腰椎分離すべり症と症状の診断治療

腰椎分離すべり症と症状

腰椎分離すべり症の主な症状
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腰痛と姿勢の関連

腰を後ろに反らす動作で痛みが強くなり、分離部への負荷が症状を悪化させます

神経根症状

下肢の痛みやしびれが出現し、神経が圧迫されることで坐骨神経痛様の症状が現れます

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間欠性跛行

歩行時に下肢の痛みやだるさが生じ、休むと軽減する特徴的な症状です

腰椎分離すべり症の初期症状と腰痛の特徴

腰椎分離すべり症の代表的な症状は腰痛であり、特に腰を後ろに反らしたときの疼痛が特徴的です。小児期で2週間以上腰痛の訴えがあった場合には約半数の患者で腰椎分離症がみられていたとの報告もあり、スポーツで腰痛を訴えている場合には分離症を疑う必要があります。

参考)腰椎分離症、分離すべり症


症状は腰痛のみのことが多く、腰を反らす動作など分離した部分に負荷がかかる動作をすると痛みが強くなることがあります。骨の成長過程期である10代に激しい運動をしている方やスポーツ選手などに多くみられ、腰部に繰り返しストレスがかかることで発症します。

参考)腰椎すべり症の治療について


初期の段階では無症状なこともしばしば見受けられ、レントゲンでも判別がつかないこともあります。若年層の方で身体を後ろに反らしたり斜め後ろに反らしたりして痛みが出る場合は、初期の分離症を疑ってもよいかもしれません。腰痛だけでなく、なんとなく気になるような違和感から始まり、慢性痛となっていくケースもあります。

参考)スポーツに励む中高生、腰椎分離すべり症に注意しよう – つか…

神経根症状による下肢のしびれと痛み

腰椎分離すべり症では神経が椎間孔で圧迫されている場合、下肢のしびれや痛みが出ることがあります。分離症初期では骨折部からの出血や浮腫によって神経根が圧迫されると神経症状としての下肢痛が発生します。​
成人期では腰椎分離部に生じた線維軟骨塊により神経根が圧迫され、下肢痛やしびれを発症します。分離症の末期では偽関節となった分離部の骨増殖性変化による骨や線維軟骨性組織が神経根を刺激することにより神経症状が出ます。​
腰痛と下肢の張りや痛みが同時に現れることもあり、神経根性疼痛として認識されます。椎骨のずれによって神経が圧迫されることで症状が起こり、特に大人になってから症状が強く現れることが多いです。分離すべり症では腰痛が繰り返したり、腰痛と下肢痛が慢性的になったりすることが多く、すべり症の重度なもの以外は一般的に排便・排尿障害はありません。

参考)分離すべり症とは?原因・診断方法・治療法を専門医が徹底解 |…

間欠性跛行と歩行障害

分離すべり症では神経根性間欠跛行を呈する場合があります。間欠性跛行とは歩行時に下肢の痛みやだるさが生じ、休むと症状が軽減する特徴的な症状です。長い距離を歩くと足がだるくなったりしびれたりする症状が現れます。​
全体の脊柱管が狭くなることで馬尾神経の圧迫が主な症状となり、しびれ感や下肢痛が歩くことによって現れます。休むと症状が軽くなる間欠性跛行のほか、排便・排尿障害や会陰部のしびれ感が現れることもあります。

参考)腰椎分離・すべり症の特徴・症状と治療法について【医師監修】


歩行障害は日常生活に大きな影響を与えるため、症状が進行する前に適切な診断と治療を受けることが重要です。特に下肢の筋力低下や排尿障害などの重篤な神経症状が出現する可能性があるため、早期の対応が求められます。

