鼻詰まりと指定難病の好酸球性副鼻腔炎

鼻詰まりと指定難病

好酸球性副鼻腔炎の重要ポイント
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2015年に指定難病として認定

難病指定番号306として登録され、重症度基準を満たす患者には医療費助成制度が適用されます

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頑固な鼻詰まりと嗅覚障害が特徴

両側性の鼻ポリープ形成により、においがわからなくなる嗅覚障害と鼻閉が主症状となります

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気管支喘息との高い合併率

患者の80%以上が気管支喘息を合併し、上気道と下気道の同時治療が必要です

好酸球性副鼻腔炎と鼻詰まりの関係

好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔炎の中でも特に治療が難しい疾患です。鼻詰まりは本疾患の代表的な症状の一つで、両側の鼻に多発性のポリープ(鼻茸)が形成されることで引き起こされます。通常の慢性副鼻腔炎と異なり、篩骨洞という目の間の空洞を中心に病変が広がるため、頑固な鼻閉症状が特徴的です。

参考)好酸球性副鼻腔炎(指定難病306) href=”https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537″ target=”_blank”>https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537amp;#8211; 難病情報…


鼻ポリープは粘膜が腫れてキノコ状に盛り上がった組織で、鼻茸とも呼ばれます。このポリープが鼻腔を塞ぐことで、空気の通り道が狭くなり、持続的な鼻詰まりを引き起こします。特に風邪をひいた際には症状が急激に悪化し、鼻ポリープが増大することが知られています。

参考)好酸球性副鼻腔炎


鼻詰まりに加えて、ネバネバした粘稠な鼻水や後鼻漏(鼻水がのどへ落ちる症状)も頻繁に見られます。これらの症状は日常生活に大きな支障をきたし、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となっています。

参考)本邦初!順天堂大学が医学部附属3病院で指定難病「好酸球性鼻副…

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指定難病としての診断基準

好酸球性副鼻腔炎が指定難病として認定されるには、明確な診断基準を満たす必要があります。JESREC Studyによって確立された診断基準では、①両側の鼻病変の有無、②鼻茸の有無、③篩骨洞陰影の優位性、④血中好酸球率を点数化し、17点満点で評価します。

参考)好酸球性副鼻腔炎の診断基準:JESREC Study


診断確定には「スコア合計が11点以上」かつ「鼻茸組織中の好酸球数が400倍視野で70個以上」という2つの条件を両方満たす必要があります。さらに指定難病の対象となるのは、重症度分類で中等症以上、または好酸球性中耳炎を合併している場合に限られます。

参考)https://ryumasblog.com/ecr01/

診断に必要な検査項目には以下が含まれます。

📋 主な検査項目

  • 血液検査による好酸球率の評価
  • 副鼻腔CT・MRIによる病変の広がりの確認
  • 基準嗅覚検査・静脈性嗅覚検査
  • 鼻茸の生検による病理検査
  • 鼻腔通気度検査による鼻詰まりの程度評価

参考)耳鼻咽喉・頭頸科|好酸球性副鼻腔炎|順天堂大学医学部附属順天…


確定診断を受けた方は、指定の診断書を保健所に提出・申請することで受給者証が交付され、医療費助成が受けられます。医療費総額の2割負担または上限額までが患者負担となり、経済的な支援が提供されます。

参考)好酸球性副鼻腔炎の手術


厚生労働省難病情報センターによると、本疾患は2015年7月1日より難病法により指定難病306番として正式に登録されました。これにより、難病指定医療機関で受けた医療費が助成対象となっています。

参考)https://www.support-allergy.com/dam/jcr:49b43c76-300b-4761-bfa7-e194cd4f4087/MAT-JP-2111276-30-092024.pdf

好酸球性副鼻腔炎の症状と合併症

好酸球性副鼻腔炎の最も特徴的な症状は嗅覚障害です。鼻の付け根の高さにある嗅裂という匂いの神経が並んでいる部分に鼻ポリープができることで、匂いの分子が神経に届かず、においが全く感じられなくなります。この嗅覚障害は患者のQOLを著しく低下させる主要因となっています。

参考)好酸球性副鼻腔炎 – 診療案内 – 東京女子医科大学 耳鼻咽…

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鼻詰まりと粘稠な鼻水も代表的な症状です。鼻水は黄色や緑色の粘性が高いものが特徴で、ニカワ状や膿性のこともあります。目の周りや前頭部の痛み、頭重感も頻繁に見られ、特に気圧の変化が大きい時(飛行機搭乗時や台風接近時)には激しい頭痛が生じることがあります。

