収縮期血圧と拡張期血圧の正常値

収縮期血圧と拡張期血圧の正常値

この記事の要点
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正常血圧の基準

収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満が正常血圧の基準値です

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血圧の意味

収縮期血圧は心臓が血液を送り出すときの圧力、拡張期血圧は心臓が血液を溜め込むときの圧力です

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年齢と血圧の関係

加齢に伴い血管の弾力性が低下し、特に収縮期血圧が上昇する傾向があります

収縮期血圧と拡張期血圧の基準値と分類

血圧は心臓が血液を全身に送り出す際に血管壁にかかる圧力のことで、収縮期血圧と拡張期血圧の2つの数値で表されます。日本高血圧学会の2019年版ガイドラインでは、収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満が正常血圧と定義されています。この基準値は脳卒中や心血管疾患のリスクが最も低いレベルとして設定されています。

参考)血圧-正常値から高血圧の値


血圧の分類は段階的に定められており、正常高値血圧は収縮期血圧120~129mmHgかつ拡張期血圧80mmHg未満、高値血圧は収縮期血圧130~139mmHgまたは拡張期血圧80~89mmHgとなっています。さらに高血圧は重症度によってⅠ度(収縮期血圧140~159mmHgまたは拡張期血圧90~99mmHg)、Ⅱ度(収縮期血圧160~179mmHgまたは拡張期血圧100~109mmHg)、Ⅲ度(収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上)に分類されます。

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家庭血圧と診察室血圧では基準値が異なる点にも注意が必要です。診察室血圧では収縮期血圧130mmHg以下かつ拡張期血圧90mmHg以下が正常値とされるのに対し、家庭血圧では収縮期血圧125mmHg以下かつ拡張期血圧75mmHg以下が正常値の目安となります。家庭血圧で5~7日の平均が収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上の場合は高血圧と診断されます。

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収縮期血圧と拡張期血圧それぞれの意味と違い

収縮期血圧は心臓が収縮して全身に血液を送り出すときに血管壁にかかる圧力のことで、最高血圧や「上の血圧」とも呼ばれます。一方、拡張期血圧は心臓が拡張して血液を溜め込んでいるときの圧力で、最低血圧や「下の血圧」とも呼ばれています。心臓が血液を全身に送り出した後、血液は肺を経由して再び心臓に戻りますが、この時心臓は一時的に拡張して血液を溜め込みます。

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この間、心臓から出てすぐの血管である大動脈が押し広げられた状態からゆっくりと収縮することで全身の血圧が保たれ、その間の最も低い血圧が拡張期血圧となります。収縮期血圧と拡張期血圧の差は脈圧と呼ばれ、一般に約40~50mmHgが目安とされています。脈圧が大きすぎる場合や小さすぎる場合は血管の状態や心臓機能に問題がある可能性があります。

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日本の久山町で行われた研究では、収縮期血圧が120mmHg未満かつ拡張期血圧が80mmHg未満のときに脳心血管病の累積死亡率が最も低くなることが明らかになっています。また、拡張期血圧が90mmHg以上になると、80mmHg未満の方と比べて脳心血管病のリスクが高くなることも示されており、拡張期血圧も健康リスクを表す重要な指標となっています。

参考)収縮期血圧とは?拡張期血圧とどっちが重要?

年代別の収縮期血圧と拡張期血圧の平均値

血圧は加齢に伴って上昇する傾向があり、年代別に見ると明確な違いが見られます。20代男性では収縮期血圧115.9mmHg、拡張期血圧68.1mmHgですが、70代・80代では収縮期血圧133.9mmHg、拡張期血圧74.5mmHgまで上昇します。女性も同様の傾向を示し、20代では収縮期血圧105.7mmHg、拡張期血圧63.8mmHgですが、70代・80代では収縮期血圧133.1mmHg、拡張期血圧73.9mmHgとなります。

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年代別の詳細な平均値を見ると、30代男性は収縮期血圧117.2mmHg、拡張期血圧73.8mmHg、40代では収縮期血圧125.4mmHg、拡張期血圧80.6mmHg、50代では収縮期血圧129.7mmHg、拡張期血圧81.0mmHg、60代では収縮期血圧134.1mmHg、拡張期血圧78.3mmHgとなっています。女性では30代が収縮期血圧108.0mmHg、拡張期血圧66.4mmHg、40代が収縮期血圧113.7mmHg、拡張期血圧70.9mmHg、50代が収縮期血圧121.8mmHg、拡張期血圧74.5mmHg、60代が収縮期血圧130.6mmHg、拡張期血圧76.7mmHgです。​
この年齢による血圧上昇の主な理由は、加齢に伴って血管の弾力性が失われることによるものです。血管の弾力性が低下すると血流が悪くなり、特に心臓が収縮して血液を送り出す際の収縮期血圧が高くなります。また、自律神経の働きが低下することで血圧変動のリズムが乱れ、血液がスムーズに流れなくなることも要因となっています。

