ヴィーガンとベジタリアンの違い|種類と健康影響

ヴィーガンとベジタリアンの違い

この記事の要点
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基本的な違い

ベジタリアンは卵や乳製品を摂取する人もいるが、ヴィーガンは動物性食品を一切口にしない

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多様な種類

ラクト・オボ・ベジタリアンやペスコ・ベジタリアンなど、摂取する動物性食品によって細かく分類される

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栄養管理の重要性

ビタミンB12やカルシウム、鉄分などの栄養素が不足しやすいため、適切な補給が必要

ヴィーガンの定義と特徴

ヴィーガンは完全菜食主義者とも呼ばれ、肉や魚だけでなく、卵・乳製品・はちみつなどの動物由来食品を一切口にしません。食事だけでなく、衣類やシャンプー、化粧品においても動物性製品を避ける人が多く、動物の権利や環境保護を重視するライフスタイル全体を指します。​
ヴィーガンになる理由は多様で、健康目的、環境保護、動物福祉、宗教的理由などがあります。特に環境ヴィーガンと呼ばれる人々は、畜産業がもたらす温室効果ガスの排出や森林崩壊、水資源の消耗などを減らすために動物性製品を避けています。動物搾取をしないという意識が強く、人間の衣食住に関わる目的のために動物に痛みを与えたり搾取したりする行為をできるだけ避けようとする「ビーガニズム」の思想を持つ人々です。​
ヴィーガンの中にも細かな分類が存在し、フルータリアン(果実や種子のみ摂取)、ロー・ヴィーガン(非加熱食品または46度以下で調理した食品を中心に食べる)、ダイエタリー・ヴィーガン(食用以外の動物製品は必ずしも避けない)などがあります。

参考)【菜食の種類】ヴィーガンとベジタリアンの違いは?

ベジタリアンの種類と摂取可能な食品

ベジタリアンは菜食主義者の総称で、肉や魚を食べないものの、卵や乳製品など一部の動物性食品を摂取する人も含まれます。ベジタリアンの中でも摂取する動物性食品の違いにより、いくつかのタイプに分類されます。

参考)https://www.spaceshipearth.jp/vegetarian/


ラクト・オボ・ベジタリアンは、肉類と魚介類を避けますが、卵と乳製品は摂取するタイプです。アメリカではほとんどのベジタリアンがこのタイプに該当し、日本語では「卵乳菜食」と表現されます。ラクト・ベジタリアンは乳製品のみ摂取し卵は避け、オボ・ベジタリアンは卵のみ摂取し乳製品は避けるという違いがあります。

参考)ベジタリアンは「9種類」に分けられる|菜食のチカラ by G…


ペスコ・ベジタリアン(ペスカタリアン)は肉は避けますが、魚や卵、乳製品は摂取します。地球環境のためにこのスタイルを選択する人もいます。ポーヨー・ベジタリアンは鶏肉以外の肉は摂取せず、セミベジタリアンとも呼ばれます。

参考)ヴィーガンとベジタリアンの違いとは?それぞれの定義・栄養面に…

ヴィーガンとベジタリアンの健康への影響

ヴィーガンやベジタリアンの食事は、適切に計画されれば健康的で栄養的に十分であり、心血管疾患2型糖尿病、特定のがんのリスクを減少させる可能性があります。食物繊維が豊富で飽和脂肪酸が少なく、多価不飽和脂肪酸が多いという特徴があります。​
研究によると、ヴィーガン食は心筋梗塞狭心症などの虚血性心疾患の発症リスクを大きく下げることが示されています。また、BMIや血中コレステロールが低下し、代謝改善や生活習慣病予防に効果的です。抗酸化物質やフィトケミカルが豊富なため、炎症や酸化ストレスを抑え、慢性疾患リスクを減らします。​
一方で、ヴィーガンやベジタリアンの食事には注意が必要な側面もあります。神経系、骨格系、免疫系の障害、血液疾患、精神的健康問題などのリスクが、微量栄養素や主要栄養素の不足により生じる可能性があります。適切な栄養計画と必要に応じたサプリメント摂取が重要です。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10665534/

