シンチグラム静態動態の違い

シンチグラム静態と動態の違い

シンチグラム検査の2つのタイプ
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静態シンチグラフィ

臓器の形態や位置を評価する検査。投与後一定時間経過してから撮像

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動態シンチグラフィ

臓器の機能や血流を経時的に評価。投与直後から連続撮像

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使用薬剤の違い

検査目的により異なる放射性医薬品を選択

シンチグラム静態検査の特徴と目的

腎静態シンチグラフィでは99mTc-DMSAという放射性医薬品が使用されます。この検査は腎実質に均一に分布する性質を利用しており、投与後2時間経過してから撮像を行います。正常では投与量の40〜50%が腎臓に集積し、分腎集積率が20%以下の場合は腎実質機能低下と判断されます。

参考)Q59 腎シンチグラフィの種類と適応,方法,基本的読影法につ…


静態検査の主な適応疾患は、急性腎盂腎炎の診断、小児の膀胱尿管逆流現象に伴う腎瘢痕の検出、腎尿細管アシドーシスの診断などです。この検査では腎臓の形態把握と機能の定量評価が同時に可能であり、特に腎瘢痕の検出に優れています。

参考)腎静態シンチグラフィの画像診断


東北大学医学部泌尿器科による腎シンチグラフィの詳細解説

シンチグラム動態検査の実施方法

腎動態シンチグラフィでは99mTc-MAG3または99mTc-DTPAが使用されます。検査開始20〜30分前に水200〜300mlを飲み、排尿後に薬剤を静脈注射しながら30分間連続して撮像します。

参考)腎シンチグラフィ|国立国際医療研究センター病院


動態検査では3つの相が観察されます。第Ⅰ相(血流相)は20〜30秒で腎血流を反映した急峻な上昇を示します。第Ⅱ相(機能相・実質相)は3〜5分でピークに達し、腎クリアランスを反映します。第Ⅲ相(排泄相)では比較的速やかに減少します。

参考)腎動態シンチグラフィとは?腎機能評価をどのようにする?


正常なTmaxは4〜6分で、機能相では左右の集積比から両側の総腎機能を分腎機能に分けることができます。99mTc-MAG3の場合、腎実質の20分時カウント(C20)とピークカウント(Cmax)の割合でC20/Cmax < 0.2が正常とされます。​

シンチグラム検査における薬剤の使い分け

99mTc-DTPAは糸球体濾過でのみ排泄される糸球体濾過物質で、糸球体濾過率(GFR)の評価に用いられます。1回循環による濾過率は約20%です。

参考)67.腎シンチグラフィの適応,方法,基本的読影法について教え…


一方、99mTc-MAG3は近位尿細管分泌物質で腎血漿流量を反映し、有効腎血漿流量(ERPF)の評価に使用されます。99mTc-MAG3は腎機能がかなり低下した症例でも比較的明瞭に腎尿路系の機能形態情報を捉えられるため、第一選択されることが多いです。​

薬剤 集積機序 評価項目 特徴
99mTc-DMSA 尿細管集積 腎実質形態 静態検査に使用
99mTc-MAG3 近位尿細管分泌 ERPF 腎機能低下例でも評価可能
99mTc-DTPA 糸球体濾過 GFR 最も重要な腎機能指標

ただし最も重要な腎機能指標であるGFRが必要な場合には99mTc-DTPAを用います。​

シンチグラム動態検査の適応疾患

腎動態シンチグラフィの適応疾患は多岐にわたります。腎不全における腎機能評価、腎血管性高血圧の診断と治療適応決定および治療効果判定に用いられます。​
移植腎の機能評価や閉塞性尿路疾患の診断と腎機能評価も重要な適応です。閉塞型では排泄相の遅延が特徴的で、機能低下型では実質相でのピーク遅延や集積低下が観察されます。​
さらに腎・腎血管手術前後における分腎機能評価にも有用です。カプトプリル負荷試験を併用することで、腎血管性高血圧の診断精度を向上させることができます。

参考)第77回 午後 18


腎動態シンチグラフィの詳細な解説と症例画像

テクネチウム99mの安全性と利点

シンチグラム検査で使用される99mTcは、半減期が6時間という理想的な特性を持っています。この半減期は身体への放射線影響を少なくしつつ、注射から診断までに必要な3時間程度の時間においては十分な効果を発揮します。

参考)市民のためのがん治療の会


99mTcはβ線を放出せずγ線のみを放出する特性があり、骨・腎臓・肺・甲状腺・肝臓・脾臓などの臓器を描出するSPECT画像検査に広く用いられています。一般的な核医学検査で人体が受ける放射線量は2.5〜7ミリシーベルト程度で、これは胸部CTスキャン1回分とほぼ同等かそれ以下の水準です。

参考)加速器中性子で製造した医学診断用テクネチウム99mの実用化へ…


薬剤による副作用は極めて少なく、注射の痛み以外は安静に寝ているだけで検査が完了します。撮影時間は検査の種類によって異なりますが、概ね20〜40分程度です。99mTcの母核種であるモリブデン-99の半減期は2.7日で、海外の原子炉から日本の放射性医薬品メーカーへ輸送され、製剤化されて病院に供給される仕組みになっています。

参考)シンチグラフィ・SPECT検査