参考)腰椎分離症・分離すべり症|疾患別治療・リハビリテーション|丸…

腰椎分離すべり症における診断方法とX線MRI検査

整形外科では問診や身体診察、画像検査を行うことで正確な診断を行います。腰椎分離症の診断では主にレントゲン検査、MRI検査、CT検査の3つの画像検査を行います。

参考)【セルフチェック】腰椎分離症の症状と自己診断ポイント – も…

レントゲン検査の特徴

レントゲン検査は骨の状態を評価するうえで基本的な検査です。腰椎分離症は腰の骨の一部に亀裂が入っているため、レントゲン写真で亀裂を確認します。斜めから撮影したレントゲン写真は亀裂が明瞭に写ることが多く、腰椎のずれが確認できます。腰椎を前後に曲げた状態で撮影し、椎間板腔が狭くなったり不安定になっているのが分かります。費用が比較的安く短時間で検査できるというメリットがあり、腰椎分離症の初期診断に有用な検査です。

参考)腰椎変性すべり症・分離すべり症とは?原因・CT,MRI画像ま…

MRI検査の診断的価値

MRI検査はレントゲンではっきりと見えない筋肉や靭帯、神経などの軟部組織の状態を詳しく調べられる検査です。神経が圧迫された状態が確認でき、場所や状態を正確に特定できます。腰椎分離症では腰椎すべり症を合併しているケースもあり、MRI検査は神経が圧迫されているかを確認できるため腰椎すべり症の診断にも役立ちます。脊柱管狭窄及び両側の神経孔の狭小化、黄色靭帯・椎間関節の肥厚も確認できます。​

CT検査の詳細評価

CT検査はレントゲンと同様に骨の状態を詳しく調べられる検査です。レントゲンよりも詳細な情報を得られるため、分離した骨の大きさや形、周囲の骨への影響をより正確に把握できます。腰椎分離症の手術が必要かどうかを判断する際にもCT検査は重要な役割を果たします。横断像では脊柱管狭窄及び両側の神経孔の著明な狭小化がわかります。​

スポーツ選手における腰椎分離すべり症の原因

分離すべり症の多くは10代のスポーツなどによる腰への繰り返しの負荷で、椎弓部分に疲労骨折が起こることがきっかけとなります。スポーツなどによって繰り返される腰椎への伸展と回旋ストレスが原因とされています。​
多くは体が柔らかい中学生頃にジャンプや腰の回旋を行うことで腰椎の後方部分に亀裂が入って起こります。野球の投球やスイング、サッカーの蹴る動作、テニスやバレーのサーブ時などほとんどのスポーツでは身体をねじる動作があり、この強いねじりの動作が繰り返し加わることで腰の椎弓が分離します。​
特に野球、バレーボール、バスケットボール、サッカー、柔道、ラグビー、ウエイトリフティングなど頻回に体幹の前後屈・回旋を行うスポーツに多く見られます。成長期のスポーツ選手に多く見られ、腰痛の原因の30~40%を占めているとされています。ストレスが増大する因子としては下半身の体の硬さや体幹の筋力の弱さなどの身体機能と腰を過度に反ってしまうような不良なスポーツ動作が挙げられます。

参考)腰椎分離症・分離すべり症|成長期のスポーツ選手における腰痛|…


<参考リンク>

日本整形外科学会による腰椎分離症・分離すべり症の詳細な解説はこちら:

腰椎分離症・分離すべり症 – 日本整形外科学会

保存療法とリハビリテーションの効果

腰椎分離すべり症の治療は症状の進行具合や患者様の状態に応じて保存療法と手術療法の2つの方法が選択されます。基本的には保存療法を行い、痛みを軽減するための薬物療法や物理療法、運動療法を組み合わせて治療します。

参考)腰椎すべり症とは – 腰椎すべり症の原因や治療について|埼玉…

薬物療法と物理療法

治療法 内容・方法 目的・効果
薬物療法 痛みや炎症を抑える薬を服用する。主に非ステロイド性消炎鎮痛薬が用いられる。痛みが強い場合は神経ブロック注射を行う 痛みのコントロール、日常生活の質を向上
物理療法 温熱療法や牽引療法を行う 筋肉の緊張をほぐし、血流の改善を促す
装具療法 コルセットを装着し腰椎の動きを制限する。種類や装着時間は症状や生活状況に合わせて調整する 痛みを軽減、症状の悪化防止

