上咽頭癌の症状
上咽頭癌の初期症状としての鼻症状
上咽頭癌の初期段階では、鼻づまり、鼻水、鼻出血といった鼻症状が現れることがあります。これらの症状は腫瘍が鼻腔に侵入することで持続的に見られるようになります。特に鼻閉(鼻づまり)が続く場合や、鼻漏(鼻水)が止まらない状況、さらには血が混じった鼻水が出る場合には注意が必要です。大垣市民病院の解説によると、早期には鼻症状が主体となって現れるとされています。ただし、上咽頭癌は初期病変では症状に乏しいことが多く、解剖学的にファイバースコープなどを用いないと観察できないため発見されにくいという特徴があります。
上咽頭癌による耳症状と滲出性中耳炎
上咽頭癌が進行すると、耳管開口部を圧迫することで耳が塞がった感覚(耳閉感)や聴力低下、耳鳴りといった耳症状が現れます。特に成人で初めて滲出性中耳炎になった場合には、上咽頭を確認する検査を受ける必要があるとされています。国立がん研究センターのがん情報サービスでも、上咽頭癌では鼻や耳の症状があらわれることが説明されています。実際の臨床例では、月に1回の頻度で中耳炎を繰り返し、換気チューブを挿入されて経過観察されていた患者が、後に上咽頭癌と診断されたケースも報告されています。耳症状が長引く場合や繰り返す場合には、単なる中耳炎と考えずに詳しい検査が推奨されます。
耳症状の種類 | 説明 | 発生メカニズム |
---|---|---|
耳閉感 | 耳が塞がった感覚 | 耳管開口部の圧迫 |
難聴 | 聴力の低下 | 中耳への影響 |
耳鳴り | 持続的な耳鳴り | 耳管機能障害 |
滲出性中耳炎 | 中耳に液体が貯留 | 耳管の閉塞 |
上咽頭癌の頸部リンパ節転移による症状
上咽頭癌は豊富なリンパ組織を有し、容易にリンパ行性転移をきたしやすいという特徴があります。初診時には進行例となっているものが大半を占め、初発症状としては頸部リンパ節腫脹(首のしこり)から発見されることが多いとされています。上咽頭癌では、首のやや後ろ側(後頸三角)のリンパ節に転移することが多いと報告されています。亀田総合病院の説明によれば、くびのリンパ節にがんが転移してしまうと、くびのしこり(頸部リンパ節腫脹)を自覚するようになります。大半の症例が頸部リンパ節転移を有するため、上咽頭癌治療においては原発巣のみならず頸部リンパ節の制御も重要とされてきました。
上咽頭癌の進行期における神経症状
上咽頭癌が頭蓋内に浸潤すると、複視(物が二重に見える)、視力低下、目が見えにくい、頭痛などの脳神経症状が出ることがあります。上咽頭癌の頭蓋底骨構造への浸潤はT3に分類され、頭蓋底浸潤の有無とその範囲の診断は正確な病期診断と照射範囲の決定に重要です。さらに腫瘍が頭蓋内に達する場合にはT4に分類され、重要な予後不良因子となります。上咽頭癌の上方進展による頭蓋底浸潤の好発部位は破裂孔周囲や蝶形骨体部であり、それらの好発部位の知識が早期の頭蓋底浸潤の同定に重要です。頭蓋内進展に関しては、頭蓋底浸潤を介する直接浸潤、あるいは神経周囲進展による海綿静脈洞領域への進展が多く見られます。
上咽頭癌の症状の進行パターンと特徴
上咽頭癌は早期発見が難しく、進行してから見つかるケースが多い病気です。症状はがんの進行度によって変化します。早期には鼻症状や耳症状が主体ですが、進行すると頸部リンパ節腫脹や神経症状が現れてきます。上咽頭癌は症状に乏しく、早期には症状が出にくいのが特徴です。癌が大きくなり、耳管と呼ばれる耳とのどをつないでいる管を塞いで滲出性中耳炎となることがあります。また、長引く鼻づまりや繰り返す鼻出血、頸部リンパ節転移による頸部腫脹を契機として受診することも少なくありません。佐野厚生総合病院の情報でも、これらの症状パターンが説明されています。
上咽頭癌の発癌要因にはEBウイルスの関与が示唆されています。EBウイルス感染は最初のイベントではなく、それ以前にウイルスの持続感染を可能にする細胞側の何らかのイベント(p16遺伝子欠損やメチル化による不活化などの変異)が生じていることが必要であることが研究で明らかになっています。通常はEBウイルスが感染した上皮細胞ではウイルス複製が起こり細胞が溶解してしまいますが、上咽頭癌発癌のためにはEBウイルスが潜伏感染状態を維持することが重要とされています。
📊 ステージ別の症状の特徴
- ステージ1:がんが上咽頭内にとどまり、リンパ節転移がない状態で、軽度の鼻・耳症状が見られる場合があります
- ステージ2:がんの大きさが6cm以内で、顎を動かす筋肉もしくは頚椎前面の筋肉までの範囲におさまり、リンパ節転移が輪状軟骨より上の片側のみの場合で、鼻閉や耳閉感が持続します
- ステージ3:がんの大きさが6cm以内で、頭蓋底もしくは頚椎までの範囲におさまり、リンパ節転移が輪状軟骨より上の場合で、両側の症状や首のしこりが明確になります
- ステージ4A:遠隔転移がない状態で、頭蓋底浸潤による脳神経症状が出現します
- ステージ4B:遠隔転移がある状態で、全身症状も伴うようになります
上咽頭癌の治療は放射線治療に対する反応が良い腫瘍が多く、薬物療法と放射線治療が治療の中心となります。特に化学放射線療法が行われることが多く、薬物を併用することにより放射線治療の効果を高めることや、治療後の再発リスクを下げることが期待されます。国立がん研究センターの治療情報によると、上咽頭がんでは体の表面から放射線をあてる外部照射を30~35回(1日1回、週5日の治療を6~7週間)受けることが標準的です。強度変調放射線治療(IMRT)が勧められており、治療終了後にあらわれる副作用を軽減する効果が期待されます。
上咽頭癌の5年生存率はステージが進むにつれて低下する傾向にありますが、ステージ1では約80~90%、ステージ2では約70%前後、ステージ3では約50~60%、ステージ4では約30~40%とされています。近年では治療法の進歩により、ステージ4でも長く日常生活を維持できるケースが増えています。早期発見のためには、鼻づまりや鼻出血、耳の詰まり感、首のしこりなど、上咽頭癌に特徴的な症状に気づいた際に速やかに医療機関を受診することが重要です。