低温やけどの症状と原因・治療・予防法

低温やけどの症状と原因

この記事でわかること
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低温やけどの特徴

44~50℃の比較的低い温度でも長時間接触すると発症し、皮膚深部まで損傷が進行します

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症状の進行段階

赤み・痛みから水ぶくれ、皮膚壊死まで重症度別の症状を詳しく解説します

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正しい対処法と予防

応急処置の方法から湯たんぽ・カイロの安全な使い方まで実践的な予防策をご紹介します

低温やけどの初期症状と見た目の変化

低温やけどは44~50℃程度の比較的低い温度のものに長時間皮膚が接触することで発症する熱傷です。通常のやけどと異なり、心地よいと感じる温度でも発生する可能性があるため、気づかないうちに重症化しやすいという特徴があります。

参考)低温やけど(低温熱傷)とは?初期症状や対処法について解説 -…


初期症状としては、患部に赤み(発赤)やヒリヒリとした痛み、熱感が現れます。44℃で3~4時間、46℃では30分~1時間、50℃では2~3分程度の接触で低温やけどが発生する可能性があります。皮膚の損傷が深部に達すると痛みを感じにくくなるため、自覚症状が乏しいまま進行することがあります。

参考)冬場に注意 低温やけど


1日程度放置すると水疱(水ぶくれ)が形成されることがあり、さらに2週間ほどかけて血流の悪化とともに細胞の壊死が進行し、皮膚が黒色や褐色、白色に変色していきます。

参考)低温やけどってどんな症状? 水ぶくれやかゆみはやけどのサイン…

低温やけどの重症度分類とⅢ度熱傷

低温やけどの重症度は皮膚の損傷の深さによってⅠ度からⅢ度まで分類されます。Ⅰ度熱傷は表皮のみの損傷で、赤みと痛みが特徴で数日で治癒します。Ⅱ度熱傷は真皮まで達した状態で、浅達性では赤い水ぶくれと強い痛みが、深達性では蒼白~赤褐色の水ぶくれと弱い痛みが生じます。

参考)低温やけどとは?治療や予防について – 【公式】宅食ライフ


低温やけどの大きな特徴は、ほとんどのケースがⅢ度熱傷に分類される点です。Ⅲ度熱傷では皮膚全層から皮下組織まで損傷が及び、黒色または白色に変色し、痛みや感覚を失います。これは熱が皮膚の深部へゆっくりと伝わり、神経まで損傷するためです。​
治療期間はⅠ度で数日、Ⅱ度で1~4週間、Ⅲ度では1カ月以上を要し、傷跡が残る可能性が高くなります。​

低温やけどの原因となる暖房器具と発症メカニズム

低温やけどの主な原因は、湯たんぽ、電気あんか、ホットカーペット、使い捨てカイロ、電気毛布、こたつなど、冬場に長時間身体に接触させて使用する暖房器具です。近年ではスマートフォンやノートパソコンのバッテリー発熱による低温やけども報告されています。​
北京の研究では、低温やけど患者の50.97%が熱治療による意図しないやけど、43.69%が暖房器具の不適切な使用が原因でした

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10333022/


発症メカニズムとしては、皮膚が熱を受けると少しずつ深部へ熱が伝わり、細胞の損傷が起こります。損傷が深部になるにつれて痛みを感じにくくなるため、気づいたときには重症化しているケースが少なくありません。特に就寝中や飲酒後など、意識レベルが低下している状態では熱さに気づきにくく、長時間接触してしまうリスクが高まります。​

