クモ膜下出血とは何か原因症状治療

クモ膜下出血とは

クモ膜下出血の基礎知識
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脳を覆う膜の構造

硬膜・クモ膜・軟膜の3層構造で、クモ膜と軟膜の間に脳脊髄液が満たされています

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出血のメカニズム

クモ膜下腔に出血が生じ、脳脊髄液中に血液が混入する病態です

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発症の特徴

脳血管障害の8%を占め、50~60代に好発し、女性が男性の2倍発症しやすい疾患です


クモ膜下出血とは、脳を覆う3層の髄膜のうち、クモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔に出血が生じる疾患です。脳血管障害の8%を占め、突然死の6.6%がこれに該当するといわれています。日本では年間1万人程度の死亡原因となっており、50歳から60歳で好発し、男性より女性が2倍多いとされています。

参考)クモ膜下出血 – Wikipedia


脳は外側から硬膜、クモ膜、軟膜の3枚の膜で覆われており、クモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔は脳脊髄液という液体で満たされています。この脳脊髄液中に血液が混入した状態がクモ膜下出血です。脳を包んでいる重要な空間に出血が起こることで、脳全体に深刻なダメージを与える可能性があります。

参考)クモ膜下出血


発症すると最善の治療を行ったとしても3分の1の方が死亡され、3分の1の方が後遺症を残されるという、非常に重篤な疾患です。クモ膜下出血は予兆なく突然発症することが多く、発症前の早期発見が極めて重要な疾患といえます。

参考)http://www.suiseikai.jp/disease/kumomakka.html

クモ膜下出血の原因と脳動脈瘤

クモ膜下出血の原因で最も多いのは脳動脈瘤の破裂で、クモ膜下出血を発症した日本人の約80~90%は脳動脈瘤の破裂から発症します。脳動脈瘤とは脳の血管にできる風船のような膨らみ(コブ)のことで、血管の分岐部に発生しやすい特徴があります。

参考)くも膜下出血の症状・5つの前兆をチェック


脳動脈瘤ができる原因は正確には不明ですが、血管の分岐部の壁に先天的に弱い部分があり、そこに血液の流れ、高血圧や加齢による動脈硬化などが加わって発生すると考えられています。通常、血管は弾性に富む強い組織ですが、何らかの原因で弱くなった血管の壁から発生する動脈瘤の壁は薄く弱いため、ときに破裂してクモ膜下出血を起こします。

参考)くも膜下出血(破裂脳動脈瘤) | 秋田県立循環器・脳脊髄セン…


脳動脈瘤は先天的な嚢状動脈瘤、生活習慣病などによる動脈硬化が関与する紡錘状動脈瘤、ストレスや動脈硬化による解離性動脈瘤に分けられます。動脈瘤は通常10ミリ以下の大きさですが、5%程度で大型(11ミリ以上)になり、治療が難しくなってきます。脳動脈瘤の他にも、脳動静脈奇形(5~10%)によるクモ膜下出血もあります。

参考)クモ膜下出血|新さっぽろ脳神経外科病院

クモ膜下出血の症状と前兆

クモ膜下出血の典型的な症状は、バットで殴られたような「突然起こる激しい頭痛」です。今までに体験したことがないような激しい頭痛であり、「後ろからハンマーで殴られたような」、「後頭部に突然ガーンときた」というように訴えられることが多数です。

参考)302 Found


しばしば嘔気・嘔吐を伴い、出血が激しいと意識も混濁します。クモ膜下出血の約半数が頭痛の直後か少し遅れて意識が悪くなります。逆に出血が軽いと、風邪をひいたと勘違いされることもあり、頭痛を感じず突然意識を失うこともあります。

参考)くも膜下出血の前兆・命に関わる頭痛とは?|ほどがや脳神経外科…


クモ膜下出血の前兆として「警告頭痛」と呼ばれる急な頭痛が起こる場合があります。これは動脈瘤から出血が始まっていることによる刺激が原因となっている可能性があります。警告頭痛の強さはさまざまで、他にも目の痛みや物が二重に見える、まぶたが下がる、めまい、吐き気、頭がモヤモヤするなどの前兆症状が起こる場合があります。前兆症状はしばらくすると治ることが多く、その数日後に大きな発作を起こすことが多いとされています。

参考)くも膜下出血の前兆?首の後ろの痛みを伴う激しい頭痛は危険!


統計によると、約3分の1は感情興奮、労作、排便、性交などの急な血圧上昇を伴うような時、約3分の1は睡眠中に、残りの3分の1は安静時に発症しています。​

クモ膜下出血の検査方法

クモ膜下出血が疑われた場合は、CT検査かMRI検査を行って出血を確認します。頭部CTを撮影してクモ膜下出血の存在を確認することが第一選択です。CTでは白色の高吸収域として、MRI(FLAIR画像)では白色の高信号域として描出されます。

参考)くも膜下出血(脳神経外科)


ただし出血量が少ない場合や、出血から時間が経った時期においては、CTでは出血が検出できにくいことがあります。そういう時でもMRI(FLAIR画像)では出血と診断できる可能性があります。場合によっては腰部から細い針を刺入して髄液検査をすることもあります(腰椎穿刺)。

