デンタルフロスと歯間ブラシの違い
デンタルフロスの基本的な特徴と使用場所
デンタルフロスは、細い糸状の清掃用具で、歯と歯の間の部分であればどの部位でも使用することができます。特に歯と歯が接する部分である「コンタクトポイント」は、デンタルフロスでしか清掃できない重要な箇所です。コンタクトポイントは、歯と歯の間に食べ物が挟まることを防ぎ、虫歯や歯周病を予防する役割があります。
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デンタルフロスには「ロールタイプ」と「ホルダータイプ」の2種類があり、ホルダータイプはさらに前歯に使いやすい「F字型」と奥歯に使いやすい「Y字型」に分類されます。初めて使う方には操作のやさしいホルダータイプ、特にY字型がおすすめです。ロールタイプは、必要な長さ(40センチ程度)にフロスを切り取り指に巻きつけて使用するタイプで、コストパフォーマンスが良く、1製品当たりに40〜50メートルほどのフロスが入っています。
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歯ブラシだけを使った時の歯垢除去率は約58〜60%と言われており、お口の中に汚れが残っている状態です。しかし、デンタルフロスや歯間ブラシを使用することで、歯垢の除去率は20%以上アップし、虫歯や歯周病予防の効果が高まります。
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歯間ブラシの基本的な特徴と適応部位
歯間ブラシは、歯と歯の間の根本部分に「一定の大きさの隙間」がある場合のみ使用できる清掃器具です。ナイロン毛を金属ワイヤーでねじって固定したブラシを、プラスチックのホルダーに取り付けた小さなブラシで、最近では金属ワイヤーを用いないゴムタイプの歯間ブラシもあります。
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歯間ブラシのサイズはさまざまで、一般的には0.7mmから1.5mmのサイズがあり、歯の隙間に合わせたサイズを選ぶことが重要です。サイズ選びを間違えると効果が半減してしまうため、小さすぎると歯垢を十分に落とせず、大きすぎると歯肉退縮の原因になります。
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研究によると、歯間ブラシはデンタルフロスと比較してプラーク除去においてより効率的であることが示されています。歯間ブラシはプラーク除去に優れているだけでなく、歯肉炎の改善にも効果的です。歯茎が健康で下がっていない人は、無理に歯間ブラシを使用すると歯茎が下がってしまう恐れがあるため注意が必要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10613348/
デンタルフロスの適応ケースと選択基準
デンタルフロスは、歯間が狭い場合や歯茎を傷つけずに汚れを取り除きたいときに使用します。狭い隙間にも入り込み、歯と歯の接触部分をきれいに掃除できることが最大の利点です。特に若い世代や歯茎が健康で歯間が詰まっている人に適しています。
デンタルフロスの使用により、歯間のプラークを減少させ、歯肉炎を改善する効果が複数の研究で示されています。1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の各時点で歯肉炎が統計的に有意に減少し、特に6ヶ月の使用では歯肉炎指数が0.09ポイント減少しました。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10837857/
また、フロスを使用する人は、使用しない人と比較して歯周病が少なく、虫歯の数も少なく、5年間で失う歯の数も少ないことが研究で明らかになっています。このことから、フロスは成人の口腔疾患の進行を防ぐための重要な口腔衛生習慣として支持されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7375740/
歯間ブラシの適応ケースとサイズ選択
