄 | 膿が出る、痛みが強い、臭いが改善しない場合 |
へそのごまケアと臍(さい)の形状|陥没臍・出べその違い
おへその形状は個人差が大きく、主に「陥没臍(かんぼつべそ)」と「突出臍(とっしゅつべそ、いわゆる出べそ)」に分けられます。この形状の違いによって、へそのごまの溜まりやすさやケアのポイントも異なります。医療従事者としては、患者さん個々の形状に合わせたケア指導ができると、より親切でしょう。
【陥没臍(かんぼつべそ)】
多くの人がこのタイプです。おへそが腹部の中にくぼんでいるため、構造的に汚れが溜まりやすく、湿気がこもりやすいのが特徴です。
- 特徴:深さがあるため、自分では汚れを確認しにくい。通気性が悪く、細菌が繁殖しやすい環境。
- ケアのポイント:汚れを溜めないために、意識的なケアが必要です。ワセリンやオイルを使った定期的な掃除が特に有効です。掃除の際は、奥まで無理に器具を入れず、届く範囲で優しく行うことが鉄則です。深くて見えない部分は、シャワーの水圧を弱めて優しく洗い流す程度に留めましょう。
【突出臍(出べそ)】
おへそが腹部から突出しているタイプです。
- 特徴:くぼみがない、または浅いため、汚れは比較的溜まりにくいです。しかし、衣類との摩擦で刺激を受けやすい側面があります。
- ケアのポイント:陥没臍ほど神経質になる必要はありませんが、突出している部分の皮膚はデリケートなため、体を洗う際にゴシゴシこすりすぎないよう注意が必要です。垢がシワの間に溜まることはあるため、優しく洗うことを心がけましょう。
また、肥満度によってもおへその深さは変わります。一般的に、皮下脂肪が厚くなるとおへそはより深く、陥没する傾向にあります。 そのため、体重が増加した方は、以前よりも汚れが溜まりやすくなっている可能性を考慮する必要があります。患者さんの体型や生活習慣の変化にも目を配り、適切なアドバイスができると良いでしょう。
赤ちゃんや子どものへそのごま|ワセリンを使ったケアの注意点
赤ちゃんのデリケートなおへそは、大人とは違う特別な配慮が必要です。特に新生児期は、へその緒が取れた後の「臍窩(さいか)」がまだ完全に乾いていないため、感染予防の観点から慎重なケアが求められます。
【赤ちゃんのへそケアの基本】
生後1ヶ月くらいまでは、沐浴後に消毒を行うのが一般的ですが、へその緒が取れて乾燥した後は、基本的に過度なケアは不要です。しかし、ミルクの吐き戻しや汗などで汚れが溜まることはあります。黒い汚れが気になった場合のケア方法は以下の通りです。
- タイミング:沐浴後など、皮膚が清潔で柔らかくなっている時が最適です。
- 準備:赤ちゃん用の綿棒と、ベビーオイルやワセリンを用意します。大人用の綿棒は大きすぎて刺激になることがあるため、ベビー用を使いましょう。
- 方法:綿棒にオイルやワセリンを少量つけ、おへその入り口付近の汚れを優しく拭います。 くぼみの奥を無理にこするのは絶対に避けてください。一度で取ろうとせず、数日に分けて少しずつケアするのが安全です。
【幼児期のへそケア】
子ども自身がへそをいじって傷つけてしまうこともあるため、保護者が定期的にチェックしてあげることが大切です。子どもの皮膚は大人よりも薄く敏感なため、掃除の頻度は「2ヶ月に1回〜汚れが気になった時」程度で十分です。 ワセリンを使用する際は、アレルギーなどがないか確認し、安全性の高い白色ワセリンなどを使用すると良いでしょう。
注意点
- 赤み・腫れ・膿がある場合:汚れではなく「臍炎」や「臍肉芽腫(さいにくげしゅ)」といった病気の可能性があります。自己判断でいじらず、小児科や皮膚科を受診してください。
- 頻度:大人のように定期的に行う必要はありません。 あくまで汚れが目立つ場合のみ、優しくケアするというスタンスが重要です。
- 力の入れすぎは禁物:赤ちゃんの腹壁は薄く、強く押すと痛がったり、内部を刺激してしまったりする可能性があります。
保護者から赤ちゃんのへそケアについて相談された際は、これらの注意点を伝え、不安を煽りすぎず、しかし異常のサインを見逃さないよう指導することが医療従事者には求められます。
以下のリンクは、赤ちゃんのへそのごまケアに関する親の疑問に答える形の情報が掲載されています。
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