低温やけどになりやすい高齢者と糖尿病患者の特徴

特定の条件下では低温やけどのリスクが著しく高まります。高齢者や乳幼児は皮膚が薄く脆弱なため、一般的な成人よりも低温やけどを起こしやすくなります。また自分で温度調節が難しい場合、介護者や親の見守りが必要です。​
末梢神経障害を伴う糖尿病患者は皮膚の温度に対する感覚が鈍くなり、熱さを感じにくくなるため低温やけどを起こしやすくなります。さらに糖尿病患者は傷が治りにくく感染を起こしやすいという特徴があり、やけどの治療が困難になることがあります。​
その他、意識がない状態や身体に麻痺がある方、寝返りができない乳児、知覚や運動機能に障害がある方、動脈硬化による手足の血行障害がある方も注意が必要です。これらの方々は熱さを感じないか、感じていても自力で身体を動かして熱源から遠ざかることができないためです。​

低温やけどの水ぶくれと皮膚壊死の進行過程

低温やけどでは、受傷後の時間経過とともに症状が変化していきます。受傷直後はヒリヒリとした痛みや赤みが現れますが、1日程度で小さめの水ぶくれが形成されることがあります。浅達性のⅡ度熱傷では赤い水ぶくれができて痛みを伴いますが、深達性では蒼白から赤褐色の水ぶくれが生じ、痛みは徐々に感じなくなっていきます。​
水ぶくれがあっても痛みを感じないケースは、神経が損傷しているサインであり、むしろ重症化していることを示しています。この段階で「痛くないから大したことない」と放置してしまう方も少なくありませんが、適切な医療処置が必要です。​
Ⅲ度熱傷にまで進行すると、2週間ほどかけて血流が悪化し細胞が壊死して、皮膚が黒色、褐色、または白色に変色します。この段階では水ぶくれはできず、痛みも生じません。壊死した部分は細菌が感染しやすくなり、傷口から感染を起こしたり、治癒後も皮膚のひきつれなどの後遺症が残る場合があります。​

低温やけどの応急処置と流水での冷却方法

低温やけどに気づいたら直ちに適切な応急処置を行うことが重要です。まず患部を流水で冷やします。冷やすことでやけどが深くなることを防ぎ、痛みを和らげ、皮膚表面の炎症を抑えることができます。冷却時間の目安は部位にもよりますが、10~30分程度です。

参考)低温やけどの治し方は?水ぶくれの処置や対処法について解説|西…


水ぶくれがある場合は、なるべく破らないよう注意しながら流水で冷やします。服を脱ぐと水ぶくれが破れてしまう場合があるため、服の上から冷やすことが推奨されます。水ぶくれの部分の皮膚は非常に薄く剥がれやすいため、急激に冷やすのは避け、弱い水流で軽く冷やすか、洗い桶に水を溜めて静かに患部を沈めます。

参考)低温やけどでできた水ぶくれが痛い!破った方が治りは早い?


氷や保冷剤を使用する場合は、タオルで包むなどして直接皮膚に当たらないようにします。氷で冷やした場合、皮膚の薄い高齢者や乳幼児は凍傷になることもあるため注意が必要です。冷却スプレーや冷却シートはやけどには効果がありません。応急処置後は速やかに皮膚科を受診しましょう。​

低温やけどの水ぶくれの正しい処置と保湿治療

低温やけどで水ぶくれができた場合、最も重要なのは潰さずそのままにすることです。水ぶくれを潰してしまうと傷口から雑菌が入り込み症状が悪化する危険性があります。水ぶくれの皮は患部を保護する役割を果たしているため、万が一破れてしまった場合でも、破れた皮をそのままにして処置を行います。​
正しい処置方法としては、ラップにワセリンを塗り患部を優しく包んで清潔に保ちます。ガーゼで患部を覆うのは推奨されません。ガーゼが水ぶくれの皮に張り付き、剥がす際に強く痛んだり水ぶくれを破壊してしまうことがあるためです。​
病院での治療では、Ⅰ度~Ⅱ度(浅達性)の場合、炎症を抑えるステロイド外用剤や、ワセリン成分の入った軟膏(ゲンタシン軟膏など)をたっぷり塗る保湿治療が基本となります。保湿は創部を乾燥させずに湿潤環境を保ち、表皮の再生を促進します