歯間ブラシは、歯間が広い場合に適しています。広い隙間ではデンタルフロスでは十分な汚れ除去が難しく、ブラシの毛が効果的に働きます。また、矯正器具やブリッジがある場合にも歯間ブラシが便利です。歳を重ねると、歯茎が少しずつ退縮して歯と歯の間に隙間ができるため、食べ物がはさまったり歯垢がたまりやすくなります。
参考)デンタルフロスと歯間ブラシはどう使い分けたらいいの?|クロー…
歯間ブラシのサイズは部位に合わせて選ぶ必要があります。ライオンのシステマシリーズでは、SSS(超極細タイプ:〜0.8mm)は特に狭いところ(前歯部)、SS(極細タイプ:0.8〜1.0mm)はやや狭いところ(前歯部+臼歯部)、S(細めタイプ:1.0〜1.2mm)は歯茎が下がっていたり歯並びが悪いところ、M(普通タイプ:1.2〜1.5mm)は歯間がやや広いところ(歯茎下がりやブリッジを装着している箇所)に適しています。
参考)歯間用ブラシの選び方・使い方|歯周病について|ライオン
持ち手の形状には「L字型」と「I字型」があり、L字型は前歯にも奥歯にも使用しやすい万能タイプ、I字型は持ち手も短く前歯への使用に向いています。I字型でもワイヤータイプで曲げられるものであれば90°に折り曲げることで奥歯に入れやすくなります。
デンタルフロスと歯間ブラシの効果的な併用方法
理想的なのは、デンタルフロスと歯間ブラシの両方を併用することです。歯間の幅は場所によって異なり、それぞれの道具に得意な部分があるため、相互補完的な効果が期待でき、より完璧な口腔ケアが可能です。
効果的な使用方法としては、まず歯間ブラシで大きな歯間空隙を清掃し、その後、フロスで狭い部分をケアするという順序が推奨されています。就寝前には必ず使用するのがおすすめです。睡眠中は唾液の分泌量が大幅に減少し、唾液には細菌の繁殖を抑える抗菌作用があるため、その分泌が減ると口腔内の細菌が急激に増殖しやすくなります。寝る前にしっかりと歯磨きと歯間清掃を行うことで、細菌のエサとなる食べかすやプラークを取り除くことが重要です。
初めて使う場合は、歯科医や歯科衛生士に相談して自分に合った道具を選びましょう。無理に使おうとして歯茎を傷つけないよう、優しく扱うのがポイントです。正しい使い方を覚え、習慣化することで効果を最大限に引き出せます。
川辺歯科医院「デンタルフロスと歯間ブラシの違いと使い分け」
デンタルフロス・歯間ブラシの使用頻度と継続の重要性
デンタルフロスを使う頻度は、毎日がおすすめです。食事による汚れをしっかりと取り除くために、理想の頻度は毎食後ですが、現実的なラインとして1日1回はフロスで掃除することが推奨されます。プラークコントロール(歯垢を除去し、口腔内を清潔に保つこと)の観点から言えば、回数よりも毎日続けることが大切です。
参考)デンタルフロスの正しい使い方|頻度は1日3回がベスト?効果高…
アメリカでは「floss or die(フロスを使いますか?それとも死にますか?)」という言葉があります。極端な言葉かもしれませんが、それほどデンタルフロスが重要だということです。日本では約2人に1人がデンタルフロスや歯間ブラシを使用していますが、欧米諸国と比較するとまだまだ使用率が低いのが現状です。
歯間清掃用具と歯ブラシの使用頻度は、メタボリックシンドロームに対して有意な総合効果、直接効果、間接効果を示すことが研究で明らかになっています。定期的な歯科受診、歯間清掃用具の使用、歯磨き頻度は、運動習慣、食習慣、歯周病の状態を介してメタボリックシンドロームに影響を与えることが示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11983727/
むかえ歯科・小児歯科「デンタルフロスは毎日使うべき?頻度と使い方や3つのメリットを解説」
歯間清掃における虫歯予防と歯周病予防の効果
歯間清掃は、子どもの虫歯予防において欠かせない日常習慣の一つです。歯ブラシだけのケアでは、口の中の約6割程度しか清掃できていないとされています。特に歯と歯の間はプラークがたまりやすく、虫歯や歯肉炎のリスクが高まる場所です。
参考)子どもの虫歯予防に効果的!家でできる歯間ケアの方法とポイント
プラーク(歯垢)は歯と歯の接触面に残りやすく、そこから酸が発生して歯を溶かす原因になります。虫歯の初期段階では痛みがないため、子ども自身も親も気づかないまま進行してしまうことがよくあります。定期的に歯間を清掃しておくことで、プラークの発生を最小限に抑えることが可能になります。
