離断性骨軟骨炎と肘のバッティング障害

離断性骨軟骨炎と肘バッティング

🏥 この記事のポイント

離断性骨軟骨炎とは

肘の外側の軟骨が剥がれる病気で、投球やバッティングなど繰り返しの動作で発症します

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早期発見の重要性

初期段階では症状が少ないため、エコー検査による定期検診が重要です

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治療と復帰

病期に応じて保存療法または手術を選択し、適切なリハビリで競技復帰を目指します

離断性骨軟骨炎の肘における発症メカニズム

離断性骨軟骨炎は、成長期の子どもの肘関節外側にある上腕骨小頭という部分に発症する疾患です。この病気は英語で「osteochondritis dissecans」と表記されることから、頭文字をとって「OCD」とも呼ばれています。野球における投球動作だけでなく、バッティング動作でも繰り返し肘に負担がかかることで発症します。

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発症のメカニズムとして、投球や打撃による橈骨頭の上腕骨小頭への繰り返される圧迫損傷が最も疑われています。成長期の未発達な軟骨は脆弱であり、反復する外力の蓄積によって外側の骨軟骨が母床より剥脱・分離し、時間とともに遊離体となっていきます。明確な原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要素に加えて、肘に繰り返し負荷がかかることで血流障害や壊死を起こして発症すると考えられています。

参考)診療科・診療協力部門|麻生総合病院


発症率は野球選手全体の2〜3%程度とされており、特に9〜12歳の小学校高学年の男子に多く見られます。投球期間や投球数だけでなく、肘以外の体幹や下肢を含めた機能障害、投球フォームやバッティングフォームの悪さなども関連しています。

参考)ブログエラー

離断性骨軟骨炎の症状と病期分類

離断性骨軟骨炎の主な症状は、ボールを投げた時やバットを振った時の肘外側の痛み、肘外側を押した時の圧痛、肘関節の曲げ伸ばし制限などです。長期化すると肘の可動域が著しく制限され、関節内に遊離体が生じることで「ロッキング現象」と呼ばれる関節の引っかかりが生じることもあります。

参考)https://okawa-seikei.com/2025/05/12/what-is-osteochondritis-dissecans/


病期はレントゲン所見により「透亮期」「分離期」「遊離期」の3段階に分類されます。透亮期では上腕骨小頭に不規則な骨の透明化が見られ、さらに外側型と中央型に細分化されます。分離期では小頭の硬化像が認められ前期型と後期型に分けられ、遊離期では遊離体が存在し巣内型と巣外型に分類されます。

参考)離断性骨軟骨炎


特に注意すべき点は、初期の透亮期では無症候の場合が多く、痛みなどの自覚症状が現れにくいことです。そのため、症状が出る前の段階で発見することが重要であり、定期的な検診が推奨されています。進行すると投球やバッティングだけでなく、日常生活にも支障をきたす可能性があるため、早期発見・早期治療が極めて重要です。

参考)野球肘(離断性骨軟骨炎)

離断性骨軟骨炎の肘における診断方法

離断性骨軟骨炎の診断は、問診、肘関節可動域の評価、圧痛の確認、肘にストレスをかけた時の痛みなどによって行われます。画像検査では、レントゲン検査、超音波検査(エコー)、MRI検査、CT検査などが用いられます。

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特に有用なのが超音波検査(エコー)です。エコー検査は放射線を使わず痛みもないため、子どもにも安心して使用でき、OCDのように症状が現れにくい病変を見つけるのに非常に適しています。障害の初期段階では、エコー検査はレントゲン検査より鋭敏に発見できるという利点があります。正常な肘では軟骨下骨がなめらかな白い線として描出されますが、OCDではその白い線が途中で途切れたり不明瞭になったりします。

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初期の場合はレントゲンでは写りにくいため、MRI検査で確定診断をするのが一般的です。MRIやCTを使うことで、関節内遊離体の存在や病期の進行度などを詳しく確認できます。小学生から中学生の野球選手に対して定期的に行う「野球肘検診」では、エコー検査を中心とした早期発見の取り組みが推奨されています。

参考)野球肘検診|段医院|姫路市林田町の整形外科・小児科・内科

離断性骨軟骨炎のバッティング時の治療法

治療法は病期の進行度合いに応じて決定され、初期(透亮期)と分離期の初期では保存療法、分離期後期や遊離期では手術療法が選択されます。保存療法では、投球やバッティングなど原因となっている運動を完全に禁止し、安静にすることで病巣部位の修復を待ちます。

参考)離断性骨軟骨炎(肘) – 名古屋市中村区の整形外科 – MR…


保存療法の基本は、障害された軟骨の自然修復能力を阻害する因子の除去です。安静にしていれば分離した骨は徐々に癒着してきます。治療期間は3ヶ月から6ヶ月、場合によっては1年以上の長期にわたることもあります。装具やスプリントによる固定を行うこともあり、痛みや炎症を抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることもあります。

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手術療法には複数の術式があります。骨穿孔術(ドリリング)は、剥離した軟骨片を貫いてドリルで下の骨まで穴を開け、骨の出血を促して組織の回復を活性化する方法です。骨釘移植は、自分の骨で作った釘や生体吸収性ピンで固定する方法です。骨軟骨移植術(モザイクプラスティー)は、他の関節から軟骨付きの骨を採取して損傷部分に移植する方法で、軟骨の欠損が大きい場合に選択されます。​
手術後は2〜3週間のギプス固定を行い、4〜6ヶ月で運動を開始、6ヶ月以降にスポーツを始めるのが一般的です。研究によると、手術を受けた患者の約76%が主に行っていたスポーツに復帰でき、平均復帰時期は6.9ヶ月とされています。

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離断性骨軟骨炎のバッティング動作における予防策

離断性骨軟骨炎を予防するためには、バッティング動作を含む肘への負担を減らすことが最も重要です。肘への負担は「1回の動作での負担 × 動作回数」で決まるため、正しいフォームで負担を軽減し、過剰な練習を避けることが効果的です。

参考)野球肘|新中野整形・リハビリテーションクリニック 整形外科 …


適切な投球・打撃フォームの習得は予防の基本です。悪いフォームの代表例として「肘下がり」や「手投げ」があり、これらは肘への負担を増大させます。指導者に定期的にフォームをチェックしてもらうことや、ビデオ撮影によるフォーム確認も有効です。

参考)野球肘


運動量の管理も重要な予防策です。特に成長期の選手においては、過剰な練習や試合出場を避け、適度な休息を取ることが必要です。投球回数をなるべく減らすことも大切で、肘関節内側にかかる力は靱帯の破断強度を超えているため、単純に投球数を制限することが推奨されています。​
筋力トレーニングとストレッチによって肘周りの筋肉を強化し、柔軟性を保つことで関節にかかる負担を軽減できます。また、少しでも痛みがあれば我慢せずに安静にすることが重要です。痛みを我慰して投球やバッティングを続けると障害が悪化し、手術が必要になることもあります。​
定期的な野球肘検診の受診も効果的な予防策です。エコー検査による早期発見により、症状が現れる前に病変を見つけて適切な対処ができます。

参考)「野球肘」の予防と早期発見をサポートする超音波診断装置|古島…


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