乳腺炎の症状と原因から治療まで

乳腺炎の症状と原因

乳腺炎の主な症状
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乳房の局所症状

しこり、腫れ、赤み、熱感、痛みが乳房に現れます

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全身症状

発熱、悪寒、倦怠感、頭痛などの症状が伴うことがあります

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進行した症状

化膿性乳腺炎では38度以上の高熱や膿瘍形成が起こります

乳腺炎の初期症状としこり

乳腺炎の初期症状としては、乳房にしこりや痛み、熱感を感じたり、赤みを帯びるなどの変化が一般的です。乳房の一部に軽い痛みや腫れを感じる段階では、全身症状はほとんど見られません。特に産後2〜4週目に起こりやすく、多くは6週以内に発症します。

参考)乳腺炎には初期症状はありますか? |乳腺炎


乳房が張ってきて硬くなっている部分がある、押すと痛いなどの症状は、乳腺炎になりかけていることを疑う必要があります。この段階で適切に対処すれば、授乳によって乳汁を排出することで症状が軽くなります。

参考)乳腺炎|きもと乳腺クリニック|津市渋見町

乳腺炎の原因と授乳期の関係

乳腺炎とは、乳腺が炎症を起こしてしまう病気で、急性に発症することも多く、分娩後や産褥期に起こりやすいとされています。授乳期間中によく見られ、特に初産婦に好発し、軽度のものを含めると10〜20%の頻度で経験されていると言われています。

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主な原因には、乳管が十分に開いていない、下着などによる乳房の圧迫、赤ちゃんが母乳を飲む量が少ないといったことが挙げられます。授乳の間隔が一定でないことで母乳が溜まり、炎症につながることもあります。母乳が乳腺内に溜まって起こるうっ滞性乳腺炎から、乳頭の傷などから細菌が侵入して起こる化膿性乳腺炎へと進行する可能性があります。

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乳腺炎の発熱と化膿性の症状

乳腺炎には「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」の2種類があり、どちらも症状として発熱が見られますが、特に化膿性乳腺炎では高熱や頭痛などの症状が顕著です。うっ滞性乳腺炎では、おっぱいの熱感や赤み、腫れ、しこりなどの症状のほか、37.5〜38.5度未満の熱が出ることがあり、熱は上がったり下がったりを繰り返すことがあります。

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化膿性(感染性)乳腺炎では、乳頭にできた傷などから入った細菌が、乳腺内に溜まった母乳で増殖・感染した状態となります。細菌感染によって症状は全身におよぶため、38.5度以上の高熱や悪寒、頭痛、関節痛、吐き気などの症状が見られます。起炎菌は黄色ブドウ球菌、連鎖球菌が多く、その他に腸球菌、大腸菌などがあります。

参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E6%80%A5%E6%80%A7%E5%8C%96%E8%86%BF%E6%80%A7%E4%B9%B3%E8%85%BA%E7%82%8E


また、乳汁の中のナトリウム濃度が上昇するため、母乳が塩味となり、乳児が哺乳を嫌がることがあるという特徴的な症状も報告されています。

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乳腺炎の治療とマッサージ方法

うっ滞性乳腺炎の治療では、軽症である場合には、栄養バランスの良い食事、休息・睡眠をしっかりとれば、自然治癒が期待できます。授乳や搾乳で母乳をできるだけ出して、乳房内の母乳の溜まりを改善することが基本的な治療になります。赤ちゃんが乳汁を飲み切れなかった場合には搾乳を行い、乳腺に乳汁を残さないことが大切です。

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適切な乳房マッサージは、乳房にたまっている乳汁を取り除き、乳腺炎症状の改善が期待できる処置として推奨されています。まずホットタオルなどで乳房全体を温めることで、母乳の排出を促すことができます。次に、授乳をしながら乳房の周囲から乳頭に向かって「しこりを流すイメージ」で優しく撫でるようにマッサージします。胸の外側から脇の下のリンパ節へ、内側から胸の中央のリンパ節へ向かって流すようにマッサージすると、余分な水分が排出され、張りの軽減に効果的とされています。

参考)乳腺炎に有効なマッサージはありますか? |乳腺炎


化膿性乳腺炎の治療では、マッサージなどに加え、抗生物質・解熱鎮痛剤の投与によって治療を行います。痛みや発熱などの症状が強い場合は、授乳中でも安全な薬を処方されます。重症化している場合には、切開し排膿処置が必要になることもあります。膿が溜まってしまった場合は、針を用いて膿を排出する処置を行ったり、外科的な切開排膿が必要になることもあります。​
薬物療法としては、葛根湯が消炎鎮痛作用があり、乳房の腫脹や頭痛に効果があるといわれており、「乳腺炎」で保険適応があります。葛根湯だけでは乳房痛が軽快しない場合、屯用として消炎鎮痛剤を処方されることもあります。乳頭亀裂、白斑などがみられる場合は、抗生剤が含まれているゲンタシン軟膏を1日数回塗布することもあります。

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乳腺炎の予防と授乳時の注意点

乳腺炎を予防するためには、母乳を滞らせないこと、滞りを早いうちに解消することが重要となります。たとえ乳汁うっ滞を起こしたとしても、早期に対処すれば乳腺炎への進行を防ぐことができます。

参考)【助産師解説】乳腺炎予防のための「4つの今すぐできること」


正しい授乳姿勢と適切なラッチオン(吸着)を心がけることが予防の第一歩です。ポジショニング(授乳姿勢)が悪かったり赤ちゃんのラッチオンが適切でないと、上手に母乳を飲めないので飲み残しが多くなりやすく、また正しく吸着されないと乳頭に傷もつきやすくなります。赤ちゃんには乳首だけでなく乳輪までしっかりくわえさせることが大切です。

参考)産婦人科医が教える、乳腺炎の原因と乳腺炎を予防する4つの方法…


基本の横抱きだけでなく、添い乳や脇抱き、レイバックなど、さまざまな授乳姿勢をローテーションで行うよう心がけると、いろんな乳腺をまんべんなく吸わせることができます。乳房の一部にすでにしこりや痛みがあるときは、その部分が赤ちゃんの下あごにくるようくわえさせることで、乳汁うっ滞を起こした乳腺が吸われやすくなります。​
定期的に授乳を行い、おっぱいを空にすることも予防に重要です。授乳間隔が長くなると、乳腺に母乳が溜まりやすく、乳腺炎を引き起こす原因になります。目安としては、前の授乳から3時間以内を目安に、こまめに授乳するようにしましょう。飲み切らずに余ってしまった場合は、搾乳しておっぱいの中に溜まっていないようにすることが大切です。

参考)授乳中は乳腺炎に気を付けよう!乳腺炎になる原因から予防法を解…


乳腺炎の治療中は脂っこい食品や、脂肪分の多い乳製品などは控えた方が治りは早くなります。また喫煙中の方は治りが悪くなったり難治性となる傾向があるため、控えることをおすすめします。​

産婦人科の診察に関する参考情報として、日本助産師会が発行している「乳腺炎ケアガイドライン2020」には、エビデンスに基づいた予防と治療の詳細が記載されています。

日本助産師会「乳腺炎ケアガイドライン2020」

乳腺炎の専門的なケアや治療方法について、分娩された産婦人科や乳腺外科での相談が推奨されます。

乳腺外科での乳腺炎診療について