喉にトゲが刺さったような右側の痛み
喉の右側が痛む主な原因と関連する病気
喉の右側だけに、まるでトゲが刺さったかのようなチクチクとした痛みを感じる場合、その原因は一つではありません。考えられる病気は多岐にわたり、適切な対処のためには原因を見極めることが重要です。以下に、主な原因とそれぞれがどのような病気と関連しているかを詳しく解説します。
感染症による炎症
最も一般的な原因は、ウイルスや細菌の感染による喉の炎症です。風邪やインフルエンザがきっかけとなることが多いですが、片側だけに強い痛みが出る場合は、特定の病気が疑われます。
- 急性咽頭炎・喉頭炎: 喉の奥にある咽頭や、声帯のある喉頭に炎症が起きる病気です 。喉の痛み、飲み込むときの痛み、発熱、咳、声がれといった症状が現れます 。炎症が片側に偏ることで、右側だけが痛むことがあります。
- 扁桃炎・扁桃周囲膿瘍: 扁桃腺が細菌に感染して炎症を起こすのが扁桃炎です 。高熱とともに、飲み込むのが辛いほどの激しい痛みが特徴です 。炎症が扁桃の周囲にまで広がり、膿が溜まると扁桃周囲膿瘍という状態になり、片側の喉が大きく腫れ、口が開きにくくなることもあります 。
- 急性喉頭蓋炎: 食べ物が気管に入らないようにフタの役割をする喉頭蓋(こうとうがい)が炎症を起こす病気です 。急激に強い喉の痛みが生じ、唾も飲み込めないほどになります。喉頭蓋が腫れて気道を塞いでしまうと呼吸困難に陥る危険があり、緊急の対応が必要です 。
消化器系の問題
意外に思われるかもしれませんが、胃腸の不調が喉の痛みを引き起こすこともあります。
- 逆流性食道炎(咽喉頭酸逆流症): 胃酸が食道へ逆流することで、食道の粘膜に炎症が起こる病気です 。胃酸が喉の奥まで達すると、喉の粘膜を刺激して炎症を起こし(咽喉頭酸逆流症)、チクチクとした痛みや違和感、咳、声がれなどの症状を引き起こします 。寝ている間に胃酸が逆流し、片側の喉だけに症状が出ることがあります。
腫瘍やできもの
頻度は低いものの、喉の痛みが重大な病気のサインである可能性も考慮しなければなりません。
- 咽頭がん・喉頭がん: 喉にできる悪性腫瘍です。初期症状として、喉の痛みや違和感、声がれ、食べ物が飲み込みにくいといった症状が現れることがあります 。これらの症状が長く続く場合は注意が必要です。特に喫煙や過度の飲酒習慣がある方はリスクが高いとされています 。
- 口内炎: 喉の奥や扁桃の近くに口内炎ができると、トゲが刺さったような鋭い痛みを感じることがあります 。
その他の原因
- 異物: 魚の骨などが喉に刺さると、直接的な原因となります 。痛みが続く場合は、自然に取れるのを待つのではなく、医療機関で除去してもらう必要があります。
以上のように、喉の片側の痛みには様々な原因が考えられます。症状が軽くても、長引く場合や他の症状を伴う場合は、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。
喉の痛みが続く場合のリスクと病院受診の目安
「そのうち治るだろう」と喉の痛みを軽く考えて放置してしまうと、思わぬリスクを招くことがあります。ここでは、痛みを放置することの危険性と、病院を受診すべきタイミングについて具体的に解説します。
放置するリスク
喉の痛みは、体が発している重要な警告サインです。これを無視すると、以下のような深刻な事態につながる可能性があります。
- 感染症の拡大と重症化: 扁桃炎などの細菌感染を放置すると、炎症が周囲の組織に広がり、「扁桃周囲膿瘍」や、さらに奥深くに進んで「深頸部膿瘍」といった重篤な状態に移行することがあります 。こうなると、入院して抗生剤の点滴や、膿を出すための切開手術が必要になる場合があります。
