シュウ酸カルシウムとパイナップルの関係

シュウ酸カルシウムとパイナップル

この記事のポイント
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未熟なパイナップルに注意

未熟な果実にはシュウ酸カルシウムが多く含まれ、口腔内にピリピリとした刺激を与えます

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尿路結石との関連性

シュウ酸カルシウムは尿路結石の主要な原因物質であり、食事管理が重要です

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カルシウムと一緒に摂取

カルシウムと同時摂取することで腸管でのシュウ酸吸収を抑制できます

パイナップルに含まれるシュウ酸カルシウムの特徴

パイナップルには未熟な状態でシュウ酸カルシウムが多く含まれています。シュウ酸カルシウムは針状の結晶で、舌や口腔内の粘膜に刺激を与えるため、パイナップルを食べた際にピリピリとした感覚を覚えることがあります。この成分は果実が成熟するにつれて減少していくため、完熟したパイナップルを選ぶことが重要です。

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通常、体内でシュウ酸とカルシウムが結合してシュウ酸カルシウムが形成されますが、未熟なパイナップルには既に結晶の状態でシュウ酸カルシウムが含まれているため、より注意が必要となります。完熟したパイナップルは皮が黄色く、甘い香りがするのが特徴です。葉の色が濃い緑色でツヤがあり、ずっしりと重みのあるものを選ぶと良いでしょう。

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琉球大学の研究によると、パイナップル果実に含まれる有機酸のうち、シュウ酸は全有機酸の約1%を占めており、クエン酸が約70%、リンゴ酸が約30%という構成になっています。この比率から見ても、シュウ酸の含有量は他の有機酸と比較して少ないことがわかります。

参考)https://u-ryukyu.repo.nii.ac.jp/record/2015437/files/456.pdf

シュウ酸カルシウムと尿路結石の関係

シュウ酸カルシウム結石は、日本人の尿路結石の約8割を占める最も一般的なタイプです。尿路結石は腎臓、尿管、膀胱、尿道など尿の通り道に石ができる疾患で、食生活が大きく関係しています。特に近年ではシュウ酸の摂りすぎが結石の主な原因であると考えられるようになりました。

参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E5%B0%BF%E8%B7%AF%E7%B5%90%E7%9F%B3/contents/160627-002-XA


かつてはカルシウムが結石を作る主要な原因と考えられていましたが、様々な研究によって実はシュウ酸のほうがリスクが高いことが明らかになっています。カルシウムとシュウ酸は腸内で結合すると便として排泄されるため、適切なカルシウム摂取は結石予防に有効です。

参考)尿路結石の様々な原因 ~「カルシウム不足」が原因で「カルシウ…


一方、カルシウム摂取量が不足すると、多くのシュウ酸がカルシウムと結合できないまま血中に吸収され、尿中に排泄されます。尿中でシュウ酸とカルシウムが結合してしまうと、結石が形成されるリスクが高まります。したがって、1日600~800mgのカルシウムを食事ごとに意識して摂取することが再発予防に効果的です。

参考)尿路結石の再発を防ぐ食事について

パイナップルの栄養成分とブロメライン

パイナップルには、シュウ酸カルシウム以外にも様々な栄養成分が含まれています。100gあたりのカロリーは54kcalで、ビタミンC、食物繊維、カリウムなどが豊富です。ビタミンCは35mg含まれており、抗酸化作用によって紫外線ダメージの軽減や肌のハリ・ツヤを保つ効果が期待できます。

参考)パイナップルの栄養と健康効果について


パイナップルの最大の特徴は、ブロメラインというタンパク質分解酵素を含むことです。ブロメラインは胃液の分泌を活発にし、消化を促進する働きがあり、食後のデザートとして食べるとタンパク質の消化を助けます。肉料理の際にパイナップルを加えると肉が柔らかくなるのも、この酵素の働きによるものです。

参考)パイナップル酵素の効果 – ブロメラインとはバナナとパイナッ…


ブロメラインの詳しい薬理作用についてはこちらの論文
ブロメラインは60℃以上の加熱で失活してしまうため、その効果を得るには生のパイナップルを食べる必要があります。缶詰や市販のジュースは加熱殺菌されているため、ブロメラインの恩恵を受けることはできません。食物繊維は1.2g含まれており、便通を整える作用や血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。

