あごを触ると痛い原因はストレス?女性に多い顎関節症の症状と対策

あごを触ると痛い原因と対処法

あごを触ると痛いときに考えられること
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考えられる主な原因

顎関節症や唾石症、歯のトラブル、リンパの腫れなど、様々な原因が考えられます。

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ストレスと女性ホルモン

見過ごされがちですが、精神的なストレスや女性ホルモンのバランスも痛みを増悪させる要因になります。

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まずは専門医へ相談

痛みの原因によって専門の診療科は異なります。自己判断せず、歯科口腔外科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。

あごが痛い時に考えられる主な病気と症状

 

あごを触ると痛い、という症状は、多くの人が経験する可能性のある身近な問題ですが、その背後には様々な病気が隠れていることがあります。医療従事者として、患者さんからこの訴えを聞いた際に、どのような鑑別診断を思い浮かべるべきか、代表的な疾患とその特徴を解説します。

  • 顎関節症(がくかんせつしょう)
    最も頻度が高い原因の一つです。 口を開け閉めする際に「カクカク」「ジャリジャリ」といった音がする(クリック音)、口が開きにくい(開口障害)、そして顎の関節やこめかみ、頬の筋肉(咀嚼筋)の痛みが主な症状です。 噛み合わせの異常、歯ぎしりや食いしばり、ストレスなどが複合的に関与して発症します。
  • 唾石症(だせきしょう)
    唾液を作る「唾液腺」や、唾液が口の中に流れるための管(導管)に石ができる病気です。 石が唾液の流れを塞ぐため、特に食事中や食後など唾液の分泌が増えるタイミングで、顎の下や耳の下が腫れて激しく痛む「唾疝痛(だせんつう)」という特徴的な症状が現れます。
  • 歯性感染症(しせいかんせんしょう)
    重度の虫歯歯周病を放置すると、細菌が歯の根から顎の骨にまで広がり、顎骨炎(がくこつえん)を引き起こすことがあります。 この場合、顎の広い範囲に強い痛みや腫れが生じ、時には発などの全身症状を伴うこともあります。
  • リンパ節
    風邪や歯周病など、細菌やウイルスが体内に侵入した際に、免疫システムの一部であるリンパ節が腫れて痛むことがあります。顎の下や首には多くのリンパ節があり、炎症を起こすと触れることで痛みを感じます。
  • 三叉神経痛(さんさしんけいつう)
    顔の感覚を支配する三叉神経が、血管などによって圧迫されることで生じる病気です。 洗顔、化粧、食事など、軽い刺激が引き金となり、片側の顔に「電気が走るような」「突き刺すような」と表現される非常に鋭い痛みが数秒から数分間、発作的に起こります。

あごの痛みとストレス・女性ホルモンの意外な関係

顎関節症の背景に、ストレスやホルモンバランスといった身体の内部環境が深く関わっていることは、臨床上見過ごせない重要な視点です。特に、他の原因が見当たらない場合や、症状が寛解と増悪を繰り返す場合には、これらの要因を考慮する必要があります。

精神的ストレスと顎の筋肉の緊張
人間はストレスを感じると、無意識のうちに歯を強く食いしばったり、就寝中に歯ぎしりをしたりすることがあります。 これはストレスに対する身体の防御反応とも言えますが、この持続的な筋肉の緊張は、顎関節に過剰な負担をかけ、筋肉の疲労や血行不良を引き起こします。 結果として、顎のだるさや痛み、さらには頭痛や肩こりといった関連症状につながることが少なくありません。 患者が多忙な生活や対人関係の悩みを抱えている場合、TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)と呼ばれる、日中無意識に上下の歯を接触させる癖の存在も疑う必要があります。

顎関節症と女性ホルモン「エストロゲン」
顎関節症の患者が男性よりも女性に多いことは統計的にも知られており、その理由の一つとして女性ホルモン「エストロゲン」の関与が指摘されています。 顎関節の軟骨や骨、滑膜といった組織にはエストロゲンの受容体が存在し、エストロゲンはこれらの組織の代謝や炎症反応の調節に関わっています。 そのため、月経周期や妊娠、更年期など、エストロゲンの分泌量が大きく変動する時期には、関節の炎症や痛みの感受性が変化し、顎関節症を発症・悪化させやすくなる可能性があるのです。 メカニカルなストレスに関節組織のホルモン感受性が組み合わさることで、関節内のバランスが崩れ、症状が顕在化すると考えられています。

唾石症に関するより詳しい情報源として、以下の公的機関のウェブサイトが有用です。
社会福祉法人 恩賜財団 済生会 – 唾石症(だせきしょう)とは

あごの痛みが片側だけの場合の原因と唾石症

「あごの片側だけが痛い」という訴えは、原因を特定する上で重要な手がかりとなります。顎関節症も片側に症状が出ることがありますが 、特に食事と連動して痛みや腫れが現れる場合は、「唾石症(だせきしょう)」の可能性を積極的に疑う必要があります。

唾石症は、唾液腺(特に顎下腺や耳下腺)の中にカルシウムなどを主成分とする石(唾石)が形成される疾患です。 初期段階や石が小さい場合は無症状のことも多いですが、石が大きくなって唾液の通り道である導管を塞いでしまうと、特徴的な症状が出現します。