- 呼吸困難: 特に急性喉頭蓋炎は進行が早く、喉頭蓋が大きく腫れることで気道を塞ぎ、窒息の危険がある非常に怖い病気です 。喉の激しい痛みと共に、息苦しさを感じたら、ためらわずに救急車を呼ぶべきです 。
- 慢性化と再発: 急性の炎症が治りきらずに残ってしまうと、慢性咽頭炎などに移行し、常に喉の違和感や痛みに悩まされることになりかねません 。
- 重大な病気の見逃し: 喉の痛みが咽頭がんや喉頭がんといった悪性腫瘍の初期症状である可能性もゼロではありません 。早期発見・早期治療が重要ながんを見逃してしまうことは、最大のリスクと言えるでしょう。
病院受診の目安
どのような場合に病院へ行くべきか、具体的な症状の目安を以下に示します。一つでも当てはまる場合は、早めに専門医の診察を受けましょう。
🏥 こんな症状はすぐに病院へ
- 唾も飲み込めないほどの激しい痛みがある
- 呼吸が苦しい、息苦しさを感じる
- 口が開きにくい、呂律が回らない
- 高熱(38℃以上)が続いている
- 食事や水分が全く摂れない
- 首の外側まで腫れてきた
- 痛みが2〜3日経っても改善しない、むしろ悪化している
上記の症状がない場合でも、痛みが1週間以上続く、声がれが治らない、血が混じった痰が出るなどの場合は、一度詳しい検査を受けることをお勧めします。
何科を受診すればいい?
喉の症状で病院にかかる場合、まずは**耳鼻咽喉科**を受診するのが最も適切です 。耳鼻咽喉科では、鼻からの細いカメラ(ファイバースコープ)を使って、喉の奥の、肉眼では見えない部分まで直接観察することができます。これにより、炎症の程度や範囲、腫瘍の有無などを正確に診断することが可能です。もし逆流性食道炎が疑われる場合は消化器内科、ストレスが原因と考えられる場合は心療内科など、適切な診療科を紹介してもらえることもあります。
参考情報として、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、喉の症状に関する様々な情報を提供しています。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 – のどの病気
喉の痛みを和らげるセルフケアとおすすめの食べ物
病院での治療と並行して、ご自宅でできるセルフケアも症状の緩和に役立ちます。ここでは、喉の負担を減らし、回復を助けるための具体的な方法と、食事のポイントについてご紹介します。
喉の負担を減らす基本的なセルフケア
喉の炎症を悪化させないためには、喉を休ませ、潤いを保つことが基本です。
- 加湿を心がける: 空気が乾燥すると喉の粘膜も乾燥し、ウイルスや細菌に対する防御機能が低下します。加湿器を使用したり、濡れたタオルを部屋に干したりして、室内の湿度を50〜60%に保ちましょう。マスクの着用も、喉の湿度を保つのに効果的です。
- こまめな水分補給: 喉を潤し、痰を出しやすくするために、水分を少しずつ頻繁に摂ることが大切です。水やお茶(カフェインの少ない麦茶など)がおすすめです。
- うがいの実践: 外出後や起床時には、うがいをして喉についたホコリや細菌を洗い流しましょう。殺菌作用のあるうがい薬を使うのも良いですが、刺激が強く感じる場合は水やお茶でも十分です。
- 声を出さない(沈黙療法): 喉の痛みや声がれがある時は、声帯を休ませることが重要です。無理に話さず、筆談などを活用しましょう。ひそひそ話はかえって喉に負担をかけるため、避けてください。
- 禁煙と節酒: タバコの煙やアルコールは喉の粘膜を直接刺激し、炎症を悪化させる大きな原因です 。症状が改善するまでは、禁煙・禁酒を徹底しましょう。
喉の痛みに優しい食べ物・飲み物
食欲がない時でも、栄養を摂ることは回復への近道です。喉への刺激が少なく、飲み込みやすいものを選びましょう。
😊 おすすめの食べ物・飲み物