参考)ヒカキンさんが患った難病、副鼻腔炎とは? – 横濱もえぎ野ク…

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⚠️ 主な合併症

気管支喘息は最も多く見られる合併症で、患者の80%以上に認められます。鼻(上気道)と気管支(下気道)は組織が似ているため同様な病態になることがあり、「One airway one disease」と呼ばれています。好酸球性中耳炎は非感染性の中耳炎で、抗生物質ではなくステロイド投与が有効ですが、再発を繰り返すと強い難聴をきたすことがあります。

参考)https://hanatonioi-cl.com/column/column-1045/

鼻詰まりを引き起こす難病の治療法

好酸球性副鼻腔炎の治療は、症状の重症度に応じて段階的に選択されます。軽症から中等症例では、抗アレルギー薬、点鼻ステロイド噴霧薬、抗菌薬(膿性鼻水がある場合)などの保存的治療が行われます。しかし、通常の慢性副鼻腔炎で効果的なマクロライド少量長期投与は、本疾患には効果が限られることが知られています。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/118/6/118_728/_pdf


手術療法として内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)が広く行われています。鼻ポリープを除去し副鼻腔の換気を改善することで、症状の軽減が期待できます。手術により嗅覚や喘息症状の改善も見込まれますが、残念ながら再発率が高いことが大きな課題です。

参考)Perioperative and postoperativ…

💊 最新の治療法:生物学的製剤

手術後に再発した症例や全身ステロイド抵抗性の難治性好酸球性副鼻腔炎に対して、生物学的製剤が画期的な治療法として注目されています。生物学的製剤とは化学的に合成した薬ではなく、生体が作る抗体を人工的に作り薬物として使用する新しいタイプの薬です。

参考)好酸球性副鼻腔炎に対する生物学的製剤/デュピルマブ(製品名デ…

主な生物学的製剤には以下があります。

デュピルマブは2週間ごと(安定時は4週間ごと)に皮下注射し、自己注射も可能です。大規模臨床試験で嗅覚改善や鼻閉改善の有効性が証明されています。ただし、3割負担で月約3万円の薬剤費がかかるため、指定難病の医療費助成制度の利用が重要です。​
適応対象は、全身性ステロイドなどの薬物療法で症状改善しない方、または手術後に再発した鼻茸を伴う難治性症例にほぼ限られています。​
<参考リンク:好酸球性副鼻腔炎の診断と治療に関する専門情報>
難病情報センター|好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)

鼻詰まり改善のための日常生活対策

好酸球性副鼻腔炎による鼻詰まりを悪化させないためには、日常生活での適切な対策が重要です。風邪をひくことがきっかけで安定していた症状が悪化し、鼻汁や鼻閉、嗅覚障害が再発することがあるため、基本的な感染対策を心がけましょう。

参考)好酸球性副鼻腔炎の場合、日常生活で気を付けることはありますか…

🏠 効果的な日常ケア

  • 外出後の手洗い・うがいの徹底
  • 規則正しい生活とバランスの取れた食事
  • 十分な睡眠時間の確保
  • ストレス管理と適度な運動
  • 清潔な環境の維持


鼻洗浄は特に重要な対策です。好酸球性副鼻腔炎の患者、特に手術後の方は、鼻洗浄を行うことで再発を防ぎ現状を維持できることがわかっています。生理食塩水などで1日3回以上の鼻洗浄を習慣化することが推奨されます。現在は簡単な鼻洗浄器がインターネットでも購入でき、風邪予防や花粉症対策にも有効です。

参考)好酸球性副鼻腔炎について。食べ物で体質改善はできる?


環境整備も症状コントロールに繋がります。病態の中心である2型炎症を悪化させる原因を避けるため、部屋を清潔に保つ、空気清浄機を使う、外出時にマスクを着ける、たばこの煙を避ける、こまめに換気するなどの工夫が効果的です。ハウスダスト、花粉、ダニなどのアレルゲン対策も重要な予防策となります。​
鼻詰まりがあるときはお酒を控えることも大切です。お酒を飲むと血行が良くなり、鼻がつまっている状態ではさらに症状が悪化してしまいます。また、症状が悪化した場合には長引かせないために早めに主治医の診察を受けることも重要です。

参考)副鼻腔炎を防ぐためには?


食事面では、抗炎症作用のある食材の積極的摂取が推奨されています。青魚、緑黄色野菜、発酵食品は抗炎症作用があり、納豆やカプサイシンが含まれる食事はフィブリンを分解する作用や抗炎症作用がある可能性が研究されています。禁煙や免疫力維持のための適度な運動、定期的な耳鼻科受診による早期対応も、長期的な症状管理に不可欠です。​
<参考リンク:日常生活での具体的な予防対策>
好酸球性副鼻腔炎の予防・日頃のケアと食事による体質改善