唾石症の典型的な症状

  • 食事中の痛みと腫れ(唾仙痛)
    食事を始めると、唾液の分泌が活発になります。しかし、唾石によって唾液の出口が塞がれているため、唾液が排出されずに唾液腺内に溜まり、内圧が急激に上昇します。これにより、顎の下や耳の下が急に腫れあがり、強い痛みが生じます。 この痛みは「唾仙痛」と呼ばれ、唾石症に非常に特徴的な症状です。
  • 食事後に症状が和らぐ
    痛みのピークは食事中ですが、食事が終わって唾液の分泌が落ち着くと、溜まっていた唾液が少しずつ排出され、腫れと痛みは徐々に引いていきます。しかし、次の食事でまた同じ症状を繰り返します。
  • 酸っぱいものを食べると誘発されやすい
    レモンや梅干しなど、酸味の強いものは唾液の分泌を強力に促進するため、症状がより強く出やすい傾向があります。
  • 異物感や口の乾燥
    顎下腺にできた唾石の場合、舌の下あたりに硬い異物として触れることがあります。 また、慢性的に唾液の流れが悪いと、口が乾きやすくなることもあります。

唾石症の診断は、症状の問診に加え、触診や超音波検査、CT検査などで行われます。片側性の顎の痛みで、特に食事との関連性が強い場合は、耳鼻咽喉科へのコンサルテーションが推奨されます。

あごの痛みの診療科は何科?病院選びのポイント

あごの痛みを訴える患者さんを診察した際、どの専門診療科へ紹介すべきかは、原因疾患によって異なります。適切な診療科へつなぐことが、早期診断と的確な治療への第一歩です。 主な受診先とその役割をまとめました。

診療科 対象となる主な症状・疾患
歯科・歯科口腔外科 口の開閉で音がする、口が開きにくい、噛み合わせの問題、歯ぎしりや食いしばりがある場合(主に顎関節症)。 虫歯や歯周病が原因の痛み(歯性感染症)。CTなどによる詳細な画像診断も可能です。
耳鼻咽喉科 食事中に痛みが強くなる、顎の下や耳の下が腫れる場合(唾石症や耳下腺炎の疑い)。 耳の痛みや詰まった感じが伴う場合。 リンパ節の腫れが原因と考えられる場合。
ペインクリニック・神経内科 電気が走るような、発作的で鋭い痛みがある場合(三叉神経痛などの神経障害性疼痛の疑い)。
整形外科 転倒や打撲など、明らかな外傷によって顎を痛めた場合。

受診の目安
まず、顎の動き(開閉)に伴う痛みや音、口が開きにくいといった症状が主体であれば、顎関節症の可能性が高いため、歯科口腔外科が第一選択となります。 一方で、食事のたびに腫れて痛むといった特徴的な症状があれば、耳鼻咽喉科で唾液腺の評価をしてもらうのが適切です。
原因がはっきりしない場合や、複数の症状が混在している場合は、まずはかかりつけ医として患者さんの訴えを総合的に聞き取り、最も疑わしい疾患の専門科へ紹介することが重要です。医療機関によっては、耳鼻咽喉科と歯科口腔外科が連携して診断にあたることもあります。

顎関節症と女性ホルモンの関係性についての学術的な情報はこちらで確認できます。
KAKEN – 女性ホルモンの顎関節症との関連

あごの痛みを和らげるセルフケアと専門的な治療法

あごの痛みの治療は、原因疾患に応じて専門的なアプローチが必要ですが、日常生活の中で患者さん自身が行えるセルフケアも症状の緩和に非常に有効です。ここでは、セルフケアと代表的な疾患の専門的治療法について概説します。

🏠 自宅でできるセルフケア

  • 顎を安静に保つ
    硬い食べ物や長時間の会話を避け、顎への負担を減らします。あくびなどで大きく口を開けすぎないように意識することも大切です。
  • 患部の冷却または加温
    急性の強い痛みや腫れがある場合は、炎症を抑えるために冷やす(冷却)のが効果的です。一方、慢性的な筋肉の痛みやこわばりには、血行を促進するために温める(加温)のが良いでしょう。
  • マッサージとストレッチ
    痛みのある側の頬やこめかみの筋肉(咬筋、側頭筋)を、指で優しく円を描くようにマッサージすると、筋肉の緊張が和らぎます。 また、ゆっくりと口を開け閉めするストレッチも有効ですが、痛みが出ない範囲で行うことが重要です。
  • ストレス管理
    ストレスは無意識の食いしばりを引き起こす大きな要因です。 リラックスできる時間を作り、趣味や運動などでストレスを発散させることが、根本的な解決につながります。
  • TCH(歯列接触癖)の是正
    日中に上下の歯が接触していないか意識し、「唇を閉じ、歯を離す」状態を保つように心がけます。

🏥 専門的な治療法

  • 顎関節症
    スプリント療法(マウスピース)を用いて、夜間の歯ぎしりや食いしばりから顎関節を保護します。 その他、痛みが強い場合は消炎鎮痛薬筋弛緩薬の処方、理学療法(低周波治療など)、開口訓練などが行われます。
  • 唾石症
    唾石が小さい場合は、水分を多く摂ったり、唾液腺をマッサージしたりすることで自然に排出されることがあります。 自然排出が困難な場合は、口の中から石を摘出する手術や、体外から衝撃波を当てて石を砕く治療法が選択されます。
  • 歯性感染症
    原因となっている歯の根管治療や抜歯、歯周病の治療が必須です。炎症が顎骨にまで及んでいる場合は、抗菌薬の投与も行われます。
  • 三叉神経痛
    第一選択薬として、カルバマゼピンなどの抗けいれん薬が用いられます。薬物療法で効果が不十分な場合は、神経ブロック注射や、神経を圧迫している血管を剥離する外科手術(微小血管減圧術)が検討されます。

痛みの原因を正確に診断し、セルフケアと専門的な治療を組み合わせることが、症状改善への最も確実な道筋となります。


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