参考)https://www.healthcare.omron.co.jp/cardiovascular-health/hypertension/column/aging-and-hypertension.html

収縮期血圧と拡張期血圧の正確な測定方法

血圧を正確に測定するためには、測定時の姿勢や環境が重要です。まず、背もたれのある椅子に座り、両足を床につけた状態で1~2分間リラックスしてから測定します。アメリカのガイドラインでは5分程度の安静が推奨されていますが、日本では最低1~2分とされています。足を組むと血圧がやや上がってしまうため注意が必要です。

参考)血圧測り方


測定時の腕の位置も重要で、ひじを真っすぐに伸ばし、心臓と同じ高さで測定することが必須です。ひじを曲げると数値が高く出てしまいます。血圧計のカフ(腕帯)は肘から1~2cm上の位置に巻き、指が2本分入る程度の締め具合にします。薄手の服の上から測定することは可能ですが、厚手の服は避けましょう。

参考)https://www.healthcare.omron.co.jp/cardiovascular-health/hypertension/column/how-to-monitor-blood-pressure.html


測定のタイミングについては、朝は起床後1時間以内、トイレを済ませた後で食事前に測定します。夜は就寝前に測定しますが、どちらもリラックスした状態で行うことが大切です。測定前30分以内の喫煙、飲酒、カフェイン摂取、入浴、運動は避ける必要があります。また、室温が12~13度以下の寒い場所では血圧が高めに出るため、適切な室温で測定することも重要です。

参考)血圧の正しい測り方と家庭で測るときの注意点

白衣高血圧と仮面高血圧における収縮期血圧と拡張期血圧

白衣高血圧とは、診察室で測定すると血圧が高くなるものの、診察室以外で測った血圧は正常な状態を指します。これは医療機関での緊張やストレスによって一時的に血圧が上昇する現象で、特に高齢者に多く見られます。白衣高血圧の方は、家庭血圧を定期的に測定することで真の血圧状態を把握することが重要です。

参考)白衣高血圧、仮面高血圧とは


一方、仮面高血圧は診察室での血圧測定では正常値を示すものの、診察室以外で測定すると高血圧となる状態です。仮面高血圧は心血管疾患の発症リスクが正常血圧に比べて2~3倍程度高く、持続性高血圧と同程度のリスクがあるとされています。仮面高血圧には、朝方に血圧が上昇する早朝高血圧や、夜間に血圧が下がらない夜間高血圧などのタイプがあります。

参考)白衣高血圧と仮面高血圧


これらの血圧異常を発見するためには、家庭血圧測定が非常に有効です。診察室血圧だけでは判断できない血圧の変動パターンを把握でき、適切な治療方針の決定に役立ちます。家庭血圧は毎日同じ時間帯に測定し、朝晩2回ずつ測定することが推奨されています。測定値を記録して医師に提示することで、より正確な診断と治療が可能になります。​

収縮期血圧と拡張期血圧を正常値に保つための食生活

血圧を正常値に保つためには、減塩を中心とした食生活の改善が最も重要です。日本人は平均して約10g/日の塩分を摂取していますが、高血圧治療ガイドラインでは6g/日未満に抑えることが推奨されています。減塩のコツとしては、香辛料や香味野菜、果物の酸味を利用することや、低塩の調味料を上手に使うこと、外食や加工品を控えることが挙げられます。麺類の汁を全部残すだけでも2~3gの減塩が可能です。

参考)https://www.healthcare.omron.co.jp/cardiovascular-health/hypertension/hypertension-guide/07.html


減塩に加えて、野菜と果物を多く摂取することも血圧低下に効果的です。大豆やナッツなどの豆類もおすすめで、これらの食品に多く含まれるカリウムやマグネシウムなどのミネラル、食物繊維は塩分を体から排出させる機能があり、血圧を下げる効果があります。特に雑穀ご飯、海藻類、きのこ類、ごぼうなどの根菜は食物繊維が豊富で、ナトリウム(食塩)を吸着し体外へ排出する働きがあります。

参考)血圧を下げる食べ物・上げる食べ物とは? おすすめレシピも紹介


このような「野菜や果物を多く摂り、肉や脂を減らす食生活」はDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)と呼ばれています。DASHにより高血圧症患者の血圧が平均11.4mmHg/5.5mmHg下がったという報告があります。逆に減らした方がいい食品は、脂身の多い赤身肉(牛や豚)、ソーセージやベーコンなどの加工肉、脂や糖分が多く含まれるスナック菓子やジュースなどです。DASHは高血圧症だけでなく、糖尿病高脂血症といった他の生活習慣病の改善効果も期待できます。

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