参考)医師おすすめの治療│低温やけどの水ぶくれの対処と治療薬は?【…

低温やけどのⅢ度熱傷における皮膚移植と治療期間

Ⅱ度(深達性)~Ⅲ度などの損傷レベルが深い低温やけどの場合、専門の医療機関での治療が必要です。Ⅲ度熱傷では皮膚全層が障害され、黄色から黒色の壊死組織となります。壊死した皮膚は血流が悪くなって細胞が自己再生できないため、基本的には切除(デブリードマン)を行います。

参考)やけど(熱傷)|大森・大木皮膚科【熱傷専門医が対応致します】


壊死組織を放置すると、細菌感染のリスクが高まり、皮下膿瘍を形成して敗血症やトキシックショック症候群(TSS)などを引き起こし重症化する場合もあります。広範囲の場合には、身体の他の部分から皮膚を移植する手術(植皮術)が必要となることもあります。​
治療期間はⅢ度熱傷の場合、小範囲のケースでも1カ月以上を要し、広範囲では保存的治療であっても数カ月かかることがあります。また、治癒しても色素沈着や皮膚のひきつれ、ケロイド状の傷などの後遺症が残る可能性が高くなります。低温やけどは見た目では深さがわからないことが多いため、必ず医療機関を受診し診察を受けることが重要です。​

低温やけどの予防法:湯たんぽとカイロの安全な使い方

低温やけどを予防するためには、暖房器具の正しい使用方法を理解し実践することが重要です。湯たんぽや電気あんか、電気毛布は就寝前に布団を温めるために使用し、就寝時は布団から出すようにしましょう。足は他の部位に比べて知覚が鈍く熱を分散しにくいため、湯たんぽが足に触れたまま眠るのは特に危険です。タオルやカバーで包んでいても過信は禁物です。​
使い捨てカイロによる低温やけどを防ぐためには、以下のポイントを守る必要があります

参考)「カイロ」href=”https://support.st-c.co.jp/fa/qa/web/knowledge571.html” target=”_blank”>https://support.st-c.co.jp/fa/qa/web/knowledge571.htmlquot;低温やけどhref=”https://support.st-c.co.jp/fa/qa/web/knowledge571.html” target=”_blank”>https://support.st-c.co.jp/fa/qa/web/knowledge571.htmlquot;を防ぐにはどうしたらよいですか?|製…

  • 肌に直接貼らず、衣服の上から貼る
  • ベルトやサポーターなどで圧迫しない(血流が抑えられ温度が上昇するため)
  • 一ヶ所に長時間あてない
  • 就寝時や他の暖房器具との併用を避ける
  • 熱いと感じた時はすぐにはずす​

こたつやホットカーペットは、就寝時に一晩中使用しないことが原則です。うっかり眠ってしまった時の低温やけどを防ぐため、タイマーを設定しておくことが推奨されます。​

低温やけど予防のための暖房器具の圧迫回避と血流維持

低温やけどの発症には血流の状態が大きく関わっています。カイロの熱は血流に乗って全身に運ばれますが、カイロをあてている部位を圧迫すると血流が抑えられ、熱が分散されずに温度が上がってやけどを引き起こしやすくなります。そのため、カイロをベルトやサポーター、ガードルなどで圧迫する使い方は避けるべきです。​
ホットカーペットの上で寝ると、身体の重みで皮膚が圧迫され、血流が悪くなった状態で長時間熱にさらされるため低温やけどのリスクが高まります。消費者庁の報告によると、薄手の服を1枚着た子どもをホットカーペットの上で寝かせていたところ、3時間程度で背中が赤くなったケースがあります。​
電気ストーブやこたつなどの暖房器具は、ある程度温まったら一度切って、つけっぱなしにしないようにしましょう。オフタイマーなども活用してください。飲酒や服薬時は気づかないうちに寝てしまうことが多いため、特に注意が必要です。​