乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の薬価と接種効果について

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の薬価と特徴

 

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の基本情報
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ワクチンの種類

弱毒生ワクチン(生きたウイルスを弱毒化)

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接種費用

7,000〜8,000円程度(1回接種)

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保険適用

薬価基準適用外(全額自己負担が基本)

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の薬価基準と費用

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は、水痘(水ぼうそう)および50歳以上の方の帯状疱疹予防に使用されるワクチンです。このワクチンは薬価基準適用外となっており、公的医療保険の対象外です。そのため、接種費用は全額自己負担が基本となります。

医療用医薬品 : 乾燥弱毒生水痘ワクチン

接種費用は医療機関によって異なりますが、一般的に7,000〜8,000円程度で接種できます。これは1回の接種で完了するため、トータルコストとしては比較的抑えられています。

なお、自治体によっては接種費用の一部を公費負担している場合もあります。例えば、高齢者を対象に助成制度を設けている自治体もありますので、お住まいの地域の情報を確認することをおすすめします。

厚生労働省では帯状疱疹ワクチンへの補助金を出す方向で調整を進めていますが、2025年3月現在、対象となる年齢や助成額については明確になっていません。今後の動向に注目する必要があります。

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の効能と接種対象者

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は、水痘(水ぼうそう)の予防と50歳以上の方に対する帯状疱疹の予防という2つの効能があります。

【接種対象者】

  • 水痘(水ぼうそう)の予防:主に小児
  • 帯状疱疹の予防:50歳以上の方

帯状疱疹予防における効果については、同じOka株を元に作成された海外製品(ZOSTAVAX®)のデータから推測されています。50〜59歳を対象とした研究では、帯状疱疹の発症予防効果は約70%、60歳以上では約50%の発症予防効果があるとされています。また、帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症は約66.5%減少させる効果があります。

ただし、この効果は時間の経過とともに低下し、接種後8年目には予防効果が約4%まで低下するというデータもあります。そのため、効果の持続期間は約5年程度と考えられています。

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の副反応と注意点

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は、一般的に安全性の高いワクチンですが、他のワクチンと同様に副反応が生じる可能性があります。

【主な副反応】

  • 注射部位の反応:発赤、腫脹、硬結、そう痒感、熱感、疼痛
  • 全身症状:発熱、発疹
  • その他:倦怠感、関節痛など

これらの副反応のほとんどは軽度で一過性のものですが、まれに重篤な副反応が報告されています。2018年には「無菌性髄膜炎」が副反応として追加されました。無菌性髄膜炎の症状としては、項部硬直、発熱、頭痛、悪心・嘔吐、意識混濁などが現れることがあります。

特に注意すべき点として、ワクチン接種から数年経過した後に、帯状疱疹に伴って無菌性髄膜炎が現れた症例も報告されています。このような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。

また、生ワクチンであるため、以下の方は接種できません:

  • 明らかな発熱を呈している方
  • 重篤な急性疾患にかかっている方
  • 本剤の成分にアナフィラキシーを呈したことがある方
  • 妊娠していることが明らかな方
  • 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する方
  • 免疫抑制をきたす治療を受けている方

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」と不活化ワクチン「シングリックス」の比較

帯状疱疹予防のワクチンには、「乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビケン)」と「乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)」の2種類があります。両者の特徴を比較してみましょう。

【ワクチンの種類と特徴の比較】

項目 乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン「シングリックス」
種類 生ワクチン 不活化ワクチン
接種回数 1回 2回(2ヶ月以上の間隔)
接種方法 皮下注射 筋肉内注射
費用 7,000〜8,000円 40,000円程度(2回合計)
発症予防効果 50〜59歳:約70%60歳以上:約50% 50歳以上:約97%70歳以上:約90%
帯状疱疹後神経痛抑制効果 約66.5% 50歳以上:100%70歳以上:約85.5%
効果持続期間 約5年 少なくとも10年
副反応 比較的少ない 比較的多い
接種制限 免疫機能低下者は接種不可 免疫機能低下者も接種可能

 

「シングリックス」は「ビケン」と比較して発症予防効果や効果持続期間が明らかに優れていますが、費用が5倍程度高く、副反応も比較的多いという特徴があります。

どちらのワクチンを選ぶかは、年齢、予算、免疫状態などを考慮して判断する必要があります。特に「ワクチン接種に1人40,000円も出す余裕がない」という場合には、「ビケン」を選ぶのも合理的な判断と言えるでしょう。

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の薬価基準未収載の意味と医療経済的視点

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は薬価基準未収載のワクチンです。これは、公的医療保険の対象となる医薬品リスト(薬価基準)に収載されていないことを意味します。そのため、接種費用は全額自己負担となります。

では、なぜこのワクチンは薬価基準に収載されていないのでしょうか。これには以下のような背景があります:

  1. 予防接種法上の位置づけ:帯状疱疹ワクチンは、現在、定期接種ではなく任意接種に分類されています。定期接種は公費で実施されますが、任意接種は自己負担が原則です。
  2. 費用対効果の評価:新たな医薬品を公的医療保険の対象とするかどうかは、その費用対効果も考慮されます。帯状疱疹は生命を脅かす疾患ではないため、優先度が低く評価される傾向があります。
  3. 財政的制約:すべての予防接種を公費負担にすることは、国や自治体の財政的負担が大きくなるため、優先順位をつけて段階的に進められています。

