扁平苔癬 皮膚 画像の診断基準
扁平苔癬 皮膚 画像における臨床所見
扁平苔癬(へんぺいたいせん)は、自己免疫性の慢性炎症性皮膚疾患であり、皮膚画像診断において特徴的な所見を呈します。臨床的には、患部に紫紅色で平坦に隆起した多角形の丘疹が認められ、初期病変は直径2~4mmで辺縁が角ばっています。これらの丘疹は散在性に、または融合して局面を形成し、対称性に分布することが多く、手関節屈側、下肢、体幹、亀頭部、口腔粘膜、陰部などに好発します。
皮膚画像による診断の最大の特徴は、横から光を当てると観察される特有の光沢です。ルーペで観察すると、灰白色の細い網目状の線条、すなわちウィッカム線条が認められます。ダーモスコピーを用いた詳細な皮膚画像観察では、白色線条、網状構造が明瞭であり、さらに点状から線状の血管拡張、褐色の色素沈着が確認できます。色の濃い皮膚では、紫紅色ではなく褐色に見えることがあるため、人種や肌色による画像解釈の違いに注意が必要です。
瘙痒感は激痒から無症状まで様々ですが、多くの症例で軽度から中等度の瘙痒を伴います。ケブネル現象として、皮膚の小さな損傷部位に新しい丘疹が出現することがあり、臨床観察時に患者の搔破跡や外傷部位を確認することが重要です。皮膚画像では、病変が時間とともに融合、変化し、色素沈着、萎縮、または角質増殖(肥厚性扁平苔癬)を示すことがあります。
扁平苔癬 皮膚 画像と病理組織学的所見の相関
扁平苔癬の確定診断には、臨床所見だけでなく皮膚生検による病理組織学的検査が不可欠です。病理組織学的には、表皮向性に浸潤するリンパ球による表皮基底層の障害が基本となり、典型的には表皮直下に帯状の強いリンパ球浸潤が認められます。この浸潤細胞はT細胞(CD8陽性細胞傷害性T細胞が主体)、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、好酸球など多彩です。
皮膚生検時には、炎症の強さおよび進展の程度に応じて、複数部位の採取が推奨されます。特に口腔扁平苔癬では、白斑と紅斑やびらんが混在した複雑な臨床像を示すことが多いため、生検部位の選択が診断精度を大きく左右します。組織学的には、表皮の液状変性(基底細胞層の液状変化)、コロイド小体(Civatte body)の観察、表皮顆粒層の肥厚、表皮が時に鋸歯状を呈することが特徴的です。
組織学的色素失調により、メラニン色素が真皮上層に沈着する像が認められ、これが臨床的な色素沈着と対応します。苔癬型反応は、表皮細胞には明らかな異型がないことが重要な鑑別点となり、上皮異形成や悪性病変との区別に有用です。
扁平苔癬 皮膚 画像における多様な臨床病型
扁平苔癬の皮膚病変は、単一の臨床像ではなく、複数の臨床病型を呈します。環状扁平苔癬(annular LP)では、典型疹が遠心性に拡大し、中央部が消退した画像を示し、全症例の約10%に認められます。特に亀頭部でこの臨床型を呈しやすい傾向があります。肥大性扁平苔癬(hypertrophic LP)は、下腿や足背などに厚い角化を被る局面として出現し、経過は極めて慢性で搔破を伴うことが多く、慢性の静脈うっ滞が基盤にあることが多いです。
線状扁平苔癬(linear LP)は、ケブネル現象の結果生じることが多く、しばしばブラシュコ線に沿って認められ、比較的若年に認められます。光線性扁平苔癬(actinic LP)は、若年者に発症しやすく、春~夏に顔面、手背、前腕伸側、頚部など露光部に発症します。急性扁平苔癬では、急速に全身性に拡大するタイプで、躯幹、手関節屈側や足背などを冒し、薬剤との関連を疑わせることがありますが、多くは数ヶ月以内に色素沈着を残し治癒する傾向があります。