参考)クモ膜下出血


クモ膜下出血であることが診断された場合、脳血管造影を行って出血の原因と部位を確認して治療方針を立てます。脳動脈瘤の診断にはMRAまたは3DCTAを行います。MRAはMRI検査と同時に簡便に行える利点があり、3D処理を施すことにより観察しやすくなります。​
3DCTAはヨード造影剤を静脈に注入しながら撮影し、最近の3DCTAは脳動脈瘤の診断能力が高く、緊急時などに行われます。脳血管造影(DSA)は、足の付け根にある大腿動脈や肘の内側にある上腕動脈からカテーテルという細い管を頚部の位置にある頸動脈や椎骨動脈まで入れ、そこから造影剤を注入して血管の観察を行う、現在でも最も確実な診断法とされています。​

クモ膜下出血の治療方法

クモ膜下出血急性期の治療は、大きく2つの方法に分けられます。脳動脈瘤クリッピング術は全身麻酔の手術で、頭皮を切開し、頭蓋骨を一部取り外してくも膜下腔を経由して脳動脈瘤に到達し、動脈瘤にクリップをかけます。

参考)https://neurosur.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/disease/dis25/


脳動脈瘤コイル塞栓術もほとんどが全身麻酔で行われ、太ももの付け根から動脈に管を入れ、血管の中から動脈瘤に到達し、治療用の細いカテーテルを用いて動脈瘤をプラチナ製のコイルで充填するものです。​
クリッピング術、コイル塞栓術ともにクモ膜下出血急性期の治療としては確立されたものです。それぞれの方法に固有の特徴があり、クモ膜下出血を来した患者の年齢や全身状態、動脈瘤の場所、大きさ、形状などに応じてどちらかの治療を選択することになります。​
手術が終わったら治療が終わりということではなく、その後も危険な状態が約2週目まで続きます。クモ膜下出血では診断が遅れると悲惨な結果に終わる可能性があり、その原因の第1位が再出血です。再出血は発症後24時間以内に起こることが多いので、クモ膜下出血が疑われる場合には速やかに脳神経外科専門施設を受診する必要があります。​

クモ膜下出血の合併症とリスク

クモ膜下出血の術後には重大な合併症のリスクがあります。一つは脳血管攣縮とよばれる現象で、予防する薬はあるものの原因や治療法などはまだ確立されていません。脳血管が4日目から10日目をピークに収縮し脳梗塞を生じます。出血後第4~第14病日には血管が細くなって血流が不十分になり、脳梗塞を起こす危険性があります。術後は元気であってもその後に脳梗塞ができたために寝たきりになることがあります。​
もう一つの重要な合併症は正常圧水頭症です。脳の中の水の廻りが出血により障害され、脳の中に水がたまる現象です。くも膜下出血になると、脳脊髄液が血液で汚染され、血液で汚染された脳脊髄液の影響で脳脊髄液の吸収がうまくいかなくなります。そのため、頭蓋内の脳脊髄液が過剰となり、水頭症を来すことがしばしばあります。

参考)続発性(正常圧)水頭症


水頭症は、早ければ脳血管攣縮を乗り切る前の2週間前後から、そして遅い場合には2~3ヶ月程度してから顕在化してきます。症状としては認知機能の低下や歩行障害が中心で、尿失禁を認めることもあります。治療は確立されており脳の水を腹腔内に流して吸収できるようにします。​

クモ膜下出血の予防と早期発見

クモ膜下出血の最大の予防法は、原因となる脳動脈瘤を破裂前に見つけることです。これは脳ドックを定期的に受診することで可能となります。破裂前の脳動脈瘤を見つけたら全て手術をしなければいけないという訳ではなく、高血圧を予防しながら経過観察を行う場合もあります。

参考)【激しい頭痛】くも膜下出血の原因や危険な前兆とは?対処法につ…


クモ膜下出血の主なリスク因子は、喫煙習慣、高血圧保有、過度の飲酒が挙げられ、これらの危険因子を持ち合わせる人では、その改善を行うよう強く勧められます。血圧はきちんと厳格に正常にし、喫煙はもちろん避けるべきです。定期的な血圧測定と管理が重要で、高血圧は脳血管に過度の負担をかけ、血管破裂のリスクを高めます。

参考)https://yahikozawa-clinic.com/medical/dementia/


脳動脈瘤は家族性にできやすい人がいることも知られています。家族歴にクモ膜下出血や脳内出血がある場合、リスクが高まります。ご家族に脳動脈瘤のある方やくも膜下出血を起こした方がおられる場合は、是非とも脳ドックの受診をおすすめします。

参考)人間ドックでクモ膜下出血・脳内出血リスクを減らす方法|東京人…


脳ドックの研究では、成人のおよそ3%ものひとに脳動脈瘤が見つかります。一般には、直径5mm以上の動脈瘤がみられたら要注意です。遺伝などのリスクのある方でMRIで脳動脈瘤がなかった場合、それでも3年に1度くらいは定期的にMRIの検査を受けて新たな脳動脈瘤がないかチェックすることをおすすめします。特にリスクが高い閉経後の女性は脳ドックを受診されると良いでしょう。​
<参考リンク>

クモ膜下出血の詳細な診断と治療方針について

京都大学医学部附属病院 脳神経外科 – くも膜下出血

脳動脈瘤とクモ膜下出血の合併症について

福岡の脳神経外科 – 続発性(正常圧)水頭症

クモ膜下出血の予防とリスクファクターについて

人間ドックでクモ膜下出血・脳内出血リスクを減らす方法