- ゼリー、プリン、ヨーグルト: つるりとしていて喉越しが良く、飲み込みやすい食品です。
- おかゆ、スープ、豆腐: 温かく、消化が良いものは、体力を消耗している時に適しています。ただし、熱すぎると刺激になるので、少し冷ましてからいただきましょう。
- はちみつ: 殺菌作用や保湿作用が期待でき、喉の痛みを和らげる効果があるとされています。お湯や紅茶に溶かして飲むのがおすすめです。(※1歳未満の乳児には与えないでください)
- 大根: 大根に含まれる成分には抗炎症作用があると言われています。すりおろしてはちみつと混ぜた「はちみつ大根」は、古くから喉の痛みに良いとされています。
- しょうが: 体を温め、血行を促進する作用があります。すりおろして紅茶やスープに入れると良いでしょう。
😖 避けるべき食べ物・飲み物
- 香辛料の多いもの(唐辛子、カレーなど): 喉の粘膜を強く刺激し、痛みを増強させます。
- 熱すぎるもの、冷たすぎるもの: 極端な温度は喉への負担となります。
- 酸味の強いもの(柑橘類、酢の物など): 炎症を起こしている部分にしみて、痛みを悪化させることがあります。
- 硬い食べ物(煎餅、ナッツなど): 喉を通る際に物理的に粘膜を傷つける可能性があります。
- アルコール飲料、炭酸飲料: 喉を刺激し、脱水を引き起こす可能性もあります。
これらのセルフケアは、あくまで症状を和らげるための補助的な手段です。痛みが強い場合や長引く場合は、必ず医療機関を受診してください。
喉の違和感とストレスの意外な関係【独自視点】
「検査をしても特に異常はないと言われたのに、喉のトゲトゲ、チクチクした感じが取れない…」そんな経験はありませんか?実はその症状、ストレスが原因で引き起こされる「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」かもしれません。ここでは、あまり知られていない喉の不調と心の関係について掘り下げていきます。
ヒステリー球とも呼ばれる「咽喉頭異常感症」
咽喉頭異常感症とは、喉に何かが詰まっている感じ、圧迫感、イガイガ感、何かが張り付いているような不快感が続く状態を指します 。しかし、耳鼻咽喉科でファイバースコープなどを用いて詳しく検査をしても、炎症や腫瘍といった器質的な異常が見つからないのが特徴です 。古くは「ヒステリー球」とも呼ばれていましたが、これは精神的な要因が大きく関わっていると考えられていたためです 。症状の感じ方は人それぞれで、「トゲが刺さったよう」と表現する方も少なくありません 。
なぜストレスが喉の症状を引き起こすのか?
心と体は密接につながっており、特に自律神経がその橋渡しをしています。自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交am神経」があります。強いストレスを受け続けると、このバランスが崩れ、交感神経が過剰に優位な状態になります 。
- 筋肉の過緊張: 交感神経が優位になると、体は戦闘モードに入り、全身の筋肉が緊張します。これには、食べ物を飲み込むときに働く喉や食道の周りの筋肉も含まれます。これらの筋肉が過度に収縮することで、喉が締め付けられるような感じや、詰まったような違和感が生じるのです 。
- 知覚過敏: ストレスは、感覚を過敏にさせる作用もあります。普段なら気にならないような些細な刺激(例えば、わずかな痰のからみや粘膜の乾燥)を、「トゲが刺さっている」かのような強い不快感として脳が認識してしまうことがあります。
- 胃酸の逆流: ストレスは胃酸の分泌を促し、逆流性食道炎を悪化させる一因にもなります。逆流した胃酸が喉を刺激し、咽喉頭異常感症の症状を引き起こす、あるいは悪化させるという悪循環に陥ることもあります 。
どうすれば改善できるのか?