保存療法のリハビリテーションでは腰部への負荷が増大した原因を評価し、改善・修正することが必要です。専門家である理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングを行うことで腰周りの筋肉を強化し、腰椎への負担軽減や症状緩和、再発防止につながります。

参考)腰椎すべり症は治りますか?根本改善や痛み緩和の対策、治療法を…

運動療法とストレッチ

医師の許可のもと、腰に負担の少ない運動を継続的に行うことは筋力維持や血行促進に役立ちます。ウォーキング、水中運動、体幹トレーニングなどが推奨されますが、痛みを感じたら無理せず中止しましょう。

参考)腰椎すべり症でやってはいけない運動と生活動作 – 足立慶友整…


腰椎分離すべり症の痛みは腰にかかった負担によって筋肉や関節部で起きた炎症から生じます。腰にかかる負担を減らすことで早期の回復が期待され、日頃からストレッチや筋力強化訓練を行い腰部周囲の筋肉のバランスを整えることは腰痛の再発予防につながります。腰痛の痛みが消失するまで安静にするよりも、動ける範囲で日常生活を維持した方がむしろ治療効果が高いことが科学的に証明されています。

参考)平塚市の交通事故治療、リハビリ、骨盤矯正、鍼灸|かもめ整骨院

岡山済生会総合病院による腰椎すべり症の治療についての詳細はこちら:

腰椎すべり症の治療について – 岡山済生会総合病院

手術治療の適応と方法

軽度の症例では保存療法で症状が改善することがありますが、症状が強くなる場合や改善が見られない場合、手術療法が検討されます。手術では椎弓切除術や腰椎固定術を行い、圧迫されている神経を解放します。​

手術の判断基準

手術を考慮する大前提として「保存的治療が奏功しない症例」という条件があります。心身ともに大きな負担になるため、保存的治療で完治できるのであればそれに越したことはありません。「分離症による腰痛がひどい症例」も手術適応になりえます。手術治療で分離した組織を除去することで疼痛が緩和されるケースがあり、「腰を固定することで痛みが軽くなる」「腰椎の椎弓を押すことで痛みが強くなる」などのケースでは手術治療によって痛みが根本的に改善される可能性があります。

参考)スポーツ選手と腰椎分離症。手術治療のメリットと適応は?!

主な手術方法

腰椎疾患の中で神経の圧迫とともに高度の不安定性を伴うもの(高度の腰椎変性すべり症、腰椎分離すべり症、高度の変性側弯症など)は神経の通り道を広げるだけでは症状が残存する可能性があり、除圧術とともに固定術が必要となります。

参考)https://www.hamawaki.or.jp/medicaldepartment/department_doctor/disease/surgery-youtsui


腰椎後方椎体間固定術(PLIFまたはPLF)では、腰椎の椎弓間の小さな穴を一部削って広げ、神経を圧迫している軟骨や靭帯を切除します。神経の圧迫がなくなったことを確認した後、不安定な腰椎の椎弓根に金属のスクリューを左右挿入し、上下のスクリューをロッドで固定します。その後痛んだ椎間板を掃除してその周囲に自分から取った骨と一緒にブロック状のケージと呼ばれるスペーサーを入れて支えとし、最終的には自分の骨で癒合することを目指します。​
すべりの程度が軽度の場合やぐらつきが少ない場合は内視鏡下椎弓形成術(MEL)の適応となる場合があります。手術治療による成績は特に年齢が若いときに結果が良いことが分かっており、年齢が若いほど骨の変性具合が軽いことも多く手術治療が奏功するケースが多いです。​