毛孔性扁平苔癬(Lichen planopilaris)は、毛嚢を冒すため被髪頭部や腋窩などに病変を認める場合が多く、孔性角栓を中心として周囲に紫紅色局面が取り囲む形をとりやすく、進展すれば斑状の瘢痕性脱毛(pseudopelade of Brocq)を生じます。水疱性扁平苔癬(bullous LP, LP pemphigoides)では、以前より存在していたLP の病変の一部に水疱が生ずる場合と、新たに水疱とともにLP の病変が生じる場合があります。
扁平苔癬 皮膚 画像診断における鑑別診断の重要性
皮膚画像における扁平苔癬の診断には、多くの鑑別疾患を念頭に置く必要があります。臨床的に類似した疾患として、扁平苔癬型薬疹、萎縮性硬化性苔癬(LSA)、限局性皮膚硬化症、皮膚円盤状ループス、爪白癬、爪乾癬などが挙げられます。口腔扁平苔癬の場合、粘膜カンジダ症、瘢痕性類天疱瘡、尋常性天疱瘡との鑑別が重要です。
金属アレルギー関連病変では、頬粘膜や歯肉で金属に近接して病変が現れ、紅斑を囲み環状に網状・白斑病変を示すことが多く、金属パッチテストによる判定が行われます。扁平苔癬型薬疹では、通常のLP と比べ新旧様々な皮疹や乾癬様皮疹が混在していることが多く、病理組織学的にもLP 様から乾癬様まで様々な組織像が見られることが多いです。
移植片対宿主病(GVHD)に伴う口腔粘膜炎は、扁平苔癬様病変を呈しますが、病理組織学的には口腔扁平苔癬に比べてリンパ球浸潤は軽度であり、上皮内にアポトーシスを多く認める傾向があります。上皮異形成を伴う病変では、臨床的に扁平苔癬と区別が困難な場合もあり、病理組織学的評価が特に重要です。
扁平苔癬 皮膚 画像診断と予後・治療選択
扁平苔癬の疫学的特性は、診断後の治療選択に影響を与えます。本邦における皮膚科受診患者の多施設横断調査によれば、全皮膚科疾患のうち0.3%が扁平苔癬です。年齢は40~45歳が多く、性差では欧米では女性に多いとする報告が多い(およそ60%程度)です。小児が罹患することは比較的少なく、全患者の5%以下と報告されています。
重要な予後因子として、多くの症例では介入なしで病変が消退し、64~68%の症例において1年以内の自然軽快が観察されます。ただし、数年後に再発することがあり、誘因への再曝露が生じたか、誘発機序に何らかの変化が生じたことが原因である可能性があります。特に、以前は不顕性であった感染症(歯膿瘍など)を治療することで、消退につながることがあります。
外陰腟扁平苔癬が慢性化し、治療抵抗性となる場合があり、生活の質の低下や腟または外陰の瘢痕形成を引き起こします。口腔粘膜病変は通常、生涯持続し、慢性炎症による表皮基底層障害から、長期的には1~2%で有棘細胞癌が発症するとする報告があり、前癌状態として病態をとらえる必要があります。
皮膚画像診断により限局性の扁平苔癬と判断された場合、コルチコステロイドの外用または病変内注射が第一選択の治療となります。強力な皮膚画像所見を示す全身性の扁平苔癬では、ナローバンドUVB(NBUVB)療法やPUVA療法などの光線療法、ステロイド内服、レチノイド内服、または免疫抑制薬の全身投与が検討されます。治療効果の評価には、定期的な臨床画像と必要に応じた病理組織学的評価が重要です。
重症型扁平苔癬診療ガイドライン(案) – 厚生労働省研究班による診断基準、治療指針、病態解析の詳細情報
口腔病理基本画像アトラス – 口腔扁平苔癬 – 口腔粘膜病変の画像と病理所見の詳細解説
これで十分な情報を収集しました。記事の作成に進みます。