医療経済的な視点から見ると、帯状疱疹の発症や合併症による医療費や社会的損失(労働力の低下など)と、ワクチン接種にかかるコストを比較する必要があります。帯状疱疹は高齢者の生活の質(QOL)を著しく低下させる疾患であり、特に帯状疱疹後神経痛は長期間続く可能性があります。

厚生労働省が補助金制度の導入を検討していることからも、今後、帯状疱疹ワクチンの公的支援が拡充される可能性があります。医療従事者としては、こうした制度の変更に注目し、患者さんに最新の情報を提供できるよう準備しておくことが重要です。

また、自治体独自の助成制度も徐々に広がりつつあります。例えば、一部の市区町村では高齢者を対象に接種費用の一部を助成する制度を設けています。患者さんには、お住まいの自治体の公式ウェブサイトや保健センターで情報を確認するようアドバイスするとよいでしょう。

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の製造と流通体制

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」は、一般財団法人阪大微生物病研究会(BIKEN)によって製造販売されており、武田薬品工業株式会社が販売を担当しています。このワクチンは昭和62年(1987年)3月から販売が開始されており、日本で長年使用されてきた実績があります。

【製造と品質管理】

「ビケン」は、弱毒生水痘ウイルス岡株をヒト二倍体細胞(MRC-5)で培養増殖させ、得たウイルス浮遊液を精製し、安定剤を加えて凍結乾燥したものです。製造工程ではウシの血液由来成分(血清)およびブタ由来成分(トリプシン)が使用されています。

このワクチンの有効期間は、検定合格日から2年間とされています。医療機関では、この有効期限を確認し、適切な温度管理のもとで保管することが重要です。

【包装形態と流通】

「ビケン」は、以下の形態で提供されています:

  • バイアル 1人分 1本
  • 溶剤(日本薬局方注射用水)0.7mL 1本添付

医療機関への流通は、卸売業者を通じて行われています。ワクチンの安定供給は、公衆衛生上重要な課題であり、製造元と販売元は安定した生産・供給体制の維持に努めています。

【流通上の課題】

ワクチンは生物学的製剤であるため、製造から使用までの間、適切な温度管理(コールドチェーン)が必要です。特に生ワクチンは温度変化に敏感であり、効力の低下を防ぐために厳格な温度管理が求められます。

また、需要と供給のバランスも重要な課題です。季節性の需要変動や、特定の年齢層への接種推奨が変更された場合など、急激な需要増加に対応できる生産・流通体制の整備が必要とされています。

医療従事者は、このようなワクチンの製造・流通の特性を理解し、適切な保管・管理を行うことが求められます。また、患者さんへの説明の際には、ワクチンの品質管理体制についても触れることで、安全性への信頼を高めることができるでしょう。

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の臨床現場での使用判断と患者指導のポイント

臨床現場で乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の接種を検討する際、医療従事者は以下のポイントを考慮して患者さんに適切な情報提供と指導を行うことが重要です。

【接種の判断基準】

  1. 年齢と効果のバランス
  • 50〜59歳:発症予防効果が約70%と比較的高い
  • 60歳以上:発症予防効果は約50%に低下するが、帯状疱疹後神経痛の予防効果は約66.5%維持
  1. 費用対効果
  • 「ビケン」(7,000〜8,000円)は「シングリックス」(約40,000円)に比べて経済的負担が少ない
  • 特に複数の家族で接種を検討する場合、費用差は大きくなる
  1. 免疫状態の評価
  • 免疫機能が低下している患者には「ビケン」は禁忌
  • 免疫抑制剤使用中、がん治療中、HIV感染者などは「シングリックス」を検討
  1. 副反応のリスク評価
  • 「ビケン」は副反応が比較的少なく、仕事や日常生活への影響が少ない
  • 特に仕事の都合で休めない方には「ビケン」が適している場合がある

【患者指導のポイント】

  1. 接種前の説明
  • ワクチンの効果と限界(100%の予防効果はないこと)
  • 予想される副反応と対処法
  • 接種後の注意点(他の生ワクチンとの接種間隔など)
  1. 接種後の観察
  • 接種直後は15〜30分程度、医療機関で経過観察
  • 帰宅後も体調変化に注意し、異常があれば連絡するよう指導
  1. 長期的なフォローアップ
  • 効果持続期間(約5年)を説明し、必要に応じて再接種の検討
  • 帯状疱疹様の症状が現れた場合は早めに受診するよう指導
  1. 生活指導
  • ワクチン接種後も免疫力低下に注意(十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動)
  • ストレス管理の重要性(ストレスは帯状疱疹発症のリスク因子)

【医療機関での実践例】

当院では、50歳以上の患者さんに対して、定期健診や他の診療の機会を利用して帯状疱疹ワクチンの情報提供を行っています。特に、過去に帯状疱疹を経験した方や家族に帯状疱疹患者がいる方には、積極的に接種を検討するよう勧めています。