左腹部ピクピク痛くない原因とストレス、考えられる病気

左腹部がピクピクして痛くない原因

この記事でわかること
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考えられる主な原因

ストレス、自律神経の乱れ、過敏性腸症候群など、痛みのない腹部の痙攣を引き起こす一般的な要因を解説します。

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病院を受診する目安

症状が続く場合に考えられる病気や、何科を受診すればよいのか、具体的な判断基準を提示します。

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日常でできるセルフケア

食生活の改善やストレス解消法など、症状を和らげるために自分でできる簡単な対策を紹介します。


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左腹部のピクピク、主な原因はストレスと自律神経の乱れ

 

左腹部がピクピクと動く感じがするけれど痛みはない、という症状の最も一般的な原因は、精神的なストレスです。私たちの体は、強いストレスを感じると、体を緊張・興奮させる交感神経が優位になります。この状態が長く続くと、自律神経のバランスが崩れてしまいます 。

自律神経は、胃や腸といった消化管の働きをコントロールしているため、そのバランスが乱れると、消化管の動きに異常が生じます 。例えば、腸が異常に蠕動(ぜんどう)運動を起こし、それが腹部の痙攣として感じられるのです。また、ストレスは筋肉の緊張も引き起こしやすく、腹壁の筋肉が無意識にピクピクと痙攣する「ミオキミア」という状態になることもあります 。これは、まぶたがピクピクするのと同じメカニズムです。

😟 ストレスが引き起こす体のサイン

  • 睡眠不足や疲労の蓄積: 体が十分に休息できていないと、自律神経が乱れやすくなります 。
  • 不安や緊張: 精神的なプレッシャーは、脳から腸へと伝わり、腸の機能を乱します 。これを「脳腸相関」と呼び、密接に関連しています。
  • 生活習慣の乱れ: 不規則な食事や運動不足も、自律神経のバランスを崩す一因となります。

ストレスによる腹部の痙攣は、通常、一時的なものであり、リラックスすることで自然に治まることが多いです。しかし、この症状が長く続く場合は、ストレスが慢性化しているサインかもしれません。意識的に休息を取り、趣味の時間を作るなど、心と体を休ませることが大切です 🧘‍♀️。

左腹部の痙攣は過敏性腸症候群(IBS)のサイン?

ストレスと密接に関連する病気として、「過敏性腸症候群(IBS)」が挙げられます。これは、検査をしても腸に炎症や潰瘍といった器質的な異常が見られないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感、便通異常(下痢や便秘)が慢性的に続く病気です 。

過敏性腸症候群の患者さんでは、腸が非常に敏感な状態になっており、健康な人なら何ともないようなわずかな刺激(食事やストレスなど)でも、腸が過剰に反応してしまいます。この過剰な反応が、腸の異常な蠕動運動(動き)となり、「ピクピク」「ポコポコ」といった痙攣や動きとして感じられることがあります 。特に、S状結腸は左下腹部に位置するため、この部分が痙攣すると左腹部に症状が出やすいです 。

過敏性腸症候群の症状を緩和するためには、食事療法が有効な場合があります。特に近年注目されているのが「低FODMAP(フォドマップ)食」です。

🥗 低FODMAP食とは?

FODMAPとは、小腸で吸収されにくい特定の糖質の総称で、これらを多く含む食品を摂ると、腸内でガスが発生しやすくなり、過敏性腸症候群の症状を悪化させることがあります。症状に悩んでいる方は、一時的に高FODMAP食を避け、低FODMAP食中心の食生活を試してみる価値があるかもしれません。

分類 高FODMAP食(避けるべき食品の例) 低FODMAP食(積極的に摂りたい食品の例)
穀物 小麦、ライ麦、パン、パスタ 米、玄米、米粉パン、十割そば、オートミール
野菜 玉ねぎ、にんにく、ごぼう、アスパラガス トマト、きゅうり、なす、大根、ほうれん草、ブロッコリー
果物 りんご、梨、桃、スイカ、はちみつ バナナ、オレンジ、いちご、キウイ、ぶどう
乳製品 牛乳、ヨーグルト、ソフトチーズ 乳糖を含まない牛乳、ハードチーズ、バター
豆類 納豆、豆腐(木綿) 豆腐(絹ごし)、レンズ豆(少量)

過敏性腸症候群の食事療法について、より専門的な情報が掲載されています。

あいざわ循環器内科・内視鏡・肛門クリニック – 過敏性腸症候群の食事療法について

ただし、自己判断で厳格な食事制限を行うと栄養が偏る可能性もあるため、専門医に相談しながら進めることが重要です。

左腹部が動く感じは女性特有?妊娠や便秘との関係

左腹部のピクピクとした動きは、女性特有の原因によって引き起こされることもあります。特に妊娠中は、多くの女性が腹部の不思議な感覚を経験します。

🤰 妊娠初期のサインとして

妊娠初期には、子宮が大きくなる過程で、子宮を支えている円靭帯(えんじんたい)が引き伸ばされます。これにより、下腹部の左右どちらかが「ピキッ」と引きつるような感覚や、ピクピクとした痙攣のような動きを感じることがあります 。これは生理的な変化であり、多くの場合、心配はいりません。また、ホルモンバランスの変化によって腸の動きが活発になったり、逆に便秘気味になって腸内にガスが溜まったりすることでも、お腹が動くように感じられます 。