歯周病や虫歯を防ぐためには、これらのアイテムを併用して、しっかりと口腔内のケアを行うことが不可欠です。プラークと虫歯は、歯肉や歯周病を引き起こす主な原因であり、最終的には歯の喪失や手術が必要になることもあります。口腔衛生の実践が不十分だと、プラークは歯の表面、特に歯間部に容易に蓄積します。
ライオン システマ「歯間用ブラシの選び方・使い方」
デンタルフロスの正しい使用方法とコツ
デンタルフロスの正しい使い方は、約50cmのフロスを切り取り、両端を中指に巻きつけて操作しやすい長さに調整することから始まります。その後、フロスを歯間に優しく挿入し、歯と歯茎の境目を前後に軽く動かして汚れを取り除きます。使用後はフロスの清潔な部分を使い、必要に応じて新しいセクションに移ります。
Y字型のデンタルフロスの使い方は、まず歯と歯の間にデンタルフロスをあて、ゆっくり横に動かしながら歯と歯の間に入れます。中まで入ったら、上下に動かし、隣り合った歯の両方の面をみがきます。取り出す時も、ゆっくり横に動かしながら取り出します。
参考)「Y字型デンタルフロス」の使い方とポイント!【動画解説付き】…
歯茎から出血があっても、多少の出血であればそのままデンタルフロスを使い続けてもとくに問題はありません。ただし、長期間にわたり出血が続いたり、痛みを感じたりする場合は、歯茎に炎症や異常が起こっている可能性があるため、症状が続く場合は歯科クリニックを受診しましょう。
デンタルフロスが歯に引っかかったときは、歯や歯茎にダメージを与えないよう、ゆっくりと抜きましょう。いつも同じところでデンタルフロスが引っかかる場合は、虫歯ができている、あるいは詰め物が取れかかっている可能性が高いため、そのまま放置せず速やかに歯科クリニックを受診しましょう。
歯間ブラシの正しい使用方法と注意点
歯間ブラシを選んだら、歯と歯の間に挿入します。奥歯では左右に、前歯では前後に動かして歯垢を除去します。使用後は水でよく洗い、乾燥させて保管しましょう。
歯間ブラシは、サイズ選びが大切です。大きすぎる歯間ブラシを無理に歯間に入れると、歯ぐきが傷ついてしまう恐れもあります。使う部位や歯ぐきの状態にあわせてサイズを選んで使いましょう。
初めてお買い求めの際、サイズが合わなかった方に全額相当を電子マネーギフトで返金するサービスを提供しているメーカーもあります。これにより、初めての歯間ブラシでサイズ選びに不安がある方でも安心して試すことができます。
歯間ブラシの持ち手部分には、使用する部位により使いやすさが異なるL字型とI字型があります。部位によって使い分けることをおすすめします。曲げたり戻したりを繰り返すことで劣化のスピードが早くなるため、無理に曲げないようにしましょう。
歯間清掃の意外な健康効果と全身への影響
口腔衛生行動と全身の健康には密接な関連があることが研究で示されています。定期的な歯科受診は、メタボリックシンドロームに対して有意な総合効果と間接効果を示しましたが、有意な直接効果は観察されませんでした。一方、歯間ブラシやデンタルフロスの使用、および歯磨き頻度は、メタボリックシンドロームに対して有意な総合効果、直接効果、間接効果を示しました。
運動習慣、食習慣、歯周病の状態は、定期的な歯科受診とメタボリックシンドロームの関係において重要な媒介因子となっています。これらの研究結果は、口腔衛生習慣が単に口腔内の健康だけでなく、全身の健康状態にも影響を与えることを示唆しています。
ウォーターフロッサー(水流で歯間を清掃する機器)の研究では、12週間の使用により歯肉炎症と歯垢中の微生物叢に効果があることが示されています。参加者は対照群(歯磨きのみ)と実験群(歯磨き+ウォーターフロッサー)に無作為に割り当てられ、4週、8週、12週後に評価されました。この研究は、口臭のコントロールにも水流による歯間清掃が役立つ可能性を示しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10212231/
歯間清掃は、単なる虫歯予防や歯周病予防だけでなく、口腔内の細菌叢のバランスを整え、全身の健康維持にも寄与する重要な習慣であることが、最新の研究で明らかになっています。
研究論文「口腔衛生行動とメタボリックシンドローム:ライフスタイル習慣の媒介効果」