マンモグラフィ石灰化とカテゴリー分類

マンモグラフィ石灰化とカテゴリー分類

この記事でわかること
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石灰化の分類方法

形状と分布の特徴からカテゴリー1~5に分類され、悪性度のリスクを判定します

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各カテゴリーの意味

カテゴリー3は良性疑いで乳がんの確率は約8%、カテゴリー4以上は精密検査が必須です

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精密検査の内容

マンモトーム生検など組織診断により石灰化の良悪性を確定診断します

マンモグラフィで見つかる石灰化の基本

乳房内に形成される石灰化は、カルシウムが沈着することで発生し、マンモグラフィ検査で白い点や粒として映し出されます。石灰化自体は良性でも悪性でも起こる現象であり、発見された場合でも必ずしも乳がんを意味するわけではありません。重要なのは石灰化の原因が何であるかを特定することで、マンモグラフィでは石灰化の形態や分布パターンから良性または悪性の可能性を画像診断します。

参考)マンモグラフィでの乳腺石灰化とは?乳がんとの関係


石灰化には明らかな良性石灰化と良悪性の鑑別を要する石灰化の2種類があり、明らかな良性石灰化にはカテゴリー1または2が割り当てられます。良悪性の鑑別を要する石灰化については、形状と分布の組み合わせによってカテゴリー3以上に分類され、精密検査の対象となります。

参考)http://www.iryokagaku.co.jp/frame/03-honwosagasu/shuyoumokuji-860033329/12dokuei.pdf


石灰化で発見される乳がんの多くは、しこりを形成しない非浸潤がん(ステージ0)であることが特徴的です。日本国内の4論文の合算データによると、石灰化によって見つかった乳がん患者のうち82.6%が非浸潤がんであり、この段階で適切な治療を行えば5年相対生存率は100.0%と報告されています。

参考)乳がん検診で見つかる「石灰化」とは? 乳がんの確率や精密検査…

マンモグラフィのカテゴリー分類と悪性度

マンモグラフィの読影結果は、悪性度のリスクに応じてカテゴリー1~5の5段階に分類されます。カテゴリー1は異常なし、カテゴリー2は良性、カテゴリー3は良性と思われるが癌を否定できない、カテゴリー4は癌の疑い、カテゴリー5はまず癌であるという判定です。この分類は米国放射線科専門医会(ACR)が作成したBI-RADS(バイラズ)分類を参考にして作成され、国際的な標準化を図っています。

参考)「要精密検査」の方へ|乳腺クリニックブレスティア たまプラー…


カテゴリー3以上と判定された場合は「要精密検査」の対象となり、検診では受診者の5~10%がこの判定を受けています。実際の乳がんの頻度は各カテゴリーで大きく異なり、宮城県対がん協会の50~69歳のデータによると、カテゴリー1で0.03%、カテゴリー2で0.1%、カテゴリー3で8%、カテゴリー4で42%、カテゴリー5で100%となっています。

参考)乳腺腫瘤とカテゴリーについて – 女性のための健やか便り-A…


注目すべき点として、カテゴリー3と判定された方の92%は良性であるという事実があります。このため「要精密検査」という通知を受けても必要以上に心配する必要はありませんが、8%の方には乳がんが見つかるため、必ず乳腺外科医の診察を受けることが重要です。

参考)乳がん検診で要精査となってしまったら – さとこ乳腺・婦人科…

カテゴリー 判定内容 乳がんの確率 推奨対応
1 異常なし 0.03% 経過観察不要
2 良性 0.1% 経過観察不要
3 良性疑いだが悪性を否定できず 8% 精密検査
4 悪性の疑い 42% 精密検査
5 悪性 100% 精密検査

石灰化の形状による良悪性の見分け方

石灰化の形状は良性と悪性を判断する重要な指標となり、明らかな良性石灰化には皮膚石灰化、血管石灰化、線維腺腫の石灰化、乳管拡張症による石灰化、円形石灰化、中心透亮性石灰化、石灰乳石灰化、縫合部石灰化、異栄養性石灰化などが含まれます。これらの典型的なものはカテゴリー1または2に分類され、鑑別を必要としません。

参考)http://www5d.biglobe.ne.jp/~ko-yam/kensa3.htm


良悪性の鑑別を要する石灰化の形状は、微小円形石灰化、淡く不明瞭な石灰化、多形性あるいは不均一な石灰化、微細線状石灰化、微細分枝状石灰化に分類されます。このうち多形性石灰化は、crushed stone-like calcifications(砕いた石のような石灰化)とも呼ばれ、石灰化の大きさが不揃いで形も角があったり不規則になる特徴があります。

参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2008/083031/200823006B/200823006B0045.pdf


微細分枝状石灰化は悪性度が最も高い形態で、鋳型状石灰化(casting type calcification)とも呼ばれます。これは乳管内を充満した癌細胞の壊死部を鋳型状に埋めることから生じ、1個の石灰化が一塊となるfragmented casting-typeと、ドットが集合して鋳型状となるdotted casting-typeの2種類が存在します。この形状が確認された場合、分布にかかわらずカテゴリー5に分類されます。​

