非アルコール性脂肪性肝炎と症状の特徴

非アルコール性脂肪性肝炎と症状

非アルコール性脂肪性肝炎の主な症状
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初期は無症状で進行

肝臓には神経がないため、炎症があっても自覚症状がほとんど現れません

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全身倦怠感と易疲労感

病状の進行とともに疲れやすさや倦怠感が日常生活に影響を与えます

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進行時の重篤な症状

黄疸、腹水、右上腹部痛などが現れ、肝硬変や肝癌へ進行するリスクが高まります

非アルコール性脂肪性肝炎の初期症状と特徴

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、アルコールをほとんど摂取しない方でも発症する進行性の肝疾患です。この病気の最大の特徴は、初期段階では自覚症状がほとんど現れないことです。肝臓には神経が存在しないため、炎症が起きていても痛みを感じることがありません。多くの患者さんは健康診断で肝機能の数値異常を指摘されて初めて発覚します。

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初期に現れる可能性のある症状としては、軽度の倦怠感や疲れやすさ、右上腹部の重さや違和感などがあります。これらの症状は非特異的で他の疾患でも見られるため、自己判断は危険です。食欲不振や軽い吐き気を感じることもありますが、これらも見過ごされやすい症状です。NASHは日本国内に約100万人から200万人の患者がいると推定され、肥満・糖尿病脂質代謝異常高血圧などを合併していることが多い疾患です。

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非アルコール性脂肪性肝炎の進行時に現れる症状

病状が進行するにつれて、より明確な症状が現れるようになります。全身倦怠感と易疲労感は、NASHの進行を示す重要なサインです。日常生活において以前より疲れを感じやすくなったり、十分な休息をとっても疲労感が抜けなくなったりします。右上腹部に鈍痛や不快感が生じることもあり、これは肝臓の腫大や炎症が進行している証拠です。

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消化器症状も顕著になってきます。肝臓の機能低下により消化吸収能力が低下し、食欲の減退、悪心・嘔吐、腹部膨満感などが出現します。下痢や便秘といった便通異常も見られることがあります。体重の変化も特徴的で、初期には肥満が背景にありますが、進行すると逆に体重減少が起こることもあります。これらの症状が現れた時点では、すでにかなり病状が進行している可能性が高いため、定期的な健康診断と早期対応が極めて重要です。

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非アルコール性脂肪性肝炎による重篤な症状と合併症

NASHがさらに進行して肝硬変肝不全の段階に至ると、生命に関わる重篤な症状が現れます。黄疸は肝機能の著しい低下を示す重要な症状で、皮膚や眼球の白目部分が黄色く変色します。黄疸は眼球から始まり、皮膚、粘膜へと順に出現していくのが特徴です。皮膚の掻痒感や手掌紅斑といった皮膚症状も伴うことがあります。

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腹水の貯留により腹部膨満感が著しくなり、下肢のむくみ(浮腫)も出現します。門脈圧亢進症により消化器症状がさらに悪化し、重度の場合には肝性脳症による意識障害が生じることもあります。NASHは肝硬変を経て肝癌に進行する可能性があり、NASH肝硬変患者の5年累積発癌率は11.3%、年率では約3%と報告されています。肝線維化が進行したNASHでは、肝組織中の脂肪沈着はむしろ減少・消失する「burned-out NASH」と呼ばれる状態となり、かえって肝硬変や肝発癌のリスクが高まることが知られています。これらの重篤な合併症を防ぐためにも、早期発見と適切な治療介入が不可欠です。

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非アルコール性脂肪性肝炎の原因とリスク因子

NASHの発症メカニズムには「2つのヒット理論」が提唱されています。第一のヒットは、肥満・糖尿病・高脂血症などのメタボリックシンドロームによるインスリン抵抗性により脂肪肝が形成される段階です。インスリン抵抗性とは、インスリンが十分存在するにもかかわらず体内で効果的に使われず血糖値が高くなる状態で、内臓脂肪の増加が主な原因とされています。第二のヒットでは、脂質の過酸化や酸化ストレスによって炎症と線維化が進行しNASHへと移行します。

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NASHのリスクが高い方には特徴的な傾向があります。健康診断で肝臓の数値(AST、ALT、γ-GTPなど)が高いと指摘された方、肥満やメタボリックシンドロームの方、糖尿病・高血圧・脂質異常症の方などです。急激な体重増加や減少があった方、食生活が偏っている方(高カロリー、高脂肪食、甘いものをよく食べる)、運動不足の方も要注意です。遺伝的要因も関与しており、ご家族に肝臓の病気の方がいる場合もリスクが高まります。偏った食事や暴飲暴食、運動不足の改善がNASH発症予防のカギを握っています。​

非アルコール性脂肪性肝炎の検査と診断方法

NASHの診断には複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。まず血液検査では、AST、ALT、γ-GTPなどの肝機能の数値を確認します。NASHの場合、肝細胞が炎症によって障害され繊維化していくことで血小板数の低下や、肝細胞の繊維化マーカーであるヒアルロン酸やⅣ型コラーゲン血中濃度上昇が見られます。これらの数値を組み合わせてFIB4-indexやNAFLD fibrosis scoreといったスコアリングシステムを使用し、肝硬変の発症リスクを予測します。

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画像検査では、腹部超音波検査や腹部CT検査で脂肪肝の有無を確認できます。NASHの疑いが強い場合には、超音波やMRIを使って肝臓の物理的な硬さを測定するエラストグラフィ検査を行います。NASHの確定診断には肝生検が必須とされています。肝生検では肝臓に針を刺して細胞のサンプルを採取し、顕微鏡的に繊維化の状態や脂肪性肝炎の所見を確認します。診断の3つのポイントは、①非飲酒者であること(アルコール摂取量1日20g以下)、②肝生検による組織像で脂肪性肝炎を認めること、③他の原因による肝障害を認めないこと、です。

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非アルコール性脂肪性肝炎の治療と予防における生活習慣の重要性

NASHの治療において最も重要なのは生活習慣の改善です。食事療法では脂肪肝改善の約8割が食事で決まると言われるほど重要な役割を果たします。多価不飽和脂肪酸を多く含む青魚や、ビタミンEを含む緑黄色野菜を積極的に摂取することが推奨されます。特に緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜など)はビタミンKが豊富で肝臓の血液凝固機能をサポートし、キャベツやブロッコリーはデトックス作用があり肝臓の解毒を助けます。夜遅くや就寝前の食事は控えめにし、果糖を多く含む清涼飲料水などの摂り過ぎにも注意が必要です。

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運動療法では、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を週3~4回、30分以上行うことが推奨されています。関節への負担が少ない筋力トレーニングやヨガなども効果的です。運動により筋肉量が増えると基礎代謝が高まるため、糖質の消費が促進されNAFLDの改善につながります。まずは1日5分や10分からでも構わないので、できる範囲から体を動かす習慣をつけることが大切です。過剰な飲酒は肝疾患が進行するリスクを高めるため控えめにし、健康食品やサプリメント、漢方薬の長期使用は医師と相談の上で判断しましょう。体重やウエスト周囲径から肥満状態を確認し、血液検査や画像検査で肝臓の状態を定期的に把握することが予防と早期発見につながります。

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非アルコール性脂肪肝炎の病態悪化メカニズム(burned-out NASHの解明)に関する詳細な研究情報 – 日本医療研究開発機構
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020年版(日本肝臓学会による肝発癌率や診療基準の公式ガイドライン)
メタボリックシンドロームとNASHの関係性に関する学術的解説(東京医科歯科大学による詳細な病態メカニズムの説明)