咽喉頭異常感症の治療には、まず「喉に器質的な異常はない」ことを理解し、安心することが第一歩です。その上で、原因となっているストレスと向き合うことが重要になります。
- 生活習慣の見直し: 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、生活リズムを整えましょう。
- リラックスできる時間を作る: 趣味に没頭する、ゆっくり入浴する、音楽を聴く、アロマテラピーを取り入れるなど、自分に合った方法で心と体をリラックスさせる時間を持つことが大切です。
- 専門家への相談: ストレスの原因が明確でなかったり、セルフケアだけでは改善が難しい場合は、心療内科や精神科に相談することも一つの選択肢です。カウンセリングや、必要に応じて不安を和らげる薬の処方などが行われます。
喉の痛みや違和感は、体が「少し休んで」と送っているサインかもしれません。身体的な原因が見つからない場合は、一度立ち止まってご自身の心の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
喉の痛みが片側だけに出る稀な病気「茎状突起過長症」とは
喉の片側に限定された、刺すようなシャープな痛み。様々な検査をしても原因がはっきりしない場合、非常に稀ですが「茎状突起過長症(けいじょうとっきかちょうしょう)」、または発見者の名前にちなんで「イーグル症候群(Eagle’s Syndrome)」と呼ばれる病気の可能性が考えられます。これは医療従事者でも見過ごしやすい、意外な原因の一つです。
茎状突起とは何か?
茎状突起は、頭蓋骨の側頭骨から下に向かって伸びる、細長く尖った骨の突起です。通常、その長さは2.5cm程度ですが、これが生まれつき、あるいは加齢などによって異常に長くなったり、靭帯が骨化したりすることがあります。この長くなった茎状突起が、喉の奥や首を動かした際に、周囲の重要な神経や血管を圧迫・刺激することで、様々な症状を引き起こすのが茎状突起過長症です。
どのような症状が出るのか?
茎状突起がどの神経を刺激するかによって症状は異なりますが、代表的なものに「舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)」があります 。舌咽神経は、喉の感覚や飲み込みの動きなどを司る神経です。
- 特徴的な痛み: 飲み込む動作(嚥下)、あくび、咳、首を回すといった特定の動きによって誘発される、片側の喉の奥や舌の付け根、耳の下あたりに広がる「突き刺すような」「電気が走るような」激しい痛みが特徴です 。まさに「トゲが刺さった」という表現が当てはまる痛みです。
- その他の症状: 痛みだけでなく、喉の異物感、飲み込みにくさ、耳の痛み(放散痛)などを伴うこともあります 。
この痛みは三叉神経痛と間違われることもあり、診断が難しい場合があります 。
診断と治療法
診断には、まず症状を詳しく問診することが重要です。そして、レントゲン撮影やCT検査を行い、茎状突起の長さや角度、周囲の組織との位置関係を立体的に評価することで確定診断に至ります。
治療法は、症状の程度によって異なります。
- 保存療法: 症状が比較的軽い場合は、まず痛み止めや神経に作用する薬(抗てんかん薬など)を服用して様子を見ます。神経ブロック注射が有効な場合もあります。
- 外科的治療: 保存療法で改善が見られない場合や、症状が重い場合には、手術が検討されます。口の中から、あるいは首の外側からアプローチして、長くなった茎状突起の一部を切除・短縮する手術が行われます。手術により、神経への圧迫が取り除かれ、多くの場合で症状の劇的な改善が期待できます 。
茎状突起過長症は非常に稀な疾患ですが、長引く原因不明の片側咽頭痛に悩んでいる患者さんを診る際には、このような病気の可能性も念頭に置くことが、正確な診断への鍵となります。以下の論文では、舌咽神経痛の診断と治療について詳しく述べられており、参考になります。
Diagnosis and neurosurgical treatment of glossopharyngeal neuralgia: clinical findings and 3-D visualization of neurovascular compression in 19 consecutive patients

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