参考)パイナップルの栄養は?健康効果や食べ過ぎ、調理の注意点を紹介…

シュウ酸カルシウムを含む食品と食事管理

シュウ酸はパイナップル以外にも様々な食品に含まれています。特にシュウ酸が多い食品として、ほうれん草、タケノコ、大根、チョコレート、コーヒー、紅茶などが挙げられます。食品100gあたりのシュウ酸含有量を見ると、ナガネギが1.48g、パセリとパースニップが1.70gなど、野菜類に多く含まれています。

参考)再発と予防


シュウ酸を多く含む食品を摂取する際は、カルシウムを含む食品を同時に摂ることが推奨されます。シュウ酸はカルシウムと一緒に摂取すると体内への吸収率が下がるため、牛乳やヨーグルトなどのカルシウムが多い食品を食事の際に摂取すると良いでしょう。これは昔からの生活の知恵としても活用されています。

参考)https://allabout.co.jp/gm/gc/388297/


結石予防の観点からは、動物性タンパク質の摂取を控え、野菜類を多くした和食中心の食生活が推奨されます。レモンやオレンジなどの柑橘類のドリンクにはクエン酸が含まれており、結石予防に役立つと考えられています。また、野菜と果物を多く食べてカリウムをしっかり摂取することで、尿のpHを保ち結石予防につながります。​

パイナップルの安全な食べ方と選び方

パイナップルを安全に美味しく食べるためには、完熟した果実を選ぶことが最も重要です。スーパーで甘いパイナップルを見分ける方法として、皮ができるだけ黄色く、ずっしりとした重みがあるものを選びましょう。完熟しているものは甘い香りが漂っているため、匂いでも判断することができます。

参考)追熟しないパイナップルを最大限おいしくする方法 レシピ・作り…


パイナップルは追熟しない果物ですが、甘さを最大限引き出す方法があります。葉を切り取り、上下を逆さまにして通気性の良い籠などに1日程度置くことで、もともと下の部分に蓄積されていた糖分が全体に行き渡り、甘味を感じやすくなります。皮が緑色で硬い場合は酸味があることがあるため、数日置いて熟させることで酸味が抜けて甘さを感じられるようになります。​
食べる際は、食べやすい一口サイズにカットすることをおすすめします。一口サイズにすると果汁が口の中に広がり、パイナップルの味をしっかりと楽しむことができます。切り口が新鮮なうちは風味が良く、時間が経つと酸化が進み風味が損なわれるため、食べる直前にカットするのが理想的です。

参考)食べ頃を逃さない!パイナップルの選び方と楽しみ方!本場のおす…


パイナップルの葉や皮は非常に固く、飲み込むと食道や内臓を傷つける可能性があるため注意が必要です。また、葉や皮には農薬などが付着している可能性もあるため、手の届かない場所に保管しましょう。生のパイナップルを食べることで、ブロメラインの消化促進効果やビタミンCの美容効果を最大限に活用できます。

参考)パイナップルとブロメライン いつ食べるのが効果的?バナナとパ…

パイナップル摂取における医学的知見と注意点

パイナップルに含まれるシュウ酸カルシウムの医学的影響については、いくつかの重要な研究があります。エチレングリコール中毒の症例において、尿中シュウ酸カルシウム結晶が早期治療指標として用いられることが報告されています。これは、シュウ酸カルシウムの体内動態が臨床的に重要な意味を持つことを示しています。

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12702


結石予防の観点から、ビタミンCの過剰摂取にも注意が必要です。ビタミンCは体内でシュウ酸に変換されるため、食事からのビタミンCは制限する必要はありませんが、サプリメントによる必要以上の摂取は避けるべきです。パイナップルに含まれるビタミンCは天然由来であり、適量の摂取であれば問題ありません。

参考)パイナップルは栄養も効能も豊富!食べ頃、生と缶詰の違いなどと…


済生会宇都宮病院による尿路結石とシュウ酸の詳細な解説
食塩の摂りすぎも結石のリスクを高めます。食塩に含まれるナトリウムは腎臓から排出される際にカルシウムの排出も促してしまうため、減塩を心がけることが重要です。一方で、少量のビールやワインは結石の予防につながる可能性があるという報告もありますが、グレープフルーツジュースとコーラはシュウ酸カルシウム結石のリスクがある人は避けたほうが良いとされています。​
コーヒーやお茶は水分源にもなりますが、シュウ酸を含むため摂取量に注意が必要です。ただし、尿酸結石の場合はコーヒーやお茶を制限する必要はないとされており、結石の種類によって食事療法が異なることを理解しておく必要があります。パイナップルを含めたバランスの取れた食生活と十分な水分摂取が、結石予防の基本となります。​