💡 知っておきたい豆知識

壊死型の石灰化は、乳管内に充満した癌組織中の壊死物質が石灰化したもので、癌細胞の量も場所により多様であるため、石灰化の大きさも不揃いで多形性を示すという病態的な理由があります。

参考)https://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63%2F58%2F4%2FKJ00004291975.pdf

マンモグラフィ石灰化の分布パターンと診断

石灰化の分布パターンは、形状とともにカテゴリー分類を決定する重要な要素となります。分布は主に4つのタイプに分類され、びまん性(散在性)、領域性、集簇性、線状・区域性があります。同じ形状の石灰化でも、分布パターンによってカテゴリー判定が変わるため、両者を総合的に評価することが診断の精度向上につながります。​
微小円形石灰化の場合、びまん性分布ではカテゴリー2、領域性分布ではカテゴリー3、集簇性分布ではカテゴリー3または4、線状・区域性分布ではカテゴリー5と判定されます。一方、多形性あるいは不均一な石灰化では、びまん性がカテゴリー3、領域性がカテゴリー4、集簇性以上がカテゴリー5となり、形状が悪性を疑わせるほど分布による悪性度の差が大きくなります。​
線状・区域性の分布は、乳管に沿って石灰化が並ぶパターンで、悪性を強く疑わせる所見です。小さな石灰化が一か所に多数集まっている集簇性の場合もカテゴリー3以上となり、乳がんに特徴的な石灰化の形や並び方の場合はカテゴリー4以上と判定されます。

参考)マンモグラフィ検診結果の見方


石灰化の分布と形状によるカテゴリー分類の詳細なアルゴリズムについて(医療科学社・マンモグラムの読影とカテゴリー分類)

カテゴリー3判定後の精密検査プロセス

カテゴリー3と判定された場合、主につるっとした形状の良性疑いのしこりや、非対称性乳房(乳房組織の大きさや濃度が異なる)が該当します。この段階での精密検査では、まず乳房トモシンセシス(3Dマンモグラフィ)が有用で、断層撮影により前後の連続した画像を見ることができ、がんのしこりかどうかを鑑別できます。

参考)第2回 乳がんを診断・治療するために必要な検査


カテゴリー3の鑑別に乳房トモシンセシスを用いることで、要精密検査の割合を減らすことができます。この検査はがんでないことを検出する「特異度」が高く、過剰な検査数を減らし医療費を軽減させる役割を担います。ただし、検査時間が通常のマンモグラフィよりも約40秒と長い分、乳房圧迫による痛みを感じやすいというデメリットがあります。​
カテゴリー3以上で石灰化が確認された場合、超音波検査で同定することが困難なため、マンモトーム生検(ステレオガイド下吸引式組織生検)が実施されます。この検査はマンモグラフィを撮影しながら直径4mmほどの針を差し入れ、先端の小窓から組織を吸引・摘出する方法で、局所麻酔下で約1時間かけて行われます。

参考)マンモトーム生検の導入について|【公式】長浜赤十字病院

🏥 精密検査で行われる主な検査

  • 乳房トモシンセシス(3Dマンモグラフィ):断層画像でがんの鑑別を行う
  • 超音波検査:しこりの性状を詳細に観察する
  • マンモトーム生検:組織を採取して顕微鏡で良悪性を診断する
  • MRI検査:カテゴリー3の微細石灰化に対して感度57%、特異度32%で評価

マンモトーム生検の詳細な手順と特徴について(長浜赤十字病院)

日本独自のカテゴリー分類とBI-RADS分類の違い

日本のマンモグラフィにおけるカテゴリー分類は、米国放射線科専門医会(ACR)が作成したBI-RADS(Breast Imaging Reporting and Data System)を参考にしていますが、独自の改変を加えた5段階評価となっています。1998年の厚生省のマンモグラフィ研究班(大内班)でACRのカテゴリーを参考として判定基準を作成し、日本乳癌検診学会のマンモグラフィガイドライン委員会が診断樹を作成してカテゴリー分類をより判定しやすいようにしました。

参考)乳がん検診でよく記載されている分類


BI-RADSではCategory 4の概念が広いためCategory 4a、4b、4cに亜分類され、日本のカテゴリーではカテゴリー3が3-1、3-2に亜分類されました。日本のカテゴリー3-2はBI-RADS Category 4aに相当すると説明され、さらなる画像診断あるいは細胞診、針生検が要求されるのに対し、BI-RADSのCategory 3は経過観察のみが推奨されるという違いがあります。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjabcs/23/1/23_22/_pdf


BI-RADS分類の特徴は、カテゴリーに推奨マネージメントとがんの可能性が対応している点です。現在、日本ではMRIについてこの分類が使用されており、検診カテゴリー3、4、5を区別して判定することで、悪性確信度を精密検査施設の医師に伝えることができます。

参考)総説2    検診・診断カテゴリーとPPV3

📋 日本とBI-RADSの主な違い

  • 日本:カテゴリー3を3-1、3-2に亜分類
  • BI-RADS:Category 4をa、b、cに亜分類
  • カテゴリー3の対応:日本は精密検査、BI-RADSは経過観察
  • MRI検査:日本ではBI-RADS分類を使用

超音波検査におけるBI-RADSを踏襲したカテゴリー分類の詳細(日本乳癌検診学会誌)