変形性肘関節症の手術費用と治療選択

変形性肘関節症の手術費用

変形性肘関節症手術の基本情報
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手術費用の目安

関節鏡手術で約25万円、人工肘関節置換術で約200~250万円(保険適用前)

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保険適用後の自己負担

3割負担で7.5万円~80万円程度、高額療養費制度でさらに軽減可能

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入院期間

関節鏡手術は2~3日、人工関節置換術は2週間程度

変形性肘関節症の手術種類と費用相場

変形性肘関節症の手術には、症状の程度や骨の変形状況に応じて複数の選択肢があります。軽度から中程度の場合は関節鏡視下手術が選択され、医療費は約25万円となります。この手術では骨棘(こつきょく)や遊離体を取り除き、可動域の改善を図ります。

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重度の変形や関節の破壊が著しい場合には、人工肘関節置換術が必要になることがあります。この場合の医療費は約200~250万円と高額になります。人工肘関節は上腕骨部と尺骨部の2つの部分からなり、金属とポリエチレンでできています。

参考)人工関節置換術の費用はいくらかかるの?治療にかかる費用と医療…


直視下での骨棘切除術という方法もあり、これは関節鏡より広範囲の処置が可能ですが、軟部組織へのダメージが大きく、リハビリ期間が長くなる傾向があります。手術方法の選択は、患者さんの年齢、症状の進行度、生活レベルに応じて医師が判断します。

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変形性肘関節症手術の保険適用と自己負担額

変形性肘関節症の手術は、健康保険の適用対象となります。保険適用後の自己負担額は年齢によって異なり、70歳未満の方は原則3割負担、70歳以上の方は所得に応じて1~3割負担となります。

参考)保険診療について|整形外科|東京都渋谷区代官山|Dr.KAK…


関節鏡視下手術の場合、医療費25万円の3割負担で約7.5万円が自己負担となります。人工肘関節置換術では、医療費200~250万円の3割負担で約60~80万円が自己負担額となります。ただし、これらの金額は手術前後の検査料、手術料、麻酔料、入院費、薬代、食事代などを含んだ総額です。​
差額ベッド代は医療費に含まれないため、個室を希望する場合は別途費用が発生します。個室は1日2万円程度、2人部屋は1万円程度が相場とされており、病院によって金額が異なります。

参考)高額療養費制度について|治療費シミュレーション|人工関節ドッ…

変形性肘関節症の高額療養費制度活用方法

高額療養費制度は、1か月の医療費が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。この制度を利用することで、実際の自己負担額は年齢や所得に応じて大幅に軽減されます。

参考)高額療養費制度について 


70歳未満で年収約370万円~770万円の方の場合、自己負担限度額は月額80,100円+(10割分の医療費-267,000円)×1%となり、実質的な負担は約11万円前後になります。70歳以上の一般所得者では、月額44,400円が上限となります。​
事前に「限度額適用認定証」を健康保険組合や市区町村役場で取得し、医療機関の窓口に提出することで、支払い時点から軽減された金額での精算が可能になります。これにより、一時的に高額な費用を立て替える必要がなくなります。住民税非課税世帯の方は、さらに自己負担額が軽減されます。​
人工関節と高額療養費 | 人工関節ドットコム

高額療養費制度の詳細な自己負担限度額表と申請方法について解説されています。年齢や所得区分ごとの具体的な金額が確認できます。

変形性肘関節症手術の入院期間とリハビリテーション

手術後の入院期間は、手術方法によって大きく異なります。関節鏡視下手術の場合は日帰りから3日程度の短期入院で済むことが多く、患者さんの年齢が55歳未満であれば日帰り手術も可能な施設があります。骨棘や軟骨の表面を取り除く手術では1~2週間の入院が必要です。

参考)https://kansetsu-life.com/shldr_elbw/4_02.html


人工肘関節置換術の場合は、2週間程度の入院が標準的です。ただし、術後の経過が良好であれば、より早期に退院できることもあります。入院期間が短いことで、早期社会復帰が可能になり、合併症のリスクも減少します。

参考)短期入院・日帰り手術


リハビリテーションは術後早期から開始され、術当日または翌日から歩行訓練に取り組むことが推奨されています。関節鏡視下手術では、スポーツ復帰が平均術後7.9週、職場復帰が平均4.8週と報告されています。完全復帰率は75%と良好な成績が得られています。筋力が低下している方は回復に時間がかかることがあり、回復期リハビリテーション病棟で継続的なリハビリを受けることも可能です。

参考)http://elbow-jp.org/kaishi/22/001-22101.pdf

変形性肘関節症における手術と保存療法の選択基準

変形性肘関節症の治療は、保存療法が基本となります。痛みが強く動きに制限があっても、まずは薬物療法、湿布などの外用薬、温熱療法、超音波治療などの理学療法が行われます。多くの場合、これらの保存的治療で症状が改善します。

参考)変形性肘関節症 – 整形外科河村医院|大阪市港区朝潮橋・弁天…


手術療法が選択されるのは、保存療法で十分な効果が得られない場合、強い痛みや著しい可動域制限がある場合、神経障害が出現した場合です。特に骨棘により肘の動きが大きく制限され、日常生活に支障をきたす場合には手術が検討されます。

参考)関節鏡手術が可能な肘関節の疾患について – 医療法人相生会 …


尺骨神経の圧迫により手のしびれや筋力低下、手の筋肉の萎縮が生じた場合は、症状が進行性であるため早期の手術が必要とされます。手術では骨棘切除、遊離体除去、神経剥離、神経移行術などが行われますが、肘の変形自体は戻らないため、術後も変形は残存します。​
あまり知られていない事実として、関節鏡視下手術後に肘部管症候群(尺骨神経障害)が新たに生じる可能性があり、約15%の症例で術後に神経症状が出現したという報告があります。このため、術後の経過観察が重要です。​
肘関節鏡を用いた変形性肘関節症の手術治療 | 日本肘関節学会雑誌

変形性肘関節症に対する関節鏡視下形成術の術後成績と合併症について、27例28肘の詳細な臨床データが報告されています。

変形性肘関節症手術の合併症リスクと対策

変形性肘関節症の手術には、いくつかの合併症リスクが存在します。人工肘関節置換術における感染率は4~7%と、下肢の人工関節(1~2%)に比べて高い傾向があります。これは肘関節が皮膚から非常に近いことが原因です。特に関節リウマチ生物学的製剤を使用している患者さんでは感染リスクがさらに高まるため、投与スケジュールを調整して手術時期を決定する必要があります。

参考)第12回 『人工肘関節のスペシャリストに聞く』|関節の広場 …


神経損傷も重要な合併症の一つです。肘関節の近くを走る尺骨神経が手術中に傷ついたり、術後の形態変化で圧迫されたりすると、小指と薬指のしびれや麻痺が残ることがあります。関節鏡視下手術でも、ワーキングスペースが狭く尺骨神経損傷のリスクがあるため、特に肘頭内側部の処置には注意が必要です。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jelbow/27/2/27_356/_pdf/-char/ja


関節鏡視下手術後の合併症として、骨棘の再発、異所性骨化(余計な骨ができること)、外側前腕皮神経障害などが報告されています。しかし、計画通りに骨棘切除ができれば、Mayo Elbow Performance Scoreが術前平均62.5から最終95.9へと有意に改善し、特に痛みと機能が大きく改善することが示されています。

参考)肘関節鏡を用いた変形性肘関節症の手術治療


合併症のリスクを最小限にするため、術前の十分な評価、適切な手術タイミングの選択、術後の早期リハビリテーション開始が重要です。短期入院により深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などの合併症も予防できます。​