💨 便秘やガスの溜まり

女性は男性に比べて便秘になりやすい傾向があります。腸内に便やガスが溜まると、腸がそれを排出しようと活発に動きます。その動きが、腹壁を通して「ポコポコ」「ピクピク」という感覚として伝わることがあります 。特に、体の左側には下行結腸からS状結腸があるため、便が溜まりやすい場所でもあります。食物繊維の多い食事や十分な水分摂取を心がけ、便通を整えることが症状の緩和につながります 。

  • 異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性: 頻度は低いですが、妊娠の可能性がある女性で、急な下腹部痛や不正出血を伴う場合は、異所性妊娠の可能性があります 。この場合は痛みを伴うことがほとんどですが、万が一を考え、速やかに産婦人科を受診してください。
  • 排卵期の違和感: 排卵期に、卵巣の働きによって下腹部に軽い違和感や痙攣のような感覚を覚える人もいます。

左腹部の違和感、病院へ行くべき症状と診療科の選び方

痛みのない腹部のピクピク感は、多くが一時的で心配のないものですが、中には病気が隠れているサインの場合もあります。以下のような症状が見られる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

🏥 受診を検討すべきサイン

  • 痙攣が数週間以上、頻繁に続く
  • ピクピクする感覚がだんだん強くなっている
  • 痛みを伴うようになってきた
  • 発熱、吐き気、嘔吐、下痢、血便など、他の症状も現れた
  • 歩いたり咳をしたりするとお腹に響く
  • 急激な体重減少がある

特に、突然の激しい腹痛や冷や汗、意識が遠のくような感覚がある場合は、大動脈瘤の破裂や大動脈解離といった命に関わる病気の可能性もゼロではありません 。この場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。

👩‍⚕️ 何科を受診すればよいか?

どの科を受診すればよいか迷う場合、まずは症状に応じて判断します。

  1. 消化器内科・内科: 最も一般的な選択肢です。腹部の症状に加えて、便秘や下痢、吐き気など消化器系の症状がある場合は、消化器内科が専門です 。原因がはっきりしない場合も、まずは内科か、かかりつけ医に相談するのが良いでしょう。
  2. 婦人科: 生理不順や不正出血、下腹部全体の痛みなど、女性特有の症状を伴う場合は婦人科を受診してください 。
  3. 泌尿器科: 血尿や排尿時の痛み、頻尿など、泌尿器系の症状がある場合は泌尿器科が適しています 。

受診の目安について、詳しく解説している医療機関のページです。

医療法人社団真佑会 江副クリニック – お腹の左下に痛みや違和感がある?考えられる病気とは

左腹部のピクピクは腹部てんかん?稀な原因と見分け方

左腹部のピクピクとした動きの原因は、ほとんどがこれまで述べてきたような消化器系や筋肉、ストレスによるものですが、ごく稀に、脳の異常が原因となる「腹部てんかん(Abdominal epilepsy)」の可能性も指摘されています。

これは非常に珍しい疾患で、側頭葉てんかんの一種とされています 。通常のてんかん発作のように全身の痙攣を起こすのではなく、発作の症状が腹部に集中して現れるのが特徴です。症状としては、腹部の痙攣やねじれるような感覚、吐き気、腹痛などが周期的、発作的に起こります。痛みを伴わない、ピクピクとした違和感だけの場合もあります。

腹部てんかんは、消化器の病気と症状が似ているため診断が難しく、見過ごされやすい傾向にあります。診断には脳波検査などが必要となります。もし、腹部の症状が周期的に繰り返し起こり、消化器内科で検査をしても全く異常が見つからない場合は、神経内科で相談してみるという選択肢も考えられます。

また、もう一つ稀な原因として「ベリーダンサー症候群(Belly dancer’s dyskinesia)」というものがあります。これは不随意運動の一種で、本人の意思とは関係なく、腹壁の筋肉が波打つように動く状態を指します 。これも神経学的な問題が背景にあると考えられています。

これらの病気は非常に稀であり、左腹部がピクピクするというだけで過度に心配する必要はありません。しかし、医療従事者としては、一般的な原因で説明がつかない症状が続く場合には、こういった稀な疾患の可能性も知識として持っておくことが、正確な診断への一助となるかもしれません。

稀な腹痛の原因に関する症例報告です。専門的な内容ですが、鑑別診断の参考になります。

“Abdominal Pain Mimics” – PMC – NCBI



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