ヴィーガン食で不足しやすい栄養素と対策

ヴィーガンやベジタリアンの食事で最も不足しやすい栄養素はタンパク質です。一般的にタンパク質は肉・魚・卵から摂取できますが、ヴィーガン食ではそれら以外から摂取する必要があります。タンパク質が不足すると、筋肉の減少、コラーゲン減少による髪や爪へのダメージ、神経伝達物質の機能低下による脳機能の低下などが起こり得ます。

参考)Document moved


ヴィーガン食で不足しやすい栄養素の詳細と対策について(福岡市医師会)
ビタミンB12は動物性食品を主な供給源とする栄養素で、ヴィーガンには特に不足しやすい栄養素です。ビタミンB12が不足すると貧血や神経障害のリスクが高まるため、強化食品やサプリメントでの補給が必要です。また、ビタミンD、カルシウム、鉄分、亜鉛、オメガ3脂肪酸なども不足しがちです。

参考)http://www.nutrepi.m.u-tokyo.ac.jp/publication/ja/4588.pdf


鉄分に関しては、植物性食品に含まれる非ヘム鉄は動物性食品のヘム鉄よりも吸収率が低いため、ビタミンCを豊富に含む食品と一緒に摂取することで吸収を助けることができます。豆類、大豆製品、全粒穀物、ナッツ類などを組み合わせることで、必要な栄養素を確保することが可能です。

参考)野菜だけの生活で栄養失調にならないの?ヴィーガン食がもたらす…

ヴィーガン・ベジタリアンと環境・動物福祉の関係

ヴィーガンやベジタリアンの食事は、環境保護や動物福祉の観点から重要な意味を持ちます。畜産業は温室効果ガスの排出、森林崩壊、水資源の消耗など、環境への大きな負荷をもたらしています。植物由来の食べ物を選択するヴィーガンは、地球環境や人・動物の健康に配慮するライフスタイルとして世界中で注目度が高まっています。

参考)ヴィーガンとベジタリアンの違いとは?SDGsに貢献するやさし…


畜産においては、飼料となる穀物を生産するための水や、家畜の飼育場の洗浄・消毒に使われる水を大量に消費します。また、家畜のふんや尿などが含まれる水がそのまま排出され、細菌が繁殖し水質汚染を引き起こすことも問題となっています。ヴィーガン・ベジタリアンを取り入れることで排水を減らし、飲料水確保や水質汚染の防止につながると考えられています。​
動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点では、動物は感受性のある生き物であるため、できるだけ肉体的・精神的苦痛を減らそうという考え方があります。エシカル・ヴィーガンと呼ばれる人々は、環境や動物福祉への意識を含む、より広い意味でのライフスタイルを実践しています。世界中で動物性タンパク質を植物性タンパク質や培養肉などに切り替える流れが強くなっており、その原動力となっているのが気候危機とアニマルウェルフェアです。

参考)「お肉を食べること〜ヴィーガンとアニマルウェルフェア〜」|玉…

ヴィーガン・ベジタリアン食を実践する際の注意点

ヴィーガンやベジタリアンの食事を実践する際には、栄養バランスに十分注意する必要があります。適切に計画されたヴィーガン食は健康的ですが、計画が不十分だとタンパク質、オメガ3脂肪酸、鉄分、ビタミンD、カルシウム、亜鉛、ヨウ素、特にビタミンB12の欠乏を引き起こす可能性があります。

参考)https://www.mdpi.com/2072-6643/13/3/817/pdf


ベジタリアンとヴィーガンの栄養摂取状況に関する研究論文(NuEva Study)
子どもや高齢者は特にエネルギー・栄養不足のリスクが高く、専門家のサポートを受けながら慎重に実践することが望まれます。タンパク質の1日の必要摂取量は男性60〜65g、女性50gと言われていますが、年齢や性別、妊婦、授乳婦、生活スタイルや活動量によっても変わってきます。​
「ヴィーガン食=健康」というイメージだけに頼らず、未加工の植物性食品を中心に質の高い食事を組み立てることが重要です。豆類、大豆製品、全粒穀物、野菜、果物、ナッツ類などを組み合わせ、ビタミンB12などの不足しやすい栄養素はサプリメントや強化食品で補給することが推奨されます。​
段階的に移行する方法として、まずはラクト・オボ・ベジタリアンやペスカタリアンから始め、徐々にヴィーガンに近づけていくという選択肢もあります。自分の健康状態や生活スタイルに合わせて、無理のない範囲で実践することが継続の鍵となります。

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